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契約書の「法的効力」とは?法律面での役割と基本を解説
契約書・リーガルチェック
2024.11.13 ー 2024.11.21 更新
契約書はビジネスや取引において重要な役割を果たしますが、法的な専門知識が必要であるため、個人事業主や中小企業の経営者、またフリーランスの方々にとっては難しく感じることも多いでしょう。
特に「契約書に何を記載すればいいのか?」「法律に則った書き方は?」といった疑問を抱える方も少なくありません。この記事では、契約書の基本構成や各項目の法律的な意味、リスク回避のための注意点について詳しく解説します。
また、契約書の作成や確認の際に必要なポイントもわかりやすくまとめておりますので参考にしてみてください。
無料で相談できる専門家検索はこちらから>>契約書の法的効力とは?
契約書は契約の合意内容を記載した書面であり、基本的にはそれ自体が『法的効力』を発生させるものではありません。
法的効力が発生するのは『契約』の結果であり、契約書が持つのは証拠としての効力(証拠能力)です。(※法的効力、法的拘束力については、契約の基礎知識として後ほど解説します。)
民法の原則として契約は口頭でも成立します。特に書面契約が必須と規定される場合や特約を定めたような場合を除いて、契約書作成は契約の効力発生要件ではありません。
しかし口頭の契約では証拠が残らないため、後からトラブルになるケースが多くなります。契約書を作成する意義は、こうした言った言わないの争いを避けて合意内容を明確にし、トラブル回避し信頼関係を構築することです。
契約の基礎知識
契約書の効力を理解する上では、以下のような基本的な民法の知識が必要です。
- 法的効力、法的拘束力
- 債権、債務
- 物権
- 口頭契約、書面契約、電子契約
- 署名・押印の効果
また、契約書で使用される業界用語の定義や法律用語の正確な理解も欠かせません。見落としがちな用語や表現があるため、必要に応じて専門家のアドバイスを受けることも検討しましょう。以下、一つずつ解説していきます。
契約の法的効力・法的拘束力とは?
契約の法的効力は、当事者間で債権・債務が発生することです。
契約の法的拘束力とは、契約したとおりの債務を履行する義務と責任が発生することです。
契約が有効に成立しているにも関わらず当事者が債務を履行しない場合には、法的拘束力によって、裁判で認められれば強制執行が可能になります。
このように、法律による一定の効果を法的効力といい、その法的効力により拘束力を持つことを法的拘束力と言います。
繰り返しになりますが、契約の成立は原則として互いの合意であり、契約書はその証拠書面です。法令によって書面が効力要件とされる場合や特約がない限り、契約の成立で法的効力・拘束力が発生するのであり、契約書の作成行為が効力発生のトリガーになるわけではありません。
ただし一般的には「契約に合意するならこの契約書にサインしてください。」というように、契約への合意の意思確認と契約書作成を兼ねるケースは多いです。
債権・債務とは
債権とは、特定の当事者に対して行為や給付を請求できる法律上の権利のことです。単なるお願いや募集と違って、適法に発生した債権は法的効力を持ち、裁判でその権利が認められれば強制執行等も可能になります。
債務は、行為や給付を行わなければならない法律上の義務のことです。
例えば売買契約では、買主が売主に対して対象物を引き渡すように請求する債権を有し、売主は買主に対して対価となる金銭を請求する債権を有します。言い換えると買主は金銭債務を負い、売主は引渡し債務を負います。
このように互いに債務が発生する契約を双務契約と言い、贈与のように一方のみが債務を負う契約を片務契約と言います。
これら債権・債務については民法第三編『債権』などに規定があり、民法の他、契約の種類や内容によって各種の法令が適用されます。例えば、過失相殺の原則や消滅時効が適用されるなどが典型的です。
契約書には、債権・債務の範囲や対価、履行の時期などを明確に記す必要があります。
物権とは
物権とは、民法で定められた所有権や地上権、抵当権などの『物』に対する権利です。(不動産などを表す『物件』ではありません。)
債権は当事者同士でしか効力がないのに対して、物権は第三者に対しても排他的効力などを持ちます。例えば、車の所有者は誰に対しても「壊すな」「盗むな」あるいは「返せ」のように主張することができます。
所有権には使用・収益・処分権限が含まれるため、車の「使用」ができますし売却や贈与、廃車にするなどの「処分」の選択も可能です。
ただし車を貸し出して「収益」する行為は、安全性や不正利用防止等の観点から自家用自動車有償貸渡業許可という行政の許認可が必要です。このように民法の原則としては認められていても、他の法令によって行為が制限される場合もあります。
契約書はこうした債権・物権の違いを理解して作成する必要があり、民法以外の知識も必要になります。
口頭契約・書面契約・電子契約の違い
契約は口頭、書面、電子の3つの形態で締結できますが、それぞれに特徴があります。
- 口頭契約:簡易で迅速な合意が可能ですが、後々の証明が困難です。
- 書面契約:合意内容を明確に記録し、証拠として残せるため、トラブル防止に有効です。
- 電子契約:時間や場所の制約なく締結でき管理も容易ですが、セキュリティ面での配慮が必要です。
債権債務の発生という法的効力については、原則としてどの形態でも同等です。
契約の形態選択は、取引の性質や当事者間の関係、法律の要請によっても異なります。例えば、不動産取引では書面が必要とされる場合があります。さらに、国際取引では、言語や法制度の違いを考慮し、より詳細な書面契約が一般的です。
署名や押印の効果
押印は、原則として契約の効力発生要件ではありません。
署名や押印は、契約書が真正に作成されたと推定される情報であり、やはり証拠として一定の効力が認められるものです。
特に、実印は自治体に登録した印鑑であり、当事者のみが持ち得るものです。そのため、実印での押印はより本人が作成したものであるとの推定が強く働きます。
ちなみに捨印による修正や、契印、割印などの押印箇所・押印方法、色などについても法律による明確な規定はありません。これらは慣習に基づくものですが、実務上は偽造防止等の効力もあり、広く利用されています。
契約書が果たす法律上の役割とは?
契約書は、当事者間の合意内容を明確に記録する重要な文書です。
その主な役割は、取引の条件や双方の権利義務を明確にし、将来的なトラブルを予防することにあります。契約書は、民法上の契約自由の原則に基づいて作成され、当事者間の合意を証明する証拠としても機能します。
また、法改正への対応の意味もあります。契約等の法律行為は原則としてその時点で施行されている法律が適用されるため、契約日を記載することで現行の法律に対応して作成されたことが分かります。同時に、債権の消滅時効を確認するための証拠にもなります。
契約書は当事者間の合意を示す有力な証拠であり、紛争が生じた際には裁判所での判断材料として重要視されます。契約書の存在により、取引内容や条件の解釈に関する争いを減らすことができ、ビジネスの安定性を高めることができます。
契約書が必要とされるケースと具体例
契約書は、一定の重要な取引や合意において必要とされ、例えば以下のような例があります。
- 不動産取引
- 雇用契約
- 組織再編
- 業務委託契約
- 継続取引を行う場合の基本契約書
上記に関わらず、契約の規模が大きい場合や著作権、秘密保持等が重要になる場面では契約書の持つ役割は大きくなります。
反対に、通常、日常的な買い物や外食などでは契約書を作成しません。こうした典型的な契約については基礎的なルールが民法で定められており、トラブルの可能性や手間を考慮すると作成の必要性が低いためです。
コンビニやスーパーでの買い物においてもその度に売買契約が成立していますが、契約書を作ったことは無いでしょう。(ただし、買主は証拠として受領書の請求が可能です。)
これらの例から分かるように、契約書は取引の性質や規模、リスクに応じて必要とされます。契約書は当事者間の権利義務を明確にし、将来のトラブルを予防する重要な役割を果たしています。
契約の効力範囲と限界
契約は原則として自由な意思に基づいて結ぶことができます(契約自由の原則)。
ただし限界もあります。契約の効力範囲については、以下の点に注意する必要があります。
- 内容によって無効や取消の対象となる
- 未成年との契約等、相手によって取消対象になる場合がある
- 契約当事者のみに効力がある
以下、一つずつ簡単に解説していきます。
内容によって無効や取消の対象となる
以下のような場合には、契約条項または契約全体が無効になる場合があります。
- 公序良俗や信義則に反する場合
- 違法行為・犯罪の実行や助長する契約
- 事業者が消費者に対して設ける一方的に不利な条項
- 強行法規に反する、その他各種法令に反する条項
例えば「支払いが遅れた際には売買金額の100倍の賠償金を請求する」という条項は結果が極端であり、信義則に基づいて無効になる可能性が高いです。
違法行為や犯罪を行う契約も禁止であり、契約条項に含めてももちろん無効です。違法行為が法律によって保護されることは無いためです。
そのほか、契約書の内容と実体に応じて消費者契約法やその他の法令によって、契約条項が無効となる場合があります。
未成年との契約等、相手によって取消対象になる場合がある
契約書が適法に作成されていても、未成年との契約などは取消の対象になります。
また、当然ながら詐欺や強迫によって契約を行った場合も取消の対象です。
契約当事者のみに効力がある
契約による債権・債務の効力は当事者間にのみ及ぶのが原則です。
例えばAがBに対して、第三者Cの所有物を売り渡す契約は有効です。このような契約を他人物売買と言います。
このとき、契約による債権債務は、AB間でのみ発生します。
AB間の契約の効果はCに及びませんので、Cは対象物の所有権を理由にBへの引き渡しを拒むことができます。
このようにAがBに対して対象物の引渡債務を履行できなければ、履行不能による解除や損害賠償等によって責任を取ることになります。もちろん、CからAが対象物を購入するなどしてBに引き渡すことができれば問題ありません。
契約は、原則として当事者以外の第三者に対して直接的な法的効力を持たせることはできないため、この点も契約書作成時に考慮すべき重要な限界といえます。
契約書作成で押さえておきたい法律の基礎知識
契約書を作成する際には、法律の基礎知識を押さえておくことが重要です。まず、契約の基本となる民法について理解しておく必要があります。
民法では契約自由の原則が定められていますが、同時にその限界も存在します。また、強行規定と任意規定の違いを把握し、実務での適切な活用方法を知ることも大切です。
契約書に適用される法律は、民法や商法だけでなく、業種や取引内容によって様々です。そのため、関連する法令をしっかりと確認し、法令に準拠した記載を心がけることが求められます。特に、当事者間のパワーバランスに応じた条項設定や、想定されるトラブルの予防策を盛り込むことが重要です。
法律に準拠した契約書の書き方
法律に準拠した契約書を作成するには、次の方法があります。
- 法律を理解する
- 過去の判例、テンプレート、書籍を参考にする
- 専門家にリーガルチェックを依頼する
以下、ポイントを解説していきます。
法律を理解する
契約書を作成する際は法律の理解が必要不可欠です。
表面的に「権利義務を明確にしよう」「想定されるトラブルを予想しよう」などの対応を紹介する記事もありますが、結局のところ法律知識の土台がなければ正確な判断は困難でしょう。
最も怖いのは、リスクある契約を行うことではなく、リスクに気づかないことです。
過去の判例、テンプレート、書籍を参考にする
法律の知識があれば、過去の判例や書籍を参考にしつつ、リスクを軽減する契約書の作成が可能となるでしょう。
インターネット上ではさまざまな契約書のテンプレート・ひな形をダウンロードして利用できます。ただし、テンプレートの利用には注意が必要です。
テンプレートを利用する際は、個別の事項を必ず盛り込むこと、過信せずに定型条項も確認すること、改正に対応させることなどが重要になります。
基本的には、弁護士等へリーガルチェックを依頼する前提で契約書の原案作成として利用するのが良いでしょう。
専門家にリーガルチェックを依頼する
弁護士等の専門家へ契約書のリーガルチェックを依頼するのは、法令遵守のために最も有効な方法です。
ただし、一定の費用と時間がかかるため契約の規模や継続性を考慮しつつ依頼を検討すると良いでしょう。
特に、大規模な契約、秘密保持や著作権に関わる重要な契約、雇用契約・業務委託契約などの継続的に利用する契約書等においては、リーガルチェックが効果的になります。
弁護士に依頼することで、法令順守の効果が担保され、契約相手方にも安心感を与える効果もあります。
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