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契約書作成の注意点は?記載内容と形式的な部分に分けて詳しく解説!
契約書・リーガルチェック
2024.11.13 ー 2024.12.09 更新
契約書は、ビジネスにおける重要な取り決めを文書化し、法的権利を保護するための欠かせないツールです。しかし、初めて契約書を作成・確認する際には、何を重視し、どこに注意すべきか分からず、不安に感じる方も多いのではないでしょうか。
本記事では、記載事項や形式的な部分も含めて契約書の基本的な知識と見逃してはいけない注意点をわかりやすく解説します。トラブルを未然に防ぎ、安心して契約を結ぶためのガイドとして、ぜひお役立てください。
無料で相談できる専門家検索はこちらから>>契約書の重要性と基本的な役割
契約書の基本的な役割は、合意内容を書面化することで後々の解釈の相違や誤解を防ぎ、取引の安全性を確保することにあります。
契約書は紛争が生じた際の証拠としても機能し、当事者の主張を裏付ける重要な資料となります。契約書を作成し契約条項を互いに確認のもと契約することで、双方が契約内容を十分に検討し、リスクを事前に把握することができます。
このように、契約書は取引の透明性を高め、ビジネスリスクを軽減する上で欠かせない存在なのです。
契約書が持つ証拠力と法的効力
契約書は当事者間の合意を証明する有力な証拠として扱われます。
民事訴訟の場合、証拠の方法に制限はありません。訴訟の際には、契約書の内容や形式的な面などあらゆる面が証拠として機能します。
また契約書のコピーは原本よりも証拠としての効力が弱く扱われるため、署名・押印等を行った契約書は適切に保管することが重要になります。
契約書がない場合のリスク
契約書がない場合、取引の詳細や条件が曖昧になりトラブルが発生する可能性が高まります。口頭での合意や簡単なメモだけでは後々の解釈の相違や記憶違いによる紛争を招きかねません。
特に金銭や権利に関わる重要な取引では、契約書の不在が深刻な問題を引き起こす可能性があります。
さらに、契約書がないと法的な保護を受けにくくなります。紛争が生じた際に、合意内容を証明することが困難となり、裁判などの法的手段を取る際にも不利な立場に立たされる可能性があります。
契約書の作成は時間と労力を要しますが、安定した取引関係を構築するためには不可欠です。契約書の作成は両者の権利義務を明確にし、トラブル予防や迅速な解決につながります。
契約書の内容についての注意点
契約書作成時には、いくつかの重要な注意点を押さえておく必要があります。
- 目的を明確にし法令を遵守する
- 曖昧な表現を避け、第三者にも理解できる表現で書く
- 権利と義務を明確に記載する
- 契約によっては法令で記載事項が定められている
- 関連する法律や判例の事前調査を行う
以下、これらの項目について一つずつ解説していきます。
これらの注意点を押さえることで、トラブルを未然に防ぎ、双方にとって公平で有効な契約書を作成することができます。
法令を遵守する
契約書を作成する際には、契約の目的を明確にし法令を遵守することが重要です。
目的を明確にすることで、契約の本質的な部分を押さえ必要な条項を漏れなく盛り込むことができます。また、将来的なリスクを予測し、それに対応する条項を盛り込むことも可能になります。
近年では犯罪収益移転防止法の影響により、相手方が反社会勢力に該当しないことを保証させる条項を設けるケースも増えています。
このように、契約書の作成は直近の法律の変化にも適切に対応する運用が必要です。
権利と義務を明確に記載する
契約書において権利と義務を明記することは、取引の安全性と予測可能性を確保する上で極めて重要です。
具体的には、契約の対象となる完成物や業務について納品期限、品質基準、業務範囲などを詳細に定めることで、双方の認識のずれを防ぎスムーズな取引遂行が可能となります。
事例として、特定の歌手がコンサートを行う内容の業務委託契約においては、契約者の属人的な地位が重要です。このような場合は契約上の地位を他人に譲渡しないことや、他人への副次的な業務委託を禁止する条項を設けることが必要になります。さらにイベント内容の秘密保持や映像著作権などの知財に関する事項も重要になるでしょう。
契約においてはそれに応じる対価の支払い額、代金の計算方法、請求の基準日なども明確に定めておく必要があり、違反した場合の損害賠償や解除の条件等も重要になります。
こうした対象業務や成果物については、別紙を利用して目次や一覧を作成する方法なども広く利用されます。
おおよそ争いになるのはこのようなコストのバランスであるため、権利と義務の明確化は、公平で持続可能な取引関係構築の礎となる重要な要素となります。
曖昧な表現を避け、第三者にも理解できる表現で書く
契約書を作成する際は、当事者間だけでなく第三者にも理解できる明確な表現を用いることがポイントです。基本的に専門用語や業界特有の言い回しを避け、一般的な言葉で説明することが求められます。専門用語が必要な場合には、契約書内で定義を明確に記載すると良いでしょう。
例えば「速やかに」という表現ではなく、日付を指定するか「3営業日以内に」のように具体的な期限を設定することが望ましいです。またこの記載の場合、民法では初日不算入を原則としているためそうした期限に認識違いがないかも確認する必要があります。
契約書記載事項が法律で定められるケース
契約書の記載事項が法律で定められるケースは少なくありません。特定の取引や業種においては法律で契約書その他の書面において明示し、記載すべき事項を規定していることがあります。
例えば、不動産取引における宅地建物取引業法や、労働契約における労働基準法などが該当します。これらの法律は、取引の公正性や当事者の権利保護を目的としており、法定事項を遵守することで契約の有効性が担保されます。会社法上の組織再編等も契約で定める事項が明確に定められています。
契約書作成時には適用される法律を確認し、必要な事項を漏れなく記載することが重要です。専門的な知識が必要な場合は、契約の種類に応じて弁護士や司法書士、不動産においては宅建士などの専門家に相談することも検討すべきでしょう。
関連する法律や判例の事前調査を行う
契約書作成において関連する法律や判例の事前調査は不可欠です。
秘密保持契約や知的財産についての事項は共通項目になりやすく、契約書には準拠法を記載するケースも多いためです。
各業界や取引内容によって適用される法律が異なるため、契約内容が法的に有効であるか確認する必要があります。例えば、不動産取引では宅地建物取引業法、労働契約では労働基準法など特定の法律が適用されます。
また、過去の裁判例や自社における同種の契約を調べて比較することで、類似の契約でどのような解釈がなされたかを知ることができます。
法律や判例の調査は、契約書の条項が法的に有効であるかを確認するだけでなく、潜在的なリスクを特定しそれらを回避するための条項を追加する際にも役立ちます。例えば、特定の業界で問題となった判例を参考に、同様の問題を防ぐための条項を盛り込むことができます。
さらに、法改正や新しい判例の動向を把握することで最新の法的要件に適合した契約書を作成でき、事業の運用に役立ちます。
契約書作成に必要な形式と手続き
契約書作成には適切な形式と手続きが不可欠です。
まず契約書の基本構成として、表題(タイトル)、前文(当事者の特定、契約に合意する旨)、契約条項本文を記載し、後文として契約条項を確認した旨や締結日、署名欄を設けます。
契約書の信頼性を高めるため、契約当事者のサインや捺印を行うのが一般的です。
- 収入印紙
- 作成通数
- 記名、署名押印
- 契印、割印、捨印
- 契約書の保管
- 未成年との契約等に注意する
以下、それぞれの意味やポイントを簡単に解説していきます。
収入印紙の貼付が必要なケース
収入印紙の貼付は、契約書作成時に見落としがちな手続きの一つです。
書面で契約書を作成する場合、契約の種類に応じて課税文書に該当すると印紙税がかかります。
例えば、売買契約や請負契約書等は契約金額に応じた収入印紙が必要となります。継続取引の基本契約書や会社合併契約書のように、定額で定められているものもあります。
書面を使用しない電子契約の場合には収入印紙は不要になるため、節約のためにもしばしば電子契約が利用されます。
なお、印紙が無くても契約が無効にはなりません。ただし本来の金額より多く懈怠料金が追徴されるケースや故意に貼らなかった場合には脱税にあたり刑事罰が科される可能性もあります。
契約形態に応じた適切な対応が求められます。
作成通数
契約書は、当事者の人数分だけ作成するのが一般的です。
簡易的な契約や、基本契約を前提とした発注書等の場合には管理コスト等を考慮してコピーのみで良しとする場合もあります。
また収入印紙が必要な場合には契約書の通数分印紙税がかかることになるため、節税のために1通しか作成しない場合も多いです。
記名・署名押印
契約書を書面で作成する場合、記名・署名と押印を行うことで証拠としての効力が強くなる効果があります。なお『署名』とは自書のことを言います。『記名』はスタンプや印刷されたものを含みます。
原則として契約は当事者の合意のみで成立し、契約書はその合意内容を証明する証拠文書です。(保証契約等は書面による契約が効力の要件とされます。)
認印や実印についても契約の効力そのものには影響ありませんが、争いになった際に証拠として認められやすいかが問題になります。
訴訟になった場合、民事訴訟法では以下のとおり規定されています。
(文書の成立)
第二百二十八条文書は、その成立が真正であることを証明しなければならない。
(2、3、5項省略)
4私文書は、本人又はその代理人の署名又は押印があるときは、真正に成立したものと推定する。
本条のとおり、原則として署名または押印があれば契約は成立しているという推定が働くため、契約の不成立を主張したい場合にはその主張を行う側が不成立とする証拠を提出しなければなりません。
実印は自治体に登録している印鑑であり基本的に本人しか持ちえないものであるため、実印で押印してある契約書については、さらに強い証拠となります(二段の推定)。
また、偽造や変造を防止するためには白紙に安易に印鑑を押さない等の配慮も必要です。白紙に印鑑を試し打ちした場合には、基本的にはその場で破り捨てるなどの対処を行うのが一般的です。
電子契約の普及により押印の必要性が減少していますが、紙の契約書を使用する場合は、これらの押印方法を正しく理解し、適切に行うことが契約の有効性を高める上で重要です。
契印・割印・捨印など
契印とは、契約書が2枚以上にわたる場合に、つなぎ目に押印することで一つなぎの文書であることを示す方法です。
例えば、A4サイズの書面を2枚重ねて左端をホチキスで止めて書面を作成する場合、1ページ目をめくって折り、両方の紙にまたぐように押印を行います。
書面が複数にわたる場合には、製本テープを利用して製本テープと本書にまたぐように押印する方法もあります。
割り印は、契約書を複数作成する場合に同一内容の書面であることを示すために捺印することを言います。紙面を重ねて少しだけずらし、両方の紙にまたぐように押印する方法が一般的です。
契印や割り印の方法も法律によって定められておらず、どちらの場合も当事者全員がそれぞれ重ならないように押印する方法が一般的です。
捨印は、契約書の修正の際に捺印するもので、方式については慣習によって運用されておりやはり法律上正しいとされる規定はありません。一般的には修正箇所に二重線をひいて修正し、その線に重なるように押印する方法などがあります。
契約書の保管
契約書の適切な保管は、互いの権利義務を保護してビジネス上のトラブルを防ぎ、法的証拠とするためにも不可欠です。
契約書は原本を紛失しないよう、耐火金庫や施錠可能なキャビネットで保管することが重要です。電子データの場合は保管場所等のコストは安くなりますが、暗号化やパスワード保護を施し、定期的にバックアップを取ることが推奨されます。
保管期間については、一般的な消滅時効にあわせて、契約終了後も10年間は保管することが望ましいとされています。
特に、税務関連の契約書は申告から7年間の保存が義務付けられていることに注意が必要です。
契約書は保管場所や管理責任者を明確にし、管理ルールを社内で共有しておくなどの対策が大切です。
未成年との契約等に注意する
契約書の記載事項が適法で正確であっても、契約の相手方などによって取消しされる可能性があるため、注意が必要です。
民法の第5条には次のとおり定められています。
(未成年者の法律行為)
第五条 未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない。ただし、単に権利を得、又は義務を免れる法律行為については、この限りでない。
2 前項の規定に反する法律行為は、取り消すことができる。
3 第一項の規定にかかわらず、法定代理人が目的を定めて処分を許した財産は、その目的の範囲内において、未成年者が自由に処分することができる。目的を定めないで処分を許した財産を処分するときも、同様とする。”
つまり未成年者との契約を有効とするには、契約書のほかに法定代理人(親権者など)の同意書を作成するなどして、必ず同意した証拠も得ておく必要があります。
そのほか意思能力の認められない状態の方や、成年被後見人などの制限行為能力者においては契約そのものが無効となるケースもあります。
契約の際は、契約書だけでない部分の有効要件にも気を配る必要があります。
契約書テンプレート・ひな形を活用する際の注意点
契約書のテンプレートやひな形を活用することは、効率的に契約書を作成する上で有効な手段です。テンプレートは契約によって多数の種類があり、オンラインでダウンロードできるものも多いです。
しかしテンプレートはあくまでも汎用的な内容であり、個別の取引や状況に合わせて適切にカスタマイズする必要があります。
例えば、管轄の裁判所は空欄か東京地方裁判所等を記載されているテンプレートが多いため、実際の合意に合わせて変更する必要があるでしょう。
さらに売買契約や業務委託契約など、契約種類によって使い分けが重要で、そのまま使用すると重要な条項の漏れや不適切な表現が残る可能性があります。また法改正や判例の変更によって、テンプレートの内容が最新の法律を網羅していない可能性もあります。
テンプレートを利用する際は最新の法律情報を確認し、基本的には専門家のアドバイスを受ける前提でドラフト作成のために利用することをおすすめします。
テンプレートを活用する際は、これらの点に注意しながら、自社の取引実態に合わせて慎重にカスタマイズすることが大切です。
AIを活用した契約書チェックサービスの注意点
AIを活用した契約書チェックサービスは、契約書作成プロセスを効率化し、人的ミスを減らすための有効なツールとして注目されています。
AIチェックサービスの主な利点は、大量の契約書を短時間で処理できること、一貫性のあるチェックが可能なことです。
ただし、AIによるリーガルチェックサービスには大きなリスクもあります。
AIはあくまで他のツールからインプットしたものをアウトプットするものであり、インターネットをクロールして集めた情報等は必ずしも高い正確性が担保されるものではありません。また、改正への対応も充分でないケースが多くなるでしょう。
そして、サービスそのものが弁護士法違反にあたる可能性が指摘されています。
法務省によってガイドラインが発表されており、弁護士が自己チェックを行う前提で利用する場合等は違法性がないとされますが、一般の方は基本的に避けるのが無難でしょう。
法務省 AI等を用いた契約書等関連業務支援サービスの提供と弁護士法第 72 条との関係について
AIツールは人間の専門知識を補完するものであり、完全に代替するものではないという認識を持つことが大切です。
専門家による契約書レビュー・リーガルチェックの必要性
契約書の作成は複雑で専門的な知識を要する作業であり、専門家によるレビューやリーガルチェックが非常に重要です。
法律の専門家である弁護士や司法書士にサポートを依頼することで、契約書の不備や法的リスクを最小限に抑えることができます。また、専門家によるリーガルチェックを受けたという事実が企業としての信頼度アップにも繋がります。
専門家への依頼には費用がかかりますが、将来的なリスクや損失を考えれば十分に価値のある投資といえます。契約書の不備が引き起こす可能性のある紛争や損失を考慮すると、専門家のチェックは必要不可欠な手順であると言えるでしょう。
弁護士へリーガルチェックを依頼する場合の費用相場
弁護士へリーガルチェックを依頼する場合の相場は、典型的な契約で通常3万円から15万円ほどとされています。
ただし業務や取引内容、業務規模などによって負担が大きく変わります。法人規模でないと対応できない案件もあるため数十万円から100万円を超える場合もあります。
案件によりますので、詳しくは直接相談して確認すると良いでしょう。
個別に契約書の注意点を確認したい場合には弁護士によるリーガルチェックが有効
契約書の注意点をさらに詳しく確認したい場合や、個別の注意事項についてアドバイスを得たい場合には、弁護士等によるリーガルチェックがおすすめです。
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2019年司法書士登録 補助者時代から複数の事務所勤務を経て2021年独立。同時にWebライター・記事監修業務を開始。 できるだけ一般的な表現での記事作成を心がけているます。法律関係の諸問題は、自己判断せずに専門家に相談することが解決への近道です。
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