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損害賠償責任とは?損害賠償請求の基本から事例までを徹底解説

損害賠償請求

2024.09.302024.11.13 更新

損害賠償責任とは?損害賠償請求の基本から事例までを徹底解説

この記事では、損害賠償の法律的な定義や種類、発生原因などを解説しています。

具体的な事例も交えて、損害賠償発生から請求の流れなどもわかりやすく解説していますので、ぜひ最後までお読みいただき、損害賠償問題について参考にしていただければ幸いです。

損害賠償とは

損害賠償とは、当事者の一方が故意または過失によって他人に損害を与えた際、相手方に対してその損害を補償することです。

身体、生命や有形の財物・所有物に損害があった場合に限られず、精神、自由、名誉等に侵害があった場合もについても対象となります。

損害賠償の法的な性質は、民法によって定められる民事責任であり、刑事責任とは別物です。

例えば他人を殴ってケガをさせた場合、民法上は損害賠償として治療費の支払い義務が生じるほか、刑事責任としては傷害等の罪に問われることになります。

損害賠償の性質は被害に対する補填であるため、原則として損害を受けた範囲で相手方に請求することになります。

損害賠償の種類と分類

損害賠償は大きく分類すると以下の2つが存在します。

  • 債務不履行による損害賠償
  • 不法行為による損害賠償

それぞれ詳しく解説していきます。

債務不履行による損害賠償

債務不履行とは、主に契約で定められる債務の責任を果たさない行為です。これによって損害を受けた相手方は、損害賠償を請求できます。

債務不履行には次の3種類のパターンがあり、それぞれ損害賠償の発生するタイミングや賠償金の計算等に違いがあります。

  • 履行遅滞(債務の履行が遅れること)
  • 履行不能(債務の履行が不能になること)
  • 不完全履行(債務を履行したが、不完全であること)

例えば、借金を返済日に返さない行為は履行遅滞に該当します。

この損害賠償は『遅延損害金』として、法で定められた範囲において額やパーセンテージ等をあらかじめ当事者で定めておくことも可能です。

債務不履行の場合は状況によって金銭による損害賠償のほか、契約の解除や追完請求、修補請求、代金の減額請求等の解決方法もあります。

不法行為による損害賠償

不法行為による損害賠償は、故意または過失によって他者に対して法に違反する行為を行い、その結果損害を与えた場合に発生します。

不法行為による損害賠償には、過失の有無や損害の程度などが考慮されます。

例えば、交通事故で当事者双方の車が破損した場合、双方に過失があればどちらも加害者かつ被害者の立場になります。この場合、過失の割合や実際の損害額を考慮し、話し合いや裁判等で損害賠償を定めていくことになります。

損害賠償と損失補償の違い

損害賠償と似た言葉で『損失補償』があります。

損失補償とは、国や地方公共団体などの公的権力によって私人が財産を特別に犠牲にした際に、公平のために行われる財産補償を言います。

例えば、道路拡幅のために土地の一部を県や市区町村に明け渡した場合に、それに見合った金銭が損失補償として支払われます。

損失補償は、損害賠償と法的な意味では全くの別物ですのでご注意ください。

金銭による賠償が原則

損害賠償の目的は被害者の損害を補填して可能な限り損害のなかった元の状態に戻すことであり、原則として金銭による賠償が行われます。

ただし、金銭以外の方法での賠償も考慮されることがあります。

例えば、新車を購入したがエンジンに重大な損傷があった場合に同一モデルの別の新車に交換するように請求するケースなどです。

損害賠償もひとつの債権・債務であるため、その弁済や履行方法について当事者が同意すれば変更も可能です。

賠償金の税務上の取り扱い

損害賠償金は、基本的に全て非課税です。

損害賠償はあくまで損失に対する補填金であり、事業や営業による対価の取得ではないためです。

ただし過去の事業収益の補填となる場合や必要経費の補填である場合など、事業収益と同視できるようなケースでは課税される場合もあるため注意が必要です。

賠償金の税務上の取り扱いは、個別の事例によって異なる場合があるため、税理士や専門家に相談するのがおすすめです。

損害賠償の発生原因と事例

損害賠償が発生する原因は様々ですが、実生活で発生しやすい以下の損害賠償の事例について紹介していきます。

  • 交通事故
  • 雇用関係における損害賠償
  • 所有者や管理者、製造者等の損害賠償
  • 債務不履行
  • 会社役員の任務懈怠責任

交通事故

交通事故が起こると、被害に応じて損害賠償が発生し、基本的には被害者が加害者から損害賠償を受け取ることができます。双方に過失がある場合には、その割合が考慮され賠償額が調整されます。

一口に損害賠償と言っても、交通事故の損害賠償は以下の例ように多くの種類があります。

  • 治療費
  • 薬代
  • 入通院費、交通費
  • 休業損害
  • 逸失利益
  • 休車損害
  • 代車費用
  • 慰謝料(入通院慰謝料、後遺障害慰謝料など)

ケガに対しての直接の治療費のほか、治療のための入通院費や交通費などの二次的な費用も損害賠償の範囲に含まれます。これらの費用も事故がなければ本来発生しなかったものと言えるためです。

そのほか、入通院や後遺障害があった場合にはその精神的苦痛の大きさに応じて慰謝料を請求できるケースがあります。

基本的に、加害者や加害者の保険会社から示談金として提示される金額は法的な基準より低い場合が多いため、交通事故被害にあった場合には早めに弁護士に相談するとよいでしょう。

雇用関係における損害賠償

雇用先で働いている場合、第三者との関係で損害賠償が発生する場合や従業員と会社の関係で損害賠償が発生するケースがあります

例えば、従業員が会社の備品を無断で私的に持ち帰って使用している場合には会社に対して不法な損害となるため賠償責任が発生します。

職場において上司からのパワハラやセクハラがあった場合は不法行為にあたり、慰謝料をが発生するケースがあります。これにより被害者が会社を休まざるを得なくなった場合には、休業中の給料を会社に請求できるケースもあります。

従業員が第三者に対して損害を与えた場合には雇用主である会社等が連帯して賠償責任を負うことがあり、これを使用者責任と言います。

所有者や管理者、製造者等の責任による損害賠償

損害賠償は、所有物や製造物から発生する場合があります

例えば自宅のブロック塀が崩れて歩行者がケガをした場合、ブロックの所有者が管理責任を問われます。賃貸住宅で同様の事故があった場合には、所有者(オーナー)の管理責任のほか、居住者(賃貸人)に対しても管理責任が問われるケースもあります。

また電化製品の不具合による発火事故等が発生した場合、製造メーカーに賠償責任が問われるケースもあります。

会社役員の任務懈怠責任

役員の任務懈怠に基づく損害賠償とは、会社の役員が自身の職務において責任を果たさずに会社に損害を与えた場合に負う賠償責任のことです。

役員と会社は原則として民法上の委任関係が成立し、善管な管理者の注意を持って会社の財産を管理し業務を遂行する責任があります。代表者はさらに忠実に業務を行う義務等を負います。

そのため、役員が法令や会社の規定に反して不適切な行為を行い、会社に損害を与えた場合や、役員が適切な監督を怠ったために従業員が不正行為を行ったケースでは、当該役員は会社に対して損害賠償責任を負う場合がます。

役員の任務懈怠に基づく損害賠償の要件や範囲は、具体的な事情や損害の程度によって異なります。

損害賠償と慰謝料の違い

慰謝料は、損害賠償の一種です。

他者から受けた損害に対する補償が損害賠償であり、そのうち身体的苦痛や精神的苦痛を受けた場合にその損害を金銭に換算して請求するものを慰謝料と呼びます。

また『示談金』も混同されやすいですが、示談金とは示談の際に定めた解決金の総称であり、名目としては慰謝料や治療費等の損害賠償金のほか、その他の金銭を含む場合があります。

慰謝料が発生する主なケース

慰謝料が発生する主なケースは以下の通りです。

  • 交通事故によるケガや死亡
  • 名誉毀損、プライバシー侵害
  • 労働問題(セクハラやパワハラなど)
  • 医療過誤によるケガや死亡

これらのケースでは、被害者が受けた肉体的・精神的苦痛を補償するために慰謝料が請求できます。

慰謝料の金額は、具体的な損害の程度や被害者の状況、加害者の責任などを考慮して決定されます。

ただし慰謝料は相場が難しく、加害者側からおよそ低額の解決金が提示される場合もあります。

一度同意して受け取ってしまうとあとから覆すことが困難になるため、慰謝料を請求できるケースや、請求できるかどうか判断しにくいようなケースでは、早めに弁護士に相談して対応するとよいでしょう。

損害賠償責任の範囲

損害賠償は発生した損害に対する補填という性質であるため、原則として損害の全てが責任範囲になります。

例えば交通事故でケガをしてやむを得ず仕事から離れるようなケースでは、ケガの治療費のほか、本来仕事で得られたであろう収入等も損害賠償の範囲に含まれます。

反対に、一般的に予測できない事情によって損害が大きくなってしまった場合には賠償の範囲から除かれるケースもあります。

例えば高価な美術品等を一般の車に載せていて交通事故にあった場合、一般的には他の運転者からはそうした高価なものの運搬は予想しづらい事情であるため、被害者は美術品価格の全額までは損害賠償請求できない可能性が高くなります

争いになった際に判断が難しい場合には、最終的に裁判で決着をつけることになります。

契約上の損害賠償条項の影響

損害賠償条項とは、契約当事者間で事前に損害賠償に関する規定を定めることを言います。

損害賠償の予定としては、遅延損害金の定めや、契約の一方的な解約があった際の解約金を定めるなどです。

例えば旅館やホテル等の予約を直前にキャンセルすると、現実の損害の範囲は食事を用意した材料費や人件費、その他の経費等が損害賠償の範囲になりますが、これを詳細に計算すると計算自体の負担も大きくて現実的ではありません。

そのため『キャンセル料』等の名目で、損害賠償の料金を一律で定めておく方法が採用されます。

このように、あらかじめ当事者間で損害賠償についての対応を定めて合意することも可能です。

ただし法外なキャンセル料やどちらか一方に明らかに不利な損害賠償条項は、公序良俗に違反するものとして認められない可能性が高くなります

損害賠償条項を設定する際は、不測の損害を受けないよう注意が必要です。

損害賠償請求の方法

損害賠償を相手方に請求し、現実の支払いを求めるには、次の方法があります。

  • 請求
  • 交渉(和解)
  • 調停
  • 訴訟
  • 仲裁合意

請求の前提として、損害金の具体的な計算が必要です。

車や家の外壁等の物損の被害であれば、基本的には修理の見積もりを取る方法があります。なお、修理を先行して事後に請求を行おうとすると、被害の状況や相手方の加害との因果関係が不明になって請求が難しくなるケースがあるため注意が必要です。

以下、手続きの流れを簡単に解説していきます。

請求

手続きはまず、内容証明郵便にて相手方に対して損害賠償を求める旨の通知を行うのが一般的です。

この請求によって支払いが行われると手続きは終了しますが、そうでない場合には示談交渉や裁判所への訴えなどで請求手続きを進めていきます

交渉(和解)

損害賠償請求の通知後、損害賠償の金額や支払い方法、過失割合などについて相手方と交渉します。

交渉がまとまれば示談書を作成して互いに署名押印等を行い、定めた内容にしたがって損害賠償が支払われれば手続きが終了になります。

相手方に弁護士や保険会社がついている場合、個人での交渉はどうしても不利になるケースが多いため弁護士に依頼するタイミングと言えるでしょう

示談交渉が決裂した場合は、以下で解説する裁判等の手続きで解決を目指すことになります。

調停

調停とは示談交渉がうまくいかなかった場合の裁判手続の一つです。

事件に無関係の調停委員が、双方の話を順番に聞き和解案を提示します。最終的に当事者双方が和解案に合意すれば調停が成立し話し合いが終了します。

調停は一方が話している間に相手方は待合室で待機する形で進められますので、双方が向かい合って言い合うことはありません。

調停が行われる場所は一般にイメージされる法廷ではなく、調停室という部屋にて非公開で行われます。

調停は裁判所への出廷が必要になる上、必ずしも成立するとは限らないのがデメリットです。不成立の場合は訴訟の手続きに移行することがあります。

訴訟

示談や民事調停が成立しなかった場合、全面的な争いである訴訟手続での解決を目指します。

訴訟においては証拠を整理し、法律の条文を照らし合わせて主張の根拠を明確にする必要があります。

基本的には弁護士に依頼して進めることになるでしょう。

仲裁合意

仲裁合意とは「解決を第三者に委ねること」を当事者間で合意する契約を言います。

仲裁は、裁判による仲裁か一般の仲裁機関による裁判外仲裁手続を利用する方法が一般的です。

仲裁は結果が予想しにくい上に一方に有利な判断になっても覆せないため、比較的リスクが高い方法と言えます。

損害賠償金の計算方法

  • 般的な損害賠償金の計算方法は以下の通りです。
  • 具体的な損害を算出
  • 過失相殺を行う
  • 損失相殺を行う
  • 既払金を精算
  • 弁護士費用を加える
  • 遅延損害金を追加

具体的な損害を算出

初めに、具体的な損害額を算出します。例えば、交通事故においては治療費、入通院費、休業損害や慰謝料等を計算します。

治療費や入通院費など実費で計算できるものと、日当の額×日数のように一定の計算式に基づいて計算する費用などがあります。

そのほか慰謝料などの計算も必要であるため、難しい場合には迷わず弁護士に依頼するのが無難です

過失相殺を行う

発生した損害について当事者の双方に過失がある場合には、過失の割合に応じて賠償額を調整します

被害者における被害額が500万円で過失が1割の場合、50万円を引いた450万円が請求額として残ります。

損益相殺を行う

損益相殺とは、同種の保険等で重複受領にならないように損害金を調整することです。

例えば勤務中にケガをして療養が必要な場合、労災保険による休業補償か健康保険による傷病手当についてはいずれか一方を選択して受け取ることになります。

既払金の精算

請求する損害賠償金のうち、既に受け取った金額がある場合は差し引いて計算する必要があります。

例として、交通事故の場合は不法行為による損害賠償であるため、法律上はケガをさせた瞬間から遅延損害金が発生します。そのため治療完了後に全ての治療費を支払おうとすると遅延損害金が大きくなってしまいます。

こうした遅延損害金の加算を回避するため、治療のたびに治療費を支払ったり、治療費を予想して一定額を先払いしたりするケースがあります。

このように前払いした金額は、最終的な損害金の計算の際に差し引くなどの調整が必要です。

弁護士費用を加える

弁護士費用は損害が発生しなければ支払う必要のなかった費用であり、損害賠償の対象に含まれます

基本的には加害者への請求に含まれますが、敗訴等の場合には相手方に負担させることができないケースもある点で注意が必要です。

なお自動車の任意保険や火災保険等で『弁護士費用特約』が利用できる場合があります。

弁護士費用特約とは、交通事故等があった際に一定額を上限として弁護士費用を保険会社が負担してくれる特約を言います

特約への加入があれば弁護士費用を心配する必要はありませんので、保険加入の際は特約加入の有無を確認し、加入しておくとよいでしょう。

既に各種保険へ加入済みの方は、特約への加入があるか確認しておきましょう。その他、各種費用を考慮して最終的に相手方に請求する金額を確定します。

損害賠償請求の際に注意すべきポイント

損害賠償請求を行う際は、以下のポイントに注意しましょう。

  • 証拠を残しておく
  • 相手方に損害賠償金の支払い能力がない場合がある
  • 相手方が提示した賠償金額が相場より低い場合がある。
  • 時効を確認する

以下、一つずつ解説していきます。

証拠を残しておく

損害賠償請求を成功させるためには、証拠収集が欠かせません。

証拠となる資料や情報を集めることで相手方に対して説得力を持った交渉ができ、裁判の際の主張も認められやすくなり賠償額に影響します

証拠は書類や写真などの物的証拠のほか、通話記録や目撃者の証言など形式を問いません。基本的に証拠となりそうなものは廃棄せず、収集は早めに行うことが望ましいです。

判断が難しい場合にはすぐに弁護士に相談し、適切な方法で証拠を収集しましょう。

相手方に損害賠償金の支払い能力がない場合がある

加害者が支払い能力を持たない場合、せっかく裁判や調停で請求権が確定しても現実の回収が難しい場合があります

不動産等の財産がある場合や、給与の一部について、強制執行によって回収できる場合もありますが、そうでない場合は分割払いの合意等をとりつけるなど、どうにか回収方法を探ることになります。

いずれの方法も賠償金全額を確実に回収できるとは限りませんが、適切な対応をとることで少しでもプラスの結果に繋がることがあります。

このように事案が複雑になりそうな場合には、弁護士への依頼が不可欠になるでしょう。

損害賠償請求の時効

損害賠償請求には時効があり、時効期間が経過すると賠償請求できなくなります。時効期間は損害賠償の発生原因によって異なり、具体的には以下のとおりです。

  • 債務不履行による損害賠償 請求できる時から10年
  • 不法行為による損害賠償 被害および加害者を知ったときから3年または不法行為があったときから20年
  • 人の生命又は身体の侵害による損害賠償(債務不履行か不法行為かを問わない)被害および加害者を知ったときから5年または不法行為があったときから20年

交通事故でケガをした場合『人の生命または身体の侵害による損害賠償』にあたるため、交通事故から20年がひとつの時効期間になります。

例えば、ひき逃げ等のケースでは加害者がわからないためすぐに賠償請求できません。加害者を探している間に『5年』のカウントが開始されてしまうと被害者に不利なため『被害および加害者を知ってから』5年の請求可能期間がカウントされます。

また一時的に意識不明となり後日回復したような場合、意識がない間は被害があったことを把握できないため、やはりその間は5年の期間は進行されません。

損害賠償は弁護士に相談しよう

今回は、損害賠償について解説しました。損害賠償は、基本的に被害の補填であるため実費のみの請求等の場合は比較的簡単に請求が可能です。

しかし休業損害や逸失利益、慰謝料等が関係するケースでは、損害額の計算から困難な場合があるでしょう。

交通事故や労災事故等の場合、身体の治療をしつつ証拠の保全や相手方との交渉を同時に行わなければならない場合も多くなります。

相手方の示談金の提示に対して相場も分からずに同意してしまい、困ってしまうケースもあります。このような場合、まずは弁護士に相談して今後の方針やスケジュールを確認することをおすすめします。

早めに弁護士に相談することで速やかな証拠の保全が可能になり、精神的にも安心できるため冷静な判断が可能になるでしょう

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