会社譲渡契約書とは?事業譲渡との違いや契約書の記載事項・注意点を解説!
M&A・組織再編
2024.11.13 ー 2024.11.27 更新
会社譲渡は、会社そのものを他者に承継する手続きです。株式を全て譲渡することにより新オーナーは会社の経営権を得ます。しかし、会社譲渡に伴う契約書の作成には法的知識が求められるため、不安や疑問を抱えている方も多いのではないでしょうか。
本記事では、会社譲渡に必要な契約書の基本構成と、記載すべき重要な項目をわかりやすく解説します。また、他の事業承継手続きとの違いや会社譲渡で頻発する法的トラブルを防ぐためのポイントも整理してお伝えします。
会社譲渡を検討する皆様が安心して契約を進められるよう、本記事が役立てば幸いです。
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会社譲渡契約書の詳細を解説する前に、会社譲渡契約についての基礎知識を解説していきます。
会社を他者に譲りたい場合、会社譲渡(株式譲渡)のほかに、事業譲渡、会社合併、株式交換、株式移転等の手続きがありますので、簡単に違いを把握しておきましょう。
会社譲渡契約とは?
会社譲渡とは、会社の株式を全て譲渡することにより株主の地位を移転し、それによって会社そのものを譲渡する手続きです。一般的に、会社譲渡は株式譲渡と同じ意味の言葉として利用されており、本記事でも特に断りがない場合には同じ意味として扱っていきます。
会社譲渡の際は契約書の作成が必須となり、契約書においては当事者を特定し、株式数、譲渡対価、移転時期等を明確に記載する必要があります。
会社譲渡契約が必要とされる場面
会社譲渡契約は、主に以下のような状況で活用されます。
- 現オーナーが引退または他の事業を行うために現事業を手放す場面
- 新オーナーが事業拡大のために積極的に買収する場面
- 高齢化などによる引退によって後継者への事業承継を行う場面
- 経営難による再建を行う場面
譲渡したい側と譲り受けたい側の思惑が一致すると、事業承継の手法のひとつとして会社譲渡(株式譲渡)が行われることになります。
また、大きな負債を抱える会社であっても、企業再生や事業再構築の過程で会社譲渡が選択されることがあります。近年では、大手の中古自動車販売会社が経営難に陥り再建を図るためにほぼ無償での株式譲渡が行われるなどして話題になりました。
このように会社譲渡は無償でも可能でありグループ企業内での組織再編など、企業価値の最大化や経営効率の向上を目指して、さまざまな場面で会社譲渡が戦略的に活用されます。
会社譲渡、株式譲渡、事業譲渡、他のM&A手続きとの違い
一般的に、会社譲渡と株式譲渡はほぼ同じ意味で使われますが、実はどちらも会社法で定義される用語ではありません。
人によっては、例えば株式を手放さずに代表取締役の地位だけを他人に譲った場合にも『会社を譲渡した』と表現する場合もあるため、こうした認識の違いが起こらないよう確認することが重要です。
他の手続きとのおおまかな違いは以下のとおりです。
手続き | 内容 | 備考 |
会社譲渡 | 株式を譲渡することにより、オーナーシップのみを移転させる手続き。会社に対して従業員との雇用関係や・取引先等の契約関係はそのまま。 | 会社の経営権は旧株主から完全に離れる。株主総会への参加や配当等はなくなる。無償での譲渡も可能。 |
株式譲渡 | 会社譲渡とほぼ同じ意味 | 会社譲渡とほぼ同じ意味 |
事業譲渡 | 会社(株式)の所有、経営権はそのままで、事業の全部または一部のみを移転する手続き。事業の全部譲渡を行っても会社はハコとして残るため、新規事業を行うことも可能。 | 雇用契約や取引先との契約関係は、個別に承諾を取っての承継が必要。法人・個人事業主間を問わず利用できる手続き。 |
会社合併 | 会社同士が合併する手続き。契約関係や雇用関係は承継会社へ一括で引き継がれる。吸収された側の会社は消滅する。 | 取引・契約関係の承継については一括での承認手続きによる(債権者異議手続き)。会社法上の手続きであるため個人事業主との合併は不可。 |
会社分割 | 会社の一部を他の会社へ承継する手続き。分割契約で定めた内容に従って、雇用関係や資産・負債が一括で承継会社に引き継がれる。分割する側の会社は消滅せず、継続して営業可能。 | 取引・契約関係の承継については一括での承認手続きによる(債権者異議手続き)。会社法上の手続きであるため個人事業主との分割は不可。 |
株式交換 | 相手方会社の子会社となる手続き。子会社となる会社の株主は、交換的に相手方会社(親会社)の株式を取得する。 | 他の会社の傘下に入る。子会社となる会社の株主は、対価として親会社株式を取得するため、引き続き経営に関わりたい場合や配当を得たい場合などに利用される。 |
株式移転 | 新会社を設立し、その会社の子会社となる手続き | 商社や地方銀行の経営権統合、ホールディングス化・グループ化の際などに利用されるスキーム。 |
これらの違いを理解し、自社に合った選択を行うことが大切です。本記事では、引き続き会社譲渡(株式譲渡)について詳しく解説していきます。
会社譲渡契約書が必要な理由と法的効力
会社譲渡契約書は、企業の所有権や経営権を移転する重要な取引において不可欠な法的文書です。契約書は当事者間の合意を証明し、紛争が生じた際の重要な証拠となります。
会社譲渡契約においては譲渡対象となる資産や負債、従業員の処遇、知的財産権の移転などの詳細を規定します。これにより、譲渡後のトラブルを未然に防ぎ、スムーズな事業継続を可能にします。さらに契約書には競業避止義務や秘密保持義務などの条項も含まれることが多く、譲渡後の事業保護にも寄与します。
法的リスク管理の観点からも、会社譲渡契約書の存在は極めて重要です。適切に作成された契約書は、将来的な紛争を防ぎ、万が一の際の損害賠償請求の根拠となります。会社譲渡契約書は単なる形式的な書類ではなく、取引の安全性と確実性を担保する重要な法的ツールとなります。
契約書がない場合のリスク
会社譲渡において契約書を作成しないケースは基本的にありません。
契約書を作成しない場合、譲渡の条件や対価、範囲などが不明確となり、深刻なリスクが生じる可能性が高いためです。
例外的に家族会社において相続対策等で株式を少しずつ譲渡するようなケースもありますが、取引として会社譲渡を行う場合には契約書は不可欠なものと言えるでしょう。
会社譲渡契約書に記載すべき重要な項目
会社譲渡契約は、契約書で規定された前提条件を満たした場合に実行されるのが一般的です。契約から実行までは一定期間を要することになります。
契約においては表明保証条項や誓約条項を相互に規定しますが、違反についての補償等は一定の範囲で制限することが多くなります。
一般的に記載すべき条項は次の通りです。
- 株式譲渡の合意
- クロージング
- クロージングの前提条件
- 表明保証
- 誓約
- 補償
- 解除
- その他の一般条項
以下、各条項について詳しく解説していきます。
株式譲渡の合意
初めに、契約効力発生の要件として譲渡の合意を記載する必要があります。
契約は当事者名を明確に記載し譲渡対価を記載します。ただし会社の資産は日々の取引によって変動するため、契約日と譲渡実行日(クロージング日)においては会社資産が変わることが大半です。
そのため譲渡対価においては、基準日を設けて調整条項を設けることがあります。資産の変動を考慮しつつ対価の額を確定させる方法もあります。
クロージング
会社譲渡契約書には、クロージングとして当事者が行うことを記載します。
基本的には『買主が売主に譲渡対価を支払い、売主は引き換えに株主の権利を買主に移転する』という内容が土台になります。株券発行会社の場合は、株券の交付も条件に含めます。
また、株式譲渡の第三者対抗要件として株主名簿の書き換えが必要であるため、売主が記名押印済みの株主名義書き換え請求書も用意してもらうべきです。
クロージングの前提条件
前提条件とは、クロージング(譲渡の実行)を行うための条件を言います。
「この条件が満たされていなければ買いません」もしくは「売りません」といった条件を互いに出しあい、クロージング日までにクリアしていく流れとなります。
例えば、クロージング日までに株式を新規発行しないこと、従業員への残業代の未払いがある場合には支払いを済ませること、株式の譲渡について譲渡承認機関の承認を得ること、買い手側において資格・許認可等が必要な場合にはあらかじめ取得することなど、実際の状況に応じてさまざまなケースが考えられます。
表明保証
買主・売主に共通して相手方に表明保証してもらう事項を記載します。これは大まかに言うと「明示したこと以外に不良な部分はないですよね?」という確認です。
買主としては譲り受ける株式に関する事項や、対象会社に関する事項について売主に表明保証してもらう必要があります。
例えば、契約者が会社を代表して契約の締結権限を有することや、売主が知る限り会社経営に支障となる事由が存在しないことなどを保証します。
誓約
クロージングまでにはさまざまな条件をクリアしなければなりません。
しかし株式譲渡契約では契約当事者以外にも多くの人の行動が伴うため、全員がクロージングに向けて動くとも限りません。そのため、まずはクロージング条件をクリアする旨を誓約事項として記載します。
その他には、譲渡後に対象会社の従業員を引き抜かないことや、同種の事業を行わないこと、ブランド商品の商品名や店舗名を変更せずに営業を続けることなどを誓約させるケースもあります。
補償
契約において、想定外のリスクを回避するために補償の条項が設けられます。
表明保証、誓約条項に対する違反があった場合には金額の上限・下限を設けて補償対象となる損害範囲を限定したり、権利行使期間を設けたりするなどの対応が一般的です。
解除
クロージング条件の不成立や、期限オーバー、契約解除の条件を定めておきます。
解除は、クロージング前に限り認めることが一般的ですが、誓約事項への重大な違反などがあり株式譲渡に根本的な問題が生じる場合には争いになる可能性があります。
その他の一般事項
契約の一般条項として、秘密保持や準拠法、税や契約費用の負担、競業避止義務、争いになった際の合意管轄裁判所等を契約で定めておきます。
会社譲渡契約書の収入印紙について
会社譲渡(株式譲渡)契約書においては、原則として収入印紙は必要ありません。
ただし『本日、代金全額を受領した。』のように記載する場合には「受取書」として扱われるため、記載金額に応じて収入印紙を貼付する必要があります。
会社譲渡契約書テンプレート活用方法
会社譲渡契約書の作成の際は、インターネット上でもさまざまなテンプレートがダウンロード可能です。
ただしそのまま使用するのは適切な方法ではありません。クロージングの条件や表明保証については個別の状況に応じてオーダーメイドが必要になるケースがほとんどであるためです。
また、そもそも会社譲渡を選択すべきではないケースもあります。例えば事業の一部譲渡を行いたい場合に誤って株式譲渡契約を行ってしまった場合などは、会社の経営状況および資産に深刻なダメージを受ける可能性があります。
事業譲渡、M&A、会社合併等、個別の事情に適したスキームを選択するためにも、必ず専門家に相談して手続きを進めるようにしましょう。
会社譲渡契約書の作成で注意するべきポイント
会社譲渡契約書の作成には細心の注意が必要です。契約書を作成する前提として、実態上の目的が理想どおりに達成されるかが重要なポイントになります。
事例としては、和菓子の製造会社を会社譲渡してブランドを継続していってもらいたい場合、商品名を変更しないことや現在の職員を解雇しないこと、あるいは引き抜かないことなどを誓約させることが考えられます。
会社譲渡は、株式を全て譲渡することにより経営権を手放す手続きです。事業承継の方法として自分に合っているかをしっかりと確認して進めるようにしましょう。
契約書は専門家による作成およびチェックが強く推奨されます。契約項目を丁寧に作成し、一つひとつ丁寧に説明してくれる専門家を選ぶと良いでしょう。
専門家に相談するメリットとサポート内容
会社譲渡の契約書作成において、専門家に相談することは非常に重要です。
弁護士は契約書の内容を精査し、法的な観点から不備や問題点を指摘します。また、税理士は譲渡に伴う税務リスクを確認し、最適な税務戦略を提案します。
さらにデューデリジェンスを通じて、譲渡対象企業の財務状況や法的リスクを詳細に調査することで、潜在的な問題を事前に把握できます。
専門家との協力により、契約書の完成度が高まり、将来的なトラブルを未然に防ぐことができます。適切な相談先を選び専門家のサポートを受けることで、円滑かつ安全な会社譲渡を実現することができるでしょう。
各士業のサポート範囲は大まかに次のとおりです。
- 弁護士:契約書の作成・実体面でのリーガルチェック、手続き全般のサポート
- 司法書士:手続面でのリーガルチェック、登記手続きなど
- 税理士:税務面での相談など
いずれの専門家も、相談内容に応じて他の専門士業を紹介してくれるケースは多いです。
相談先に迷う場合には、まずは企業法務に強い弁護士への無料相談を利用すると良いでしょう。
会社譲渡契約書の作成手順
会社譲渡契約書の作成手順は、慎重かつ計画的に進める必要があります。まず、譲渡対象となる会社の詳細な情報を収集し、譲渡範囲を明確にします。
次に、譲渡価格や支払条件、譲渡日程などの基本的な取引条件を決定します。これらの情報をもとに、契約書の骨子を作成し、譲渡者と譲受者の双方で内容を確認します。
契約書には、譲渡対象の詳細な記述、譲渡価格とその支払方法、従業員の処遇、債務の引き継ぎ方法、競業避止義務などの重要事項を盛り込みます。また、公租公課の取り扱いや、契約不履行時の対応についても明記します。
作成した契約書案は、弁護士や税理士などの専門家に確認を依頼し、法的リスクや税務上の問題がないかチェックします。専門家からのアドバイスを反映させ、必要に応じて修正を加えます。最終的に、両者で合意した内容を正式な契約書として作成し、署名・捺印を行います。この過程を通じて、円滑かつ安全な会社譲渡の実現を目指します。
専門家と進める際のポイント
会社譲渡の契約書作成において専門家と協力することは、法的リスクを最小限に抑え、スムーズな譲渡を実現するために不可欠です。専門家との連携を効果的に進めるためのポイントをいくつか挙げます。
まず、弁護士や税理士などの専門家を早期に起用し、契約書の草案段階から関与してもらうことが重要です。これにより、法的な観点からの助言を得ながら、契約書の内容を精緻化できます。
次に、専門家に対して会社の現状や譲渡の目的を詳細に説明し、情報を共有することが大切です。これにより、専門家は会社の実情に即した適切なアドバイスを提供できます。また、専門家の助言を受けた際は、その内容を十分に理解し、必要に応じて質問や確認を行うことが重要です。
さらに、複数の専門家が関与する場合は、それぞれの役割分担を明確にし、情報共有を密に行うことで、効率的な協力体制を構築できます。最後に、専門家の助言を踏まえつつも、最終的な意思決定は経営者自身が行うことを忘れないようにしましょう。
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