事業承継は弁護士に相談すべき?依頼のタイミングと対応内容を実務目線で解説
事業承継・相続対策
2025.06.18 ー 2025.06.22 更新

事業承継は一生に何度も経験するものではなく、初めて直面する方がほとんどです。相続や株式の移転、契約書の整備など、法的な論点が多く絡み合うため、どこから手を付けるべきか迷う方も多いのではないでしょうか。
こうした場面で、弁護士に相談することでリスクを回避し、スムーズな承継を進められるケースは少なくありません。
この記事では、弁護士に相談すべきタイミングや実際に対応できる支援内容、事業承継を成功させるための法的ポイントをわかりやすく解説します。承継の準備に不安がある方は、ぜひ最後までご覧ください。
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事業承継とは、企業の経営権や資産を、現経営者から次の世代へ引き継ぐことです。単なる資産の移転にとどまらず、株式や不動産のほか、経営の意思決定や従業員との信頼関係といった“目に見えないもの”も引き継ぎの対象となります。
とくに中小企業の場合、経営者の存在そのものが会社の軸になっていることも少なくありません。だからこそ、進め方を間違えると、組織や業績に思わぬ影響が出てしまうこともあります。
おもな承継手法としては、親族内承継、社内承継、M&A(第三者承継)の3つがあります。それぞれに特徴や課題があり、企業の財務状況や後継者の有無、経営者の意向などを踏まえて、最適な方法を検討する必要があるでしょう。
事業承継で弁護士に相談すべきタイミングとは?

事業承継には、株式や不動産の引き継ぎ、契約関係の整理、親族間の調整など、法律の知識や専門的な判断が求められる場面が少なくありません。
とくに以下のような状況に当てはまる場合は、早い段階で弁護士に相談しておくと安心です。
- 株式や不動産など重要資産が含まれる場合
- 契約書・議事録・遺言など法的文書が必要な場合
- 親族・社内での利害調整が難しい場合
株式や不動産など重要資産が含まれる場合
事業承継において、株式や不動産のような重要資産の取り扱いが、企業の支配権や経営の安定性に深く関わります。とくに未上場企業の株式は、承継の方法を誤ると議決権が分散し、意思決定が滞るおそれがあります。
株式の承継では、後継者に経営権を移す方法として、以下の手段が検討されるのが一般的です。
- 生前贈与
- 譲渡契約
- 遺言による相続
これらの選択によって会社法や税務の取り扱いが異なるため、慎重な判断が求められます。ただし、各手段の詳細な検討には専門家の助言が必要です。
不動産や設備のような事業用資産についても、遺産分割などで使用に制限が生じる可能性があります。資産の特性と承継後の利用形態を見据えた準備が欠かせません。
弁護士に相談すれば、こうした資産の法的な課題について、整理の方向性や必要な手続きを含めて助言が得られます。問題を先送りにしない姿勢が、安心できる承継につながるでしょう。
契約書・議事録・遺言など法的文書が必要な場合
経営権や財産を次の世代に引き継ぐ際には、法的な裏付けとなる各種書類を適切に整えておく必要があります。代表的なものとしては、以下のような文書が挙げられます。
- 贈与契約
- 株式譲渡契約
- 退任や就任に伴う取締役会議事録
- 株主総会の議事録
- 事業譲渡契約書
これらの書類に不備があると、株主間の認識違いや承継後の税務リスクにつながるおそれがあるため、注意が必要です。取引先との契約名義の変更や、新たな契約締結が必要になる場面でも、形式の誤りや見落としがトラブルを招く可能性があります。
弁護士は、こうした文書の作成やチェックを通じて、承継に伴うリスクを下げる体制づくりを支援いたします。必要に応じて、他士業とも連携しながら、抜け漏れのない文書整備を進めることができるでしょう。
このようなケースに該当する場合は、以下の「事業譲渡契約書とは?重要ポイントと基本知識を徹底解説!」も合わせてご確認ください。

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親族・社内での利害調整が難しい場合
事業承継では、相続や承継時のタイミングでトラブルが起きることも少なくありません。とくに親族や社内の関係者間で利害が絡む場面では、感情的な対立に発展するおそれもあるでしょう。
たとえば、経営者が急逝した場合、相続手続きが進まず、会社の意思決定が滞るケースがあります。株式が複数の相続人に分散されると、経営権が不安定になり、株主間で意見が割れることもあります。
こうしたトラブルは、企業の存続だけでなく、従業員や取引先との信頼関係にも影響を及ぼしかねません。
弁護士は、遺言書の作成や相続に関わるリスクへの備え、万が一トラブルが起きた際の調停や訴訟対応まで、幅広く支援を行います。あらかじめ法的な整理を進めておくことで、経営者の意思を形にしやすくなり、思わぬ混乱を防ぎやすくなります。
相続や社内の利害調整は、企業経営における重要なリスクのひとつです。スムーズな承継を実現するうえでも、弁護士のサポートを活用する価値は十分にあるでしょう。
弁事業承継で弁護士が支援できる内容とは?

事業承継では、相続や契約の整理、法務対応など、専門的な知識が必要になる場面が少なくありません。弁護士に相談することで、企業の状況に応じた法的支援を受けられ、トラブルを未然に防ぐ体制を整えやすくなります。
ここでは、弁護士が事業承継で対応できる主な支援内容を4つの切り口で紹介します。
- 現状分析と法的課題の整理
- 事業承継計画の立案と書類化
- 遺言書・贈与契約・株式譲渡などの文書作成
- M&A・民事信託・後継者育成などの実務支援
現状分析と法的課題の整理
事業承継を進めるうえでは、まず会社の現状を正しく把握しておくことが欠かせません。法務や財務の面から課題を整理し、どこにリスクがあるのかを見極める作業が「現状分析」です。
具体的には、以下のような資料を確認します。
- 定款や登記謄本などの会社情報
- 株主名簿や株式の保有状況
- 契約書類の内容や有効性
- 経営者個人の資産と会社資産の区別状況
以上の情報をもとに、たとえば相続で株式が分散するリスクや、契約不備によるトラブルの可能性を見極めます。
あわせて、後継者候補の有無や、関係者の利害関係の整理も重要なポイントです。複数の相続人がいる場合や、特定の人物に経営権を集中させたい場合には、事前に法的な手当てを講じておく必要があります。
このような分析を通じて、承継に向けた課題の全体像が明らかになり、次に何をすべきかが具体的に見えてくるのです。
事業承継計画の立案と書類化
事業承継計画は、後継者へのスムーズな引き継ぎを実現するための「設計図」ともいえるものです。計画には、次のような内容が含まれます。
- 後継者の選定
- 株式や資産の承継方法
- 相続税や贈与税への対策
- 経営権の移転時期や具体的な手続きの整理
弁護士は、会社法や相続法に基づき、企業の状況に応じた承継スキームを整理します。後継者に対してどのタイミングで株式を譲渡すべきか、議決権の分配をどう設計するかといった点について、具体的な戦略を立案します。
さらに、計画の実行段階では契約書の作成や公正証書の整備、役員変更に伴う手続きなどもサポート可能です。弁護士が関与することで、法的リスクを最小限に抑えたうえで、承継を着実に進めやすくなります。
このように、事業承継計画の立案は、中長期的な視野で承継を見据え、経営の継続性を確保することが可能です。
遺言書・贈与契約・株式譲渡などの文書作成
実際に承継を実行する段階では、生前贈与・売買・遺言といった手法を組み合わせて進めるケースが多く見られます。それぞれに特徴があり、適切な手段を選ぶには法務・税務の双方を踏まえた判断が求められます。
たとえば、生前贈与は早期に経営権を移転できる一方で、贈与税の負担が発生するため、事前の資金計画が欠かせません。また、株式譲渡契約による売買では、譲渡価格の妥当性や資金調達の問題に注意が必要です。
遺言による承継は経営者の意思を反映しやすい方法ですが、遺留分に配慮しなければ相続トラブルを招きかねません。
弁護士は、こうした承継手法の選定を支援しつつ、以下のような実務対応を行います。
- 株主間契約の整備
- 種類株式の導入検討
- 議決権配分の調整
- 遺言書や信託契約の作成
- 遺留分への配慮を含む相続対策
さらに、税理士などの専門家と連携することで、法務と税務の両面からバランスの取れたスキームを設計できます。経営者の意向を反映しつつ、現実的かつ実行可能な承継プランをかたちにしていく構えです。
M&A・民事信託・後継者育成などのサポート
事業承継では、親族や従業員への引継ぎだけでなく、M&Aや民事信託といった手法を活用するケースも増えています。こうした手法は、第三者への承継や資産管理の透明化、承継計画の柔軟性確保の点で有効な選択肢です。
たとえば、M&Aによる承継では、基本合意書の締結やデューデリジェンス、株式譲渡契約の作成など、多段階にわたる法的手続きが求められます。
一方、民事信託を活用する場合は、財産の管理や承継の意思を反映した契約設計が必要です。信託財産の運用ルールも含め、細やかな準備が欠かせません。
こうした局面では、弁護士が契約の構築や法的整備を担い、事業の円滑な移行を後押しします。承継後の経営に混乱が生じないよう、土台から支えていく役割も大切です。
また、後継者が決まっていても、すぐに経営を任せられるとは限りません。後継者育成の過程では、役員登用や経営権移転のタイミングに関する法的助言、定款や株主間契約の整備もご支援可能です。
このように、多様な承継手法に対応し、最適な戦略を法的観点からサポートすることが、弁護士の役割と言えるでしょう。
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事業承継を弁護士に依頼するメリット

事業承継は後継者だけで進めることは可能ですが、さまざまなトラブルが発生するリスクがあります。一方で、弁護士に相談しておくことで、そうしたリスクに備えながら、スムーズな承継を目指すことができるでしょう。
ここでは、弁護士を活用することで得られる3つの主なメリットを紹介します。
- 法的な課題に対応できる
- 承継者の育成に時間を確保しやすくなる
- 相続税や贈与税の負担を抑えやすくなる
法的な課題に対応できる
事業承継では、株式の譲渡や資産の移転など、会社法・相続法・税法が交差します。一つの判断ミスが、後々の経営や税務に大きな影響を与えるため、法的な観点からの綿密な確認が欠かせません。
弁護士に相談することで、契約書や遺言書といった法的書類の整備を任せられるだけでなく、株主構成の整理や譲渡制限株式への対応など、将来的なトラブルを防ぐ体制を構築できます。
複雑な法的課題にも対応できる専門家がつくことで、経営者は安心して承継の準備を進めることができるようになるでしょう。
承継者の育成に時間を確保しやすくなる
法務対応を弁護士に任せることで、経営者は実務の引き継ぎや経営理念の継承、業務ノウハウの伝達などの後継者の育成に集中できるようになるのは、大きなメリットのひとつです。
とくに中小企業では、経営者の実務能力がそのまま会社の競争力となっていることも多く、後継者が独り立ちするまでには数年単位の時間が必要になるケースもあるでしょう。
弁護士が手続きを担うことで、経営者の負担が軽減され、余裕を持って後継者育成に取り組める体制が整いやすくなります。
結果として、承継後の混乱を防ぎ、経営の安定にもつながっていくでしょう。
相続税や贈与税の負担を抑えやすくなる
事業承継では、相続税や贈与税の負担が大きなネックになることがあります。
承継方法やタイミング、財産の評価額によって税額が大きく変動するため、事前の計画的な対策が欠かせません。
弁護士に依頼すれば、税理士などの専門家と連携しながら、事業承継税制の適用条件や贈与のタイミングなどを法的観点から整理できます。税務リスクを踏まえたスキームづくりにも関与し、無理のない形での承継を支援してくれます。
こうしたサポートにより、将来的なトラブルの予防にもつながり、税負担を抑えることができるでしょう。結果的に、事業資産を守りながら、スムーズな承継が実現できます。
事業承継に強い弁護士を選ぶポイント

事業承継を弁護士に依頼する場合、どの専門家に相談するかによって、計画の成否が大きく左右されます。相続・会社法・M&A・税務といった多分野にまたがるため、一般的な法律相談の延長では対応しきれない場面も多くあるでしょう。
ここでは、事業承継を安心して任せられる弁護士を選ぶための判断軸を3つに絞ってご紹介します。
- 事業承継・M&Aの対応実績があるか
- 法的スキルや交渉力に信頼がおけるか
- 経営者と信頼関係を築ける人物か
それぞれの選び方について解説していきます。
事業承継・M&Aの対応実績があるか
事業承継で弁護士を選ぶ際の判断基準として重視すべきなのが、事業承継やM&Aの対応実績があるかどうかです。
事業承継は、以下のように多岐にわたる法律分野が絡み合うため、一般的な法律相談の経験だけでは十分とはいえません。
- 相続
- 税務
- 会社法
- 労務
とくにM&Aを含む承継スキームでは、契約交渉やデューデリジェンス、株式譲渡契約の作成など、専門的かつ実務的な知識が求められます。
実績豊富な弁護士であれば、過去の事例に基づいたアドバイスが可能であり、リスクを見落とさずに、スムーズな承継に向けた最適な方針を提案できるでしょう。
弁護士を選ぶ際には、これまでに対応してきた事業承継やM&Aの件数、関与した業種などを確認し、専門性と現場対応力の両面から見極めることが重要です。
法的スキルや交渉力に信頼がおけるか
事業承継では、相続や株式譲渡、契約書の作成など、さまざまな法的論点が絡み合います。そのため、専門性の高い判断が求められる場面も少なくありません。法改正や判例の動向にも対応できる知見がなければ、承継後に法的リスクが生じるおそれもあります。
さらに、親族間の利害調整や株主間の意見対立のように、対人関係の調整が必要となる場面も想定されます。こうした局面では、冷静かつ的確に交渉を進められる弁護士が欠かせません。
事業承継の本来の目的は、円滑なバトンタッチを実現することにあり、感情や利害が対立しがちな状況をコントロールできる交渉力が、弁護士の価値を大きく左右します。
依頼前には調整力や対話力に長けているかどうかも確認しておくことが重要です。単なる手続き代行ではなく、経営者の意向に寄り添いながら並走できる戦略的パートナーを選ぶ視点が、後悔のない承継につながるはずです。
経営者と信頼関係を築ける人物か
事業承継は、法的な手続きにとどまらず、経営者の考えや価値観が色濃く反映される重要な意思決定の場面でもあります。だからこそ、弁護士との相性やコミュニケーションのしやすさも、見極めておきたい判断材料です。
法的知識があっても、一方通行の説明ばかりでは信頼関係は築けません。経営者の意向を正しくくみ取り、それに応じて柔軟に対応できるかどうかが、パートナー選びのカギになります。
また、事業承継では、後継者や他の専門家と連携する場面も多くあります。そのため、第三者とのやり取りをスムーズに進められる柔軟な対応力や、全体を調整する役割を担えるかどうかも確認しておきたいポイントです。
初回相談の際には、提案のわかりやすさや受け答えの丁寧さに加えて、自分の不安や希望を率直に話せる雰囲気かどうかもチェックしておくとよいでしょう。
弁護士に相談前に”これだけ”は押さえたい3つの準備

弁護士に事業承継を依頼する前に、企業側であらかじめ以下の3つの情報を整理しておくと、初回面談をより実のあるものにできます。
- 現状の経営・財務状況の整理
- 事業承継の希望条件と候補者の確認
- 必要書類や情報の準備
これらを事前に整理しておくことで、弁護士は企業の状況を的確に把握し、より具体的かつ実効性のあるアドバイスを行いやすくなります。
現状の経営・財務状況の整理
初回相談を有意義なものにするには、自社の経営状況を正確に伝えられるように準備しておくことが大切です。たとえば、以下のような情報を整理しておくとよいでしょう。
- 売上の推移
- 収益構造や利益率
- 主な取引先・顧客の構成
- 従業員数・人件費
- 借入金やリース契約の有無
こうした情報は、承継に伴うリスクやスキーム設計の基礎資料となります。現状を把握せずに相談に臨んでしまうと、検討が曖昧になりがちです。
企業の実情を明確にしたうえで相談を始めることが、スムーズな承継の第一歩となります。
事業承継の希望条件と候補者の確認
事業を誰に、いつ、どのような形で引き継ぐかという方向性は、事前に整理しておく必要があります。方針があいまいなままだと、弁護士の助言も一般論にとどまりやすく、承継の具体化が進みにくくなります。
相談前に、たとえば次のような点について考えておくとよいでしょう。
- 親族内、社内、第三者(M&A)など、承継の方向性
- 経営権と資産の引き継ぎ範囲(すべてか一部か)
- 一括承継か段階的な移行か
また、後継候補者がすでにいる場合は、その人物が引き継ぎに前向きか、経営に関する適性があるかどうかも確認しておくと安心です。
経営者自身の考えを整理しておくことで、弁護士との打ち合わせもより実践的な内容に進めやすくなります。
必要書類や情報の準備
事業承継の検討には、正確な法的・財務的情報が欠かせません。初回相談の段階で、以下の資料を準備しておくと、弁護士とのやり取りがスムーズになります。
区分 | 主な書類・情報 | 備考 |
必須 | ・登記事項証明書・定款・株主名簿(最新版)・直近の決算書/税務申告書・資産台帳 | 組織の構造や財務状況を把握するために必要です。 |
必要に応じて | ・不動産登記簿・借入契約書・リース契約書 | 資産や債務の状況により、確認が求められます。 |
資料に不備がある場合でも、弁護士が取得方法を案内してくれるケースもあります。ただし、事前に可能な範囲で整理しておくことで、対応のスピードや精度も高まりやすいでしょう。
事業承継の弁護士への相談から契約までの流れ

事業承継を弁護士に依頼する際は、いきなり契約を結ぶのではなく、相談・検討・契約・着手といったステップを順に踏むことが一般的です。初回相談では経営状況や希望条件を整理し、契約時には支援範囲や費用体系の確認が欠かせません。
契約締結後は、現状の法務・財務分析をもとに、実情に合った承継スキームを設計していく流れになります。各ステップで何を準備し、どこに注意を払うべきかを知っておくことで、安心して進めやすくなるでしょう。
- 初回相談の進め方と確認すべきこと
- 契約時に注意すべきポイント
- 着手後に行う現状分析と承継スキーム設計
それぞれの手順について解説していきます。
1.初回相談の進め方と確認すべきこと
まずは、初回相談で弁護士事務所を訪問します。この段階では、現経営者が抱える課題や承継に対する希望をヒアリングし、現状の整理と今後の対応方針を明確にしていきます。
初回相談では、以下の点について弁護士が基本的な方針を示すことが多いでしょう。
- どのような承継方法が考えられるか
- 想定されるリスクや障壁
- 法務・税務面で注意すべき点
また、弁護士との相性や対応姿勢を確認できる大切な機会です。専門知識だけでなく、経営者の意図をきちんとくみ取ってくれるかどうかを見極めておくと、今後の連携も進めやすくなるでしょう。
2.契約時に注意すべきポイント
初回相談を通じて、事業承継の課題や方向性がある程度見えてきたら、弁護士との契約内容を具体的に確認していく段階に進みます。
この時点では、弁護士がどこまで支援を行うか、どのような成果物が期待できるかどうかの業務範囲を文書で明確にしておくことが大切です。書面による取り決めを交わしておくことで、後々の行き違いやトラブルを避けやすくなります。
主に確認しておきたいポイントは以下のとおりです。
- 弁護士費用の体系
- 支払いのタイミングや条件
- 納品物の内容とスケジュール
- 業務範囲や途中変更に関する取り決め
事業承継は長期的な支援を要するケースも多く、業務範囲の不一致が後の支障につながるおそれがあります。契約前の段階で、双方の認識にずれがないか丁寧にすり合わせておくことが、実務をスムーズに進めるための土台となるでしょう。
3.着手後に伴う現状分析と承継スキーム設計
契約締結後は、弁護士が中心となって、企業の現状把握と今後の承継設計に着手します。
まず必要になるのが、会社の組織体制や株主構成、定款の内容、過去の契約書類や紛争履歴といった基礎情報の洗い出しです。これにより、法的なリスクや整理すべき課題がどこに潜んでいるのかを明確にしていきます。
あわせて行うのが、株式の評価です。特に非上場企業の場合は、評価方法によって課税額が大きく異なるため、税理士とも連携しながら、合理的な基準の選定を進めることになります。
さらに、財産調査も欠かせません。事業用不動産や設備、営業権、未回収の債権や借入など、承継対象となる資産・負債を網羅的に確認し、将来の経営にどう影響するかを見極めます。
こうした一連の分析を通じて、どのようなスキームで承継を進めるのが現実的か、判断の軸が整っていきます。弁護士は、法務面からのアプローチにとどまらず、実務面でも企業に即した提案を行いながら、スムーズな承継の実現を後押しするでしょう。
まとめ

事業承継は、企業の存続と発展に直結する大きな経営課題です。相続や株式の移転、税務対策のように複雑な問題が絡むため、法務・財務の両面から一貫性のある対応が求められます。
弁護士は、こうした各局面においてアドバイスと手続きの支援を行い、リスクの軽減や承継の円滑化に貢献するでしょう。とくに、民事信託やM&Aの活用、税負担の軽減策、後継者育成の支援など、多様化する承継手法への対応力は、専門家ならではの強みです。
事業承継は早い段階からの準備がその成否を分けます。信頼できる弁護士に相談し、将来を見据えた承継計画を立てることが、健全な事業承継を成功へと導くでしょう。
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