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秘密保持契約書(NDA)の書き方とは?作成手順やテンプレート、注意点、電子契約での締結方法を徹底解説!
契約書・リーガルチェック
2024.10.12 ー 2024.10.12 更新
この記事では、企業の方や個人事業主の方が、秘密情報を守り、リスクを防ぐために欠かせない秘密保持契約書(NDA)の書き方について、具体的な方法やステップを解説します。
この記事を読むことで、秘密保持契約書の基本的な書き方や構成が理解でき、押さえておくべきポイントが見つかるでしょう。また、よくある誤りや注意すべき事項についても解説しているため、初心者でも実際の契約に利用できる秘密保持契約書が書けるようになる内容となっています。
さらに、電子契約を利用した秘密保持契約の締結方法についても触れているため、最新の契約方法についても理解が深まります。ぜひ本記事を活用して、秘密保持契約書作成の知識を身につけてください。
秘密保持契約(NDA)とは?
秘密保持契約(NDA: Non-Disclosure Agreement)とは、取引先やパートナー間で共有される機密情報を第三者に漏洩しないことを約束する契約です。ビジネスにおいて、製品開発や新規プロジェクトなどで重要な情報が共有される場合、その情報が外部に漏れることで競争優位が失われるリスクがあります。このリスクを防ぐために、秘密保持契約が結ばれます。
具体例としては、企業間の取引や技術移転、業務委託、人材紹介など、業務上取り扱う機密情報に関する取引が挙げられます。
秘密保持契約では、以下の項目が記載されます。
- 対象となる情報の定義
- 秘密保持の期間
- 開示目的の明確化
- 違反時の責任と賠償
秘密保持契約には、具体的にどの情報が機密であるかを定義し、どの範囲で使用可能かが明記されます。また、契約には情報の取り扱い方、漏洩が発生した場合の責任範囲、契約期間などが記載されます。
秘密保持契約を適切に結ぶことで、企業間の信頼関係が築かれ、安全に情報を共有する環境が整います。
秘密保持契約書が必要な理由
秘密保持契約書が必要な理由は、主に以下の通りです。
- 信頼関係の構築
- 情報の漏洩防止
- 法的拘束力の確保
- 権利保護
- 事業展開の促進
これらの理由から、秘密保持契約書が必要とされるケースが多いです。契約で取り扱う情報は企業において重要であるため、秘密保持契約によって情報を外部に提出する際のリスクが保護されます。
秘密保持契約を締結するタイミング
秘密保持契約を締結するタイミングは、以下のような場合が挙げられます。
- 新規取引の開始
- 技術情報の開示
- 事業協力の検討
- M&A(合併・買収)交渉
- 業務委託
これらのタイミングにおいて、秘密保持契約を締結することで、情報の適切な取り扱いや円滑な事業展開が期待できます。企業情報の安全を確保する際は、上記のタイミングで秘密保持契約を締結するようにしましょう。
企業における秘密とは?
企業における秘密とは、企業活動において重要な役割を果たし、外部に漏れることで損害が生じる可能性のある情報です。秘密にはさまざまな種類があり、以下のようなものが挙げられます。
- 営業秘密:自社独自の技術やノウハウ、市場調査や顧客情報など
- 人事情報:従業員の個人情報や評価、給与など
- 財務情報:未公表の財務諸表、費用、投資計画など
これらの情報は企業にとって価値があり、競争相手や外部に知られることで営業上のリスクが高まります。そのため企業は、情報漏洩を防止し、秘密保持を徹底することが求められます。
企業間の取引では、自社の機密情報を提供し、他社の機密情報を獲得することになります。相手方の情報は絶対に漏洩しないように注意する一方で、同様の対応を相手にも求めます。
そのため、秘密保持契約は自社と他社双方にとって、情報を厳正に管理するという約束事を法的に結ぶ役割を果たすのです。
秘密保持義務と守秘義務の違い
秘密保持義務と似た意味で使われる言葉として、守秘義務があります。しかし、厳密に言うと秘密保持義務と守秘義務はことなります。
秘密保持義務は、企業間の取引や業務委託などの際に締結される秘密保持契約(NDA)に基づく義務で、契約によって明確に定義された秘密情報を保持・管理する義務です。
一方守秘義務は、従業員が企業の業務を遂行する上で知り得た秘密情報を、勤務中はもちろん退職後も守る義務を指します。これには、従業員が知り得る営業秘密や人事財務情報が含まれます。
秘密保持義務は主に契約に基づく義務であり、守秘義務は従業員に対して法律によって課されるという違いがあります。そのため、秘密保持義務の違反には契約上の賠償責任が発生し、守秘義務の違反には法的な責任が伴います。
秘密保持義務の範囲と適用
秘密保持義務の範囲は、秘密保持契約によって明示されます。契約では、秘密情報の定義や取り扱い方法、開示目的、保護期間、違反時の責任などが詳細に記載されます。
秘密保持義務は、企業間の取引や業務委託、技術提携、M&Aなど、情報交換が行われる際に適用されます。その際には、以下のポイントが記載されているかを契約書で確認する必要があります。
- 秘密情報の明確な定義
- 開示の目的や範囲の設定
- 開示者と受領者の明示
- 保護期間の設定
- 違反時の責任や損害賠償の規定
秘密保持義務に違反しているかどうかは、秘密保持契約書が証拠となります。秘密保持義務が適用されるかについても、秘密保持契約書が重要な役割を果たします。
秘密保持契約(NDA)のメリットと重要性
秘密保持契約を結ぶことで、以下のようなメリットが期待できます。
- 秘密情報の流出を防止できる
- 情報漏洩時に損害賠償を請求できる
- 秘密情報の範囲を指定できる
それぞれのメリットについて解説します。また、競合他社との契約時における秘密保持契約の重要性や、企業間と個人間での契約の違いについても紹介していきます。
秘密情報の流出を防止できる
秘密保持契約(NDA)を締結するメリットは、機密情報の流出を効果的に防止できることです。ビジネスの現場では、製品の開発情報や取引先情報、技術的ノウハウなど、競争上重要な機密が頻繁に共有されます。
これらの情報が第三者に漏洩すると、企業の競争優位が失われるだけでなく、場合によっては損害賠償請求や信頼失墜につながるリスクもあります。秘密保持契約は、これらのリスクを未然に防ぐための手段として有効です。
秘密保持契約には、どの情報が機密であるかを明確に定義し、その情報の取り扱いに関する具体的なルールを設定します。相手方はこの契約に基づき、機密情報を外部に開示したり、不正に利用したりすることを防ぐ義務を負います。
これにより、安心して機密情報を共有し、ビジネスの発展を図ることが可能になります。
情報漏洩時に損害賠償を請求できる
秘密保持契約によって、情報漏洩が発生した際に損害賠償を請求することが可能になります。
企業や個人が業務を進める中で、機密情報を共有することは避けられない場合が多く、その情報が漏洩した場合には、重大な損害を被る可能性があります。例えば、技術情報や顧客リストが競合他社に流出すれば、事業の競争力が大きく損なわれるでしょう。
このような状況を未然に防ぐため、秘密保持契約では漏洩が発生した場合の対応として損害賠償を請求する権利が明文化されます。契約により、相手方が機密情報を適切に取り扱わなかった場合に、被害者側がその損失額を法的に請求できる手段を確保することが可能です。
これにより、情報を共有する際のリスクが軽減され、契約当事者同士が安心してビジネスを進めることができる環境が整います。損害賠償の規定は、法的な抑止力を持つため、相手方にも情報管理の徹底を促す役割を果たします。
秘密情報の範囲を指定できる
秘密情報の範囲を明確に指定することは、不正使用や漏洩を防止する際に有効です。範囲指定の具体例としては、以下のようなものがあります。
- 事業戦略や営業情報
- 技術情報や特許に関する知識
- 顧客情報や個人情報
- 取引内容や契約条件など金銭に関わる情報
契約書に秘密情報の範囲を明確に記載することで、相手方がどの情報を保護すべきなのかを理解しやすくなり、リスクの軽減につながります。また、違反が発覚した場合における法的対応もスムーズに進めることができるでしょう。
競合他社との契約時の重要性
競合他社との契約時には、情報漏洩のリスクが高まるため、秘密情報の管理が特に重要です。このような状況では、両社の利害関係が絡むことから、秘密保持契約の締結が重要性を高めます。
契約書には、どの情報が保護対象であるかや、違反時の賠償責任や損害賠償額の設定、保護期間の明示など、詳細な内容を記載することが必要です。また、契約違反に対する対応として、準拠法や紛争解決方法も盛り込むことが望ましいでしょう。
競合他社との契約時には、情報の開示範囲や目的を厳密に制限し、相手方が適切な管理を行っているか確認することも重要です。このような取り組みが、互いの信頼構築に貢献し、良好なビジネス関係を築くために役立ちます。
企業と個人間での契約時の違い
秘密保持の企業間と個人間での契約時には、その対象となる秘密情報や管理方法に違いがあります。
例えば企業間での契約では、技術情報や営業情報など、企業活動に関連する様々な情報が対象となります。一方で個人間での契約では、主に個人情報やプライバシーに関わる情報が対象となります。
また、企業間では法人印や代表者の押印が求められることが多いですが、個人間では、電子サインやクリックによる締結が増えてきています。このような違いを理解し、契約書の作成や締結方法について慎重に対応することが重要です。
さらに、企業と個人での契約時には、法的な権利や義務に関する観点からも留意すべき点があります。企業との契約では、個人が法人と同等の責任を負うことがありますので、十分な注意が必要です。この点を踏まえ、適切な契約内容を検討し、安心して情報のやり取りができる状況を整えましょう。
秘密保持契約書の作成手順
秘密保持契約書の作成手順は、以下のように進めるのが基本です。
- 秘密保持契約書のひな型の確認
- 必要な項目の洗い出し
- 秘密保持契約書の作成
- 当事者間双方の確認と内容の合意
- 契約書の書名、記名押印
それぞれの手順について解説します。
秘密保持契約書のひな型を確認
秘密保持契約書の作成におけるひな型とは、契約書の基本的なフォーマットや構成を示したテンプレートのことで、これを元に個別の契約に必要な項目を追加・修正していきます。
ひな型を確認することで、契約書作成の基礎を理解し、漏れのない契約書を作成することが可能です。
一般的なひな型には、以下のような項目が含まれます。
- 契約の目的
- 機密情報の定義
- 情報の取り扱い方
- 責任範囲
- 契約期間
- 違反時の対応
これらの項目を確認し、自社の取引に合わせてカスタマイズすることが求められます。また、必要に応じて、弁護士や行政書士などの専門家に依頼してチェックを受けることで、契約の信頼性を高めることができます。
ひな型を活用することで、効率的に契約書を作成し、情報漏洩のリスクを最小限に抑えることが可能になります。
必要な項目の洗い出し
秘密保持契約書のひな型を確認したら、必要な項目を洗い出します。秘密保持契約に適切な項目を含めることで、契約内容が明確になり、後のトラブルを防ぐことができます。
秘密保持契約においては、以下が必要な項目です。
- 契約の目的
- 対象となる秘密情報の範囲
- 秘密情報の保護期間
- 情報の開示や使用に関する制限
- 情報の管理方法
- 違反時の損害賠償や解除条件
これらの項目を確認するために、ひな型や雛形を参考にしながら、自社の事業や取引に適した秘密保持契約書を作成していくことが重要です。また、作成された契約書は定期的に見直し、法改正や事業環境の変化に対応できるように更新していく必要があります。
秘密保持契約書の作成
項目について確認できたら、秘密保持契約書を作成していきます。
まずは、契約書の基本的な項目として、どの情報が秘密情報に該当するかを定義します。技術的な情報やビジネス戦略、顧客リストなどが秘密情報に含まれます。機密情報の使用範囲についても定め、その情報がどのような目的で使用されるかを明示します。
さらに、情報をどのように管理し、第三者への開示をどの程度制限するかについても規定します。契約書には、情報を不正に利用された場合の対応策や損害賠償の条項も含めることが一般的です。このように、契約書の法律的要件にも注目しながら、秘密保持契約書を作成していく必要があります。
双方が納得し、将来的なトラブルを避けるためには、弁護士や行政書士など専門家の助言を得ることが推奨されます。これにより、適切な法的保護が確保され、安心してビジネスを進めることが可能です。
当事者間双方の確認と内容の合意
契約締結時には、当事者間双方の確認と内容の合意が重要です。秘密保持契約には法的拘束力を持つため、双方が明確に合意した上で契約を結ぶことが求められます。
契約内容に誤解を生まないためには、以下の項目を明記する必要があります。
- 事業内容
- 業務範囲
- 期間
- 料金
- 署名
これらの項目を確認し、相手方と十分に話し合ってから契約を締結することで、後々のトラブルを防ぐことができます。また、契約書には作成年月日を記載しておくことで、期日に関するトラブルが発生しても対応しやすくなります。
契約書に署名、記名押印する
秘密保持契約書の作成が完了したら、署名、記名押印が行われます。これは契約書の法的効力を発生させるための重要な手続きであり、双方が契約内容に同意したことを明確に示します。署名や押印を行うことで、契約書に書かれた条項が正式に有効となり、当事者間での守秘義務が発生します。
契約書の最終内容を双方が確認し、誤りや不明点がないかを慎重にチェックします。その後、署名または記名押印を行いますが、日本では押印が一般的です。署名や押印をした書面は、双方が1部ずつ保管し、将来的なトラブルに備えます。
また、電子契約の場合には電子署名が使用されることもあります。電子署名も法的効力が認められているため、契約書の効力に問題はありません。署名、記名押印を適切に行うことで、契約が正式に成立し、法的な保護が確保されます。
秘密保持契約書(NDA)のテンプレートとひな型
秘密保持契約(NDA)の作成については、テンプレートやひな型を活用することで、手軽に適切な契約書を作成することができます。
秘密保持契約のテンプレートやひな型には、一般的に以下の項目が含まれます。
- 保護対象情報の定義
- 開示方法
- 利用範囲
- 保護期間
- 違反時の賠償責任
これらの項目を参考に、自社の事業や取引に合った内容を記載していきます。ただし、テンプレートやひな型をそのまま利用するのではなく、事業内容や取引相手によって適宜修正・調整が必要です。
ここでは、秘密保持契約書に活用するのが推奨されるひな型・テンプレートについて解説していきます。
無料で利用できるテンプレート
法律の知識や経験がなくても、無料で利用できる秘密保持契約のテンプレートを活用することで、簡単に契約書を作成できます。インターネット上には、多くの無料テンプレートが提供されており、それらを自分の目的に合わせてカスタマイズすることが可能です。
無料テンプレートを利用する際は、リスクや損害賠償範囲、保護期間、契約終了後の取り扱いなど、重要事項が明確に記載されているかどうかが重要です。また、電子署名や電子印鑑が利用できるものもあるため、遠隔地での締結がスムーズに行えます。
しかし、無料のテンプレートが自分の事業や取引に合った内容かどうかを確認することが必要です。場合によっては、弁護士や行政書士に相談することも検討しましょう。
個人間の秘密保持契約におけるNDAテンプレートの使い方
個人間で秘密保持契約を結ぶ場合も、専用のNDAテンプレートが活用できます。取引の当事者双方に法律の知識や契約書の作成経験があれば、テンプレートを利用した秘密保持契約が可能です。
注意点として、個人情報保護法など法律に関する知識も必要になるため、個人の知識・経験があるかないかが重要です。また、トラブルが発生するリスクも高くなるため、専門家に相談するのが安全と言えるでしょう。
経済産業省提供のNDAテンプレート
経済産業省では、企業や個人が安心して秘密保持契約を結ぶことができるよう、無料で利用できるNDAテンプレートを提供しています。このテンプレートは法律専門家によって作成されており、信頼性が高いのが特徴です。
経済産業省提供のNDAテンプレートは、多くの場面で活用されており、特許・技術情報や業務秘密、個人情報など、様々な情報の取り扱いに対応しています。また、書式や文言はわかりやすく、初心者でも理解しやすい構成になっています。
このテンプレートを利用する際についても、ひな型の内容をよく確認し、自分の事業や取引に合わせたカスタマイズが必要です。また、法的な問題が発生するリスクを減らすため、専門家に相談することも検討しましょう。
簡易版NDAテンプレートの特徴
簡易版NDAテンプレートとは、必要最低限の項目が記載されたひな型です。このテンプレートの特徴は以下の通りです。
- 分かりやすい記載がされていて、契約内容が明確
- 項目がシンプルで、記入箇所も少ないため、手軽に活用できる
- 法的知識がなくても理解しやすい書き方になっている
- 企業や個人間の取引で幅広く利用できる構成
ただし、簡易版NDAテンプレートはあくまで基本的な事項に限定されており、適用範囲や保護する情報の具体例など、特定のケースには対応できない場合があります。そのため、必要に応じてカスタマイズしなければいけないでしょう。
利用可能なテンプレートのカスタマイズ方法
秘密保持契約書のテンプレートを利用する際、カスタマイズによって特定の取引や状況に適した契約内容を整えることが重要です。
まず、テンプレートは一般的な構成で提供されているため、個々のビジネスや業界に応じて詳細を修正する必要があります。特に、守るべき機密情報の範囲や共有先の限定、情報の利用目的については具体的に記載することが求められます。
次に、情報を扱う期間や、契約が終了した後の取り扱いについても明確にします。これにより、契約終了後も機密情報の保護が確実になります。また、情報漏洩が発生した場合の責任や損害賠償の条項を、具体的な状況に合わせて加えることで、リスク管理を強化することが可能です。
このように、テンプレートをベースにカスタマイズすることで、実際のビジネスに合った効果的なNDAを作成することができます。
秘密保持契約書を作成する際のポイント
秘密保持契約書の作成においては、以下のポイントを押さえておくことが重要です。
- 秘密情報の範囲
- 目的外使用の禁止
- コピー・複製の取り扱い
- 契約の有効期間
- 違反時の措置・損害賠償
- 知的財産権の取り扱い
それぞれについて解説していきます。
秘密情報の範囲
秘密情報の範囲については、契約を締結する際に明確に設定することが重要です。企業間の取引であれば、以下のような項目が含まれます。
- 技術情報
- 営業戦略
- 顧客リスト
- 販売実績
秘密情報の範囲を明確にする理由は、双方が同じ認識を持つことで、不正使用や漏洩のリスクを軽減するためです。また、情報漏洩が起きた場合の損害賠償請求や法的責任の根拠となるため、万が一にも備えることが可能です。
また、秘密情報を範囲ごとに分類することも推奨されます。業務上必要な情報については社内で使用が許可される範囲を明確にし、重要度が高い情報については、特定の人のみがアクセス可能とするなど、アクセス制限を設けることが効果的です。
さらに、事例を参考にして、秘密情報の範囲を設定しておくべきでしょう。ただし、秘密情報が広すぎると、双方の業務が円滑に進まなくなることもあるので、適切な範囲を見極めることが大切です。
目的外使用の禁止
秘密保持契約書を作成する際に重要なポイントとなるのが、目的外使用の禁止です。これは、契約で定められた目的以外で機密情報を使用しないことを義務づける条項です。
ビジネスにおいて、共有される機密情報は特定のプロジェクトや取引に限定して利用されるべきものであり、目的外に使用されると情報漏洩や競争上の不利益を招く可能性があります。例えば、ある技術情報が共同開発のために提供された場合、その情報を他の事業や新しい取引に転用することは禁止されるべきです。
目的外使用の禁止を明確にすることで、機密情報が不正に利用されるリスクを防ぐことができ、信頼性のある取引関係を構築することが可能になります。これによって契約当事者間のトラブルを未然に防ぎ、機密性を保つための強固な枠組みを提供します。
コピー・複製の取り扱い
秘密保持契約書を作成する際、コピーや複製の取り扱いは情報の安全に関わるポイントです。機密情報が複製されることで漏洩リスクが増加するため、契約書にはその取り扱いに関する明確な規定を設ける必要があります。
具体的には、コピーやデジタル複製が許可される場合、その用途や保管方法を限定することが推奨されます。情報が必要な担当者にのみ提供されるよう制限をかけることや、複製物の廃棄方法を明記するのが効果的です。
また、複製された情報が社外に流出しないよう、デジタルデータの場合は暗号化やパスワード保護を義務付けることも有効です。コピーや複製の取り扱いに関するルールを詳細に定めることで、機密情報の漏洩を防ぎ、契約の信頼性を高めることができます。
契約の有効期間
契約の有効期間は、双方が合意した期間で設定されます。通常、契約締結日から数年間が一般的ですが、事業の性質や相手方との信頼関係によっては、短期間や長期間に設定されることもあります。
有効期間中であれば、サービス利用料金の支払いや、電子データの保護など、重要な事項が契約期間中に適切に管理されることが保証されます。また、契約期間が経過すれば、双方の義務が自動的に終了し、更新や新たな契約が必要になります。
契約の有効期間が終了しても、秘密保持義務については特定の期間継続されます。これにより、契約終了後も機密情報の漏洩リスクを防止できます。
秘密情報の返還・廃棄
秘密保持契約書を作成する際、秘密情報の返還・廃棄に関する取り決めは非常に重要です。契約期間が終了した際、もしくは取引が終わった際には、相手方が保有している秘密情報をどのように取り扱うかを明確にしておく必要があります。
具体的には、情報の返還方法や、デジタルデータの削除・廃棄の手順などを事前に取り決め、適切に管理することが求められます。
秘密情報の返還が適切に行われない場合、情報が漏洩するリスクが高まるため、契約書にその責任を明確に記載しておくことが必要です。また、廃棄が必要な場合には、証拠を提出する義務や、専門業者による安全な廃棄方法の指定なども有効です。
さらに、物理的な書類だけでなく、デジタルデータや複製物についても同様の取り扱いを求めることで、情報の漏洩リスクを最小限に抑えることができます。こうした秘密情報の返還・廃棄についても、秘密保持契約書に記載する必要があります。
違反時の措置・損害賠償
秘密保持契約書の作成においては、違反時の措置や損害賠償について明確に定めることが重要です。万が一、契約に違反して機密情報が漏洩した場合、迅速かつ適切に対応できるよう、具体的な措置を事前に契約書に盛り込む必要があります。
まず、違反が発生した際の責任範囲を明示し、どのような状況で違反とみなされるかを詳細に規定することがポイントです。さらに、機密情報が漏洩したことによる経済的損失や信用の低下など、被害が発生した際に求められる賠償額を具体的に設定しておくことで、万が一の際にスムーズな補償が行われます。
また、契約違反が故意か過失かによって賠償額が変わる場合もあるため、これらを明確に規定しておくべきです。これらの違反措置や損害賠償条項を明確にすることで、情報漏洩のリスクを軽減し、契約当事者間の信頼関係を保つことができます。
知的財産権の取り扱い
知的財産権は、企業や個人が保有する独自の技術や情報、デザイン、著作物などの権利を指します。知的財産権の取り扱いは、事業の成長と競争力向上に繋がるため、適切に保護される必要があります。
具体的には、以下のようなポイントがあります。
- 知的財産権を明確に把握し、適切な管理を行う
- 知的財産権の侵害や権利の悪用を防止するために、法的手続きや契約を活用する
- 独自の技術や情報を活用した商品開発やサービス提供による、他社との競争優位の確保
知的財産権の取り扱いにおいては、法律や契約に関する知識が不可欠です。特許や商標の取得、著作権の登録、秘密情報の保護など、各種権利の範囲や権利取得の方法を理解する必要があります。
また、知的財産権を取引や共同開発の際に適切に許諾し、不正利用や漏洩を防止するために、秘密保持契約や技術提携契約を締結するのが有効です。これらの契約書の作成や締結にあたっては、法律の専門家や専門サービスを利用するようにしましょう。
秘密保持契約書作成における注意点
秘密保持契約書の作成については、以下の点に注意する必要があります。
- 違反することのリスクを把握しておく
- ひな型をそのまま利用しない
- リーガルチェックを実施する
それぞれの注意点について解説します。また、個人情報保護法や不正競争防止法と秘密保持契約書の関係についても紹介していきます。
違反することのリスクを把握しておく
秘密保持契約書を作成する際には、違反することのリスクを十分に把握しておくことが非常に重要です。機密情報が漏洩した場合、以下のようなリスクが想定されます。
- 営業秘密の漏洩による競合他社に対する競争力の低下
- 契約違反による損害賠償や法的制裁
- 信頼関係が損なわれたことによるパートナーシップの崩壊
特に、競合他社に重要な技術やビジネス戦略が流出した場合、競争優位性が失われるだけでなく、取引先や顧客との信頼関係も大きく損なわれる恐れがあります。
法的な観点からも、秘密保持契約の違反は契約不履行として法的措置が取られることがあります。損害賠償請求や裁判による強制執行が行われる場合もあり、違反者には多額の賠償責任が発生することもあります。
これらのリスクをしっかりと認識した上で、契約の内容を精査することが必要です。違反のリスクを事前に把握し、適切な対策を講じることで、情報漏洩のリスクを最小限に抑えることが可能です。
ひな型をそのまま利用しない
契約書のひな型は便利ではありますが、そのまま利用するのではなく、必要に応じて内容を調整しなければいけません。無料で手に入るひな型は、自社の事業内容や取引内容に合致しない場合があるため、カスタマイズが必要です。
具体例として、自社が提供するサービスや商品が独自のものである場合、ひな型には盛り込まれていない条項が必要になることがあります。また、相手方の事業内容や要望によっても、ひな型では対応できない項目が存在することがあります。
また、情報の利用範囲や第三者への再開示に関する条項も、取引ごとに異なるため、契約内容をしっかりと見直す必要があります。法的責任や損害賠償に関する規定についても、ひな型のままでは自社のリスクに対応できない可能性があります。
したがって、ひな型はあくまで参考として使用し、自社の状況や取引相手との関係に合わせた契約書を作成することが重要です。適切にカスタマイズすることで、法的トラブルの回避やリスク管理が強化されます。
リーガルチェックを実施する
秘密保持契約書の作成プロセスにおいて、リーガルチェックを実施することは、法的トラブルを回避するために非常に重要です。リーガルチェックとは、契約書の内容が法的に適切であるかを確認する作業であり、弁護士や専門家によって行われます。
秘密保持契約書においては、機密情報の定義や情報の利用範囲、違反時の措置などが曖昧だと、情報漏洩が発生した際に適切な対応ができない可能性があります。リーガルチェックでは、これらの条項が実際の法律に基づいて正確に記載されているか、過不足なく設定されているかを確認します。
また、契約書が当事者双方にとって公平なものであるかどうかも評価されます。専門家によるリーガルチェックを通じて、契約書が法的に有効かつ実行可能なものとなり、企業間の信頼を強化する役割を果たします。
個人情報保護法との関係
個人情報保護法は、個人情報を適切に保護し、不正な取り扱いを防止することを目的とした法律です。秘密保持契約契約書に個人情報が含まれる場合、個人情報保護法が適用されます。
具体例として、企業が個人情報を取り扱う場合、個人情報保護法に従い、適切な管理や開示の対応が求められます。また、秘密保持契約契約書に個人情報が記載される場合、個人情報保護法に基づく適切な対応が必要です。これには、個人情報の目的や利用範囲の明確化、個人情報の取り扱いに関する規定の設定が含まれます。
秘密保持契約契約書に個人情報に関する条項を盛り込む際には、社内の法務担当や弁護士に相談することがおすすめです。これにより、法的なトラブルを防止し、適切な個人情報保護が実現できます。
不正競争防止法との関係
不正競争防止法は、企業の知的財産や営業秘密を守るための法律で、不正な方法による競争を禁じています。具体的には、技術情報や営業情報の不正取得、開示、使用を違反とし、損害賠償請求や刑事責任が生じることがあります。
秘密保持契約は不正競争防止法と密接に関連し、企業間で取引や協議を行う際に重要な役割を果たします。秘密情報の範囲や保護期間、違反時の対応などは、秘密保持契約契約書に明確に記載することが必要です。
不正競争防止法と秘密保持契約は、共に企業の知財や営業秘密を守るための重要な手段であり、適切な知識と対策が求められます。
電子契約を利用した秘密保持契約の締結
近年のIT技術の発達により、電子契約を利用した秘密保持契約の締結も可能となっています。電子契約では、クラウド上のサービスに登録することで、オンラインでの契約締結が可能になります。
紙媒体や印鑑を使用しないため、契約締結の効率化や書類管理の負担軽減が期待できます。ここでは、電子契約のメリットやセキュリティ、電子署名と電子印鑑の違い、電子契約の法的有効性や導入手順、注意点を解説します。
電子契約を使うメリット
電子契約を活用した契約締結のメリットは、以下の通りです。
- 手続きが迅速かつ簡単で、紙の書類の作成や郵送などが不要
- 印紙代が不要であり、経費の節約につながる
- 契約書の管理がデジタル化されるため、紛失や漏洩のリスク低減・管理が容易になる
- グローバルなビジネス環境に適応できる
以上のようなメリットから、電子契約は現代のビジネスシーンでますます重要性が高まっています。従来の紙媒体での契約で課題となっていた、書類の作成負担が大きく改善されることが期待されています。
電子契約のセキュリティ
電子契約においてセキュリティ対策は非常に重要です。クラウド上での管理においては個人情報や機密情報が漏洩するリスクがあるため、十分に対策しなければいけません。
セキュリティ対策として、以下が有効です。
- 適切な暗号化技術の使用
- 電子署名の活用
- アクセス権限の設定
- 定期的なセキュリティチェック
電子契約のセキュリティを強化することで、契約書が不正利用されるリスクを軽減し、ビジネスパートナーとの信頼関係を維持することができます。
電子署名と電子印鑑の違い
電子署名は、デジタルデータに署名者の同意や承認を証明する方法で、PKI(公開鍵基盤)技術を用いて証明書を発行し、安全性が確保されます。
一方、電子印鑑は、紙の印鑑をデジタル化したもので、画像データとして契約書に貼り付けることで使用されます。しかし、電子印鑑は本人確認のメカニズムがないため、セキュリティ面でリスクがあると言われています。
従って、電子契約においては、電子署名による本人確認が安心して利用できると言えるでしょう。
電子契約書の証拠としての法律的な有効性
電子契約書は、紙の契約書と同様の法律的な有効性を持ちます。日本の法律では、書面による契約と同様に電子文書による契約も認められているため、電子契約も有効です。
また、電子契約においては電子署名を用いることで、証拠としての有効性を維持することができます。電子署名は、署名者の本人確認やデータ改ざんの検知が可能であるため、紙の契約書と同等の証拠力が認められるとされています。
このことから、電子契約はビジネスの現場で法的な効力を発揮し、取引の安全性を高めることが期待されます。
電子契約導入の手順と注意点
電子契約を導入する際の手順としては、以下の通りです。
- 電子契約サービスの選択
- 契約書のテンプレートの選択
- テンプレートを基盤とした契約書作成
- 取引相手とのやり取り・交渉
- 契約内容の確認や修正
- 電子署名による契約締結
注意点としては、契約内容の正確さや電子署名のやり取り、データの保存方法に気を付けることが求められます。これらのポイントを押さえて導入すれば、電子契約がスムーズに進み、ビジネス効率が向上するでしょう。
まとめ
近年はIT技術が発展したことで、情報の漏洩や流出、拡散、悪用といったトラブルが発生しやすくなっています。こうした環境において企業間の機密情報を守るためには、秘密保持契約が不可欠です。
本記事でも解説したように、秘密保持契約書は書き方や作成手順があり、これが適切でないと有効性が失われてしまいます。そのため、テンプレートを活用したり、弁護士や法務担当者に作成やリーガルチェックを依頼するのがおすすめです。これによって、秘密保持契約書の有効性が確保され、企業間の安全を保護することが可能です。
また、電子契約による秘密保持契約の締結も進められています。セキュリティの課題をクリアできるのであれば、電子契約の導入も検討してみてください。より安全で、より効率的に秘密保持契約書を作成できるようになるでしょう。
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