契約書のリーガルチェックを社内で実施する方法とは?法務における重要性や流れ、契約書の種類、費用を徹底解説!
企業法務
2024.10.24 ー 2024.10.24 更新
リーガルチェックは、契約や規約の内容を法的に適切か確認する重要なプロセスです。特に社内でリーガルチェックが求められる場合、適切な対応を取ることで法的リスクを最小限に抑え、企業運営の安定を図ることができます。
この記事では、リーガルチェックを社内で行うための手順や必要なリソース、また外部に依頼する際の費用について、具体的に解説します。社内で効率的にリーガルチェックを実施し、法的トラブルを未然に防ぐための実用的な情報をお伝えするため、社内でのリーガルチェック実施を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。
リーガルチェックとは
リーガルチェックとは、契約書の内容が法的に問題ないかを確認するプロセスを指します。これは、契約書が法令に準拠していること、自社に不利益をもたらす条項が含まれていないことを確認するために行われます。
リーガルチェックを行うことで、法令違反を回避し、契約内容に関するリスクを最小限に抑えることができます。さらに、契約書を通じてビジネスの目的を正確に反映させることも可能になります。
そのため、法務担当者や弁護士によるリーガルチェックは、企業にとって欠かせない重要なステップとなっています。以下では、リーガルチェックを行う人や対象となる契約書について解説していきます。
リーガルチェックを行う人
リーガルチェックを行う際の担当者は、主に社内の法務担当者か外部の弁護士が適任とされています。法務担当者は会社内部の業務フローや取引先との関係性を深く理解しているため、迅速かつ的確なリーガルチェックが可能です。特に日常的な契約書であれば、法務担当が中心となり対応するケースが多いです。
一方、複雑な法的問題や大規模な取引に関わる契約書については、弁護士に依頼することが推奨されます。弁護士は最新の法令や判例に精通しており、法的リスクを最小限に抑えるノウハウを持っています。
どちらの人材を選ぶかは契約書の内容や重要度、リスクの大きさに応じて判断すべきです。自社の予算や依頼内容に応じた人材にリーガルチェックを依頼することで、より高い精度と効率性が期待できます。
リーガルチェックすべき契約書の例
リーガルチェックが必要な契約書として代表的なのは、以下の通りです。
- 秘密保持契約書
- 売買契約書
- 業務委託契約書
- 基本契約書
- ライセンス契約書
これらの書類は法的な効力があり、専門的な知識が必要になります。仮に記載内容に不備があると、自社もしくは相手方に不利益となる可能性があり、公平な取引ができなくなるリスクがあります。
こうしたトラブルを避けるためには、リーガルチェックが不可欠です。社内での実施か弁護士への依頼か、いずれにしても必要になるプロセスではあるため、避けて通ることはできません。
リーガルチェックが重要な理由
契約書のリーガルチェックが必要とされているのは、以下の理由があるからです。
- 法令違反を回避するため
- 自社に不利な条項を是正するため
- トラブルに発展した場合のリスクを減らすため
- 自社が実現したい取引内容を盛り込みビジネスを行いやすくするため
それぞれの理由について見ていきましょう。
理由1|法令違反を回避するため
法令に違反することは、企業にとって深刻なリスクを伴います。そのため、社内で行うリーガルチェックは、法令違反を回避することを最優先の目的とします。
もし法的に不適切な内容が含まれていた場合、後に重大な問題を引き起こす可能性があります。たとえば、消費者保護法や労働基準法などの違反があれば、行政からの是正勧告や罰金といった処分が下されることが考えられます。また、顧客や取引先とのトラブルも生じるリスクが高まります。
特に、取引に関する契約書に不備があると、支払い条件や納品スケジュール、品質保証における紛争が発生し、最悪の場合、訴訟に発展することもあります。これを防ぐために、契約書や規約の内容を法的な観点から正確に確認することが必要です。
具体的には、労働基準法や消費者保護法など、契約の種類ごとに異なる法令を確認し、契約書がそれに適合しているかを徹底的にチェックします。違反が見つかった場合は、契約内容に適切な修正を加えることで、法令に準拠した契約書を作成できます。これによって、法令違反による罰金や訴訟リスクを大幅に減少させることが可能です。
理由2|自社に不利な条項を是正するため
リーガルチェックが重要な理由の一つに、自社に不利な条項を是正することが挙げられます。契約書は法的拘束力を持つため、内容に不備や不公平な条項が含まれていると、後に大きなリスクを伴う可能性があります。
自社に不利な支払い条件や過剰な責任を負わされる条項が含まれている場合、それに従わざるを得ない状況が発生し、経済的損失や信頼の低下を招く恐れがあります。例えば、取引先の都合で一方的に契約を解除できるような条項があれば、自社のビジネスが突如として中断される危険性があります。
リーガルチェックによって、こうした不利な条項を早期に発見し、相手方との交渉で修正を求めることが可能です。結果として、適正な条件で契約を締結することができ、企業の利益や信用を守るための防御策として機能します。
理由3|トラブルに発展した際のリスクを減らすため
リーガルチェックが重要な理由の一つは、トラブルに発展した際のリスクを減らすためです。契約書や規約の内容が曖昧だったり、不適切な条項が含まれていた場合、後に発生する紛争やトラブルで不利な立場に立たされる可能性があります。
取引条件や責任の範囲が不明確な契約は、双方の解釈に違いが生じやすく、これが法的な争いに発展する原因となります。しかし、リーガルチェックを通じて契約の内容が法律に準拠し、かつ双方にとって公平かつ透明性が保たれるよう確認することで、こうしたトラブルを未然に防ぐことが可能です。
万が一紛争に発展した場合でも、適切にリーガルチェックを行った契約書が手元にあることで、企業は法的な立場を強固にすることができ、訴訟や和解において有利に交渉を進めることができます。結果として企業は無用なリスクを避け、長期的な信頼関係を築けるのです。
理由4|自社が実現したい取引内容を盛り込みビジネスを行いやすくするため
リーガルチェックが重要とされているのは、自社が実現したい取引内容を確実に契約書に反映させ、ビジネスを円滑に進めるのに貢献しているからです。契約書は単なる法的文書に留まらず、取引の成功や企業利益に直結する重要な役割を果たします。
具体的には、支払い条件や納期の設定、製品の仕様やサービスの内容など、自社が望む取引条件が正確に記載されているか確認することが必要です。もしこれが不十分であれば、後々のトラブルや紛争の原因となり、企業にとって大きな損失を招く可能性があります。
リーガルチェックを適切に行うことで、企業は取引先との誤解や摩擦を防ぎ、効率的で円滑なビジネスを展開できるのです。また、契約書に自社の利益を守る条項を盛り込むことにより、予期せぬリスクに備え、法的な安定性を確保することが可能になります。
リーガルチェックを社内で実施する場合の流れ
リーガルチェックを自社で実施する場合は、以下のような流れで進めるのが一般的です。
- リーガルチェックを受け付ける
- 契約書の全体像や論点を把握する
- 契約書に修正・コメントを入れ、担当部署へフィードバックする
- 相手方と交渉を行う
- 内容が確定したら契約書を締結する
それぞれの流れについて解説します。
流れ1|リーガルチェックを受け付ける
社内でリーガルリーガルチェックを受け付けるプロセスでは、対象となる契約書や文書を法務部門や法務担当者に正式に提出します。
ここで重要なのは、提出時に必要な情報が十分に揃っているかを確認することです。具体的には、契約書のドラフトや取引の背景・目的、相手方の情報、交渉の経緯などが含まれます。これらの情報が明確でないと、リーガルチェックが不十分になり、後で契約内容を見直す手間が増える可能性があります。
法務担当者は受け取った資料をもとに、どのような法的リスクが潜んでいるのかを精査し、自社に不利な条項や修正が必要な箇所を特定していきます。この受け付け段階をスムーズに行うことで、次のステップである具体的なチェック作業が効率的に進み、結果として企業全体の取引が迅速かつ適切に進められるようになります。
また、契約書の受け付け履歴や進捗状況を記録するための台帳やシステムを活用し、進行管理を徹底することも重要です。これにより、社内でのリーガルチェック業務を効率的に行う基盤を整えることが可能です。
流れ2|契約書の全体像や論点を把握する
リーガルチェックを受け付けたら、契約書の全体像や論点を把握する作業に取り掛かります。
まず契約書を読み込み、取引の目的や内容、関係する当事者の役割を理解することが必要です。この段階では、契約の基本構造を理解することが目的であり、個々の条項の詳細に入る前に全体的な流れをつかむことが求められます。これにより、契約の中でどの部分が自社にとって重要で、どのようなリスクが潜んでいるのかを判断できるようになります。
特に注意すべきは、以下の点です。
- 支払い条件
- 納期
- 損害賠償
- 契約解除の条件
これらの項目は自社に直接影響を与える主要な条項です。これらの論点が契約書のどこに含まれているかを把握し、後の詳細なチェックに備えることで、漏れや誤解を防ぐことができます。
契約書の全体像を理解することは、契約書の条項が一貫しているか、または相反する内容がないかを確認するための基盤にもなり、リーガルリスクを最小限に抑えるために欠かせないプロセスです。
流れ3|契約書に修正・コメントを入れ、担当部署へフィードバックする
契約書の内容を理解したら、リーガルチェックを行い、契約書に修正やコメントを入れて担当部署へフィードバックします。この段階では法務担当者が契約書の各条項を詳細に確認し、法的なリスクや不明確な部分を特定します。
例えば、取引条件が曖昧だったり、支払い方法や納期に関する条項が不利に働く可能性がある場合、それを修正して自社に有利な形にすることが求められます。また、知的財産権の扱いや、紛争解決方法に関する規定が十分かどうかもチェックの対象となります。修正が必要な場合、具体的な修正案や追加コメントを契約書に記載し、担当部署に伝達します。
このフィードバックを通じて、法務部門と業務担当者の間でコミュニケーションを図り、契約の内容を調整しつつ、自社の利益を最大化する契約内容を確立します。法務上の意見と法的観点を統合し、最終的に企業の目標を達成するためにも、このプロセスは不可欠です。
流れ4|相手方と交渉を行う
コメントやフィードバックの結果を反映させ、修正が完了した契約書を持って、相手方と交渉します。
契約書の条項に問題が見つかった場合や、自社の利益を守るために条件を変更する必要がある場合、相手方と直接話し合いを行います。この交渉では、契約内容を双方が納得できる形に調整し、ビジネスが円滑に進められるよう努めることが求められます。
支払い条件や納期の見直し、責任範囲やペナルティに関する条項の修正など、譲れない条件については具体的な変更を提案します。その際に、法律の専門知識に基づいて自社に不利益が生じないよう対応することが重要です。また、交渉の過程で自社の意図を明確に伝えるとともに、相手方の要望にも耳を傾け、相互に利益を生む形で合意を目指しやすくなります。
適切な交渉を通じて契約内容を調整することで、取引のリスクを減らし、安心してビジネスを進めることが可能になります。
流れ5|内容が確定したら契約書を締結する
相手方との交渉が成立したら、契約書の締結に進みます。契約書が最終的に合意された内容を正確に反映しているかどうかを確認し、双方の署名や捺印を通じて正式な合意を成立させます。
契約書の締結は単なる形式的なものではなく、法的効力を持たせるための重要な手順です。特に契約書の各条項が、自社の利益や意図した取引内容を正しく反映しているか、また法的に問題がないかを再確認することが必要です。
締結前には、社内の関係部署や法務部門と最終確認を行い、細かい部分の漏れや誤解がないか徹底的に確認することが求められます。電子契約システムを導入している場合、電子署名を利用して効率的に締結を行うことも可能です。
このプロセスをしっかりと踏むことで、双方が安心して取引を進められる土台が整い、後々の紛争やトラブルを未然に防ぐことができます。
リーガルチェックを弁護士に依頼する場合の流れ
ここまで社内でリーガルチェックを行う流れを解説しましたが、それ以外のリーガルチェック方法として弁護士に依頼するという選択肢があります。
弁護士にリーガルチェックを依頼する場合は、以下のような流れで進めます。
- チェックしてほしい契約書と申し送り事項を用意する
- 弁護士にリーガルチェックを依頼する
- チェック結果を確認する
- 相手方と交渉を行う
- 内容が確定したら契約書を締結する
それぞれの流れについて解説します。
流れ1|チェックしてほしい契約書と申し送り事項を用意する
リーガルチェックを弁護士に依頼する際、最初にチェックしてほしい契約書と申し送り事項を事前に用意することが必要です。契約書の内容はもちろん、自社が特に懸念しているポイントや取引で重視している条件を明確に伝えることで、弁護士がより的確にリーガルチェックを進められます。
例えば支払い条件や知的財産権の取り扱い、業務範囲の定義など、確認してほしい項目を具体的に伝えることが重要です。これにより、弁護士は契約書全体を精査するだけでなく、特に自社が気にしている部分に重点を置いたアドバイスを受けられるでしょう。
また、過去に同様の取引で発生したトラブルや、業界特有のリスクなども事前に伝えておくと、より精度の高いリーガルチェックが可能となります。
流れ2|弁護士にリーガルチェックを依頼する
契約書や申し送り事項を用意したら、弁護士にリーガルチェックを依頼します。弁護士に依頼する際には、特に注意して確認してほしいポイントや、自社が重視している取引条件を共有します。
弁護士は専門的な視点から、契約書に含まれる法的リスクや条項の適法性をチェックし、問題がある箇所や曖昧な表現を指摘します。この際、弁護士とのコミュニケーションが重要で、依頼内容が曖昧だと十分なチェックが行われない可能性があります。そのため、事前に確認すべき項目を明確に伝えると同時に、修正案や代替案の提案を受けることも大切です。
さらに、取引先との交渉において必要なアドバイスをもらいながら、最終的な契約書の形を整えることも同時進行で行います。これによって企業は法的リスクを最小限に抑えながら、円滑な取引を実現しやすくなります。
流れ3|チェック結果を確認する
弁護士によるリーガルチェックが終わったら、チェック結果を確認します。弁護士から提出された報告書や意見書には、契約書の法的リスクや改善すべき点が明示されています。これを精査し、自社の取引条件や意図が正しく反映されているか、また指摘されたリスクに対して適切な対応が取れるかを確認する必要があります。
弁護士が指摘するリスクには、曖昧な表現や一方に有利すぎる条項、知的財産権や損害賠償責任の問題など、法的トラブルにつながる可能性があるものが含まれます。こうした指摘をただ受け取るだけでなく、自社の事業戦略やビジネスニーズに照らし合わせながら、どのように修正するかを検討することが重要です。
チェック結果を契約書に反映させるかどうかは、弁護士と相談しながら修正案を取り入れることで、取引の安全性を確保します。この確認作業が不十分だと、せっかくのリーガルチェックが形だけのものになりかねないため、慎重な対応が求められます。
流れ4|相手方と交渉を行う
相手方と交渉を行う際には、まず自社の主張や条件を明確にし、それを基に交渉が進むべきです。そのためには、自社の利益を損なわないための重要なポイントをリストアップし、それを守るための譲れない線を引くことが必要です。
次に、相手方との話し合いで互いの要求を整理し、寛大な譲歩策を事前に考えておくことが重要です。交渉の場では冷静に、かつ相手の意見を尊重しつつ、自社の立場を理解してもらう努力が求められます。
リーガルチェックの視点からは、契約条項が法令に適合しているか、リスクが適切に分散されているか、自社に不利な条件が含まれていないかを再確認することが不可欠です。また、交渉の記録を詳細に取ることで、後日発生するかもしれないトラブルの防止に貢献します。
こうした相手方との交渉を通じて、双方が納得できる契約書を作成することができれば、良好な関係を維持しながら取引を進めることが可能です。
流れ5|内容が確定したら契約書を締結する
契約内容が確定した後は、契約書の締結をもってリーガルチェックが終了となります。弁護士が法的観点から契約書の内容を確認し、問題がないことを確認した後、双方が合意した条項に基づいて契約書を正式に締結します。
契約締結においては弁護士が関与しているため、法的リスクの軽減や自社の利益保護がより強化されている点が特徴です。契約書の締結には、従来の紙媒体での署名捺印や電子契約システムを活用した電子署名の方法があります。どの契約方法を選ぶかは、弁護士のアドバイスに基づき、適切な手続きで契約を締結することで、法的効力を確実に発揮させることが可能です。
また、締結前には最終的な内容確認を社内で行い、関係部署との共有や弁護士からの最終確認を経て、誤解や抜け漏れがないかを徹底するようにしましょう。弁護士のサポートにより、安心して契約を進め、取引の安定性が確保されます。
リーガルチェックを弁護士に依頼したときの費用
リーガルチェックを弁護士に依頼する際の費用は、依頼する弁護士や案件の複雑さによって大きく異なります。
一般的には、契約書1枚あたりのチェックにかかる費用は5万円から10万円程度が相場と言われています。しかし、契約書の内容やページ数、専門性によって費用は変動します。例えば、専門的かつ最新の事例を含む複雑な内容の契約書であれば、それ以上の費用がかかることもあります。
また、弁護士によっては時間単位での料金設定を行っている場合もあり、その場合は1時間あたり2万円から3万円程度が一般的です。ただし、初回の相談料は無料とする弁護士も多いため、まずは相談して見積もりを取得するのがおすすめです。
費用面での負担を軽減するためには、事前に契約書の必要な部分を明確にしてから依頼することや、複数の弁護士に見積もりを依頼することも有効です。また、継続的なリーガルチェックが必要な場合は、一定の月額料金で契約するサポートプランを提供している法律事務所もあるため、こちらも検討するようにしましょう。
リーガルチェックにおいて確認すべきポイント
契約書のリーガルチェックにおいては、以下の点をチェックする必要があります。
- 内容面
- 形式面
これらの項目は、リーガルチェックを適切に行うために欠かせないポイントです。それぞれのチェックポイントについて解説していきます。
内容面
内容面のリーガルチェックを社内で行う際には、契約書の各条項が自社の利益を適切に保護しているかを確認することが求められます。特に重要なのは、取引の目的に照らして契約内容が適合しているかどうかです。具体的には、以下の内容をチェックしましょう。
- 契約の対象物
- サービスの内容
- 提供期間
- 料金および支払い条件
- 契約解除の条件
次に、相手方の義務や責任についても綿密にチェックします。以下の点をチェックすると、自社が追うリスクや責任が過大でないか判断できます。
- 納品やサービス提供のタイミング
- 品質保証
- 秘密保持義務
さらに、紛争解決方法についても確認が必要です。契約書には通常、トラブルが発生した場合の対処方法や裁判所の管轄などが記されています。これらが自社にとって不利な内容でないかを確認し、必要があれば適切な修正を行います。
このように、契約書の内容面のリーガルチェックは、契約の全体像を把握し、個々の条項が理にかなっているかを詳細に検証することが求められます。以上の作業をしっかりと行うことで、契約締結後のトラブルを未然に防ぐことができます。
形式面
契約書の形式面でのリーガルチェックは、文書の外観や形式に関するポイントを確認する作業がメインです。
まず、タイトルや日付の正確性を確認します。契約書のタイトルが内容に即しているか、また正確な日付が記入されているかを確認します。次に、全ての当事者の名前と住所が正確に記載されているかをチェックします。これにより、契約が誰と結ばれるものか明確になります。
その後、ページ番号や付属書類の確認を行います。ページ番号が連番になっているか、全ての付属書類が揃っているかを確認し、抜けや重複がないかを確認します。最後に、署名欄と押印の有無を確認します。署名欄が正しい位置にあり、署名および押印が必要な箇所で確実に行われているかを確認します。
これらの形式面でのチェックを行うことで、契約書が正式なものとして認識され、後々のトラブルを未然に防ぐことができます。
リーガルチェックのデメリット
社内でリーガルチェックを実施する場合、以下のようなデメリットが懸念されます。
- コストがかかる
- 時間が必要
- 他の業務に支障が出る
- 法律に強い人材の確保が必須
それぞれのデメリットについて解説します。
コストがかかる
リーガルチェックを社内で行う際、最大のデメリットの一つとしてコストがかかる点が挙げられます。
リーガルチェックでは、法務担当者を要するための人件費が発生します。特に経験豊富な法務担当者を確保するためには、それ相応の給与を支払う必要があります。さらに、社内でリーガルチェックを行うためには継続的な教育や研修が欠かせません。最新の法改正や判例に対応できるようにするため、外部のセミナーや講座へ参加する費用も必要です。
また、複雑な契約書に対しては専門的な知識が求められるため、場合によっては外部の弁護士にコンサルティングを依頼することもあり、その際の費用も考慮しなければなりません。
このように、社内でリーガルチェックを行うことは一見するとコスト削減に思えるかもしれませんが、実際には多岐にわたる費用がかかるため、一概に安価とは言えないのです。
時間が必要
リーガルチェックを社内で行う際には、相応の時間が必要となります。
まず、契約書の全体を理解するための時間を確保することが必要です。法務担当者は契約書の内容を深く理解し、各条項におけるリスクや不備を把握する必要があります。その過程で、専門的な法的知識も求められるため、資料や法令の確認にも時間を割かなければなりません。
次に、契約書に対する修正やコメントを入れる作業も時間を要します。この段階では、各条項の法的適正さや、自社に不利な条項がないかを慎重に確認します。修正内容を担当部署にフィードバックすることも時間がかかる作業です。
最終的に、相手方との交渉もスムーズに進行するとは限らず、条件の調整や再交渉が発生する場合もあります。これらのプロセス全体を通じて、リーガルチェックには時間が必要不可欠であることが理解できるでしょう。
他の業務に支障が出る
リーガルチェックのデメリットの一つとして、他の業務に支障が出る可能性が挙げられます。特に社内でリーガルチェックを実施する場合、法務部門や関係部署が多忙である場合には、通常の業務と並行して法的確認を行うことで、時間やリソースの不足が発生しやすくなります。
これにより、他業務が遅延する可能性があり、結果としてビジネス全体の効率に悪影響を及ぼすことがあります。リーガルチェックには、契約内容の精査や関連法規の確認、リスクの評価といった専門的な作業が含まれるため、どうしても時間と手間がかかります。
また、各部署が連携しなければならず、コミュニケーション不足や情報共有の遅れも業務の進行に悪影響を与えることがあります。緊急性の高い契約案件がある場合、リーガルチェックを優先することで他の業務が後回しにされ、会社全体の業務バランスが崩れるリスクもあります。
このため、リソース管理や業務の優先順位を慎重に検討することが必要です。
法律に強い人材の確保が必須
リーガルチェックを社内で行う際のデメリットの一つは、法律に強い人材の確保が必須である点です。契約書や規約の法的な適切性を判断するには、専門的な知識が必要です。そのため、法律に詳しい社員や法務部門がなければ、正確なリーガルチェックを実施することが難しくなります。
特に、複雑な契約や国際取引に関わる場合、法的リスクの見落としが大きな損害をもたらす可能性があるため、法的な知識と経験を持つ人材の存在は欠かせません。しかし、そのような人材を採用し、社内に維持するにはコストがかかることも現実です。
さらに、法律は常に変化しており、最新の法改正に対応するための継続的な教育や情報収集も必要です。これにより、専門人材の育成や確保には時間と費用がかかるため、中小企業や法務部門が小規模な企業にとっては、大きな負担となる場合があります。結果として、外部の専門家に依頼する方が効率的であると考える企業も少なくありません。
リーガルチェックする契約書の例・種類
社内でリーガルチェックを行う際に確認が必要な契約書の種類は、主に以下のような書類があります。
- 秘密保持契約書
- 売買契約書
- 業務委託契約書
- 基本契約書
- ライセンス契約書
それぞれの契約書の概要について解説していきます。
秘密保持契約書
秘密保持契約書は、企業が業務上の重要な情報を外部と共有する際に、その情報の漏洩を防ぐために締結する契約書です。
社内でリーガルチェックを行う際には、まず秘密保持契約書の基本的な要素を確認する必要があります。具体的には、情報の定義、秘密保持の対象範囲および期間についてチェックします。情報の定義が曖昧であると、後々のトラブルの原因となるため、明確に規定されていることが重要です。
次に、秘密情報を取り扱う際の具体的な取り扱い方法や、情報漏洩が発生した場合の対処方法も確認します。情報漏洩が発生した際の罰則や損害賠償責任についても、具体的に記載されていることが望ましいです。さらに、契約の終了後も秘密保持義務が続く期間を確認し、必要に応じて修正を加えます。
以上のポイントを踏まえ、秘密保持契約書をリーガルチェックすることで、企業の情報資産を守るために適切な対応を取ることができます。
売買契約書
売買契約書のリーガルチェックは、主に売り手と買い手の権利義務を明確にし、取引リスクを最低限に抑えるために行います。
まず、売買契約書全体を読み込み、以下の主要な項目が網羅されているか確認します。
- 商品やサービスの詳細
- 価格
- 支払条件
- 納期
- 引渡し方法
特に価格に関する条項や支払条件は、自社に不利な内容が含まれていないか注意深くチェックします。また、納期や引渡し方法についても、実現可能なスケジュールかどうかを確認し、無理がないか検討します。
次に、所有権移転のタイミングやリスク移転の条件を明確にし、万一の商品欠陥や不履行に備えた条項が盛り込まれているか確認します。さらに、契約解除の条件や、紛争解決手段についても適切に規定されているかチェックします。
最終的に、各条項が法令に適合し、一貫性があるかどうかを確認し、必要に応じて担当部署にフィードバックし修正します。
業務委託契約書
業務委託契約書のリーガルチェックを社内で行う際には、細心の注意が必要です。
まず、契約書に記載されている業務内容が明確か確認します。業務の範囲が曖昧だと、後々のトラブルに発展する可能性が高まります。次に、報酬や支払い条件についても詳しく確認することが求められます。報酬が時間単位、仕事単位などで明確に示されているかをチェックし、不明確な点があれば修正を依頼します。
さらに、業務委託契約書に含まれる機密保持条項も重要項目の一つです。機密情報の範囲や取り扱い方法について、両者の認識が一致しているか確認することが不可欠です。また、契約解除の条件についても確認する必要があります。解除権の行使条件が公平であり、双方にとって納得のいくものであるかを確認し、必要に応じて修正を加えます。
最後に、紛争解決方法も見逃してはいけません。紛争が生じた場合の対応プロセスや裁判管轄を明確にしておくことで、万が一の際にスムーズに対応できるようにします。これらのポイントを押さえつつ、業務委託契約書をリーガルチェックすることで、リスクを最小限に抑えた取引が実現できます。
基本契約書
基本契約書のリーガルチェックを社内で行うことは、リスク管理の観点から非常に重要です。基本契約書は取引の基盤となるものであり、取引条件や義務、責任などが詳細に記載されています。そのため、契約書の内容を正確に理解し、法的なリスクを回避するためには、法務担当者による入念な確認が不可欠です。
基本契約書では、具体的な条項に対して特に注目する必要があります。例えば、契約期間の規定や更新条件、解除条項などは、取引の継続性や終了条件に直結するため、詳細に確認することが重要です。また、責任の範囲や損害賠償の規定についても、自社が不利にならないようにチェックする必要があります。
リーガルチェックにおいては、会社の政策や事業の目的に合わせて、特定の条項が自社の利益を最大限に保護しているかを確認することも大切です。さらに、相手方の義務や納入条件、品質保証の内容なども詳細に確認し、自社が不利益を被らないように策定することが求められます。
以上のポイントを踏まえた上で、社内のリーガルチェックを徹底することで、トラブルのリスクを事前に回避し、安定した取引関係を構築することが可能となります。
ライセンス契約書
ライセンス契約書は、知的財産権を他者に許諾するための重要な書類です。社内でリーガルチェックを行う際には、まずライセンスの範囲を明確にすることが重要です。
例えば、使用目的や地域、期間などを具体的に設定します。また、許諾される権利の範囲が過度に広がらないように注意が必要です。
次に、ライセンス料やロイヤリティの計算方法を明確にし、不明瞭な点がないようにします。さらに、契約終了時の取り扱いについても詳細に記載し、紛争の原因とならないよう予防します。守秘義務や再許諾の条件も明確にし、互いの権利と義務をバランスよく保つことが重要です。
最後に、契約違反時のペナルティや解決手段を具体的に盛り込むことで、万一のトラブルにも備えます。ライセンス契約書のリーガルチェックを社内できちんと実施することで、後のリスクを最小限に抑え、円滑な取引を実現します。
まとめ
社内でリーガルチェックを実施することで、法律関連の専門的な実務を依頼しやすくなり、スムーズな企業法務が可能になります。社内に精通した人材を育成することで、自社に特化した法務担当者を企業に常駐させ、社内用の法務サービスを利用できるようになります。
一方で、コストや時間がかかる、人材の確保や育成が必須であるデメリットもあり、実務レベルのリーガルチェックを実施するのは簡単ではありません。企業の体制や現状を考慮すると、単発で弁護士に依頼した方が良いケースもあるため、その点は慎重に検討する必要があります。
とはいえ、リーガルチェックの重要性やもたらすメリットを考えると、社内で実施できるシステムを構築するだけの価値はあると言えるでしょう。継続的な企業法務を実現したい方は、社内でリーガルチェックができるシステムを検討してみてください。
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