予防法務とは?定義と重要性、臨床法務・戦略法務との違いや、弁護士に依頼するメリットを解説
予防法務
2024.12.03 ー 2024.12.31 更新
予防法務とは、企業や組織が法的トラブルや紛争のリスクを事前に回避し円滑な事業運営を実現するための予防的な法務活動のことです。
具体的には契約書の作成や確認、社内規程の整備、コンプライアンス体制の構築などが含まれます。予防法務の質を上げるには、弁護士等の外部専門家の関与も重要になります。
こうした取り組みにより、法的トラブルを未然に防ぎ、企業価値の向上や信頼性の確保につながります。本記事では、臨床法務や戦略法務との違いなども解説していきます。
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予防法務とは、企業や個人事業主等が法的リスクを事前に回避し、円滑な事業運営を実現するための法務活動です。『予防』ですので問題が発生してから対処するのではなく、潜在的な法的問題を予測し、事前に対策を講じることに重点を置いています。
具体的には契約書の作成や専門家による確認、会社内部の規程の整備、コンプライアンス体制の構築などが予防法務の主な活動となります。これらの取り組みにより法令違反や訴訟リスクを最小限に抑えることで、企業の健全な成長につながります。
予防法務の重要性は、ビジネス環境の複雑化や法規制の厳格化、SNSの普及等に伴い近年ますます高まっています。
企業活動における予防法務の具体的な役割
企業活動における予防法務の具体的な役割は、法的リスクを事前に特定し対策を講じることで、企業の健全な経営を支援することです。
企業は法的リスクを適切に管理することで、信頼性の維持や経営の安定化を図ることができます。
また予防法務は単なるリスク回避だけでなく、企業の競争力強化にも寄与します。弁護士等の専門家から適切な助言を得ることで、安心して業務に集中できるようになり、新規事業の展開や業務の効率化にも貢献します。
予防法務は、企業の持続的成長と健全な経営を支える役割を果たすために重要な法務活動です。
予防法務が重要な理由
一般的に『予防』とはトラブルを減らすこと、およびトラブルが発生した際の解決を簡単にすることです。企業の予防法務についても同様のことが言えます。
起こり得る法的リスクを事前に特定し対策を講じることで、将来的な紛争や訴訟を回避し、企業の健全な発展を支えることになります。
また予防法務の実践によりコンプライアンス体制が強化され、企業の社会的信頼性が向上します。他社との契約において法的問題が発生した際には、損害賠償請求の手続きを容易にしたり、回収不能のリスクを軽減したりできるメリットもあります。
法的リスクを事前に把握することで、より戦略的な経営判断が可能となり、ビジネスチャンスの拡大にもつながります。このように、予防法務は企業の持続的成長と競争力強化に不可欠な要素となってます。
トラブル回避としての予防法務
予防法務によって法的トラブルを未然に防ぐことで、企業の安定性と持続可能性を高めることができます。
具体例として、契約書において損害賠償額の予定や支払い方法などを明確にしておく等の対応があります。これにより、相手方に債務不履行等があった場合には、具体的な損害計算を待たずに損害賠償を請求できる根拠となります。
また自社から他社に損害を与えた場合にも、契約に従って賠償することにより解決が容易になり、裁判になるリスクを軽減する効果もあります。
社外との関係だけでなく、従業員との雇用契約においても予防法務は重要です。労働法に反することなく労働条件を定めて明示および通知することで、法令違反や退職のリスクが軽減され、モチベーションのアップにもつながります。
予防法務の実践では潜在的なリスクを特定し、それに対する対策を講じることが求められます。
コンプライアンスの強化によるメリット
コンプライアンスの強化は、企業にとって多くのメリットをもたらします。
法令遵守の徹底は企業は社会的信頼を獲得し、ブランド価値の向上につながります。内部統制の強化は不正行為や法令違反のリスクを低減させるため、経営の安定性が高まります。
また透明性の高い経営は投資家からの信頼を得やすく、資金調達の円滑化や株価の安定化にもつながります。
顧客や取引先との良好な関係を構築できれば新たなビジネスチャンスの拡大にも結びつくでしょう。
さらに会社の内部における法令遵守の徹底は、訴訟や行政処分のリスクを低下させ、それに伴う損失や風評被害も回避できます。
その結果として長期的な企業価値の向上と持続可能な成長が期待できます。
予防法務と戦略法務・臨床法務の違い
予防法務と似た言葉で、戦略法務と臨床法務があります。
それぞれの意味は次のとおりです。
- 戦略法務:企業の経営戦略について法律違反がないかを確認し、積極的に企業価値を高める活動。
- 臨床法務:実際に発生した法的問題に対処する事後的な法務活動。
予防法務が事前のリスク回避に重点を置くのに対し、戦略法務は企業の成長戦略を支援し、臨床法務は問題解決についての法務活動を差します。
これらの法務活動は相互に補完し合う関係にあり、企業の法務部門は状況に応じてバランスよく取り組むことが求められます。
特に、予防法務は他の法務活動の基盤と言うべき重要な役割を果たしており、適切に実施することで企業の持続的な成長と安定した経営を支える土台とすることができます。
戦略法務との主な違い
予防法務が主にリスク回避や法令遵守に重点を置くのに対し、戦略法務は企業の成長戦略や競争力強化に焦点を当てます。
予防法務では法的リスクを事前に特定し、対策を講じることで問題の発生を未然に防ぐことを目的としています。一方、戦略法務は法的知識を活用して企業の経営戦略を支援し、新規事業の展開や M&A などの戦略的意思決定をサポートします。
また、予防法務は主に社内向けの活動が中心となりますが、戦略法務では外部環境や市場動向を分析して経営陣に助言を行うなど、より広範な視点が求められます。予防法務が守りの姿勢であるのに対し、戦略法務は攻めの姿勢と言えるでしょう。
企業の規模や業種によって、予防法務と戦略法務のバランスは異なります。成長期の企業では戦略法務の比重が高くなる傾向がありますが、安定期の企業では予防法務により力を入れる必要がが多くなるでしょう。
臨床法務との主な違い
臨床法務は既に発生した法的問題を解決するための法務活動です。
予防法務では潜在的なリスクを特定し、それらを回避するための措置を講じることを目的としています。これには契約書の綿密な作成、社内規程の整備、コンプライアンス体制の構築などが含まれます。一方、臨床法務は、訴訟や紛争が発生した際の対応策を講じる役割を担います。
予防法務は長期的なコスト削減と企業価値の向上につながりますが、臨床法務は既に発生したダメージの最小化を図ることが主な目的となります。
このように両者は企業の法務活動において補完的な役割を果たしており、バランスの取れた法務戦略には両方のアプローチが不可欠です。
予防法務の具体例
予防法務の具体例として、契約書作成とリーガルチェック、社内規程の整備、労務管理のサポートなどが挙げられます。
契約書作成では、取引の内容や条件を明確に定めることで将来的なトラブルを回避します。さらに専門家によるリーガルチェックを通じて法的リスクを事前に特定することで、より精度の高い対策を講じることができます。
社内規程の整備は従業員の行動指針を明確にし、コンプライアンス違反を防止します。労務管理においては、就業規則の適切な作成や更新、労働時間管理の徹底などが重要です。
これらの取り組みにより、企業は法的リスクを最小限に抑え、健全な事業運営を実現できます。
以下、一つずつさらに詳しく解説していきます。
契約書作成とリーガルチェック
契約書作成とリーガルチェックは、予防法務の中核を成す重要な取り組みです。適切な契約書を作成することで安心して契約を締結することができ、将来的なトラブルを回避することができます。
契約書作成時には取引の目的や条件、双方の権利と義務を明確に記載し、法的な観点から抜け漏れがないか確認することが重要です。著作権や知的財産権、秘密保持、競業避止など、トラブルになりやすい権利については特に注意が必要となるでしょう。
また予防法務の代表的な例として、違反の際の損害賠償の金額や計算方法等を定めておくことが挙げられます。これにより違反を行わないよう双方が意識する効果があり、トラブルがあった際にも契約条項のとおり解決しやすくなります。
さらにリーガルチェックの結果を社内で共有することで、法務知識の底上げを図ることも効果的です。これにより予防法務の意識が組織全体に浸透し、より強固な法務体制を構築できます。
契約書の作成やチェックには専門的な知識が必要なため、必要に応じて弁護士などの専門家に相談することが大切です。適切なリーガルチェックにより法的リスクを最小限に抑え、安定した取引関係を構築することができます。
特に新規事業や海外取引、継続的に必要な労働契約など、未知の領域に踏み込む際は、外部専門家の意見を積極的に取り入れる効果は大きくなるでしょう。
長期的な視点において契約書作成にかかる時間とコストを削減しつつ、法的リスクを最小限に抑えることができます。
社内規程・コンプライアンス体制の整備でトラブルを未然に防ぐ
社内規程の整備と見直しは、予防法務の重要な実践方法の一つです。
企業活動の基盤となる社内規程を適切に整備することで法的リスクを軽減し、組織の健全な運営を支援します。既存の規程は定期的に見直し、法改正や社会情勢の変化に対応させることで、予防の効果はより高くなります。
事業拡大や新たな取り組みを行う際には、関連する法令を調査して必要な規程を作成します。この過程では法務部門だけでなく、人事や経理など関連部署との連携が不可欠です。
規程の内容は、明確で理解しやすいものにすることが大切です。曖昧な表現や解釈の余地がある文言は避けて具体的な指針を示すようにしましょう。また従業員への周知徹底も重要で、研修や説明会を通じて規程の意義や遵守の必要性を伝えることでより高い効果が得られます。
定期的な見直しと更新のサイクルを確立することで、常に最新の法令に準拠した社内規程を維持できます。これによりコンプライアンス違反や法的トラブルのリスクを最小限に抑え、企業の持続的な成長を支える基盤となります。
労務管理における予防法務の活用
予防法務の観点から労務管理をサポートする取り組みは、従業員との良好な関係を維持しつつ、法的リスクを最小限に抑える重要な役割を果たします。
具体的な方法としては、就業条件および就業規則の適切な整備と定期的な見直しが挙げられます。労働法の改正や社会情勢の変化に応じて就業規則を適時更新することで、労使間のトラブルを未然に防ぐことができます。
労働契約書の作成と管理も重要です。報酬や業務時間などの雇用条件のほか、業務の内容や範囲を明確にすることで、将来的な紛争や退職のリスクを軽減できます。さらにハラスメント防止策の実施や労働時間管理の徹底など、従業員の健康と安全を守る取り組みも予防法務の一環です。
加えて、従業員への法令遵守教育や相談窓口の設置なども、労務リスクを軽減する上で重要な取り組みとなります。
これらの施策を総合的に実施することで、企業は労務面での法的リスクを最小化し、健全な職場環境の維持につながります。
適切に予防法務を行うには
予防法務を適切に行うには、システムの構築と外部専門家との連携が重要です。
契約書や社内規定について管理や保守のシステムを構築することで、文書の作成や保管・更新が容易になりリスク管理能力が向上します。
また従業員が相互管理できるよう社内の報告系統を整備することで、セクハラやパワハラの防止につながります。
外部専門家との連携強化
外部の法律専門家との連携強化も効果的です。弁護士や司法書士、社会保険労務士などの専門家と協力関係を築くことで、最新の法改正や判例に関する情報を迅速に入手し、適切な対応を取ることができます。
異なる専門分野の外部専門家と連携を行うと、さらに多角的な視点からリスク分析や対策立案が可能になります。
顧問契約によって定期的に法務相談や契約書のレビューを依頼すれば、自社の法務体制の弱点をより正確に把握し、改善することが可能になります。複雑な法的問題が発生した際には迅速かつ適切なアドバイスを得られるため、リスクの最小化につながります。
定期的に勉強会やマニュアルの整備を行えば社内で法務知識を共有することができ、組織全体の法務能力を底上げすることができます。
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2019年司法書士登録 補助者時代から複数の事務所勤務を経て2021年独立。同時にWebライター・記事監修業務を開始。 できるだけ一般的な表現での記事作成を心がけているます。法律関係の諸問題は、自己判断せずに専門家に相談することが解決への近道です。
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