裁判にかかる費用はどのくらい?訴訟費用と弁護士費用の違いと全体像を解説
訴訟・紛争解決
2024.12.25 ー 2024.12.31 更新
訴訟を起こす際には、様々な費用が発生します。これらを総称して「訴訟費用」と呼びます。
訴訟費用には、裁判所に納める手数料や書類作成費用、証人の旅費など、裁判に直接関わる費用が含まれます。また、弁護士に依頼する場合は、弁護士費用も重要な要素となります。
訴訟費用の全体像を把握することは、裁判に臨む上で非常に重要です。費用の内訳を理解することで、予算の見積もりや資金の準備が可能となり、不測の事態を防ぐことができます。
さらに、訴訟の結果によっては費用負担のルールが変わることもあるため、事前に費用の全体像を知っておくことは、リスク管理の観点からも欠かせません。本記事では、訴訟費用の内訳や仕組み、負担ルールなどについて詳しく解説していきます。
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訴訟の費用に含まれる主な項目は、裁判所に納付する費用と弁護士費用の二つに大別されます。一般的な内訳は次のとおりです。
裁判所に納付する費用
- 申立費用(裁判所手数料)
- 予納郵券
弁護士費用
- 相談料
- 着手金
- 成功報酬
- 実費
このほか、民事保全手続(仮差押え、仮処分)や強制執行を行う場合、別途費用が必要になります。
訴訟費用と弁護士費用の違い
訴訟費用と弁護士費用は、訴訟に関わる主要な費用ですが、その性質と支払い方法に違いがあります。訴訟費用は裁判所に直接支払う公的な費用で、訴訟の提起や進行に必要な経費を指します。
具体的には、訴状や準備書面の提出時に必要な印紙代、証人や鑑定人への日当、書類の謄写費用などが含まれます。これらの費用は法律で定められており、訴訟の種類や請求額によって金額が変動します。
一方、弁護士費用は弁護士との私的な契約に基づく報酬で、依頼者が直接弁護士に支払います。通常、着手金と報酬金の二段階で構成されており、事案の難易度や請求額に応じて決定されます。着手金は依頼時に支払い、報酬金は事件終結時に成果に応じて支払います。
弁護士費用は原則として裁判所を通さず弁護士と依頼者間で決定されるため、弁護士によって金額や支払い方法が異なる場合があります。
裁判費用は原則として敗訴した側が負担しますが、弁護士費用は各自が負担するのが一般的です。ただし、訴訟の結果によっては、相手方に弁護士費用の一部を請求できる場合もあります。
以下、内訳について簡単に解説していきます。
訴訟費用の内訳
訴訟費用は、主に申立費用と予納郵券費用があります。
保全手続や強制執行を行う際には、別途そのための申立て費用や郵券、あるいは登記費用等が必要になります。
申立て費用(裁判所手数料)
民事裁判の申し立てには、裁判所に納付する申し立て費用が必要です。
申立て費用は訴額によって以下の一覧のとおり定まります。
訴額 | 申立費用 |
100万円以下 | 10万円ごとに1,000円 |
100万円を超え500万円以下 | 20万円ごとに1,000円 |
500万円を超え1,000万円以下 | 50万円ごとに2,000円 |
1,000万円を超え1億円以下 | 100万円ごとに3,000円 |
1億円を超え50億円以下 | 500万円ごとに1万円 |
50億円を超える | 1,000万円ごとに1万円 |
離婚裁判や業務上の地位確認の裁判など、訴額が定まらないものについては、訴額のみなし規定などによって申し立て費用が定まります。例えば離婚のみの申し立てであれば手数料は1万3,000円となっており、慰謝料等の請求があればその請求額によって追加の手数料が発生します。
手数料は収入印紙で納めることになり、請求額が高くなるほど印紙代も高額になります。
予納郵券
予納郵券とは、郵便切手にかかる費用です。裁判の際は訴状の送達等が実費として必要となるため、その実費を予納します。
切手の費用は訴訟の状況によって追加で必要になることもあり、反対に余れば返還の対象になります。
訴訟申立ての際は、数千円を予納するのが一般的です。
仮差押えや強制執行を行う場合
本訴訟以外に、前提として仮差押えを行う場合や、訴訟後に強制執行を行う場合、別途手数料などが必要になります。
例えば強制執行には債権執行、不動産執行、動産執行があり、それぞれ必要な費用が変わります。不動産の強制執行は、競売手続きや収益執行に費用がかかるため申立て費用や郵券の他に80~200万円を予納する必要があります。
訴訟の提起前に不動産に仮差押えを行う場合には、請求額の0.4%の額を登記の登録免許税として納めなければなりません。
本訴以外に、こうした保全や強制執行を行う場合には追加費用も計算に入れる必要があるため注意が必要です。
弁護士費用
弁護士費用は、一般的には着手金と成功報酬、実費が必要で、事案によって大きく異なります。
相談を行った際は相談費用が必要ですが、無料相談を実施している事務所もあります。また、本依頼を行った際に相談費用を実質的に差し引く事務所もあります。
着手金の相場は、事案によって10万円~50万円ほどです。着手金は、裁判に必要な資料や証拠収集およびその実働の報酬にあたるお金であり、敗訴しても基本的に返還されません。
成功報酬は、回収額の10%~20%ほどが相場ですが、やはり事案や解決方法等によって変動します。裁判上の和解による解決等の場合、裁判所から弁護士費用が示されるケースもあります。
訴訟費用は原則として敗訴者が負担する
訴訟費用の負担ルールは、一般的に「敗訴者負担主義」が適用されます。これは、裁判で負けた側が訴訟にかかった費用を負担するという原則です。
その理由は、敗訴者側が訴訟の原因を作らなければ、訴訟自体が発生しなかったと考えられるためです。
ただし双方に責任があるケースも多く、敗訴者負担の原則は絶対的なものではありません。裁判所が事案の内容や当事者の経済状況などを考慮して、柔軟に適用することがあります。判決書には『訴訟費用は〇〇の負担とする。』等の文言が記載されます。
敗訴者負担の対象となる費用には、次のようなものがあります。
- 申立て費用、郵券費
- 官公署からの書類取り寄せ費用
これらの算出基準は『民事訴訟費用等に関する法律』によって詳細に定められています。
ただし、弁護士費用は原則として訴訟費用に含まれず、各自が負担することになります。
民事裁判にかかる弁護士報酬の相場を解説
民事裁判に係る弁護士報酬は自由化していますが、旧基準がひとつの目安として利用されています。
(旧)日本弁護士連合会報酬基準によると、着手金および報酬基準は次のとおりです。
着手金
経済的な利益の額 | 弁護士の着手金の額 |
300万円以下 | 経済的利益の8%(最低額は10万円) |
300万円を超え3,000万円以下 | 経済的利益の5%+9万円 |
3,000万円を超え3億円以下 | 経済的利益の3%+69万円 |
3億円を超える | 経済的利益の2%+369万円 |
報酬金
経済的な利益の額 | 弁護士の着手金の額 |
300万円以下 | 経済的利益の16% |
300万円を超え3,000万円以下 | 経済的利益の10%+18万円 |
3,000万円を超え3億円以下 | 経済的利益の6%+138万円 |
3億円を超える | 経済的利益の4%+738万円 |
これらの金額について、訴訟に至らず調停や示談等で終了した場合は3分の2に減額できるとされています。
ただし、これらはあくまで目安です。報酬基準は事務所によって違いますし、実働に応じて費用が加算される場合もあるため、具体的な費用は弁護士へ直接相談するのが良いでしょう。
費用負担を軽減する方法
訴訟費用の負担を軽減するためには、次のとおりいくつかの方法があります。
- 法テラスを利用する
- 費用について弁護士に相談する
- 弁護士費用特約を利用する
以下、一つずつ解説していきます。
法テラス(日本司法センター)を利用する
法テラス(日本司法支援センター)とは、国が設立した法的トラブル解決のための総合窓口です。
利用には資力要件など一定の条件がありますが法テラスの民事法律扶助制度を利用することで、一時的に費用の立て替えを受けられる可能性があります。
弁護士や司法書士との交渉により、着手金や報酬金の分割払い等が可能になる場合もあります。
法テラスのホームページによると、2024年3月現在までで187万件の建て替え事例があったと公表されています。
費用について弁護士に相談する
弁護士に直接相談することにより、その事務所で着手金を建て替えてくれる場合や、分割払いにしてくれるケースがあります。着手金が建て替えられた場合、成功報酬に加えて請求されるのが一般的です。
また、事案によっては着手金なしで動いてくれる弁護士もいます。
例えばもらい事故による損害賠償請求など、勝訴が充分に望める請求については着手金不要で進めてくれる事務所が多くなる傾向にあります。
弁護士保険、弁護士費用特約を利用する
月々の保険料を支払うことによって、トラブルの際の弁護士費用の全部または一部を補償してくれる保険サービスがあります。
加入から1カ月程度で保険が開始されるサービスが一般的ですが、加入していれば弁護士への依頼費用を抑えることができます。
また、自動車保険や火災保険などで提供される『弁護士費用特約』への加入があれば、一定額を条件として弁護士費用が補償されます。
こうした保険へ加入しておくことにより、弁護士費用が抑えられる場合があります。
訴訟をスムーズに進めるためのポイント
訴訟を円滑に進めるためには、裁判の流れを十分に理解することが大切です。
例えば、金銭を請求する際に財産隠しをされてしまっては訴訟で勝っても現実に強制執行が空振りになる可能性があります。このように、訴訟を提起する前に相手に予告せず、まずは保全手続きを行った方がよいケースもあります。
事前に弁護士と相談し、各段階での必要な手続きや提出書類について確認しておくことで、不安を軽減できます。また、証拠資料の収集と整理も重要です。関連する書類や証拠物を漏れなく準備し、時系列に沿って整理しておくことで、主張の裏付けがしやすくなります。
弁護士とのコミュニケーションを密に取り、冷静な態度を保つことでより効率的な解決につながる可能性があります。
まずは弁護士に相談し、現在の状況を法的な面から理解することで、訴訟をより円滑に進めることができ、結果的に時間と費用の節約にもつながります。
弁護士選びのチェックポイント
弁護士選びは訴訟の成否を左右する重要な要素です。
まずは専門性と実績等の情報を確認しましょう。離婚や債務整理、企業法務、労務など、特に専門性を持って活動する弁護士や法律事務所も多いため、専門性の高い事務所に解決を依頼することが特に重要になります。
全く専門分野の違う事務所に相談すると、見積もりが大きく異なる場合もあるため注意が必要です。
自己の問題・悩みについて専門が分からない場合は、まず専門性を確認するところから質問して問題ありません。弁護士同士の横のつながりによって、特に専門性の高い事務所を紹介してくれる場合もあります。
また、直接話をした際の信頼性やコミュニケーション能力も重視すべきポイントです。
費用面についても、明確な説明を行ってくれる事務所を選択すると良いでしょう。これらのポイントを総合的に判断し、自分に最適な弁護士を選ぶことが訴訟を有利に進める鍵となります。
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2019年司法書士登録 補助者時代から複数の事務所勤務を経て2021年独立。同時にWebライター・記事監修業務を開始。 できるだけ一般的な表現での記事作成を心がけているます。法律関係の諸問題は、自己判断せずに専門家に相談することが解決への近道です。
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