COLUMN

訴訟提起の費用はいくら必要?訴訟別の費用、費用負担の割合を解説

訴訟・紛争解決

2025.02.182025.02.21 更新

裁判を通じた訴訟のプロセスでは、裁判所に支払う手数料や郵便料などの訴訟費用や、弁護士に依頼する際の弁護士費用など、さまざまなコストが発生します。

こうした費用については、安い金額で抑えることは難しいでしょう。計画的に費用を用意する必要があるため、それぞれの費用がいくらかかるか把握しておくことが重要です。

本記事では、訴訟にかかる費用の内訳と相場を解説し、実際にどの程度の予算を見積もればいいのか、費用負担のルールや支払い方法についても紹介します。

訴訟経験のない初心者や、小規模事業者の方にもわかりやすく解説しますので、この記事を読むことで「訴訟を起こすべきか」「どのように準備すればよいか」を把握できます。訴訟費用に不安を抱えている方は、ぜひ最後までご覧ください。

無料で相談できる専門家検索はこちらから>>

訴訟の種類

トラブルが生じて提訴される訴訟の種類には、大きく分けて以下の4つがあります。

  • 民事訴訟
  • 行政訴訟
  • 刑事訴訟
  • 憲法訴訟

それぞれの訴訟について解説していきます。

民事訴訟

民事訴訟は、個人や法人同士の権利や義務に関する争いを解決するための訴訟手続きです。私人間の紛争を解決するために行われる点が特徴で、以下のような訴訟が該当します。

  • 金銭の支払い請求
  • 契約不履行
  • 不法行為による損害賠償請求

民事訴訟では、原告が訴状を裁判所に提出し、訴えを提起します。その後、被告に訴状が送達され、裁判所での審理が進められます。審理は複数回行われ、最終的には判決または和解という形で終了となります。

民事訴訟のメリットは、裁判所の判決によって強制力のある解決を得られる点にあります。一方で、訴訟期間が長引くことや、敗訴した場合には相手方の訴訟費用を負担するリスクがあります。

行政訴訟

行政訴訟とは、国や地方公共団体などの行政機関の処分や決定に不服がある場合に、それを争うために提起される訴訟のことを指します。行政機関による処分が違法であると主張し、その取り消しや変更を求めるのが一般的な目的です。

代表的な行政訴訟として、以下のようなものがあります。

  • 処分取消訴訟
  • 義務付け訴訟
  • 差止訴訟
  • 国家賠償請求訴訟

行政訴訟の特徴は、提訴の前に行政不服審査を経る場合があることです。また、一般の裁判所ではなく行政事件を専門とする裁判所で審理されることが多く、手続きも他の訴訟と異なります。

しかし、原告側が違法性を立証する必要があり、証拠収集が難しいケースもあります。そのため、弁護士に依頼して解決するのが一般的とされています。

刑事訴訟

刑事訴訟とは、犯罪が発生した際に国家が公訴を提起し、被告人の有罪・無罪を判断するために行われる訴訟手続きです。私人間の紛争ではなく、社会秩序の維持を目的としています。

刑事訴訟の流れは、捜査機関が事件を捜査し、検察官が起訴するかどうかを判断します。起訴されると公判が開かれ、裁判官が証拠や証言をもとに判決を下します。刑事裁判には略式手続や正式裁判があり、略式手続では書面審理のみで罰金刑が科されることもあります。

民事訴訟とはタイプが異なるため、こちらから刑事訴訟を起こすということはまずないでしょう。

憲法訴訟

憲法訴訟とは、法律や行政処分が憲法に違反しているかどうかを判断するために提起される訴訟のことです。国家の最高法規である憲法の解釈が争点となり、基本的人権の侵害や、国家機関の行為が憲法に適合するかどうかが問題となります。

日本における憲法訴訟は、具体的な事件を通じて憲法判断が行われる「付随的違憲審査制」を採用しています。つまり、憲法違反を理由に単独で訴訟を提起するのではなく、民事訴訟や行政訴訟などの枠組みの中で憲法の適用が争われます。

憲法訴訟は、訴訟当事者だけでなく社会に影響を及ぼす可能性があります。そのため、最高裁判所の判断が注目されることが多く、違憲判決が出された場合、法律の改正や行政運用の見直しが求められることになります。

ただし、日本では法律や行政処分が違憲と判断されるケースは少なく、最高裁の違憲判決も限定的です。

訴訟費用の内訳

訴訟提起にかかる費用として、以下のようなものから構成されています。これらは訴訟事例として最も多い民事訴訟の場合にかかる費用となっています。

  • 印紙代
  • 郵便料
  • 証人日当
  • 書類作成費

それぞれの費用について見ていきましょう。

印紙代

印紙代は訴状を提出する際に必要となる費用で、民事訴訟や行政訴訟などの種類を問わず発生します。

民事訴訟では、請求額に応じて印紙代が決まります。100万円を請求する場合は1万円、500万円なら3万円、1,000万円なら5万円が目安です。

請求額が高くなるほど印紙代も増えるため、大規模な訴訟では相応の金額を用意する必要があります。一方で、少額訴訟などでは通常の民事訴訟よりも低額の印紙代が設定されることがあり、コストを抑えて訴訟を進めることが可能です。

印紙代は、訴状とともに裁判所へ提出する際に納付しなければならず、不足すると訴状が受理されないため注意が必要です。

郵便料

郵便料とは、裁判所が訴状や証拠書類、判決書などの送達を行う際に必要となる費用で、主に訴訟当事者に対する書類送達のために使われます。

郵便料金は訴訟の種類や当事者の人数によって異なります。例えば民事訴訟で相手方が1人の場合、第一審の訴訟提起時に必要な郵便料は数千円~1万円が相場です。被告が複数いる場合や、追加の送達が必要になると、その分の費用が上乗せされます。

郵便料は裁判所に予納する形式となっており、事前に一定額を納める必要があります。

証人日当

証人日当は、証人が裁判に出席するために費やした時間や労力に対する補償として必要な費用です。証人日当の金額は法律で定められており、通常は1日あたり1,500円から8,000円程度が支給されます

証人日当の金額は、証人の職業や社会的地位、負担の程度などを考慮して裁判所が決定します。ただし、証人が被告や原告の親族である場合など、一部のケースでは支給されないこともあります。

証人日当の支払いは、証人が裁判所に出廷した後に行われます。証人が自ら請求手続きを行う必要があり、必要な書類を提出することで、後日、裁判所から支払われます。

書類作成費

訴訟を提起する際には、以下の書類を作成しなければいけません。

  • 訴状
  • 準備書面
  • 証拠説明書
  • 陳述書

これらの書類は訴訟の進行や結果に大きな影響を与えるため、正確かつ適切な内容で作成することが求められます。

例えば、訴状の作成費用は5万円~10万円程度が相場とされています。準備書面や証拠説明書の作成は訴訟の進行に応じて必要となり、1通あたり数万円~数十万円かかることもあります。これらの費用は、事案の複雑さや書類の分量によって変動します。

訴訟費用は誰が負担する?

日本の民事訴訟では、原則として敗訴した側が訴訟費用を負担するルールになっています。これを「敗訴者負担の原則」といい、民事訴訟法61条に規定されています。ただし、ここでいう訴訟費用には、弁護士費用は含まれません。

弁護士に依頼した場合の費用は、基本的に依頼者自身が負担します。仮に訴訟で勝訴したとしても、相手方に弁護士費用を請求することは原則としてできません。ただし、契約上の条項や特別な事情がある場合は、例外的に相手に請求できることもあります。

また、一部容認での勝訴や和解といった解決方法もあり、この場合敗訴者負担の原則は適用されない場合があります。以下では、一部容認での勝訴や和解による解決の場合の費用負担割合について解説していきます。

一部容認での勝訴の場合の費用負担

訴訟において、原告の請求がすべて認められるのではなく、一部のみが認められるケースがあります。これを「一部容認判決」といい、訴訟費用の負担は請求が認められた割合に応じて決定されます。

一部容認では原告と被告の双方が一部敗訴したことになり、訴訟費用も請求が認められた割合に応じて按分されます。原告が全額を被告に請求できるわけではなく、自己負担も生じるため注意が必要です。

和解の場合の費用負担

訴訟において当事者同士での和解が成立した場合、費用負担は当事者間の合意に基づいて決められます。双方が訴訟費用を折半する、またはそれぞれが自分の負担分を持つという形が多く見られます

和解によって訴訟が早期に終了すれば、裁判における追加費用を抑えることが可能です。裁判が続くと証拠収集や追加の書類作成が必要となるため、和解での解決は金銭的な負担の軽減に貢献します。

訴訟費用を減額・免除できる制度

訴訟については、「提起したいけどお金がなくて手続きができない」といった事例があり、声を上げられないケースも少なくありません。そのため、訴訟については以下の減額・免除制度を設けており、経済的負担を軽減して訴訟を提起することが可能です。

  • 訴訟上の救済制度
  • 裁判費用の分割払い・支払い猶予
  • 弁護士保険の活用
  • 民事法律扶助による立替制度

それぞれの制度について解説していきます。

訴訟上の救助制度

訴訟上の救助制度とは、経済的に困難な状況にある人が訴訟を提起したり、被告として訴訟に対応したりする際に、裁判所にかかる費用の支払いを減額または免除してもらえる制度です。

具体的には、訴訟提起時に必要な訴訟費用や証人の日当・旅費などが対象となります。ただし、弁護士費用はこの制度の対象外です。

訴訟上の救助制度を利用するには、裁判所に対して「訴訟上の救助申立書」を提出し、収入や資産状況を示す証拠を添付する必要があります。裁判所は申立人の生活状況や訴訟の内容を審査し、基準を満たす場合に救助を認めめ、裁判費用の支払いが免除されるか、一定期間猶予されます。

裁判費用の分割払い・支払い猶予

裁判費用の支払い猶予は、一定の条件を満たせば、訴訟が終了するまで裁判費用の納付を一時的に免除してもらうことができます。訴状を提出する際には収入印紙を貼付しなければなりませんが、支払い猶予が認められれば、裁判終了後に支払うことが可能になります

分割払い制度も同様に、一度に裁判費用を支払うことが難しい場合に、一定の期間にわたって分割して支払うことを認めるものです。ただし、すべてのケースで認められるわけではなく、裁判所の審査を経て、経済状況や訴訟の内容に応じて判断されます。

この制度を利用するには、裁判所に対して具体的な収入状況や資産状況を証明する書類を提出し、許可を得る必要があります。支払い猶予や分割払いが認められることで、経済的な負担を軽減し、権利救済の機会を確保することが可能です。

弁護士保険の活用

弁護士保険とは、法律相談や訴訟費用を補償する保険であり、個人・法人を問わず加入できます

弁護士保険に加入していると、法律相談料や書類作成費、訴訟にかかる弁護士費用の一部または全額が補償される場合があります。補償内容は保険商品によって異なりますが、一般的に訴訟費用や和解交渉費用、調停費用など幅広くカバーされるのが特徴です。

特に、企業経営者やフリーランスなど、契約トラブルや労働問題に直面する可能性がある人にとって、弁護士保険は有効なリスク対策となります。個人の場合でも、相続や離婚、交通事故などの法的トラブルに備える手段として注目されています。

ただし、保険によってはカバーされる範囲や上限額に制限があるため、契約前に詳細を確認しておくようにしましょう。

民事法律扶助による立替制度

民事法律扶助による立替制度とは、経済的に余裕がない人が訴訟を提起する際に、弁護士費用や訴訟費用を一時的に立て替えてもらえる制度です。日本司法支援センター(法テラス)が提供する支援の一環であり、一定の要件を満たすことで利用できます。

この制度を利用できるのは、資力要件を満たす人に限られています。具体的には、収入や資産が一定基準以下であるが条件です。また、訴訟の見込みが十分にあること、つまり請求内容に法的根拠があり、勝訴の可能性があることも条件とされます。

立替の対象となる費用には、弁護士費用や訴訟費用、証拠収集のための費用などが含まれます。ただし、この制度は費用を「免除」するものではなく、訴訟終了後に分割で返済する必要があります。返済額は利用者の経済状況に応じて決められ、無理のない範囲での支払いが可能です。

まとめ

訴訟を提起する場合、訴訟費用として印紙代や郵便料、旅費や日当などの費用がかかります。これらは訴訟において必須の費用となるため、必ず用意しなければいけません。

また、弁護士に訴訟手続きを依頼する場合は、依頼料として弁護士費用が発生します。これらを費用を合計すると、数十万円かかるのが一般的であり、訴訟内容や請求額によっては百万円単位になることもあるでしょう。

訴訟を提起する際は、余裕のある資金計画を立ててから臨みましょう。また、減額・免除制度を活用し、少しでも費用負担を軽減するようにしてみてください。

法務救済では、契約書のリーガルチェックから労務、法務観点のサポート、損害賠償などの企業間紛争に対応できる専門家を検索・依頼することが可能です。全国の弁護士事務所から簡単に検索・相談できます。

問い合わせは無料となっており、当サイトから費用は発生しません。訴訟提起において費用面に不安がある方は、法務救済から弁護士を探してみてください。

無料で相談できる専門家検索はこちらから>>

法務急済運営事務局

株式会社WEBYの法務急済運営事務局。全国400以上の弁護士・司法書士のWEBマーケティング支援に従事。これまでに法律ジャンルの記事執筆・編集を1000記事以上担当。WEBコンサルやHP制作、SEO対策、LMC(ローカルマップコントロール)など様々な支援を通じて法律業界に精通。これらの経験を基に企業法務の際に必要な情報や適切な弁護士・司法書士を紹介している。

法務急済運営事務局のアバター

※当社(株式会社WEBY)は直接債務整理のサービスを提供しておらず、債務整理の相談や依頼については紹介事務所へのリンク先で対応となるため、当サイトでは債務整理に関する個人の相談や質問にはお答えできません。
当サイトのコンテンツは事実に反しないよう尽力していますが、内容の正確性や信頼性、安全性を担保するものではありません。
債務整理の無料相談や依頼にお申し込みされる際は各弁護士事務所・司法書士事務所等の公式ホームページに記載されている内容をご確認いただき、自己判断していただけますようお願いいたします。
当サイトは株式会社WEBYと提携する企業のPR情報が含まれます。
当サイトで掲載しているコンテンツは個人および法人へ向けた情報提供が目的であり、債務整理を提供する事業者との契約代理や媒介、斡旋を助長するものではありません。

CONSULTATION

目次 ▼