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商標権侵害とは?該当する要件や損害賠償請求等の対処法を解説

知的財産・知財法務

2024.12.032024.12.04 更新

商標権侵害とは、他者の登録商標を無断で使用し、商標権者の権利を侵害する行為を指します。この問題は、ビジネスの世界で深刻な影響を及ぼす可能性があり、適切な理解と対策が不可欠です。

商標権侵害が成立するためには、主に三つの要件があります。まず商標登録があること、次に他者の登録商標と同一または類似の商標を使用すること。もう一つは、その使用が商標的使用に該当することです。

具体例としては、有名ブランドのロゴを模倣した商品の販売や、他社の商標を自社のウェブサイトで無断使用するケースなどが挙げられます。商標権侵害が認められた場合、侵害者は損害賠償を請求される可能性があります。

権利者は、侵害行為の差止めや、損害の賠償を求めることができ、場合によっては刑事罰の対象にもなり得ます。このため、企業は自社の商標管理を徹底し、他社の権利を侵害しないよう細心の注意を払う必要があります。

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商標権とは

商標とは、商品やサービスの目印となるものです。事業において自己の商品・サービスと他人の商品・サービスを区別させるために用いるマークのことで、商品名やサービスのマークがこれに当たります。商標は文字に限らず図形や記号も含みます。

同一の商標を繰り返し利用することで、事業やサービスの信頼が積み重なり、一定の品質が担保されていると認識される効果があります。

商標は原則として、商標法で規定される手続きによって商標登録を行うことにより保護の対象となります。

商標権侵害とは

商標権の侵害とは、登録された商標に対して商標法で定められた禁止行為を行うことです。

繰り返し使用されて信頼を得た商標にはその信頼の証としての価値があるため、他者が利用することはその信頼および資産を奪うことと同義であり、違法行為になります。

次に、商標権侵害の一般的な要件を解説します。

商標権侵害の要件

商標権侵害が成立するためには、原則として以下の3つの要件を満たす必要があります。

・商標登録された商標であること
・他人が登録商標と同一または類似の商標を使用すること
・商標的使用に該当すること

以下、詳しく解説します。

商標登録された商標であること

1つ目の要件として、商標権の侵害から商標が保護されるためには、原則として登録された商標である必要があります。

ただし、登録されていない商標においても不正競争防止法によって保護されるケースもあります。

他人が登録商標と同一または類似の商標を使用すること

次に、商標と同一または類似性のある商標を他人が使用することです。

商標の類似性は、外観や呼称、観念などの要素から総合的に判断されます。例えば文字の書体や色彩が異なっていても、発音や意味が近似していれば類似と判断される可能性があります。

また、他者の商品やサービス名をドメイン名として利用することも商標権の侵害にあたる場合があります。

商標的使用に該当すること

3つ目の要件は、商標を同一または類似の商品・役務に使用し、需要者に示す目的で使用することです。

これは、商標法で定められた商品・役務の区分に基づいて判断されます。ただし、異なる区分であっても、取引の実情によっては類似と判断されることがあります。

これらの要件を満たす行為は、商標権者の許諾なく行われた場合、商標権侵害となる可能性が高くなります。

侵害が認められれば、商標権者は侵害者に対して損害賠償の請求などの法的な対応をすることができます。ただし、商標的使用でない場合や、先使用権が認められる場合など、例外的に侵害とならないケースもあります。商標権侵害の判断は複雑で、個々の事例に応じて慎重に検討する必要があります。

商標権の侵害には間接的な侵害も含む

間接侵害とは、直接的に商標権を侵害する行為ではないものの、侵害行為を助長または容易にする行為を指します。

具体的には、侵害品の販売を目的とした保管や陳列などの準備行為が該当します。

商標権侵害があった場合の法的な対処法5つ

商標権の侵害があった場合、法的には次のような対応が可能です。

  1. 差止請求
  2. 損害賠償請求
  3. 不当利得返還請求
  4. 信頼回復措置請求
  5. 刑事訴訟

1~4の対応は民事ですので、直接の請求や交渉等の裁判外の解決を目指すか、訴訟によって解決を目指す方法があります。

以下、それぞれの手続きの内容を解説していきます。

差止請求

差止請求とは、商標権の侵害を停止させる請求です。交渉や裁判外の請求によって差止に応じてもらえない場合、またはその期待ができない場合には、訴訟によって強制的に差止めを目指すことになります。

通常、訴訟の提起から判決までは、通常半年から1年またはそれ以上の期間が必要になります。そのため訴訟の終了を待っていては商標権の侵害による損害が拡大してしまうことが考えられます。

このような場合に、まずは侵害を緊急停止させる手続きとして、裁判所へ仮処分命令の申立てをすることができます。

仮処分命令は、商標権侵害を停止させる必要性を疎明して裁判所に申し立てることで、最短数週間から2カ月ほどで発令されます(却下の可能性もあります。)。また、保全命令が出される際は、申立て側に担保を提供するよう条件が付される場合もあります。

仮処分命令は暫定措置であり、発令後には申立て者は指定された期限内に差止請求や損害賠償請求等の本訴の提起を行わなければなりません。

損害賠償請求

商標権の侵害によって現実に損害が発生している場合、その損害の補填として損害賠償請求を行うことができます。

民法の原則として、損害賠償は損害のあった範囲において相手方に請求できます。

商標権侵害における実際の損害額の算定については、商標法第38条第1項~6項に計算方法や推定規定などが定められています。

不当利得返還請求

商標権による侵害を回復する根拠として、民法に基づく不当利得返還請求を利用できるケースもあります。不当利得とは、法律上の原因がないのに関わらず本来利益を受けるべき者でない者が利益を得ることを言います。

損害賠償は不法行為によって発生するのに対し、不当利得は不法行為がなくても発生し得る点で意味が異なります。

例えば顧客が商品やサービス名を勘違いして他者と契約して経済的利益を与えてしまった場合には、不法行為はありませんが不当利得に該当する可能性があります。

信頼回復措置請求

商標を他者が利用して粗悪なサービスや商品の販売に利用した場合、商標の評判が悪くなり、本来の商標所有者はこれまで積み重ねた信頼を将来的かつ長期的に失ってしまう場合があります。

信頼回復措置請求とは、こうした侵害行為によって毀損された信用を回復するための手段です。

例えば商標権侵害の事実および裁判の結果等を侵害者から発信させることや、謝罪広告を掲載させることなどが考えられます。

このように、金銭的な賠償や商標利用の差止め以外に、信頼を回復するための措置を請求できる場合があります。

刑事訴訟

商標権に対する罪に関しては、商標法78条から85条までに刑事罰が定められています。

直接的な商標権の侵害については78条に定められており、具体的には10年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金または両方が併科される可能性があります。

法人に対しては両罰規定が定められており、法人および代表者の双方に罰金刑が下る場合もあります。

商標権侵害を未然に防ぐためのポイント

商標権侵害を未然に防ぐためには、事前の対策と継続的な取り組みが重要です。

考えられるポイントは次のとおりです。

  • 事前調査
  • 商標登録を行う
  • 商標の使用許諾契約、秘密保持契約
  • 市場の監視
  • 従業員への教育と周知

新しい商標を使用する前には徹底的な商標調査を行うことが不可欠です。これにより、既存の商標との類似性を確認し、潜在的な侵害リスクを回避できます。また、自社の商標を早期に出願・登録することで、権利を確保し、他社による使用を防ぐことができます。

社内教育も重要な要素です。従業員に商標権の重要性や侵害リスクについて定期的に研修を行い、意識向上を図ることが大切です。特に、マーケティングや商品開発部門の社員には、より詳細な知識が求められます。

さらに、自社の商標ポートフォリオを定期的に見直し、使用状況や市場環境の変化に応じて適切に管理することも忘れてはいけません。必要に応じて、専門家のアドバイスを受けることで、より効果的な対策を講じることができるでしょう。

商標に関する専門家は弁理士、侵害についての対応は弁護士へ

商標や知的財産に関して、これから登録したい場合や相談したい場合には『弁理士』が専門です。市場調査や登録・審査等の手続きについては、実績ある弁理士に相談すると良いでしょう。

一方、商標について現に侵害があった場合の解決や訴訟についての専門は『弁護士』です

商標権侵害の可能性を発見した場合や、現に侵害が行われている場合の対応については、商標権や企業法務に詳しい弁護士に相談しましょう。

商標権侵害への対応は弁護士に相談しよう

商標権の侵害への対応は、できるだけ早めに弁護士に相談すると良いでしょう。

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商標権侵害を意図的に行っている業者等は、本来の商標権者からの法的な対応に対して、逃げる前提で営業しているケースもあります。

これに対して正面から請求や交渉を行おうとすると、損害賠償請求等が空振ってしまう恐れもあります。また相手方の商標利用が適法な場合には、訴訟を提起しても棄却されるおそれもあるため、事前の法律家への相談は欠かせないものと言えるでしょう。

商標権の侵害に対する対応は、弁護士へ相談して進めるようにしましょう。

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司法書士 白河(筆名)

2019年司法書士登録 補助者時代から複数の事務所勤務を経て2021年独立。同時にWebライター・記事監修業務を開始。 できるだけ一般的な表現での記事作成を心がけているます。法律関係の諸問題は、自己判断せずに専門家に相談することが解決への近道です。

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