債権回収に必要な手続きとは?訴訟にかかる費用や少額訴訟のメリット・デメリットを解説
訴訟・紛争解決
2024.12.03 ー 2024.12.04 更新
債権回収にかかる費用は、回収方法や債権の性質によって大きく異なります。
一般的に、訴訟を利用した場合は裁判所への手数料や弁護士費用などが主な支出となります。一方、支払督促や民事調停などの代替手段を選択すれば、比較的低コストで解決できる可能性があります。また、少額訴訟制度を活用すれば、手続きが簡便で費用を抑えられるメリットがありますが、対象となる金額に制限があることにも注意が必要です。
債権回収の費用を考える際は、単に金銭的な支出だけでなく、時間や労力といった非金銭的なコストも含めて総合的に判断することが重要です。
この記事では、債権回収にかかる費用や一般的な手続きと注意点について解説していきます。
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債権回収にかかる主な費用には、回収の方法によって訴訟費用や弁護士費用、その他の諸経費、相談料などがあります。
訴訟費用は裁判所に支払う費用です。訴訟の種類や請求金額、保全の有無などによって異なります。具体的には、印紙代や郵便切手代などが該当します。
弁護士費用は、一般的に着手金と成功報酬から構成されます。、一般的には着手金が10万円~30万円ほどに加えて、成功報酬として回収額から10%~20%が相場と言われています。ただし、事案の複雑さや回収金額に応じて変動します。
相談料は1時間5,000円~10,000円ほどが相場です。依頼が伴えば相談料が無料になるケースなどもあります。
その他の諸経費としては、書類作成費用や証拠収集にかかる費用などが挙げられます。
債権回収の手段
債権回収の手段は、大きく分けると裁判によらない手続きと裁判を利用する手続きに分かれます。
なお法律用語として『裁判』は、訴訟、少額訴訟、調停、支払督促など裁判所を利用する手続き全てを含みます。一般的に『訴訟』のことだけを裁判と認識している方も多いですが、用語としては間違いのためご注意ください。
裁判によらない債権回収方法
裁判によらない債権回収の方法としては、次のようなものが挙げられます。
- 請求
- 交渉
- 裁判外紛争解決手続き(ADR)
- 債権回収の委託
- 債権譲渡
これらは、強制執行できるケースが限られることなどに注意が必要です。
また、弁護士に依頼して交渉がまとまっても、交渉通りに相手が支払いに応じてくれるとは限りません。このような場合に備えて交渉が成立したら債務弁済についての契約書を作成するケースがあります。契約書には「弁済について違反した場合には直ちに強制執行を受ける」等の内容を記載し、公正証書で作成することで、執行力を持たせることが可能です。
また裁判外紛争解決手続では、暫定保全措置命令を得ることで強制執行が可能になりました。
そのほか、債権回収を弁護士または債権回収会社へ委託する方法があります。
債権譲渡は、基本的には債権回収の会社(サービサー)に債権を譲渡し、対価を受け取って現実の回収を目指す手続きです。いわゆる債権の売却であり、債権譲渡が成立すると譲受人は自己の名と責任で債権回収を目指すことになります。
債権譲渡の取引は、債権回収のコスト等を差し引きした額で行うことになるため、もとの債権者は本来の債権額よりも低い額で売却するのが通常であり、いわゆる損切の手段として用いられます。
いずれにしても法的に適正な手続きを経る必要があるため、弁護士のサポートを受けるとよいでしょう。
裁判所を利用する債権回収方法
裁判所を利用する債権回収の方法には次のようなものがあります。
- 支払督促
- 少額訴訟
- 民事調停
- 訴訟
これらの手続によって請求権の存在や弁済期の到来などが認められれば、強制執行が可能になります。
訴訟によって債権回収をする手続きの流れ
裁判外の請求や交渉によって債権回収が図れない場合、訴訟によって債権回収する方法があります。
基本的な訴訟の流れとしては、仮差押えのあと本訴訟を提起し、勝訴した場合や裁判上の和解が成立すれば任意での支払いを受けるか強制執行という順番になります。
仮差押え後の裁判手続としては、通常訴訟以外にもや支払督促や民事調停などがあります。
仮差押えについては次に解説します。
債権回収の前提となる手続き(仮差押え)
債権回収の前提として重要な手続きが、仮差押えです。
仮差押えとは、金銭債権等の債権を保全するために、債務者の保有する財産の処分を禁止したり変更できないようにする裁判上の手続を言います。
例えば、相手方の銀行口座を凍結させるなどの手続きがこれにあたります。不動産がある場合には、仮差押えの登記が行われることにより他者への売却等を抑止する効果があります。
仮差押えを行うことで訴訟している間に財産隠しをされたり、散財されたりすることを防ぐ効果があります。
仮差押えの重要性
仮差押えは、銀行の口座凍結や不動産登記によって財産の処分に制限をかける裁判上の手続です。そのため、一定規模以上の請求訴訟を行う際には必須の手続きになります。
請求や訴訟を行おうとしていることが相手方に認識された時点で財産隠しのリスクが生じるため、交渉や裁判の前提として仮差押えは非常に重要な手続きと言えます。
仮差押えは、相手方への事前通知なく行わなければ意味がないため、法的な手続きとしては珍しく密行性および迅速性に大きな特徴があります。
仮差押えは専門的な知識が必要になるため、保全を行うべきかも含めて弁護士へ相談するとよいでしょう。
通常訴訟以外の裁判手続きによる債権回収方法
次に、通常訴訟以外の裁判による債権回収手続を紹介します。
通常訴訟と比較すると、これらの方法は一般的に費用が低く抑えられ、手続きも簡略化されています。ただし債権の性質や債務者の状況によって最適な方法は異なるため、個々のケースに応じた選択が重要です。
支払督促
支払督促は、債権者(申立人)の申し立てにより裁判所書記官が債務者に対して金銭の支払督促を発する裁判上の手続です。申し立てる裁判所は訴額に応じて異なり、140万円までは簡易裁判所、140万円を超える場合は地方裁判所になります。
債務者が督促を受け取ってから2週間以内に適法な督促意義の申し立てをしないと、督促には仮執行宣言が付され、ただちに強制執行が可能になります。
ただし、支払い督促に対して適法な異議が申し立てられると、訴額や請求の内容に応じて通常訴訟や少額訴訟に移行します。そのため、結果的に費用が増加する可能性があります。
また督促には送達であるため、債務者の所在が不明な場合には利用できないという制限もあります。
支払督促では、裁判所から督促状が届くとあって支払いを促す効果も大きいため、債権額が比較的小さい場合や債務者との関係を維持したい場合に適しています。
民事調停
民事調停は、調停員と呼ばれる利害関係のない第三者が当事者の間に入り、交互に話をしながら解決を目指す裁判上の手続です。
利用する場合の費用は、通常訴訟と比較してかなり低く抑えられるのが特徴です。申立手数料は訴訟の半額程度で、1000円から数万円程度となります。さらに、調停は非公開で行われるため、企業イメージを損なうリスクも低減できます。
一方で、調停が不成立となった場合は基本的には訴訟に移行することになり、結果的に費用が増加する可能性もあります。ただし調停で争点が整理されることで、訴訟に移行しても時間と費用を節約できる場合もあります。
債権者と債務者の関係性を維持しつつ、低コストで解決を図りたい場合には、民事調停は有効な選択肢となるでしょう。
少額訴訟
少額訴訟は、原則として1回の期日で審理を終了させる簡易迅速な裁判上の手続です。少額訴訟は簡易裁判所の管轄となります。
少額訴訟の対象は請求額60万円以下に制限されており、同じ人が同じ裁判所で利用できるのは年に10回までと定められています。
そのため大口の債権回収には適していません。さらに、判決に不服がある場合、高等裁判所に控訴ができないという制約もあります。
少額訴訟を活用する際は、債権額や相手方との関係性を考慮し、メリットとリスクを十分に検討することが重要です。
各手続きの一般的なコスト比較
訴訟などの手続きにかかる一般的な費用を紹介していきます。どの手続きを選択すべきかは個別の事案によるため、弁護士に相談するとよいでしょう。
弁護士費用
弁護士に依頼する場合、弁護士費用が必要になります。
弁護士費用は、一般的には着手金が10万円~30万円ほどに加えて、成功報酬として回収額から10%~20%が相場となります。ただし事案の内容や訴訟の複雑さ、回収金額などに応じて変動します。
また請求したい債権の発生原因(損害賠償等)によっては、保険の特約によって弁護士費用がまかなえる場合があります。
訴訟(通常訴訟)
訴訟には印紙代と予納郵券代金および弁護士費用などが必要です。
印紙代は訴額によって大きく異なります。予納郵券とは訴状等の送達に必要となる郵便代金です。裁判所によって異なりますが、6000円程度が相場になります。
弁護士に依頼する際には、弁護士費用が併せて必要になります。
また、仮差押えや強制執行が必要な場合には別途費用が必要になります。以下、順番に解説していきます。
仮差押え
仮差押えには、印紙代と予納郵券、登記事項証明書に加えて登記が必要な場合には登録免許税等が必要です。
印紙代は、原則1件の申請につき2,000円ですが、債権者・債務者の数などによって異なります。予納郵券も債務者数等によって異なり、数千円程度が目安になります。
不動産に仮差押えを行う場合、対象不動産の登記事項証明書と固定資産評価証明書に加えて、当事者に法人がいる場合には代表者の資格証明書等の書類が必要です。
登記事項証明書、資格証明書は一通600円程度で法務局から取得できますが発行の方法等によって若干費用が異なります。
固定資産評価証明書は発行する自治体によって異なり、1通300円程度が一般的です。
そのほか、不動産に仮差押えを行う場合には登記の登録免許税として、請求債権額の0.4%の額を納める必要があります。
強制執行
強制執行は対象財産によって債権執行・不動産執行・動産執行の3種類にわかれ、それぞれ費用が異なります。
例えば不動産の強制執行には、登記および競売(または収益執行)の手続きが必要であり、動産の強制執行の場合は対象の動産によって車や指輪等の回収および競売費用等が必要になります。
それぞれ大まかな費用は次のとおりです。
債権執行
収入印紙4,000円、予納郵券3,000円~、送達証明、執行分付与、法人の場合には登記事項証明書が各数百円ほどです。
不動産執行
収入印紙4,000円、予納金80万円~200万円、予納郵券94円~、登録免許税 請求額の0.4%、送達証明、執行分付与に各数百円
(東京地方裁判所の場合です。競売手続き・収益執行手続きの別や、事案によって異なります。)
動産執行
予納金2万円~、開錠費用(必要に応じて1万円~3万円程度)、送達証明、執行分付与、各数百円程度です。
動産執行は、運搬や保管が必要な場合には別途費用がかかります。
少額訴訟
少額訴訟には、申立費用(印紙代)と予納郵券代金が必要になります。
少額訴訟で扱える請求額は最大60万円までです。申立費用は請求額10万円までが1,000円で、10万円ごとに1,000円ずつアップします。
仮差押えや強制執行等を行う場合は別途その費用が可能です。
支払督促
支払督促の申し立て費用(印紙代)の金額は、通常訴訟の半額になります。
請求金額 | 申立手数料 |
100万円以下 | 10万円ごとに500円 |
100万円を超え500万円以下 | 20万円ごとに500円 |
500万円を超え1,000万円以下 | 50万円ごとに1,000円 |
1,000万円を超え10億円以下 | 100万円ごとに1,500円 |
10億円を超え50億円以下 | 500万円ごとに5,000円 |
50億円超 | 1,000万円ごとに5,000円 |
仮差押えや強制執行を行う場合には、その費用も必要になります。通常訴訟に移行する場合にはその費用も必要になります。
債権回収費用を知る重要性
債権回収の際には、費用倒れにならないことや、現実に回収できる可能性を考慮することが重要です。
仮差押えを怠ったせいで回収不能になっては意味がありません。支払い督促や交渉を自分で行って債務者から逃げられたり、財産隠しをされたりしては回収できるものもできなくなってしまいます。
債権回収でお困りの際は、まずは弁護士に相談するとよいでしょう。
弁護士に依頼する場合のポイント
弁護士選びの際は、実績や専門性、コミュニケーション能力を重視しましょう。
債権回収を特に専門にする弁護士であれば、交渉力や回収方法の適正な選択に期待できます。
また、費用の透明性や支払い条件についても事前に確認することが重要です。信頼できる弁護士を選ぶことで、効果的な債権回収と適切な費用管理が可能になります。
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2019年司法書士登録 補助者時代から複数の事務所勤務を経て2021年独立。同時にWebライター・記事監修業務を開始。 できるだけ一般的な表現での記事作成を心がけているます。法律関係の諸問題は、自己判断せずに専門家に相談することが解決への近道です。
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