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労働契約書とは?労働条件通知書との違いや作成方法を解説!
契約書・リーガルチェック
2024.10.21 ー 2024.11.04 更新
本記事では労働契約書や労働条件通知書の記載事項、労働契約の制度システムなどを解説しています。また、これらの書類以外にも就業規則、業務委託など労働契約と比較して覚えたい内容についても簡単に解説しています。
会社の法務担当者が求人を行いたい場合や、労働者目線でも分かりやすく記載していますので、ぜひ参考にしてみてください。
労働契約書とは
労働契約書とは、企業または個人である使用者と労働者の間で結ばれる労働契約の内容を明らかにする契約書です。
労働契約とは、労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対する賃金を支払うことを内容とした契約を言います。
使用者は会社等の法人である必要はなく、個人事業主が他者を使用する場合も労働契約は成立します。
労働契約法第6条では、次のとおり規定されています。
労働契約法第6条(労働契約の成立)
労働契約は、労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことについて、労働者及び使用者が合意することによって成立する。
また、労働契約法第3条では次のとおり労働契約の原則が定められています。
(労働契約の原則)第3条
1.労働契約は、労働者及び使用者が対等の立場における合意に基づいて締結し、又は変更すべきものとする。
2.労働契約は、労働者及び使用者が、就業の実態に応じて、均衡を考慮しつつ締結し、又は変更すべきものとする。
3.労働契約は、労働者及び使用者が仕事と生活の調和にも配慮しつつ締結し、又は変更すべきものとする。
4.労働者及び使用者は、労働契約を遵守するとともに、信義に従い誠実に、権利を行使し、及び義務を履行しなければならない。
5.労働者及び使用者は、労働契約に基づく権利の行使に当たっては、それを濫用することがあってはならない。
労働契約においては使用者と労働者が対等な立場であり、互いに信義誠実に契約を守らなければなりません。また、使用者からの一方的な条件提示ではなく就業の実態に応じて均等を考慮しつつ締結、変更すべきものとされています。
労働契約書と類似した書類・契約書
労働契約と比較して覚えたい契約や規則には、次のようなものがあります、
- 雇用契約
- 労働条件通知書
- 就業規則
- 業務委託契約
以下、労働契約との違いが分かるよう解説していきます。
雇用契約
雇用契約と労働契約は、一般的には区別することなく利用されています。
民法上、雇用契約とは当事者の一方が相手方に対して労働に従事することを約し、相手方がこれに対してその報酬を与えることを約する契約を言います。
民法第623条(雇用)
雇用は、当事者の一方が相手方に対して労働に従事することを約し、相手方がこれに対してその報酬を与えることを約することによって、その効力を生ずる。
労働契約では『賃金』と金銭を想定しているのに対し、民法の雇用契約では『報酬』であり、現物支給も想定されている点などに細かい違いがあります。
『労働者』の定義も労働関係の諸法規で分かれており、法律専門家による議論も複雑になっています。
ただし、一般的に『雇用契約書』か『労働契約書』かの選択で迷う必要はありません。労働法等の各種法律の適用は、契約書のタイトル等ではなく実態の労働状況に沿って判断されるためです。
労働条件通知書
労働条件通知書とは、報酬の金額や計算方法、勤務時間などの個別かつ具体的な労働条件が記載される書面です。
労働契約法第4条では『労働契約の内容の理解と促進』が掲げられ、労働基準法第15条では『労働条件の明示』が必要であるため、こうした内容を労働条件通知書に記載します。
労働契約においては個人ごとに報酬や勤務時間が異なる場合があるため、一般的には労働契約書に共通事項を記載し、労働条件通知書に個別の事項を記載します。
注意点として、労働条件通知書は雇用者側から書面による交付が義務付けられています。労働条件通知書は、正社員や契約社員等の常用労働者のほか、パート・アルバイト・派遣等の有期労働契約を問わずに交付が必要になります。
就業規則
就業規則とは、賃金や労働時間などの労働条件に関することや職場内の規律等を定めたルールブックです。
ルールを明確に定めることで、使用者と労働者のトラブル、または労働者同士のトラブルを防止するために役立ちます。
就業規則は、常時10人以上の労働者を使用している事業場で作成が義務付けられており、作成の際には労働者側からの意見書を添付するなどして所轄の労働基準監督署に届け出る必要があります。
業務委託契約
労働契約と業務委託契約は、どちらも業務の対価として報酬を支払う契約ですが、その特徴や対象が異なります。
労働契約は、使用者と労働者との間で締結される契約で、労働者が使用者に従属的な立場で働くことを規定しています。
また労働契約では各労働法が適用されるため、休憩時間や残業時間においても法による制限をうけます。各種保険への加入や、事業所規模によっては就業規則の作成などが義務付けられます。
人材を従業員として継続的に指揮命令を行えるメリットがある一方、簡単に解雇できないなどのデメリットがあります。有期契約の場合も、もちろん一方的に契約期間を破棄することはできません。
一方、業務委託契約はいわゆる業務の外注方式です。委託者と受託者の間でかわされる契約であり、おおまかに次のような方式があります。
- 請負契約:完成物と引き換えに報酬を支払う契約
- 委任契約:特定物の売買など、法律行為を委任して報酬を支払う契約
- 準委任契約:事務など、事実行為を委任して報酬を支払う契約
これらの業務委託契約では、委託者から受託者への命令指揮の権限はなく、対等な立場で業務が委託されます。労働法の適用や保険加入の義務もありません。
業務委託を導入するメリットは、専門的な業務や部分的な業務を他社へ依頼して行える点です。事例として、デパートの清掃はデパートの従業員もできる業務ですが、清掃専門の業者に業務委託した方がよりコストパフォーマンスも良い結果が期待できます。
労働契約時における各書面の作成義務
結論から言うと、労働契約書については法的な作成義務はありませんが、労働条件通知書は交付する義務があります。
ただし労働契約書はトラブル防止の観点からも基本的に作成すべき書類であり、今後は法改正により義務化される可能性もあるでしょう。
労働条件通知書の交付義務
労働条件通知書は、労働契約時に使用者が労働者に対して労働条件を明示することを目的とした書類です。本書は労働基準法および省令により交付が義務付けられています。
なお、2019年4月からは以下の条件付きでメールなどの電子データによる交付が可能になりました。
- 労働者が希望したこと
- 受信する者を特定して情報を伝達するために用いられる電気通信によること
- 労働者が、当該電子メール等の記録を出力することによる書面を作成できること
各書面を作成しない場合のリスク・罰則
労働契約書を作成しない場合、使用者と労働者双方にリスクが生じます。
労働条件を確認できないことから労務管理が難しくなり、トラブルが発生した際の解決が困難となります。
また、労働条件通知書の不交付による労働条件の明示義務違反は、使用者に30万円以下の罰金が科せられる場合があります。交付した場合であっても、絶対的明示事項を欠く場合や明示した条件と実際の条件に違いがある場合などは、労働者は契約を即時解約できる権利を持ちます。
労働者が増えた場合の労働条件の管理やトラブルへの対応も困難になるため、基本的に労働契約は書面で行いましょう。
労働契約書等の交付がない場合における労働者の対処法
労働契約書と労働条件通知書は、契約の条件と労働条件を確認し保全する上で非常に重要です。
労働契約書がない場合には、まず使用者に労働契約書の作成を請求しましょう。使用者と労働者はあくまで対等な立場であり、労働者自ら契約書を作成して使用者との合意を取り付ける方法も考えられます。
労働契約書がなく法的なトラブルになる場合には、メールでのやり取りにも一定の証拠能力が認められるため、破棄せず保管しておきましょう。
労働条件通知書が使用者から交付されない場合には、使用者に対して交付を求めましょう。使用者がこれに応じない場合、労働者は入社の拒否(入社後であれば契約解除)をすることができます。
また、それぞれトラブルになった際は労働基準監督署や弁護士に相談して解決をめざす方法があります。
労働契約書に記載すべき事項
労働契約書は、一般的に次のような事項を記載します。
- 当事者の特定
- 目的
- 従業員の義務
- 雇用期間、試用期間がある場合はその期間
- 労働条件や就業規則の変更に関する事項
- 機密保持
- その他の労働条件や契約の一般的事項
これらのほか個別的な事項を記載し、契約日、住所、のほか双方記名または署名・押印等を行い作成します。
労働契約書は、使用者と労働者の双方が保管するために2通作成するのが一般的です。
上記のほか、労働時間や賃金などの労働条件の詳細は労働条件通知書にて別紙で交付されることが多いです。
労働条件通知書の記載事項
労働条件通知書には次のような事項が記載されます。労働条件の通知は、正社員かパートタイマーか等に関係なく必要です。
- 労働契約期間
- 有期契約の場合は労働契約の更新基準に関する事項
- 従事する業務の内容と就業場所、および業務の変更の範囲
- 就業時間、休憩、休日に関する事項(始業時刻、終業時刻、所定時間外労働(残業)の有無、休憩時間、休日・休暇、交替制勤務の場合は就業時点転換)
- 賃金の決定方法、計算方法、支払方法、賃金の締切りや支払時期、昇給
- 退職、解雇に関する事項
- 退職手当の定めが適用される労働者の範囲、計算方法、支払い方法、時期に関する事項
- 臨時に支払われる賃金(退職手当を除く。)、賞与及びこれらに準ずる賃金並びに最
- 低賃金額に関する事項
- 労働者に負担させるべき食費、作業用品その他に関する事項
- 安全及び衛生に関する事項
- 職業訓練に関する事項災害補償及び業務外の傷病扶助に関する事項
- 表彰及び制裁に関する事項
- 休職に関する事項
使用者は、①から⑥の事項につき、昇給に関する事項を除いて労働者へ書面による交付が必要です。ただし労働者の希望がある場合にはメール等での明示も可能です。
⑦から⑭の事項に関しては、定めた場合には明示が必要な項目であり、定めない場合は記載する必要はありません。
また全てのパートタイム・アルバイトなどの有期労働者については下記の事項を明示しなければなりません。
- 昇給の有無
- 退職手当の有無
- 賞与の有無
- 雇用改善などに関する相談窓口
- 就業場所と業務内容およびその変更範囲
- 更新回数上限の有無とその内容
- 無期契約への申込ができることおよび無期転換後の労働条件(有期契約が5年を超える場合)
有期労働者に関する5と6の規定については、2024年4月の改正から明示の義務化が開始されました。
労働契約および労働条件通知書の交付タイミング
労働契約及び労働条件通知書の交付タイミングは、採用の内定後、実際の勤務開始前が一般的です。
労働契約そのものは互いの合意のみで成立するため、理屈の上では、契約書の作成は勤務開始後でも可能です。
契約手続きの流れとしては、勤務開始日の早い段階で契約書の記載を行うか、契約書と労働条件通知書が手渡されて後日契約書を提出するようなパターンがあります。
ただし労働条件の明示および労働条件通知書の交付が行われない場合、使用者にペナルティが科される可能性があることや、労働者は即時解約が可能となることなどから、勤務開始前に提示して互いに確認することが望ましいです。
各書類のテンプレート
労働契約書や労働条件通知書等は、インターネット上でテンプレートのダウンロードが可能です。
労働条件通知書については厚生労働省(東京労働局)のホームページからもダウンロードが可能ですので、作成の際は参考にすると良いでしょう。併せて就業規則等、関連書類のテンプレートも用意されています。
テンプレートには一般的な事項はおおよそ記載されている場合が多いですが、個別具体的な事項についてはサポートされておらず、最新の法改正にも対応していない場合があります。テンプレートを利用して各種書類を作成する際は、詳細な条件や問題点を見落とさないように注意しましょう。
契約書作成の際は、弁護士によるリーガルチェックサービスを利用するとより安全なビジネス運営が可能になります。
まとめ
今回は、労働契約書について解説してきました。
労働契約と雇用契約は一般的には区別されておらず、その実態によって労働法等の各種法令による制約を受けます。
労働契約書には労働契約の大枠について記載し、賃金や勤務時間等の詳細は、別紙として『労働条件通知書』を作成するのが一般的です。
こうした労働の各条件は、明示しない場合に使用者に罰金が科されるケースもあるため注意が必要です。
労働契約書を作成する際は、ひとつミスがあると多くの従業員との契約で不備が出てしまう可能性があります。早めの段階で弁護士等の専門士業によるチェックを受けるか、アドバイスを受けながら作成するのが望ましいでしょう。
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