パワハラで民事訴訟を起こされたら?費用と対応の流れを解説
訴訟・紛争解決
2025.02.18 ー 2025.02.21 更新

職場でのパワハラは、精神的・身体的な負担だけでなく、仕事への影響やキャリアの不安も伴う深刻な問題となります。加害者や会社に対して法的措置を検討している方もいると思いますが、費用負担がいくらか分からない方もいるでしょう。
民事訴訟の手続きは、弁護士費用と訴訟費用に分けられます。通常の手続きに加え、弁護士に依頼した場合の費用を準備しておく必要があります。
本記事では、パワハラの民事訴訟にかかる費用や相場について解説します。「訴訟を起こされたら、どう対処すべきか」「費用面でのリスクは?」と悩んでいる方にとって、この記事が参考になれば幸いです。
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民事訴訟で裁判を起こすためには、パワハラの行為に該当するかどうかが判断基準となります。パワハラに該当する行為として、以下のようなものが挙げられます。
- 身体的侵害
- 精神的侵害
- 過大・過少要求
- 職場内の人間関係の切り離し
- プライベートへの侵害
それぞれの行為について解説していきます。
身体的侵害
パワハラの一種である身体的侵害とは、職場において上司や同僚が暴力を振るう行為を指します。具体的には、以下のような行為が該当します。
- 殴る
- 蹴る
- 物を投げつける
- 威圧的に身体を押し付ける
- 強く腕を引っ張る
これらの行為は被害者に対して身体的な傷害を負わせるだけでなく、精神的な苦痛を与え、職場環境を著しく悪化させる要因となります。
このような行為は、刑事上の暴行罪や傷害罪に該当する可能性があり、民事訴訟では損害賠償請求の対象となります。裁判では治療費や慰謝料の請求が認められる場合があり、加害者や会社に対して責任を追及できます。
精神的侵害
精神的侵害は、被害者の精神的苦痛やストレスを引き起こす行為を指します。具体的には、以下のような行為が該当します。
- 暴言
- 侮辱
- 人格を否定する発言
- 過度な叱責
- 無視・仲間外れ
- 業務上の理不尽な要求
これらの行為は、職場の上下関係を利用して行われることが多く、被害者は抵抗しにくい立場に追い込まれます。
精神的侵害の特徴は、目に見える証拠が残りにくい点にあります。そのため加害者が指導の一環と主張するケースもあり、パワハラの立証が難しいです。しかし、継続的な暴言や嫌がらせが行われると、被害者の精神的な健康が損なわれ、うつ病や適応障害などの精神疾患を発症する可能性があります。
過大・過少要求
過大・過少要求とは、業務量や業務内容において不適切な要求を行う行為を指します。
過大要求は、被害者の能力や職務範囲を超える業務を強要し、精神的・肉体的な負担を増大させるものです。極端な長時間労働を強いたり、十分な指導を行わずに難易度の高い業務を押し付けたりするケースが挙げられます。
一方過少要求は、本来の能力や職務に見合わない単純作業や明らかに不要な業務ばかりを与える行為を指します。専門職の社員に対して単純な事務作業だけを任せる、あるいは仕事をほとんど与えず、意図的に職場で孤立させるといった行為が該当します。
過大・過少要求は、いずれも従業員の職場環境を悪化させ、キャリア形成に悪影響を及ぼします。これらの行為が常態化し、改善の見込みがない場合、法的措置を検討することも重要です。
職場内の人間関係から孤立
職場内の人間関係から孤立してしまうこともパワハラの一形態として認定されます。具体的には、特定の従業員を意図的に孤立させる行為を指し、以下のようなものが該当します。
- 業務上の情報を共有しない
- 仕事を与えない
- 無視する
こうした状況が続くと、被害者は業務に支障をきたし、精神的なストレスが蓄積される可能性が高まります。
会議やチームミーティングから排除されたり、業務連絡が意図的に行われなかったりすると、被害者は組織の一員としての役割を果たせなくなります。また、周囲の従業員が加害者の行為を黙認することで、被害者はさらに孤立し、退職に追い込まれるケースもあります。
このような行為は、労働環境を悪化させるだけでなく、企業のコンプライアンス違反として法的責任を問われることになるでしょう。
プライベートの侵害
職場におけるパワハラの一環として、プライベートの侵害が問題視されるケースもあります。本来、仕事と私生活は明確に分けられるべきものですが、上司や同僚が個人の生活に不当に介入し、精神的な苦痛を与える行為はパワハラに該当します。
例えば、勤務時間外に過度な連絡を強要されたり、プライベートの行動を細かく詮索されたりすることが挙げられます。また、家庭環境や恋愛関係について執拗に聞かれたり、交友関係への干渉があったりするのも対象です。
法的には、プライバシー権の侵害や不法行為に基づく損害賠償請求が可能な場合があります。企業は従業員の私生活を尊重し、適切な職場環境を整える義務があります。
パワハラの民事訴訟にかかる費用の内訳・相場

パワハラに対して民事訴訟を起こす場合、費用が発生します。具体的には、以下の2つに分けられます。
- 訴訟費用
- 弁護士費用
それぞれの費用の内訳や相場について解説していきます。
訴訟費用
パワハラの民事訴訟を起こす際に必要となる訴訟費用には、裁判所に納める費用やその他の諸費用が含まれます。
代表的な訴訟費用として挙げられるのが、収入印紙代です。これは請求金額に応じて決まり、たとえば100万円を請求する場合は1万円、500万円なら3万円程度となります。
また、訴訟に必要な各種書類を裁判所に提出する際には郵便切手代も必要になり、数千円から1万円程度が一般的です。
裁判に証人を呼ぶ場合は、証人日当や交通費も負担しなければなりません。証人の日当は通常1万円から8,000円程度とされており、遠方から来る場合には交通費の実費も必要になります。こうした諸費用を含めると、訴訟全体で最低でも数万円、多くの場合10万円以上の出費が必要になる可能性があります。
弁護士費用
パワハラの民事訴訟を弁護士に依頼する場合、弁護士費用がかかります。費用の内訳は大きく分けて、以下の4つになります。
- 相談料
- 着手金
- 成功報酬
- 実費
相談料は弁護士に初めて相談する際に発生し、1時間あたり5,000円から1万円程度が一般的です。最近では初回無料相談を実施している法律事務所も増えています。着手金は訴訟を依頼する際に支払う費用で、相場は請求額の8%から15%程度が目安です。
成功報酬は訴訟で勝訴したり和解が成立した場合に支払う費用で、獲得した金額の16%から20%程度が一般的です。さらに、訴訟にかかる実費として裁判所への手数料や証拠収集費用、交通費などが発生し、数万円から十数万円程度かかることが多いです。
これらの費用は法律事務所ごとに異なるため、詳細な費用については相談するようにしましょう。
パワハラの民事訴訟の各ステップでかかる費用

パワハラで民事訴訟を起こす場合、各手続きを進める必要があり、それぞれの段階で費用がかかります。具体的には、以下の以下の3つの時期に分けられます。
- 情報収集・弁護士への相談時
- 訴訟提起・裁判時
- 和解・判決後
それぞれのステップでかかる費用について解説していきます。
証拠収集・弁護士への相談時
パワハラの民事訴訟を検討する際、最初に必要となるのが証拠の収集と弁護士への相談です。
証拠収集にかかる費用としては、録音機器の購入費や、メール・チャットのデータ保存のためのプリント代、専門家に証拠の分析を依頼する場合の費用が挙げられます。
パワハラの音声を録音する場合は、明瞭に記録できるICレコーダーが必要となり、1万円~3万円程度の費用がかかることが一般的です。
次に、弁護士に相談する際の費用ですが、初回相談は30分~1時間あたり5000円~1万円程度が相場です。無料相談を実施している法律事務所もありますが、詳細なアドバイスを求める場合は有料となるケースもあります。
証拠が不十分なまま訴訟を起こすと、不利な立場に立たされる可能性があるため、この段階でしっかり準備をすることが重要です。
訴訟提起・裁判時
訴訟提起から裁判が進行する過程では、さまざまな費用が発生します。
訴状を提出する際に必要な手数料としては、収入印紙代と郵便切手代がかかります。収入印紙代は請求金額に応じて変動し、例えば100万円の請求なら1万円、500万円なら3万円程度が目安です。郵便切手代は裁判所ごとに異なりますが、6000円~1万円程度が一般的です。
また、証拠を提出するための準備にも費用がかかります。証人尋問を行う場合には、証人の日当や交通費が発生し、1人あたり数千円から1万円程度かかります。必要に応じて鑑定人を依頼する場合には、数十万円の費用が発生することもあります。
これらの費用は民事訴訟を起こす過程で必要になるため、訴訟を提起する前に準備しておくことが望ましいです。
和解・判決後
民事訴訟の裁判が進行し、和解または判決が下された後にも費用が発生する場合があります。和解に至った場合と判決によって損害賠償が認められた場合とでは、かかる費用が異なります。
和解が成立した場合、当事者間で決められた解決金の支払いが必要になります。この金額はケースによって異なりますが、数十万円から数百万円が相場です。また、弁護士に依頼している場合は、成功報酬として一定の割合(和解金の10~20%程度)を支払うことになります。
一方、判決が下されて原告が損害賠償を勝ち取った場合でも、被告が任意に支払わなければ強制執行の手続きを取る必要があります。強制執行を行う際には、裁判所への申立手数料や執行官の費用が必要で、一般的には数万円程度がかかります。
パワハラの民事訴訟にかかる期間

パワハラ訴訟に要する期間は、事案の複雑さや当事者の対応によって大きく変わります。
労働審判では比較的短期間で解決するケースが多く、3か月程度で終了しますが、通常の訴訟では1年以上かかることも珍しくありません。
ただし、期間が延びるほど費用が増えるとは限りません。訴訟の初期段階で十分な証拠を収集しておけば、手続きを円滑に進め、結果として全体の費用を抑えることが可能です。
また、和解交渉が成立すれば期間を短縮できますが、これは相手方の対応次第です。そのため、訴訟の進行スピードや費用は事案ごとに異なり、具体的な期間や費用を一概に予測することは困難と言えるでしょう。
労働審判と通常訴訟の違い
労働審判と通常訴訟は、いずれも労働問題を解決するための法的手続きですが、その手続きや解決までの期間、費用に違いがあります。
労働審判は迅速に紛争を解決することを目的とした手続きで、原則として3回以内の期日で審理が行われ、通常は3か月程度で結論が出ます。労働審判官と労働関係に詳しい審判員が審理を進めるため、専門的な判断が期待できる点も特徴です。
一方、通常訴訟は証拠調べや主張のやりとりに時間を要するため、解決までに1年以上かかります。労働審判と比較すると、弁護士費用や訴訟費用が高額になりやすく、手続きも複雑です。ただし、判決が確定すれば法的な強制力を持つため、相手方が支払いを拒んだ場合でも強制執行が可能になります。
どちらの手続きを選択するかは、解決を急ぐのか、より詳細な審理を求めるのかといった状況に応じて判断しましょう。
示談と訴訟ではどちらを選ぶべき?

パワハラの解決を目指す場合、民事訴訟以外にも「示談」という選択肢があります。話し合いでの早期解決を目指すため、訴訟費用を抑えられます。
しかし、話し合いでの解決には損害賠償額の算定や法的措置が難しく、デメリットという側面もあります。そのため、訴訟と示談の違いを把握した上でどちらを選択するか判断することが必要です。
以下では、示談のメリットとデメリット、訴訟を選ぶ場合の判断基準について解説していきます。
示談のメリットとデメリット
パワハラの被害者が示談を選ぶ場合、裁判と比べて解決までの期間が短く、精神的負担を軽減しやすい点が利点です。また、弁護士費用や裁判費用といった経済的な負担も比較的少なく抑えられます。
しかし、示談では加害者側との直接交渉が必要になるため、心理的なストレスが大きくなる可能性があります。また、裁判のように客観的な判断が下されるわけではないため、正確な賠償額を確保するのが難しく、不利な条件で合意してしまうリスクも考えられます。
解決までの期間については、示談であれば数週間から数か月程度で完了することが一般的ですが、一方で示談交渉が難航すると、裁判よりも時間がかかるケースもあります。
訴訟を選ぶ場合の判断基準
パワハラ被害者が訴訟を検討する際には、さまざまな要素を慎重に考える必要があります。
勝訴の可能性を高めるためには、証拠が不可欠です。客観的な証拠や証人の証言が揃っているほど、裁判での立証が容易になります。また、裁判は長期間にわたって時間がかかるため、被害者自身の体力や経済状況に応じた判断が求められます。
さらに、職場環境の改善や加害者の謝罪といった示談では得られない解決を求める場合、訴訟を選びましょう。ただし、訴訟には予測できない展開が生じる可能性があるため、必ずしも望む結果を得られるとは限りません。
加えて、時効の問題にも注意が必要です。パワハラの損害賠償請求権は原則として3年の時効が適用されるため、この期間内に法的措置を講じる必要があります。
まとめ

パワハラに対して民事訴訟を起こす場合は、事前に費用を把握しておくことが重要です。証拠の収集や裁判の手続きを懸念しがちですが、費用についても余裕を持って用意しておく必要があります。
しかも、その費用は決して安くありません。個人でも数十万円かかるのが一般的であるため、企業活動における民事訴訟は数百万円規模になるでしょう。そのため、パワハラに対する解決を目指す場合は、弁護士に相談して事前に費用がいくらかかるか知っておくといいでしょう。
弁護士に依頼する場合は、相談料などの弁護士費用がかかりますが、円滑な問題解決を目指すのであれば、弁護士のサポートは欠かせません。相談するだけでも適切なアドバイスをもらえるため、積極的に活用しましょう。
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株式会社WEBYの法務急済運営事務局。全国400以上の弁護士・司法書士のWEBマーケティング支援に従事。これまでに法律ジャンルの記事執筆・編集を1000記事以上担当。WEBコンサルやHP制作、SEO対策、LMC(ローカルマップコントロール)など様々な支援を通じて法律業界に精通。これらの経験を基に企業法務の際に必要な情報や適切な弁護士・司法書士を紹介している。

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