モラハラは民事訴訟できる?適用される要件や手続きの流れ、弁護士費用を徹底解説
訴訟・紛争解決
2025.02.17 ー 2025.02.21 更新

家庭内での問題として取り上げられがちなモラハラ。しかし、企業においてもモラハラは存在しており、職場での嫌がらせなどが該当します。
モラハラは精神的な暴力として深刻な問題とされていますため、民事訴訟によって損害賠償を請求できるケースもあります。しかし、民事訴訟の手続きに詳しくない方にとって、損害賠償の請求は非常にハードルが高く感じるでしょう。
そこで本記事では、モラハラを民事訴訟で訴えるための基礎知識から、手続きの流れや有効な証拠、費用について解説します。
モラハラとは?

モラハラ(モラルハラスメント)とは、言葉や態度によって相手の精神的な苦痛を引き起こす行為を指します。身体的な暴力を伴わないため、外部からは見えにくい特徴がありますが、被害者の精神的負担は大きい深刻な問題と言えます。
モラハラは家庭内だけでなく、職場や学校、友人関係などさまざまな場面で発生します。企業においては、職場で上司や同僚が執拗に侮辱や無視を続けるといった行為が該当します。こうした行為は被害者の心身に悪影響を与えるため、社会問題としても注目されています。
民事訴訟においては、モラハラによって精神的苦痛を受けたことを立証できれば、不法行為に基づく損害賠償請求が認められる可能性があります。ただし、加害者は自覚がない場合も多く、被害を証明するためには客観的な証拠が必要になります。
パワハラとの違い
モラハラとパワハラには共通点があるものの、その本質は異なります。精神的な攻撃や巧妙な操作によって相手を支配しようとするのがモラハラであるのに対し、パワハラは職場の上下関係や権力を背景にした嫌がらせや強制的な行為を指します。
パワハラでは、業務上の指導を逸脱した厳しい叱責、過剰な業務の押し付け、不当な評価などが典型的な例とされています。
この2つの境界は曖昧になることがあり、場合によっては両方の要素が混在するケースもあります。ただし、モラハラは個人的な関係性に基づくことが多く、パワハラは組織内の立場や役職に起因する点が特徴的です。
法律上の扱いにも違いがあり、パワハラは労働問題として取り上げられることが多い一方で、モラハラは家庭内や私的な関係における問題として捉えられることがあります。
モラハラが認定される条件

表面的に見えにくいモラハラについては、以下のような条件を満たすと認定されます。
- 社会通念上許容されている範囲を超えている
- 被害者に明確な損害が生じている
- 加害者に故意または過失があった
それぞれの成立要件について解説していきます。
社会通念上許容されている範囲を超えている
モラハラが法的に認定されるには、社会通念上許容される範囲を超えていることが判断基準となります。社会通念とは、一般的な社会の価値観や倫理観に基づく判断基準のことであり、これを超える言動が継続的に行われた場合、モラハラとして認定される可能性が高まります。
例えば、夫婦や職場の上司と部下の関係において、ある程度の注意や指摘は必要とされます。しかし、これが人格を否定するような発言や執拗な無視、長期間にわたる精神的圧迫へと発展した場合、社会通念上許容される範囲を超えた行為と判断されます。
また、発言や行動が客観的に見て、一般の人が「耐えがたい」と感じるレベルかどうかも重要です。「お前は無能だ」「存在価値がない」といった侮辱的な言葉を日常的に投げかけられる場合、被害者の精神的苦痛は深刻なものとなります。
社会通念上許容される範囲を超えた行為かどうかを判断するには、証拠が不可欠です。被害を立証するために、録音やメール、第三者の証言を集めることが有効な手段となります。
被害者側に明確な損害が生じている
被害者側に明確な損害が生じている場合も、モラハラが認定される要件です。損害とは、精神的苦痛や経済的被害など、被害者が受けた不利益を指します。
精神的苦痛としては、加害者の言動によって被害者が強いストレスを感じ、うつ病や適応障害などの精神疾患を発症するケースが挙げられます。例えば、モラハラによる長期間の侮辱や無視、人格否定が原因で医療機関の診断を受けた場合、診断書は損害を証明する証拠となります。
経済的損害としては、精神的な不調により仕事を辞めざるを得なかった場合や、治療費・通院費が発生した場合が該当します。また、モラハラによって生活環境が悪化し、転居を余儀なくされた場合なども経済的損害とみなされる可能性があります。
民事訴訟において損害賠償請求を行う際には、被害の実態を具体的に示す証拠が求められます。診断書、領収書、職場の退職証明書、メールや録音データなどの客観的な裏付けが、訴訟を有利に進めるうえで有効です。
加害者に故意または過失があった
モラハラの認定要件における故意とは、加害者が相手に精神的苦痛を与える意図を持って行動した場合を指します。一方過失とは、加害者にその意図がなかったとしても、結果的に相手を傷つける行為を行った場合を意味します。
例えば、日常的に侮辱する発言を繰り返すことで強い精神的苦痛を受けた場合、加害者は故意に精神的ダメージを与えたと判断される可能性があります。職場で上司が部下を長期間無視し続けた結果、部下がうつ病を発症した場合、上司は過失によってモラハラを行ったとみなされることがあります。
モラハラの訴訟では、加害者が「無意識だった」「悪意はなかった」と主張することが多いため、被害者側が故意や過失を立証することが重要です。そのためには、加害者の発言や行動の記録を残すことが有効です。
録音データやメールのやり取り、周囲の証言などの客観的な証拠が十分に認められれば、民事訴訟において損害賠償請求が可能となる場合があります。
モラハラにおける民事訴訟の手続き

モラハラを民事訴訟で訴える場合は、以下のような手続きで進めるのが基本的な流れです。
- モラハラ行為の証拠を集める
- 弁護士に相談・依頼する
- 裁判所に民事訴訟を申し立てる
それぞれの手続きについて解説していきます。
モラハラ行為の証拠を集める
モラハラの加害者に対して民事訴訟を起こすには、被害の証拠を集めることが重要です。裁判において被害者の主張だけでは不十分であるため、加害者の行為が継続的に行われ、精神的苦痛を与えたことを客観的に示す証拠が求められます。
証拠として有効とされるものには、加害者の発言や態度を記録した以下のようなものが効果的です。
- 音声データ
- メール
- LINEのやり取り
- 日記やメモ
例えば、加害者が侮辱や脅迫を含む発言をしている場面を録音しておけば、その言動が具体的に裁判で証拠として採用される可能性が高くなります。また、メールやSNSで加害者が精神的に圧迫するような内容を送っていた場合、その内容を保存しておくことが有効です。
さらに、第三者の証言も証拠の一つとなります。職場でのモラハラであれば、同僚や部下、上司などの証言を得ることで、加害者の行為が事実であることを補強できます。
弁護士に相談・依頼する
モラハラに対して民事訴訟を起こす場合、弁護士に相談・依頼するのがおすすめです。モラハラの訴訟では被害の立証や請求手続きなど、法律的な専門知識が求められるため、弁護士の助言が必須です。
弁護士に相談しなければならないという義務はありませんが、法的手続きをスムーズに進めるには弁護士のサポートが欠かせません。依頼時には証拠となる録音データやメールのやり取り、日記などを持参すると、より正確なアドバイスを受けられます。
相談の結果、民事訴訟を進めることが決まった場合、弁護士と正式な委任契約を結びます。依頼後は、弁護士が訴状の作成や証拠の整理、裁判所への提出などを行います。また、訴訟前に示談交渉を行い、裁判を回避する方法を検討することも可能です。
弁護士費用については、相談料や着手金、成功報酬などが発生するため、事前に料金体系を確認しておきましょう。無料相談を実施している法律事務所もあるため、費用面が不安な場合は活用を検討してみてください。
法務救済では、契約書のリーガルチェックから労務、法務観点のサポート、損害賠償などの企業間紛争に対応できる専門家を検索・依頼することが可能です。モラハラの民事訴訟を弁護士に相談したい方は、法務救済から弁護士を探してみてください。
無料で相談できる専門家検索はこちらから>>裁判所に民事訴訟を申し立てる
弁護士のサポートを受けながら、裁判所に民事訴訟を申し立てます。
訴訟の申し立ては、加害者の住所地を管轄する地方裁判所または簡易裁判所に行います。請求額が140万円以下の場合は簡易裁判所、それ以上の場合は地方裁判所が管轄します。
訴状には、以下のような内容を記載します。
- 被害の経緯
- 加害者の行為の詳細
- 損害の内容
- 請求する金額
訴状とともに証拠資料を提出し、訴訟費用として裁判所に収入印紙を納めることになります。
訴訟が受理されると、裁判所から加害者に対して訴状が送達され、裁判の期日が決定されます。訴訟では被害者側がモラハラの事実を証明し、精神的損害を受けたことを立証します。
民事訴訟に有効なモラハラの証拠

モラハラに対して民事訴訟を起こし、損害賠償を請求するためには、有効な証拠をそろえる必要があります。加害者の行為を証明するものがあれば、裁判を有利に進めることが可能です。
民事訴訟において有効な証拠は、以下の通りです。
- モラハラについて記載した日記やメモ
- モラハラの現場を録音・録画したデータ
- 診断書や通院履歴
- 第三者の証言
- 公的機関への相談履歴
それぞれの証拠について解説していきます。
モラハラについて記載した日記やメモも有力な証拠になる
モラハラの被害者が記録する日記やメモは、有力な証拠の一つとなります。モラハラの加害行為は言葉や態度による精神的な攻撃が中心であるため、日々の出来事を詳細に記録することで、継続的な被害の実態を示すことができます。
日記やメモには、加害者の言動に関する以下のような内容を記録することが重要です。
- モラハラの内容
- 日時
- 場所
- 状況
- 被害を受けた際の精神的・身体的影響
例えば、「〇月〇日、配偶者から『お前は無能だ』と言われ続け、食事も拒否された。その後、不安で眠れなかった」など、詳細に書き留めておくことで、加害行為の継続性や悪質性を証明しやすくなります。
また、記録は可能な限り正確に残し、改ざんの疑いが生じないようにすることが大切です。紙の日記だけでなく、スマートフォンのメモアプリやクラウド上の記録も有効です。
モラハラの現場を録音・録画したデータ
モラハラの現場を録音・録画したデータがあれば、加害者の言動を客観的に示すことができます。加害者が暴言を吐いたり、威圧的な態度をとったりする場面を記録できれば、精神的苦痛を受けた証拠として有効です。
録音・録画を行う際は、日付や状況が明確にわかるようにすることが重要です。スマートフォンやICレコーダーを活用することで、具体的な状況を証明しやすくなります。録画が可能であれば、加害者の表情や態度も記録できるため、より強い証拠となります。
ただし、違法な方法で録音・録画を行わないよう注意が必要です。日本の法律では、当事者が自身の会話を録音する「一方的録音」は合法とされていますが、第三者が無断で録音・録画することは違法となる可能性があります。したがって、被害者自身が直接記録することが望ましいです。
診断書や通院履歴
モラハラによる長期間のストレスや心理的圧迫が原因で、うつ病や適応障害、不安障害などの精神的な疾患を発症するケースは少なくありません。こうした被害を示すためには、医師の診断書を取得し、通院の履歴を記録しておくことが有効です。
診断書には、症状や発症時期、原因の可能性について記載されるため、モラハラが精神的な影響を及ぼしたことを証明する資料となります。また、継続的な通院履歴があることで、精神的苦痛が一時的なものではなく、長期間にわたる深刻な影響を与えたことを示します。
診察を受ける際には、医師にモラハラによる影響を伝え、診断書に記録してもらうことが大切です。通院の頻度や治療の内容についても記録を残しておくと、裁判でより有利に立証できる可能性があります。
第三者の証言
モラハラの多くは加害者と被害者の間で行われるため、証拠が不足しがちですが、第三者の証言があれば客観的な裏付けとなります。
職場でのモラハラであれば、同僚や部下が証人になり得ます。具体的には、「加害者が被害者に対してどのような言動をしていたか」「被害者の精神状態がどのように変化したか」といった内容を証言してもらうことが重要です。
証言を裁判で証拠として提出する方法はいくつかあります。証人として裁判に出廷し、口頭で証言してもらう方法のほか、陳述書を作成して提出することも可能です。陳述書は証人が自由に作成するのではなく、弁護士と相談しながら客観的な内容を記載します。
公的機関への相談履歴
被害者が公的機関に相談した履歴は、客観的な証拠として裁判で有効に活用できます。モラハラに対する公的機関として有効なのは、以下のようなものです。
- 配偶者暴力相談支援センター
- 法テラス
- 警察
- 市区町村の相談窓口
- 労働基準監督署
公的機関への相談履歴が重要とされる理由は、第三者による記録が残るため、被害者の主張が客観的に裏付けられるからです。例えば、配偶者からの継続的な暴言や精神的な圧力について相談し、職員がその内容を記録していれば、モラハラの実態を示す貴重な証拠になります。
相談履歴を証拠として活用するには、相談時のメモや職員が作成した報告書、相談の日時や内容を記載した書類を保管することが重要です。可能であれば、相談窓口から「相談記録」や「相談受付票」の写しを取得しておくと、より確実な証拠となります。
公的機関への相談履歴は、加害者による否定や反論に対抗できる有力な証拠となるため、早めに相談し記録を残すようにしましょう。
モラハラの民事訴訟にかかる費用

モラハラを民事訴訟で訴える場合、費用が必要です。その際、費用は大きく分けて以下の2つに分類できます。
- 弁護士費用
- 裁判手数料
それぞれの費用の相場について解説していきます。
弁護士費用の相場
弁護士費用は、弁護士に民事訴訟を依頼した場合にかかる費用です。費用は事務所によって異なりますが、一般的な相場として以下のような項目に分かれています。
- 相談料
- 着手金
- 報酬金
- 実費
法律相談料は、1時間あたり5,000円~1万円程度が一般的ですが、初回相談を無料としている事務所もあります。着手金は訴訟の進行に必要な費用として発生し、相場は20万円~50万円程度です。
裁判で勝訴し、損害賠償が認められた場合に支払う報酬金は、獲得した賠償額の10~20%程度が目安です。例えば100万円の損害賠償を得た場合、弁護士に10万円~20万円の報酬を支払うことになります。
訴訟を検討する際は、費用と得られる可能性のある賠償額を比較し、経済的な負担を考慮しながら判断することが求められます。
裁判手数料の相場
裁判手数料は請求する損害賠償額に応じて異なり、訴状を提出する際に収入印紙として裁判所に納める必要があります。一般的に、損害賠償請求額が高くなるほど手数料も増加します。
例えば、100万円の損害賠償を請求する場合、裁判手数料は10,000円です。簡易裁判所で扱う140万円以下の請求であれば、手数料は5,000円から15,000円程度に収まります。
また、裁判所が加害者へ訴状を送達するための郵便切手代も必要です。これも裁判所によって異なりますが、一般的には5,000円~10,000円程度がかかります。
訴訟にかかる裁判手数料は、基本的に原告が負担しますが、判決で勝訴すれば加害者に費用の負担を求めることも可能です。ただし、訴訟の結果によっては一部のみが認められる場合もあるため、事前に弁護士と相談し、費用対効果を慎重に検討することが重要です。
まとめ

健全な企業活動を運営していく上で、モラハラ対策は必須です。従業員の健康を守り、安全に働ける環境を構築するためには、モラハラの事実が確認できた場合に、被害者が速やかに対応できるようにすることが必要です。
モラハラでの民事訴訟や社内環境の改善を目指すには、弁護士に依頼するのをおすすめします。法律的な観点からモラハラが成立するか、民事訴訟をどうやって進めるのかといったサポートを受け、モラハラを解決していきましょう。
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