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名誉毀損で民事訴訟を起こすには?成立要件や手続きの流れ、判例を分かりやすく解説!

訴訟・紛争解決

2025.02.172025.02.21 更新

インターネットや日常生活において、誹謗中傷やデマの拡散が増えています。こうした時代背景もあり、名誉毀損に対する民事訴訟が発生するケースも少なくありません。

しかし、どのような発言が名誉毀損に該当するのかというのは、判断が難しいラインと言えるでしょう。また、民事訴訟についても詳しくないと、適切な措置を講じることができません。

本記事では、名誉毀損の定義や成立要件、民事訴訟の流れ、具体的な判例について解説します。誹謗中傷に対して法的措置を検討している方は、ぜひこの記事を参考にしてみてください。

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名誉毀損とは?

名誉毀損とは、事実の有無にかかわらず、公然と他人の社会的評価を低下させる発言や行為を指します。日本の法律では、刑法230条および民法709条に基づき、刑事・民事の両面で責任が問われる可能性があります。

被害を受けた場合、加害者に対し損害賠償請求や投稿の削除を求める民事訴訟を提起できます。証拠としては、発言の記録や投稿のスクリーンショット、関係者の証言などが有効です。

名誉毀損は表現の自由とも関係し、判断が難しいケースも多いです。そのため、被害に遭った場合は早めに弁護士に相談し、適切な対応を取ることが重要です。

名誉毀損に該当する行為

名誉毀損に該当する行為としては、事実と異なる情報を広めたり、相手の名誉を傷つける表現を用いたりすることが含まれます

SNSで根拠のない噂を拡散する行為や、職場で同僚の評判を落とす発言をする行為が挙げられます。また、メディアが十分な確認を行わずに報道し、個人や企業の評価を損なうケースも名誉毀損に該当する可能性があります。

ただし、表現の自由との兼ね合いから、すべての批判的な発言が名誉毀損にあたるわけではありません。公共の利益に関する指摘や、芸能人など公人に対する批評は、一定の範囲内で許容されることがあります。また、発言に相当の理由が認められる場合には、名誉毀損の責任を問われないこともあります。

名誉毀損の成否は、発言の内容や状況、社会的な影響などを総合的に判断して決定されます。そのため、一見すると名誉毀損に該当するような発言でも、実際の裁判では異なる判断が下されることもあります。

名誉毀損の成立要件

名誉毀損が成立する要件として、以下の条件があります。

  • 事実を摘示する行為があった
  • 摘示された事実が他人の社会的評価を低下させた
  • 摘示された事実が公然と行われた

それぞれの成立要件について解説していきます。

事実を摘示する行為があった場合

「事実を摘示する行為があったこと」とは、特定の人物や団体に関する具体的な事実を指摘し、その内容が社会的評価を低下させるものである場合に該当します。

ここでいう「事実」とは、客観的に証明できる内容を指し、実際に起こった出来事を含みます。例えば、「○○会社の製品は欠陥があり、安全性に問題がある」といった発言は、事実を摘示しているといえます。一方、「○○さんは性格が悪い」といった単なる主観的な意見は、事実の摘示にはあたりません。

事実の摘示には言葉だけでなく、文章や画像、動画を用いる場合も含まれます。SNSに特定の個人の違法行為を示唆する投稿をしたり、証拠のないまま「犯罪者」と記載した画像を拡散したりする行為も、名誉毀損に該当する可能性があります。

重要なのは、摘示された事実が真実であるかどうかにかかわらず、社会的評価を下げる内容であれば名誉毀損が成立し得る点です。そのため、事実を指摘する場合には慎重な判断が求められ、発言の影響を考慮する必要があります。

摘示された事実が他人の社会的評価を低下させた場合

「摘示された事実が他人の社会的評価を低下させた」とは、発言や書き込みが対象者の信用や評判を損ね、社会的な地位に影響を与えることを指します。個人的な感情を害する発言ではなく、第三者がその情報を知ることで対象者への評価が下がることが要件となります。

この要件を満たすかどうかは、対象者の社会的立場や影響の度合い、発言の内容によって異なります。例えば、軽い悪口や個人の主観的な評価では、社会的評価の低下とまでは言えないでしょう。一方で、犯罪の事実や職業的信用に関わる内容は、影響が大きく名誉毀損と認定される可能性が高まります。

名誉毀損を主張する際には、発言の内容がどのような影響を及ぼしたかを証明することが重要です。評判の低下による実害が明らかであれば、損害賠償請求が認められる可能性が高まるでしょう。

摘示された事実が公然と行われた場合

名誉毀損が成立する要件の一つに、「摘示された事実が公然と行われたこと」があります。ここでいう「公然」とは、不特定または多数の者が認識できる状況を指します。つまり、特定の個人間での会話ではなく、第三者が知り得る環境で発言や表現がなされることが必要です。

例えば、SNSやインターネット掲示板で特定の人物に関する誹謗中傷を投稿する行為は、不特定多数が閲覧可能であるため、公然性が認められます。一方で、個人的なメールや1対1の会話で行われた発言は、公然性がないと判断されます。

また、職場や学校などの限られた集団内での発言でも、その範囲が多数であれば公然性が認められることがあります。企業の会議や業務連絡の場で、社員に対して特定の個人を誹謗する発言がなされた場合、それが広く共有される可能性があれば公然性を満たすと判断されることがあります。

名誉毀損の成立には、この公然性の判断が重要なポイントとなります。発言の場や状況によって違法性の有無が左右されるため、発言がどのような形で広まったのかを証拠として示すことが重要です。

名誉毀損の民事訴訟で実際に起こった判例

名誉毀損が実際に起こった判例として、以下のような事例があります。

  • SNSでの誹謗中傷
  • 職場での悪口

それぞれのケースにおける名誉毀損の判例について見ていきましょう。

SNSでの誹謗中傷に対する判例

近年、SNS上での誹謗中傷に関する名誉毀損の判例が増加しています。特に匿名の加害者を特定し、民事訴訟で勝訴した事例が注目されています。

例えば、ある有名人が匿名アカウントから執拗な誹謗中傷を受けたケースでは、IPアドレスの追跡により加害者を特定し、裁判所はSNS上の発言も名誉毀損に該当すると判断し、加害者に多額の損害賠償を命じました。この判決は、SNS上の匿名性を盾に不適切な発言を繰り返す行為に警鐘を鳴らすものとなりました。

一方で、発信者情報の開示請求手続きの煩雑さや、海外サーバーを利用した場合の対応の難しさなど、課題も浮き彫りになっています。

また、別の事例では、企業の公式アカウントによる投稿が名誉毀損と認定されました。この判決は、企業のSNS運用に大きな影響を与え、投稿内容の精査や社内ガイドラインの見直しが進められるきっかけとなりました。

職場での悪口による名誉毀損の判例

職場での悪口が名誉毀損と認定された判例は、労働環境における人間関係の複雑さを反映しています。

ある企業では、上司が部下の業務能力を他の従業員の前で不当に貶める発言を繰り返していました。その結果、部下の評価が著しく低下し、昇進の機会を逃す事態が生じました。裁判所は、上司の発言が事実に基づかない悪意のあるものであり、名誉毀損に該当すると判断しました。

この判決は、職場における上下関係や権力構造が名誉毀損の成立に影響を及ぼす可能性を示しています。また、発言の頻度や内容、被害者のキャリアに与えた具体的な影響が判断材料となりました。

一方で、業務上必要な指導や評価と名誉毀損の線引きは難しい場合もあります。ある程度の批判的な発言は許容されるべきという意見もあり、この点については議論の余地が残されています。このような判例は、職場のコミュニケーションが重要な判断基準であり、企業の人事管理や従業員教育にも影響を与えています。

名誉毀損で民事訴訟を起こす手続きと流れ

名誉毀損に対して民事訴訟を起こす場合、法的な手続きが必要です。証拠の有無や名誉毀損の内容、弁護士がどれくらい手続きをサポートするかにもよりますが、基本的には以下のような流れで進めます。

  • 名誉毀損を証明する証拠を収集する
  • 加害者を特定する
  • 加害者と交渉する
  • 裁判所に民事訴訟を申し立てる
  • 審議・判決
  • 裁判所に執行を申し立てる

それぞれの手順について解説していきます。

名誉毀損を証明する証拠を収集する

名誉毀損で民事訴訟を起こすためには、発言や投稿が名誉毀損に該当することを証明する証拠が不可欠です。証拠が不足していると、裁判での立証が困難になり、請求が認められない可能性が高まります。

インターネット上の誹謗中傷の場合、SNSや掲示板の投稿内容を保存することが必要です。スクリーンショットを撮るだけでなく、投稿のURLや投稿日時を記録し、公的な証拠として利用できるWeb証拠保全サービスを活用するのが効果的です。

口頭での名誉毀損に関しては、録音データが有力な証拠となります。具体的には、以下の通りです。

  • 発言の日時
  • 場所
  • 参加者

これらを記録し、録音の信憑性を高めることが重要です。また、被害を受けた後の影響を示す証拠として、職場での評価の変化や取引の減少を示す書類も有効です。

加害者を特定する

証拠を揃えたら、加害者を特定する段階に進みます。加害者が明確に分かっている場合は問題ありませんが、インターネット上の匿名の投稿やSNSでの誹謗中傷の場合、加害者の特定が必要となります。

インターネット上の加害者を特定するには、プロバイダ責任制限法に基づき、発信者情報開示請求を行う方法があります。被害者は該当する投稿が行われたサイトの管理者やSNS運営会社に対し、投稿者のIPアドレスなどの開示を求めます。運営会社が情報を開示すれば、プロバイダに対して情報開示請求を行います。

また、刑事告訴を行うことで、警察の捜査を通じて加害者を特定できる可能性もあります。ただし、警察の対応には時間がかかることがあるため、迅速に訴訟を進めたい場合は民事手続きによる特定を優先することが望ましいです。

加害者と交渉する

名誉毀損で民事訴訟を起こす前に、加害者と交渉することが重要です。事前の話し合いで解決できる可能性があれば、できるだけ交渉を試みることが望ましいとされています

交渉の際は、書面による通知(内容証明郵便など)を送ることで、公式な意思表示とすることができます。内容証明郵便を送ることで、相手に対して法的手続きを検討していることを伝え、交渉の場を持つきっかけにもなります。さらに、弁護士を通じて交渉を行うことで、有利な条件で解決を図ることが可能です。

もし加害者が交渉に応じず、誠意ある対応をしない場合は、民事訴訟を視野に入れて証拠を整理します。交渉の過程や相手の対応も記録し、訴訟の際に証拠として活用できるように準備を進めることが求められます。

裁判所に民事訴訟を申し立てる

名誉毀損に関する民事訴訟を起こすには、裁判所に正式な訴状を提出する必要があります。

訴状には、以下のような情報を記載します。

  • 原告と被告に関する情報
  • 名誉毀損に該当する具体的な事実
  • 損害の内容
  • 請求する賠償額

損害賠償請求額は、慰謝料のほか、被害によって失われた収益や精神的苦痛の度合いに応じて決定されます。

訴状が完成したら、被告の住所地を管轄する地方裁判所に提出します。訴訟を申し立てる際には、裁判所に納める手数料(訴訟費用)も必要です。請求額に応じて異なりますが、例えば100万円の損害賠償請求の場合、1万円程度の収入印紙を貼付する必要があります

訴状が受理されると、裁判所は被告に対して訴状を送達し、弁論期日を決定します。その後、原告と被告の双方が主張を述べ、証拠を提出しながら審理が進められます。

審議・判決

民事訴訟での申し立て後は、裁判所が審議を行い、最終的な判決を下します。審議では原告と被告双方の主張を比較し、名誉毀損の成立要件が満たされているかが検討されます

裁判所は発言の事実関係を確認し、それが社会的評価を低下させる内容であるかを判断します。また、公然性や違法性があるかも精査されます。被告が「発言が真実である」と主張する場合は、その発言に関連する真実性の証明が求められます。

判決は数カ月から1年以上かかることがあり、名誉毀損が認められれば、被告に対して賠償命令が下されます。被告が判決を不服とする場合、控訴して上級審での審理が行われることもあります。

裁判所に執行を申し立てる

強制執行とは、裁判所の判断に基づいて被告の財産や収入を差し押さえ、原告が正当な賠償を受け取るための法的手続きです。民事訴訟で勝訴判決を得た場合、被告が自主的に賠償金を支払わなければ、強制執行の手続きを進める必要があります

強制執行を申し立てるには、確定判決または仮執行宣言付き判決を取得しなければなりません。判決が確定すると、裁判所から「執行文」が付与された判決正本を受け取り、これをもとに強制執行の申し立てを行います。申し立て先は、被告の財産の所在地や勤務先を管轄する地方裁判所です。

執行の方法には、以下のようなものがあります。

  • 給与の差し押さえ
  • 銀行口座の凍結
  • 不動産の競売

被告に十分な財産がない場合は、執行が困難になることもあります。そのため、訴訟前から被告の資産状況を把握し、適切な回収手段を検討することが重要です。

インターネット上の名誉毀損にはどう対応する?

インターネットの普及により、オンライン上での名誉毀損が増加しています。SNSやブログ、掲示板などで個人や企業の評判を損なう投稿が容易に拡散される時代となりました。

ネット上の名誉毀損は匿名性が高く、情報が瞬時に広まる特徴があるため、被害が深刻化しやすい傾向にあります。対応が遅れると、信用の回復が困難になり、さらなる影響を受ける可能性もあります。

適切な対策として、まず証拠の保全が重要です。問題となる投稿はスクリーンショットで保存し、URLや投稿日時も記録しておく必要があります。投稿者が特定できる場合は、直接削除を求めることが有効です。

最終手段として法的措置を講じることも選択肢の一つですが、状況に応じて慎重に判断することが求められます。

インターネット上での名誉毀損に効果的な法律

インターネット上の名誉毀損に対抗するため、近年、関連法の厳格化が進んでいます。侮辱罪の厳罰化とプロバイダ責任制限法は、被害者が適切な対応を取るうえで重要な法律とされています。

侮辱罪の厳罰化については、2022年の刑法改正によってインターネット上での悪質な誹謗中傷に対する刑罰が強化されました。従来、侮辱罪の法定刑は「拘留または科料」と軽微でしたが、改正後は「1年以下の懲役・禁錮または30万円以下の罰金」となり、刑事罰の適用範囲が広がりました。

プロバイダ責任制限法は、被害者が加害者を特定しやすくするための法律です。名誉毀損や誹謗中傷が行われた場合、プロバイダ(インターネットサービス提供者)に対し、発信者情報の開示請求が可能です。2022年の改正では開示手続きが迅速化され、被害者がスムーズに訴訟を起こせるようになりました。

これらの法律によって、インターネット上の名誉毀損に対する法的措置が強化されています。

まとめ

企業が名誉毀損に該当する誹謗中傷を受けた場合、法的措置として民事訴訟が有効です。それらの批判を無視すると企業の信頼性が疑われる、もしくは低下するリスクがあるため、法的手続きを経て対策するべきでしょう。

名誉毀損の民事訴訟が成立するかどうかは、証拠が重要になります。証拠の有効性を判断するには専門的な知識が必要になるため、弁護士などの専門家に相談するのがおすすめです。

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