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M&Aに必要な契約書とは?手続きの種類や必要となる契約書について解説

M&A・組織再編

2024.11.172024.11.21 更新

M&Aは、MergersとAcquisitionsの略で、直訳すると合併・買収を意味します。M&Aにはさまざまな手法があり、企業の成長戦略として積極的に利用されるほか、事業再生などにも利用されます。

M&Aではその過程でさまざまな契約を行う必要があり、契約書の作成と締結は極めて重要な役割を果たします。この記事では、M&Aの際の手続きの種類や契約書作成・締結のポイントについて詳しく解説していきますので参考にしてみてください。

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M&Aとは何か?その基本と重要性

M&Aは、次の手続きに分類されます。

狭義のM&A手続きの一覧は、次のとおりです。

  • 株式譲渡
  • 第三者割当による募集株式の発行による増資
  • 株式交換、株式移転、株式交付
  • 事業譲渡
  • 会社分割(新設分割、吸収分割)
  • 会社合併(新設合併、吸収合併)

このほか、業務提携や資本提携なども広い意味でM&Aと呼ぶことがあります。

なお『組織再編』は会社法上の用語であり、上記のうち株式交換、株式移転、株式交付、会社分割、会社合併の手続きを差します。

どの手続きもビジネス拡大のために積極的に利用される場合や、負債会社の再建のために事業を吸収する場合など、さまざまな場面で利用されます。

以下、それぞれの手続きについてメリット・デメリットを含めて簡単に解説していきます。

株式譲渡

株式譲渡は、保有する会社株式を全て他者に譲渡することにより会社そのものを譲り渡す手続きです。譲渡は有償・無償を問わず可能であり、譲渡の相手方としても個人や株式会社・合同会社などを問わずに利用できるスキームです。

株式譲渡においては、譲受人が全株式を取得すると元し元株主は全株式を手放すことになるため、元の株主は役員選任権や配当を受ける権利なども失います。

株式譲渡は会社のオーナーシップが変わる手続きであり、会社と従業員の雇用契約や取引先との契約関係等に変化はありません。ただし、取締役や代表取締役が変更になるなどして事業の方向性が大きく変わる可能性もあります。

事業承継の際にもしばしば使われるスキームです。

増資(第三者割当による募集株式の発行)

第三者割当による募集株式の発行とは、増資の手続きの一つで、出資者を募って新規株式を発行する手続きです。

発行した株式の分だけ新規に株主が増えることになるため、基本的に役員の選任権や株主総会の議題提案権などに影響を及ぼします。会社法では不特定多数の株式引受人を募集することが想定されていますが、実務上は総数引受契約によって特定の出資先を株主として迎える手続きが多く利用されます。

会社法に定められた範囲で、かつ定款に定めることにより、株主の権利を制限する株式の発行も可能です。新規発行の際は議決権のバランスなどを調整しつつ株式を発行することが求められます。

株式交換、株式移転、株式交付

株式交換、株式移転、株式交付は、いずれも会社をグループ化する際に用いられるM&A手続きです。

まず株式交換は、会社株式を相手方会社に譲渡して、対価として相手方会社の株式等を得ることで会社を相手方会社の子会社とする手続きです。例えばA会社の株式をB会社に移転することでA社はB社の子会社となり、もとのA社株主にはB社の株式や他の対価が交付されます。

株式移転は、会社を新設した上でその会社を親会社とする株式の移転を行う手続きです。例えば既存のA会社がある場合に、B社を設立してA社の株式をB会社所有となるよう移転させます。そして、もとのA社株主にはB社株式等の対価を交付します。

株式移転は複数の会社の契約によって行うことも可能です。例えばA社とC社が経営統合したい際に、B社を新設してA社とC社の株式を全てB社に移転することでB社を親会社としたグループ会社を作ることができます。

A社とC社のもとの株主は、それぞれB社の株式を持ち、引き続き経営に参加することも可能です。(株式の割合等は契約で定めておきます。)

株式交付は株式交換と似ていますが、完全子会社にする必要が無い場合に用いられる手続きです。株式会社同士のみで行うことができ、合同会社は参加できません。

事業譲渡

事業譲渡とは、会社または個人事業主が事業の一部または全部を他者に譲渡する手続きです。

譲渡の範囲や対価は自由に設定して行うことができ、会社と個人事業主を当事者として事業譲渡を行うことも可能です。また、無償での事業譲渡も可能です。

譲渡する事業の範囲として、従業員との雇用契約や取引先との継続的な契約関係等を指定する場合、対象となる相手方から個別に承認を得る必要があります。これは民法上の債権譲渡や債務引受にあたるためです。

事業の全部譲渡や重要な事業の譲渡、または一定の資産割合を超える譲渡は会社に大きな影響を与えるため、株主総会での決議が必要となります。

会社分割(新設分割、吸収分割)

会社分割は、会社の資産や負債、契約関係などを一括で分割して他社に承継させる会社法上の組織再編手続きです。

承継させる資産等について範囲を定める点で事業譲渡と同様ですが、債権債務の移転についての承認は債権者異議手続きという方法によって一括で行うことができます。

会社分割は、新しく会社を作って分割する新設分割の手続きと、他社に事業を承継させる手続きである吸収分割の手続きがあります。

事業譲渡との違いとしては、個人事業主との会社分割ができない点や、債権債務等の承継が一括で行える点などが挙げられます。

会社合併(吸収合併、新設合併)

会社合併は、会社の資産や負債、契約関係などの全てを他の会社に承継させる会社法上の組織再編手続きです。

事業の一部譲渡や会社分割と異なり、被承継会社は合併により消滅します。

会社合併には、他の会社に吸収される吸収合併と、2社以上の会社が合併して新規に会社を作る新設合併があります。

M&Aの一般的な流れ

M&Aの一般的な流れは次のとおりです。

  1. M&Aの想起、提案
  2. ノンネームシートの開示、買い手候補探し
  3. 秘密保持契約の締結
  4. 概要の提示、提案
  5. 面談
  6. 意向表明、基本合意
  7. デューデリジェンスの実施
  8. 条件交渉
  9. 契約
  10. クロージング前提条件のクリア、準備
  11. クロージングの実行

次に、必要となる契約書と併せてこれらの手続きについて解説していきます。

M&A契約書の定義と役割

M&Aを行う際は、各手続きに応じた契約書が必須となります。契約書を作成する理由は、承継させる資産や業務範囲のほか、譲渡対価、責任の所在等を明確にし、手続きを円滑に進めるためです。

M&Aにおいて作成する契約書は、基本合意書、最終契約書のほか、秘密保持契約書などがあります。

契約書以外にも、契約前の意向を示すための意向表明書を作成することがあります。

そのほか、M&Aコンサル会社や弁護士・会計士等とアドバイザリー契約を結ぶことも多く、アドバイザリー契約書も必要になります。

以下ではこれらの契約書の役割や記載事項、および注意点を解説していきます。

基本合意書

基本合意書とは、この文書は、買収側と売却側が取引の基本的な条件について合意したことを示すものであり、最終契約書の締結に向けた交渉の基礎となります。

基本合意書には通常、取引の概要、買収価格の算定方法、デューデリジェンスの実施期間、独占交渉権の付与、秘密保持義務などの重要な条項が含まれます。特に、買収価格の算定方法や支払条件は両者にとって重要な関心事であり、慎重に協議される必要があります。

また、基本合意は本契約の締結前に行うものであるため、法的拘束力のある条項と拘束力のない条項が混在することがあります。

例えば、秘密保持義務や独占交渉権は法的拘束力を持つ一方、調整が必要となる最終的な取引条件については拘束力を持たないことが一般的です。

秘密保持契約書(nda)

秘密保持契約(nda)は、M&Aを行う際に互いの情報についての秘密を保持し、許可なき情報の開示を禁止する契約のことです。

秘密とは、M&Aによって承継する資産の範囲や、発行する株式の数、対価等の情報に加えてM&Aを行う事実そのものも含みます。

M&Aにおいては、M&Aの実行や契約の前に提案をもちかける段階で、その提案した情報を他者に公開されることが損害になることがあります。また社会への情報開示のタイミングや開示範囲などが複雑になりがちで、場合によってはインサイダー取引等の規制などに引っかかる可能性もあります。

M&Aにおいて情報は非常に重要であるため、基本合意の前のM&A事業を提案する段階で、先行して秘密保持契約書を締結するケースが多くなります。

アドバイザリー契約書

アドバイザリー契約とは、M&Aアドバイザーや弁護士・公認会計士・監査法人などの専門家に報酬を支払ってM&Aについてアドバイスを受ける旨の契約です。

M&Aの前提として、スキームの選択、相手先の選定、またスケジュールの調整や税務手続き・書面の適法性の確保などをしっかりと行う必要があります。

このような課題を解決するために、専門家とのアドバイザリー契約を締結します。手続きはM&Aの想起段階から成立までの長期にわたる場合が多いため、数カ月〜1年ほどの単位で結ばれることが多いです。

意向表明書

意向表明書は、M&Aの契約締結を行う前の時点で、基本契約について合意の意向を示すための書面です。

M&Aは会社にとって大きな手続きです。自社により適した相手方を見つけるためには複数の会社に契約の打診を行うケースも多く、目的達成のためには相手方を調査することも必要になります。

そのため話を受けた側は本契約前にキープして検討したい場合があり、その動きとして意向表明書を提出することがあります。すぐに契約に向かう場合などは、必ずしも意向表明書は必要ではありません。

意向表明書には、譲受会社の商号や代表者等の基本的な会社の詳細情報のほか、譲渡額、スケジュールの大枠、独占交渉権を得たい旨やその期限等を記載します。

最終契約書

最終契約書とは、M&Aにおいて承継させる権利や資産等の範囲、具体的なクロージングの条件やスケジュールなどが全て定まった際に行う本契約の契約書です。

例えば合併契約を行う場合には、合併契約書のことを最終契約書と呼びます。本契約であるため法的拘束力を持つことになります。

M&Aの各契約において特徴的なのは、表明保証と誓約の条項です。表明保証とは、相手方に提示した財務状況等の情報に虚偽がないことや、係属中の訴訟手続きがない旨などを表明し保証することです。

これにより、買い手側は価値のない会社を掴んでしまうリスクを減らし、虚偽・違反があった場合の賠償請求を行いやすくなります。

買い手側としても、クロージングまでにクリアすべき条件がある場合にはその条件をクリアする旨などを表明し、保証することがあります。

この表明内容について双方が補償条項を設けることで、表明保証や誓約について虚偽や違反があった場合に損害賠償を請求することが容易になります。さらに、従業員の処遇や知的財産権の移転、競業避止義務なども盛り込まれることが一般的です。

クロージングの前提条件が成就しない際には白紙解約するなど、M&Aを行わない旨の解除条項を含めるのも一般的です。

M&Aの手続きは、最終契約書の内容に沿って進めていき、契約によって定めたクロージング日に譲渡や合併等を実行することになります。

最終契約書の作成には細心の注意が必要で、両社の利害を適切にバランスさせることが求められます。

弁護士・法律事務所によるアドバイザリー契約・リーガルチェックの重要性

M&A契約書の作成と締結において、弁護士によるリーガルチェックの実施は極めて重要な役割を果たします。

関連する法令について専門的な知識を持つ弁護士が契約書を精査することで、潜在的なリスクや法的問題を事前に発見し、適切な対処が可能となります。

また、新設分割等の手続きは登記が効力要件となるため、登記の専門家である司法書士によるスケジュールチェックも有効です。

将来的なトラブルや紛争を未然に防ぐことができ、M&Aの成功確率を高めることができます。

また、弁護士は契約条項の解釈や交渉において、クライアントの利益を最大限に守る役割も担います。複雑な法律用語や条項の意味を分かりやすく説明し、クライアントが十分に理解した上で意思決定できるようサポートします。

リーガルチェックを活用することで取引でを取引の安全性と確実性が向上し、その結果として円滑な取引の実現につながります。

適切な弁護士の選び方

M&A案件に精通した弁護士を選ぶことは、契約書作成と締結の成功に不可欠です。

依頼先を検討する際は、まず弁護士の経験と専門性を確認しましょう。M&Aを専門にして、仲介やセミナー等を行う弁護士事務所もあります。

M&A取引の実績が豊富で、業界特有の法的課題に精通している弁護士を探すことが重要です。会社規模に応じて大手法律事務所だけでなく、専門性の高い中小規模の事務所も視野に入れると良いでしょう。

次に、コミュニケーション能力と柔軟性も重要な選定基準です。複雑なM&A案件では、法律用語を分かりやすく説明し、クライアントの意図を正確に理解できる弁護士が望ましいです。

またM&Aの手続きは長期にわたることが多く、段階に応じて着手金、中間金、成功報酬に分かれるケースが多いほか、行う業務に応じて契約書の作成料やデューディリジェンス料金がかかります。こうした費用について適切な報酬体系を提示できる弁護士を選ぶことが大切です。

信頼性と評判も考慮に入れましょう。過去のクライアントからの評価や、業界内での評判を調査することで、より信頼できる弁護士を見つけることができます。適切な弁護士を選ぶことで、M&A契約書の作成と締結プロセスがスムーズに進み、法的リスクの発生を最小限に抑えることができます。

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