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 雇用契約書とは?労働条件通知書との違いや記載事項を解説

契約書・リーガルチェック

2024.10.272024.11.04 更新

雇用契約書は、使用者と従業員の間で交わされる重要な文書です。企業が新しく従業員と雇用契約を締結する際や、既存の従業員との契約を更新する場合に必要となりますが、その内容や作成方法に不安を感じている経営者や人事担当者も多いのではないでしょうか。

雇用条件や労働環境を明確にすることは、トラブルを未然に防ぐ上で非常に重要です。そこで、この記事では雇用契約書の概要や必要な記載事項について詳しく解説します。

適切な雇用契約書を作成することで、従業員との良好な関係を築き、安定した労働環境を整えることができます。この記事を読むことで、雇用契約書に関する理解を深め、自社に適した契約書作成のために参考にしてみてください。

雇用契約書とは

雇用契約書は、使用者と従業員の間で交わされる重要な文書です。これは、雇用関係の基本的な条件を明確にし、双方の権利と義務を定めるものです。

雇用契約書には、給与、勤務時間、休日、福利厚生などの労働条件が詳細に記載されます。また、契約期間や解雇条件なども含まれることがあります。

雇用契約書を作成することで、労使間の誤解や紛争を未然に防ぐことができます。特に、労働条件の変更や退職時のトラブルを避けるためにも、明確な契約書の存在は重要です。ただし、雇用契約書の内容が労働基準法などの法律に違反している場合、その部分は無効となる可能性があります。

そのため、雇用契約書を作成する際は法的な問題がないかを確認するためにリーガルチェックを行うことをおすすめします。専門家のアドバイスを受けることで、より確実で公正な雇用契約書を作成することができ、将来的なリスクを軽減することができます。

雇用契約書と労働条件通知書との違い

雇用契約の際は、雇用契約書とは別に『労働条件通知書』を作成する場合があります。どちらも雇用関係において重要な役割を果たす書類ですが、その性質や目的には違いがあります。

雇用契約書は、労働契約における一般的な内容を記載し、双方が署名押印することで法的拘束力を持つ契約書です。一方で労働条件通知書は、労働基準法に基づき、使用者が労働者に対して個別具体的な労働条件を明示するための文書です。

雇用契約書は、労使双方の権利義務を明確にし、将来的なトラブルを防ぐ役割があります。これに対し労働条件通知書は、賃金や勤務時間など、法で定められた特定の労働条件を個別に明示し、通知することが目的の書面です。

この明示事項は雇用契約書1通に含めて記載することも可能です。ただし従業員を複数雇用する際に備えて、雇用契約書には共通の契約条項を記載し、労働条件通知書には個別の労働条件を記載する使い方が一般的です。

労働条件を記載した書面の不交付や法定の明示事項の非記載は、使用者に対する罰則も定められています。

両者の違いを理解し適切に活用することで、労使関係の安定化につながります。特に雇用契約書は、その内容が法的に問題ないかを確認するためにリーガルチェックを行うことをおすすめします。

雇用契約書は法律上の作成義務があるかどうか

雇用契約書の作成に関して、法律上の明確な義務付けはありません。これに対し、労働基準法では特定の労働条件の明示および書面での交付が義務付けられており、契約書とは別でこれらを記載した労働条件通知書を交付するのが一般的です。

ただし、雇用契約書の作成は強く推奨されます

雇用契約書には双方の契約の事実を明確に示す効果があります。また、将来的な労使間のトラブル防止や、労働条件の証明に役立ちます。

特に有期雇用契約の場合に契約期間や更新の有無などを明確にするために、書面での契約が事実上必要不可欠です。さらに、就業規則が適用されない小規模事業所では、雇用契約書が労働条件を定める唯一の文書となる可能性が高く、その重要性は一層増します。

したがって、法的義務はないものの、雇用契約書の作成は労使双方の利益を守る上で極めて重要な実務慣行といえます。

雇用契約書の記載事項が決まっているかどうか

雇用契約書の記載事項は、特に法律による定めはありません。

ただし雇用契約の事実を明らかにする証拠書面ですので、雇用契約を行う旨、誠実に業務を遂行する旨、雇用期間、機密保持、競業避止に関する事項等の一般条項を記載して契約日と双方の署名または記名押印を行うのが一般的です。

記載事項の適切な選択と明確な記述は、将来的な労使間のトラブルを防ぐ上で非常に重要です。そのため、雇用契約書の作成にあたっては、法定の記載事項を遵守しつつ、企業の実情に即した内容を盛り込むことが求められます。

双方の署名押印が必要かどうか

雇用契約書における記名または署名押印の必要性は、法律上明確な規定がありません。しかし契約の成立と内容確認のために、双方の署名(企業側においては記名)と押印を行うことが一般的です。これは、証拠としての役割を果たすためです。

記名とはコピー等による記載を含みます。署名は手書きを意味します。一般的に、契約書の証拠としての有効性は、記名よりも署名が、署名のみよりも署名押印が勝ります。

また、改ざんを防ぐ効果もあります。

電子契約の普及に伴い、電子署名や電子認証による合意確認も増えています。この場合、従来の押印に代わる本人確認や意思確認の方法が必要となります。

重要なのは、双方が契約内容を十分に理解し、合意した上で意思表示を行うことです。署名押印の有無にかかわらず、契約内容の明確化と相互理解が最も重要です。

契約書の作成は、トラブル防止のためにも専門家によるリーガルチェックを受けることをおすすめします。

雇用契約書(労働条件通知書)に記載すべき重要事項

雇用契約書(労働条件通知書)には、労使間の権利と義務を明確にするために、いくつかの重要事項を記載する必要があります。

労働基準法では必ず書面に記載し交付しなければならない項目を定めており、雇用契約書に明示するか、別途労働条件通知書を作成して交付する必要があります。正社員や契約社員に加え、パート・アルバイトなどの雇用形態を問いません。

なお、一定の条件のもと、メール等の電子データによる交付も可能です。

以下、記載すべき事項について詳しく解説していきます。

絶対的明示事項

労働条件として明示・通知が必須となる絶対的明示事項は次のとおりです。

  1. 労働契約の期間に関する事項
  2. 期間の定めのある労働契約を更新する場合の基準に関する事項
  3. 就業の場所及び従業すべき業務に関する事項、及びその変更の範囲
  4. 始業及び終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を二組以上に分けて就業させる場合における就業時点転換に関する事項
  5. 賃金(退職手当及び臨時に支払われる賃金等を除く。)の決定、計算及び支払いの方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項
  6. 退職に関する事項(解雇の事由を含む。)

これらのうち昇給に関する事項を除き、使用者は労働者に対して全て書面に記載して交付する必要があります。(一定の条件のもと、メール等も可。)

また令和6年4月労働条件明示の改正により、有期労働契約の場合には次の事項も明示が必要になります。

  • 更新上限の有無とその内容
  • 無期契約への申し込みの機会と、その際の労働条件

相対的記載事項

相対的記載事項とは、労働条件に定めた場合には明示しなければならない事項です。

  1. 退職手当の定めが適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払いの方法並びに退職手当の支払いの時期に関する事項
  2. 臨時に支払われる賃金(退職手当を除く。)、賞与及びこれらに準ずる賃金並びに最低賃金額に関する事項
  3. 労働者に負担させるべき食費、作業用品その他に関する事項
  4. 安全及び衛生に関する事項
  5. 職業訓練に関する事項
  6. 災害補償及び業務外の傷病扶助に関する事項
  7. 表彰及び制裁に関する事項
  8. 休職に関する事項

これらの相対的記載事項を適切に記載することで、より詳細で明確な雇用契約を結ぶことができ、労使関係の安定化につながります。

雇用契約書作成時のポイント

雇用契約書を作成する際には、いくつかの重要なポイントに注意を払う必要があります。まず、必要な記載事項を漏れなく網羅することが大切です。労働基準法で定められた絶対的記載事項や、業務内容に応じた相対的記載事項を適切に盛り込むことで、法的なトラブルを防ぐことができます。

以下、労働者から見ても重要な労働条件について、ポイントを詳しく解説していきます。

これらのポイントに注意を払いながら雇用契約書を作成することで、労使間の認識の齟齬を防ぎ、円滑な雇用関係を築くことができます。

必要な記載事項の項目を網羅する

雇用契約書を作成する際には、まずは必要な記載事項を漏れなく網羅することが重要です。

労働基準法で定められた絶対的記載事項には、労働時間、賃金、休日などが含まれます。これらの事項を適切に盛り込むことで、従業員の権利や義務をより詳細に定めることができ、法的なペナルティを避け、労使間の信頼関係構築にも寄与します。

労働時間制を明示する

雇用契約書において労働時間制の明示は非常に重要です。一般的な労働時間制には、通常の労働時間制、変形労働時間制、フレックスタイム制などがあります。雇用契約書には、適用される労働時間制を明確に記載し、具体的な労働時間や休憩時間を明示する必要があります。

例えば通常の労働時間制の場合、1日の所定労働時間や始業・終業時刻、休憩時間を明記します。変形労働時間制を採用する場合は、その旨を明示し、対象期間や各日・各週の労働時間を具体的に示す必要があります。

フレックスタイム制を導入する際は、コアタイムの有無やフレキシブルタイムの範囲を明確にします。

また、時間外労働の取り扱いや休日労働の可能性についても言及することが望ましいでしょう。労働時間制を明確に示すことで、労使間の認識の相違を防ぎ、、労働基準法に基づいた適切な労働時間管理を行うための基礎となります。

転勤や職種変更の有無を明確にする

雇用契約書において、転勤や職種変更の有無を明確にすることは非常に重要です。これらの条件は従業員の私生活や キャリア に大きな影響を与える可能性があるため、入社の段階で明確にしておくことが望ましいです。

転勤の可能性がある場合は、その範囲や頻度、また転勤に伴う手当などについても具体的に記載することが求められます。

職種変更についても同様に、どのような状況下で変更が生じる可能性があるのか、また変更時の給与や待遇の取り扱いについても明記しておくべきです。

試用期間を明記する

試用期間は、新規採用者の適性や能力を見極めるために設けられる重要な期間です。雇用契約書にこの期間を明記することで、雇用主と従業員の双方が共通の認識を持つことができます。

通常、試用期間は3ヶ月程度に設定されることが多いですが、業種や職種によって異なる場合もあります。この期間中は、労働条件や待遇が本採用時と異なることがあるため、その詳細を明確に記載することが重要です

雇用契約書の法的効力とリスク

雇用契約書は、労使間の権利義務を明確にする重要な文書ですが、その法的効力とリスクについて理解しておくことが大切です。

適切に作成された雇用契約書は、労働条件を明確にし、将来的な紛争を防ぐ効果があります。一方で、不適切な記載や法令違反がある場合、契約の一部または全部が無効となる可能性もあります。また、曖昧な表現や不十分な記載は、後々のトラブルの原因となることがあります。

このようなリスクを回避するためには、専門家によるリーガルチェックが有効です。雇用契約書の内容が労働関連法規に準拠しているか、両者の権利義務が明確に定められているかを確認することで、将来的な労使紛争を未然に防ぐことができます。

雇用契約書の不備によるトラブル事例

雇用契約書の不備は、労使間のトラブルを引き起こす原因となります。

具体的な事例として、労働時間の取り決めが曖昧だったために、従業員から未払い残業代の請求を受けるケースがあります。また、雇用形態や契約期間が明確に記載されていなかったために、正社員としての地位確認訴訟に発展するケースも見られます。さらに退職に関する条件が明記されていないことで、退職金の支払いをめぐる紛争が生じることもあります。

こうしたトラブルを防ぐためには、雇用契約書の作成時に細心の注意を払う必要があります。特に、労働条件の詳細や就業規則との関連性、試用期間の有無、契約更新の条件や退職に関する取り決めなども、具体的に明記することが望ましいでしょう。

雇用契約書の不備によるトラブルは、企業にとって大きな損失につながる可能性があります。金銭的な損失だけでなく、企業イメージの低下や従業員のモチベーション低下など、様々な悪影響が考えられます。

雇用契約書は多くの従業員を雇用する際に共通して使用する文書になるため、その作成には十分な時間と労力をかけ、専門家のアドバイスを受けることも検討すべきです。

雇用契約書を電子化する場合の注意点

雇用契約書の電子化が進む中、その導入には慎重な対応が求められます。

電子契約の有効性は認められていますが、労働基準法に基づく労働条件の明示義務を満たすためには、従業員が内容を確認し保存できる状態にする必要があります。

電子データによる通知の条件としては①労働者の希望があり②出力して書面を作成できるもの、に限られます。なおホームページに公開するなどの提示は認められず、メール・FAX、LINE等による個別通知は認められます

もう一点、電子契約の際に気をつけたいのが電子署名です。電子署名法に準拠した電子署名を用いることで、書面と同等の法的効力を持たせることができます。

ただし、従業員が電子署名を用意できていないケースも多く、まだしばらくは書面での契約が主流となるでしょう。

保管については、データの改ざんを防止し長期保存の対策を講じることが重要です。電子化によって効率化が図れる一方で、サイバー攻撃に対するセキュリティリスクが高まるため、適切な管理体制の構築が不可欠です。

雇用契約書のリーガルチェックを行う重要性

雇用契約書は、労使間の権利義務を明確にする重要な文書です。しかしその内容が法律に抵触していたり、曖昧な表現が含まれていたりすると、将来的に労使紛争の原因となる可能性があります。

そのため、雇用契約書の作成後には、専門家によるリーガルチェックを受けることが非常に重要です。リーガルチェックを行うことで、法的リスクを最小限に抑え、労使双方の利益を守ることができます。

特に個人事業主から法人化して従業員を初めて雇う場合や、新規事業につき従業員の大量雇用が必要な場合などは、雇用契約書が多くの従業員に必要になるため早めのリーガルチェックがより大きい効果を発揮します。

明確な労働条件を提示することで、企業の評判や従業員のモチベーションにも良い影響を与えます。雇用契約書は法的に問題ないかを確認するためにリーガルチェックを行うのがおすすめです。

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