顧問弁護士と一般弁護士の違いとは?契約形態・対応範囲をわかりやすく解説
企業法務
2025.06.30 ー 2025.07.02 更新

顧問弁護士と一般弁護士の違いがよく分からず、どちらに相談すべきか悩んでいる経営者の方は多いのではないでしょうか。
本記事では、法務に詳しくない中小企業の方にも分かりやすく、契約形態や対応範囲、費用の違いなどを実務目線で解説します。
両者の特徴を知ることで、自社にとって最適な弁護士の選び方が見えてくるはずです。
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顧問弁護士と一般の弁護士は、契約の形式や支援範囲、対応スピードなど、実務上の観点で大きな違いがあります。ここでは、とくに企業が弁護士を選ぶ際に重視すべき6つの比較ポイントをわかりやすく解説します。
- 契約形態と契約期間
- 相談できる法務の範囲
- 費用体系
- 対応スピード
- リスク予防
- 社内の法務体制への関与・連携
それぞれについて解説していきます。
契約形態と契約期間
企業が弁護士と契約する際にまず確認すべきなのが、契約の形態と期間です。
顧問弁護士との契約は、半年から1年単位の継続契約が主流で、企業の法務ニーズに応じた支援体制があらかじめ整備されています。契約の際には、対応範囲や相談回数、連絡手段などが明確に取り決められ、長期的なサポートを前提とした関係性が築かれる点が特徴です。
一方で、一般の弁護士は、個別のトラブルや案件に応じて都度契約を結ぶ「スポット型」の形式が基本となります。案件が終了すれば契約も終了するため、継続的な支援は得にくく、初回の相談時には毎回、背景や経緯の説明が必要になるケースも少なくありません。
企業にとっては、「日常的な支援体制を整えるか」「必要なときだけ依頼するか」が選択の分かれ目となります。
相談できる法務の範囲
顧問弁護士は、継続契約に基づいて企業の法務全般を幅広くサポートします。企業の内部事情や業務フローを把握しているため、トラブルの芽を早期に発見し、予防的なアドバイスを日常的に受けられるのが大きな特徴です。
対応可能なおもな法務業務には次のようなものがあります。
- 契約書の作成・レビュー
- 就業規則や社内規程の整備
- 労務トラブルへの助言
- 債権回収の初動対応
- 顧客クレーム・取引先トラブル対応
- コンプライアンス体制の構築や社内チェック
このように、日常業務における「ちょっとした不安」や「判断に迷う場面」でも、顧問弁護士ならタイムリーに相談でき、スピード感ある意思決定を後押ししてくれます。
一方で、一般の弁護士はスポット契約が基本で、訴訟や紛争など明確なトラブルが発生してから対応するケースが大半です。企業の事情を継続的に把握しているわけではないため、日常的な法務判断や予防的な支援には向いていないのが現実でしょう。
契約書の作成やレビューについては、事前に費用感を把握しておくことも大切です。詳しくは、以下の記事をご覧ください。

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費用体系
顧問弁護士の契約は、月額制の定額料金が主流です。多くの企業では、月額3万〜10万円前後の範囲で契約されており、契約書のレビューや労務相談など、日常的な法務サービスがこの中に含まれます。
相談のたびに費用を気にする必要がないため、些細な問題でも早期に相談できるというメリットがあります。
このように、予防的な法務対応を継続して行いたい企業にとって、費用が定額で見通しやすい顧問契約は非常に有効な選択肢です。特に、法務部門を持たない中小企業にとっては、コストを抑えつつ「いつでも相談できる体制」を整えられる点で合理的といえるでしょう。
一方、一般の弁護士との契約は基本的にスポット型。契約書の作成には1件あたり5万〜10万円、訴訟対応では着手金や成功報酬が必要になるケースも多く、依頼内容ごとに費用が大きく変動します。
トラブル対応の必要が生じたタイミングで依頼する形になるため、コスト管理や緊急時の初動対応に不安が残る場合もあります。
顧問契約は、月額で費用を平準化しつつ、日常的な法的意思決定を支援できる体制を構築できるのが特徴です。スポット契約との違いを理解し、自社のリスク管理スタイルに合った形を選ぶことが大切です。
詳しくは、以下の記事をご覧ください。

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対応スピード
法的トラブルが発生した場合、初動のスピードが事態の拡大を防ぐ鍵を握ります。
顧問弁護士は、継続的な契約を通じて企業の内部事情を把握しているため、相談時に必要な事前説明を省略でき、即座に対応に移れる体制が整っている点が特徴です。取引先とのトラブルが発生した場合でも、業務背景を踏まえた上で迅速に対応してくれます。
一方、一般の弁護士では案件ごとにヒアリングが必要になるため、対応開始までに一定の時間を要します。背景資料の収集や事実関係の整理から始めなければならず、初動対応が遅れるリスクもあります。
こうしたタイムラグは、リスクの顕在化や深刻化を招くおそれがあるため、初動の迅速さを重視する企業にとっては、顧問契約が適しているでしょう。
リスク予防
顧問弁護士の大きな強みは、法的リスクを未然に察知し、予防的な対応ができる点にあります。継続的な関与により、企業の業務プロセスや過去の課題を把握しているため、日々の判断に潜むリスクにも目を光らせることが可能です。
一方、一般弁護士にスポットで相談する場合、既に問題が表面化した状態での対応が前提となるため、予防ではなく事後対応にとどまることが大半です。
トラブルの芽を早期に摘む体制を整えたい企業にとって、顧問契約はリスクマネジメントの中核を担う仕組みとなります。
社内の法務体制への関与・連携
顧問弁護士は、企業との継続的な関係性を活かして、単発の助言を超えた社内法務体制の構築にも深く関与します。たとえば、以下のような支援が可能です。
- 契約審査のフロー整備
- 従業員からの相談窓口の設置支援
- コンプライアンス研修の実施
これに対して、一般の弁護士との単発契約では、こうした社内体制への踏み込みは難しく、問題の根本的な解決に時間がかかるケースもあります。
法務を「経営のインフラ」として位置づけたい企業にとっては、顧問弁護士の存在が長期的な経営安定に寄与する重要なパートナーとなるでしょう。
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顧問弁護士への依頼が向いている企業の特徴

顧問弁護士は、企業にとって継続的に寄り添う“外部法務部門”ともいえる存在です。とくに、以下のような課題やニーズを持つ企業にとっては、その支援が効果的に機能するでしょう。
- 契約業務や取引が多い
- 社内に法務専任者や体制が整っていない
- 新規事業・サービス展開を検討している
- すぐに弁護士に相談できる体制を整えたい
- クレーム・紛争・労務トラブルのリスクを未然に防ぎたい
契約業務や取引が多い
契約書の作成やチェック、交渉の場面が多い企業では、法的なリスクを的確に管理する体制が欠かせません。とくに定型でない契約や複雑な取引が多い場合、条項の解釈やリスクの見落としがトラブルの火種になることもあります。
顧問弁護士であれば、契約書レビューを迅速に行える体制を整えられ、内容の適法性や実効性についても随時確認できます。交渉時には文言調整やリスク分析といったアドバイスも受けられ、契約の透明性と安全性が高まるでしょう。
さらに、過去の契約履歴や商習慣を共有しているため、業務の流れを止めずに実務に即した判断が得られるのも大きな利点です。
社内に法務専任者や体制が整っていない
中小企業や創業間もないスタートアップでは、法務リスクの重要性を認識しつつも、社内に専門人材を確保するだけのリソースがないという現実があります。その結果、営業担当や経営者が法務を兼任し、判断ミスによるリスクを抱えることも。
そのような企業にとって、顧問弁護士は実質的な「外部法務部門」として機能します。日常の契約確認からトラブル時の対応、社内の法務教育まで幅広くカバーできるため、少ないリソースでも安定した法務体制を整えることができます。
法的リスクを見落とすことは、企業経営にとって致命的となる可能性がありますが、顧問弁護士がいれば事前にチェックを受け、リスクの排除ができるでしょう。
また、労務問題や顧客クレームなどに直面した際にも、法的根拠に基づいた意思決定が期待できます。
新規事業・サービス展開を検討している
新規事業やサービスを立ち上げる際には、必ず法的リスクが伴い、以下のような多角的な法務対応が求められます。
- 業法や規制の確認
- 適法な契約スキームの設計
- 知的財産権の保護
- 利用規約・プライバシーポリシーの策定
- 行政ガイドラインへの適合確認(金融・医療・不動産など)
これらを社内のみで対応するのは難易度が高く、法的リスクも見落としがちです。顧問弁護士を活用することで、構想段階からリーガルチェックを受けられ、リスクの洗い出しや必要書類の整備を一括して依頼できます。
新規事業を安心してスタートさせるためには、都度相談ではなく事前から伴走できる顧問弁護士の方が、法的リスクの最小化と円滑な事業展開に不可欠な存在と言えるでしょう。
すぐに弁護士に相談できる体制を整えたい
取引先との契約交渉や従業員対応など、スピードが求められる場面では、迅速な法的判断が重要となります。そこで顧問契約を締結していれば、即時対応が可能となり、初動の遅れによるリスク拡大を防げます。
相談のハードルが下がることで、日常の小さな懸念にも早期に対応でき、結果的に大きなトラブルを防げるようになるでしょう。
こうした体制は、社内に法務部門が存在しない中小企業や、経営判断に法的な視点を取り入れたいと考える企業にとって、とくに頼りになります。
弁護士にいつでも気軽に相談できる環境は、スポット契約ではなかなか得られないものであり、顧問弁護士だからこそ実現できる強みです。
クレーム・紛争・労務トラブルのリスクを未然に防ぎたい
クレームや紛争、労務トラブルのリスクを未然に防ぎたいと考える企業にとって、顧問弁護士は心強い存在となります。顧問弁護士がいれば、問題が顕在化する前の段階で適切な対応策を講じることができ、訴訟や行政指導といった重大リスクの回避につながります。
たとえば、顧問弁護士から以下のような助言を受けることで、リスクが表面化する前に対策を講じることができるでしょう。
- クレーム発生時の初期対応方針の相談
- 従業員対応の妥当性や適法性に関する事前確認
- 契約条件の見直しや不備チェック
また、社内で問題が起こった場合でも、顧問弁護士であれば状況に応じた解決策を迅速に提示できます。このように、顧問弁護士は経営の安定性を支える、リスクマネジメントのパートナーになり得るでしょう。
単発契約(スポット契約)が適しているケース

ここまで顧問契約のメリットや向いている企業の特徴を解説してきましたが、すべての法務対応に継続的な契約が必要というわけではありません。状況によっては、必要なときに必要な範囲だけ依頼する「スポット契約」の方が適している場合もあります。
以下はその代表的なケースです。
- 特定の法的トラブルが発生したとき
- 訴訟対応が必要なとき
- 1件のみを依頼したいとき
- 個別プロジェクトのリーガルチェック
特定の法的トラブルが発生したとき
突発的に法的トラブルが発生した場合には、単発契約で弁護士に依頼しましょう。たとえば、以下のようにすでに問題が顕在化している状況が該当します。
- 取引先との契約違反に関する紛争
- 顧客からの損害賠償請求への対応
- 従業員との労務トラブルの発生
このような場合には、事案の内容や緊急性に応じて、該当分野に詳しい弁護士を選び、限られた期間内で集中的なサポートを受けることが重要です。
スポット契約であれば、必要なタイミングに応じて専門性の高い弁護士に依頼できるため、継続的な顧問契約を結ばずとも、状況に応じた柔軟な対応が可能となります。
訴訟対応が必要なとき
訴訟や裁判対応では、長期的な顧問契約よりも、該当分野に精通した弁護士に個別で依頼する方が効果的なケースがあります。たとえば、以下のような作業が発生するためです。
- 証拠資料の収集
- 訴状・準備書面の作成
- 裁判期日への出廷対応
このような訴訟案件は、継続的な法務支援よりも、結果が重視されるため、状況に応じて実績のある弁護士を選んで依頼するスタイルが適しています。
なお、顧問契約中でも訴訟対応は別途費用が発生することがあるため、費用対効果の観点からスポット契約が選ばれることも少なくありません。
1件のみを依頼したいとき
単発契約が適しているのは、明確に1件の案件のみを弁護士に依頼したい場合です。
「契約書のリーガルチェックだけ依頼したい」というような、限定された範囲での法的支援を求めるケースでは、顧問契約を締結する必要はありません。継続的な相談が不要な企業にとっては、費用対効果の面でも単発契約が適しているでしょう。
また、法的課題の発生頻度が低い企業や、社内に法務部門を備えている企業であれば、必要なときだけ弁護士の支援を受けれるスポット契約の方が、無駄なく合理的といえるでしょう。
一定期間に限られたプロジェクトで、特定の契約書や法的スキームの確認が必要な場面では、スポット契約の活用が現実的な選択肢となります。
たとえば、以下のようなケースが挙げられます。
- M&Aや事業譲渡
- 業務提携や資本業務提携の契約
- 新規事業立ち上げ
- ベンチャー企業による資金調達契約
このようなプロジェクトは、発生頻度が低く、一時的に高い専門性が求められるため、スポット契約スポット対応の弁護士依頼が適していると言えるでしょう。
まとめ

顧問弁護士と一般の弁護士(スポット契約)には、契約形態や対応範囲、社内連携の深さなどに、明確な違いがあります。
継続的に法務リスクを管理したい企業や、社内に法務体制を持たない企業には顧問弁護士が適しています。一方、特定の案件に対する専門的対応や期間限定のプロジェクトなどには、スポット契約で専門性の高い弁護士に依頼する方が効果的です。
自社の業種や事業規模、直面する法務リスクの性質を踏まえ、最適な契約形態を見極めたうえで、状況に適した弁護士の活用を検討しましょう。
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