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契約書の保管期間はいつまで?電子契約の場合はクラウド上で保存できる?契約書を保存する際のポイントを徹底解説

予防法務

2024.11.012024.11.06 更新

契約書の保管期間はいつまで?電子契約の場合はクラウド上で保存できる?契約書を保存する際のポイントを徹底解説

ビジネスの世界では契約書は非常に重要な書類です。適切な文書管理の方法を身につけることは、ビジネスリスクを軽減しスムーズな業務運営につながります。

しかし、契約書を作成した後、どのくらいの期間保管すべきか悩む方も多いのではないでしょうか。契約が終了したら破棄してもいいのか、それとも長期間保管する必要があるのか判断に迷うことがあります。

そこでこの記事では、契約書の適切な保管期間について詳しく解説します。法律的な観点や実務的な側面から、契約書の保管期間に関する重要なポイントをわかりやすく説明していきます。

契約書の保管に関する不安や疑問を解消するための参考にしてみてください。

特定の契約書は法律で保存期間が定められている

契約書の保存期間は、民法の時効に合わせて10年間を基本とする考えが一般的です。しかし、契約の種類や内容によって保存期間が異なる場合があります。

例えば、会社法では商取引に関する帳簿や書類の保存期間を10年間と定めています。また、税務関連の書類は7年間の保存が義務付けられています。

一方で、不動産や建設関連の契約書は、契約金も大きく契約期間も長期になるため、トラブル防止の観点から長期保存が推奨されており、場合によっては永久保存とすることもあります。

重要なのは、法定保存期間は最低限の期間であり、企業によってはリスク管理の観点からより長期の保存を選択することもあります。また、電子契約の普及に伴い、電子帳簿保存法に基づく保存期間にも注意が必要です。

契約書の重要性を理解し、適切な保存期間を設定することが大切です。

契約書の法定保存期間

法律上の契約書の保存期間は、契約の種類や関連法令によって異なります。一般的な契約書の保存期間は5年から10年程度ですが、永久保存が推奨されるケースもあります。

契約書の種類によって保存期間が異なるため、企業は適切な管理システムを構築し、法令遵守と業務効率化の両立を図ることが重要です。

保存期間を過ぎた契約書の取り扱いにも注意が必要で、個人情報保護の観点から適切な廃棄方法を選択することが求められます。

以下では、契約書の種類や用途に分けて保管期間を解説していきます。

一般的な契約書は10年の保管が望ましい

民法一般の契約における契約書は、10年間以上の保存が推奨されます。根拠としては、契約の履行や紛争解決に必要となる民法の時効期間を考慮したものです。

民法では、債権の消滅時効を次のように規定しています。

第百六十六条 債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
一 債権者が権利を行使することができることを知った時から五年間行使しないとき。
二 権利を行使することができる時から十年間行使しないとき。

例えば不動産の売買契約書等は10年以上の保管が望ましいです。

一方、例えば個人事業主が日常的に使用する業務委託契約書等においては、報酬を請求できることを『知らない』という状況は稀です。こうした債権の時効期間は5年となるケースがほとんどであり、契約書の保管も5年を目安とする例が多いでしょう。

ただし、契約の性質や重要性によっては、より長期の保存が推奨される場合もあります。

保管を延長すべきケースについては後ほど解説します。

法人税法による契約書の保管期間は7年

株式会社等の法人は、主に税務や会計に関連するものに加え、契約書等について7年の保存が義務づけられています。

この規定は税務上の要請であり、法人税の申告期限から起算して7年である点に注意が必要です。

なお、2019年4月1日以降の事業年度につき、青色申告法人が赤字を繰り越す場合、契約書等の保管期間は10年に延長されます。

会社法関連の契約書は10年

会社法に基づく会計帳簿、計算書類や事業報告などの関係書類は、10年間の保存が義務付けられています。これらの書類に関連する契約書も同様の期間保管することが望ましいでしょう。

個別的、具体的な保存期間や保管方法について、弁護士や税理士等の専門家に相談し、サポートを受けることをお勧めします。

永久保存の契約書

基本的に、契約の効力がある間はその契約書を永久に保存するべき、と考えておきましょう。なお法令によって永久保存が義務付けられている契約書はありません。

契約書は、長期的な権利や義務を定めるものであり、将来的な紛争や法的問題を解決する際に不可欠な証拠となります。

長期保管が推奨される契約書には、まず不動産関連の契約書が挙げられます。例えば土地や建物の賃貸借契約書、地上権設定契約書、地役権設定契約書などがこれに該当します。

これらの契約は、継続期間を数十年や永久と定める場合もあるためです。物件の所有権や利用権に関わる重要な内容を含んでおり、数十年後でも法的効力を持つ可能性があるため、永久保存が推奨されます。

また、知的財産権に関する契約書も永久保存の対象とすることが多いです。特許権や著作権の譲渡契約書、ライセンス契約書などがこれに該当します。これらの権利もやはり長期間にわたって効力を持つため、関連する契約書も同様に永久保存が望ましいでしょう。

会社の定款や株主間契約書なども、会社の根幹に関わる重要文書として永久保存推奨の対象となります。これらの文書は、会社の運営や株主の権利義務を規定する基本的な取り決めを含んでいるため、会社が存続する限り保管し続ける必要があります。

そのほか、民事信託の契約においてもその効力が長期にわたる場合があり、長期の保存が推奨されます。

契約書を保管する際に知っておきたい基礎知識

次に、契約書の保管の際の基本的な方針がわかるよう、法律の視点からの基礎知識を紹介します。

契約書を保管する理由

一般に契約書を保管する理由は、当事者の法律関係を明確にしてトラブルを回避すること、および税務上の要請の2点です。

契約書を作成して保管することは、当事者の信頼度アップにも繋がります。

そもそも民法の原則としては、契約は口頭のみでも成立し、契約書の保管義務どころか作成義務もありません。しかし一定の重要な契約や企業同士の契約においては口頭契約ではトラブルの可能性が高まり、必然的に契約書の重要性は高くなります。

 近年で代表的な改正としては『保証契約』が書面による契約でないと効力が発生しない旨が民法で規定されました。本記事で紹介した種類の契約書以外にも、今後の改正によって保管義務が課される可能性もあるでしょう。

また経理に関する文書、個人事業主の業務に関する契約書等は、税務の観点からも契約書の保管が法律によって義務づけられています。

個人事業主や企業の法務部・法務担当の方は、自己の事業分野における法改正は日頃から注意しておきましょう。

保管期間、廃棄タイミングを定めるにあたっての考え方

契約書の保管期間・廃棄タイミングを定める上で大切なのが消滅時効です。

契約による債権は、その債権を一定の期間行使しない場合には消滅します。消滅時効の到来は、契約相手方が何らかの請求を行ってきた際に、その請求を退ける法的な理由になります。

そのため契約書を破棄するタイミングは、法定の保管期間のほか時効期間の経過に合わせるのが一般的な考え方になります。

時効期間の起算点は、契約内容や条項ごとの判断が必要な場合もありますが、基本的には取引終了時点からカウントすることになるでしょう。

契約における残存条項として、競業避止義務を20年のように長く設定した場合などは、一般の時効期間より長く契約書を保管すべきケースもあります。

なお、契約書から判断した時効期間が経過していても、絶対に争いを起こされないわけではありません。例えば時効の更新により実際には時効期間が経過していないケースや、時効期間経過の有無そのものが争いの対象になるケースもあるためです。

そのため、契約書の破棄は時効期間の経過後からさらに一定期間を置いてから行うことが安全のために望ましいでしょう。

契約書の保管は、証拠を保全して自社を守る観点と、書類の保存・管理コストの軽減を秤にかけて判断することになります。この点において、電子契約は長期保存と管理コストの軽減に向いており普及が進んでいます。

以下、電子契約と契約書の保存について詳しく解説していきます。

電子契約と電子帳簿保存法の保存期間について

電子契約の普及に伴い、電子帳簿保存法の重要性が高まっています。

この法律は、電子取引の際に作成された電子契約書や帳簿の保存義務に関する規定を定めた法律です。電子保存の際の電子取引書の保管期間は、紙面で保管する場合と同期間です。

用語の定義として『電子取引』とは、取引情報(取引に関して受領し、又は交付する注文書、契約書、送り状、領収書、見積書その他これらに準ずる書類に通常記載される事項をいう。以下同じ。)の授受を電磁的方式により行う取引をいいます。

電子取引の場合、データの改ざんや消失のリスクを考慮し、適切なセキュリティ対策を講じることが求められます。具体的には、電子署名やタイムスタンプの利用、定期的なバックアップの実施などが挙げられます。

紙の契約書と比較すると、電子契約書は保管スペースの節約や検索の容易さといったメリットがあります。一方で、長期保存におけるデータの可読性や互換性の確保など、独自のデメリットも存在します。

電子契約を行う際は、電子帳簿保存法に準拠しつつ、これらの課題に適切に対応することが、企業にとって重要です。

電子帳簿保存の対象となる文書・データ

電子帳簿保存法の対象となる文書は、電子取引を行った際のデータです。

取引に関して受領または交付した、注文書、契約書、送り状、領収書、見積書その他これらに準ずる書類に通常記載される事項に関するデータが保管の対象となります。

これらの文書を電子データで保存する場合、改ざん防止や検索機能など、一定の要件を満たす必要があります。

契約書に関しては、電子帳簿保存法により電子契約書の保存が認められています。保存期間は従来の紙の契約書と同様に、契約の種類や法律の規定に基づいて定められます。例えば一般的な商取引の契約書は5年間、不動産関連の契約書は10年以上の保存が推奨されます。。

電子帳簿保存法の導入により、企業は保管スペースの削減やデータ管理の効率化を図ることができます。また、災害時のデータ保護や迅速な情報検索にも役立ちます。ただし、セキュリティ対策や運用ルールの整備など、適切な管理体制の構築が求められます。

紙契約書と電子契約書の違い

紙契約書と電子契約書は、法的効力や保管方法において重要な違いがあります。

紙契約書は従来から広く使用されており、署名や押印による本人確認が容易です。一方、電子契約書はデジタル署名や電子認証技術を用いて作成され、オンラインで管理されます。

保管の観点では、紙契約書は物理的なスペースを必要とし、劣化や紛失のリスクがあります。これに対し、電子契約書はクラウドストレージなどを利用して効率的に保管でき、バックアップも容易です。

また、電子契約書は検索性に優れ、必要な情報へのアクセスが迅速です。

セキュリティ面では、紙契約書は物理的な保管場所の管理が重要となります。電子契約書はデータ暗号化やアクセス制御などの技術を用いて、高度なセキュリティ対策が可能ですが、サイバー攻撃のリスクには注意が必要です。

どちらの方法を選択するかは、企業の規模や業種、取り扱う契約書の量や種類によって異なります。近年では紙と電子の併用や、紙からデジタル化への移行を進める企業も増えています。保管方法の選択には、法令遵守や業務効率およびコスト面を総合的に考慮することが大切です。

契約書の保存期間が過ぎた場合の対処法

契約書の保存期間が過ぎた場合、適切な対処が必要です。まず、保存期間が経過したことを確認し、社内規定や関連法規を再度確認しましょう。

多くの場合、保存期間を過ぎた契約書は破棄することができますが慎重に行う必要があります。

破棄する際は、個人情報や機密情報が漏洩しないよう、シュレッダーやデータ消去ソフトを使用するなど、適切な方法で行いましょう

また、破棄した契約書のリストを作成し、いつ、どのような方法で破棄したかを記録しておくことをおすすめします。

ただし、法的な保存義務がある期間を過ぎても、重要な契約書や残存条項のある契約書、将来的に参照する可能性がある場合などは、任意で保管を継続することも検討しましょう。

電子化して保管するなど、スペースを節約しつつ必要な情報を残す方法もあります。

署名や押印等を行った契約書の原本をスキャンして保存する場合、訴訟の際の証拠能力に影響する場合があるため注意が必要です。

民事訴訟法上、契約書のスキャンデータ等はコピーとして扱い、原本としては扱われなくなるためです。

裁判上、何を『証拠』として提出するかに制限はないため、コピーも一定の証拠として認められます。ただし、署名や押印がされた原本と比べて証拠としての効力はどうしても落ちることになります。

これに対し、適切に電子署名された電子契約書は、そのデータ自体、原本と同様に確かな証拠になり得ます。

保存期間を過ぎた契約書の破棄方法

保存期間を過ぎた契約書を適切に破棄することは、情報セキュリティの観点から重要です。まず、紙の契約書の場合、シュレッダーを使用して裁断するのが一般的です。特に機密性の高い契約書については、クロスカットシュレッダーを使用し、より細かく裁断することをお勧めします。

電子データの契約書の場合、単純に削除するだけでは不十分です。ハードディスクやUSBメモリなどの記憶媒体から完全に消去するために、専用のデータ消去ソフトウェアを使用することが望ましいです。このようなソフトウェアは、データを上書きすることで復元不可能な状態にします。

また、大量の契約書を破棄する場合は、専門の文書廃棄業者に依頼することも検討すべきです。これらの業者は、機密文書の適切な処理に関する知識と設備を持っており、安全かつ確実な破棄を保証します。

破棄の際は、必ず複数の担当者で確認し、破棄した契約書のリストを作成して記録に残すことをお勧めします。これにより、誤って重要な文書を破棄してしまうリスクを軽減し、破棄プロセスの透明性を確保できます。

誤って破棄した場合の対処法

契約書を誤って破棄してしまった場合、迅速かつ適切な対応が求められます。まず、破棄した契約書の内容や重要性を確認し、関係者に状況を報告することが重要です。

可能であれば契約相手方に連絡を取り、契約書の再発行を依頼しましょう。多くの場合、相手方も契約書のコピーを保管しているため、再発行は比較的容易です。

再発行が困難な場合は、契約内容を再確認し、双方の合意事項を書面にまとめる努力が必要です。この際は弁護士に相談して適切な対応策を検討することも有効です。

誤って破棄した事実を隠蔽せず、誠実に対応することが信頼関係の維持につながります。再発防止策として、契約書の管理体制を見直し、電子化やバックアップの導入を検討することも大切です。

このような事態を未然に防ぐため、契約書の重要性を社内で再確認し、適切な保管・管理方法を徹底することが求められます。

保管期間に影響する要素とは?

契約書の保管期間は一律ではなく、様々な要素によって影響を受けます。まず、契約の種類や内容が大きな要因となります。

例えば、不動産取引や重要な商取引に関する契約書は長期間の保管が求められることが多いです。また、業界や業種によっても保管期間が異なる場合があり、金融機関や医療機関などは特に厳格な規定が設けられています。

法律の改正も保管期間に影響を与える重要な要素です。法改正により、特定の契約書の保管期間が延長されたり、新たな保管義務が生じたりすることがあります。さらに、会社の内部規定や取引先との合意によっても、法定期間以上の保管が必要になる場合があります。

リスク管理の観点から、訴訟や紛争の可能性がある契約については、通常よりも長期間の保管が推奨されます。このように、契約書の保管期間は単純に一つの基準で決まるものではなく、様々な要素を考慮して適切に判断する必要があります。

業種による保管期間の違い

契約書の保管期間は業種によって異なり、その特性や法的要件に応じて変化します。例えば、建設業では工事完了後10年以上の保存が推奨される一方、小売業では通常5年~7年程度とされています。

金融機関は取引の性質上、より長期の保管が必要で、一部の契約書は永久保存の対象となることもあります。

製造業では製品の種類によって保管期間が変わり、医薬品関連では長期の保存が求められます。IT業界ではデータ保護の観点から、契約終了後も一定期間の保管が推奨されています。

このように、業種ごとの特性や関連法規制が保管期間に大きく影響し、適切な期間設定が重要となります。各企業は自社の業種特性を考慮しつつ、法令遵守と実務上の必要性のバランスを取りながら、適切な保管期間を設定することが求められます。

法律改正による影響

契約書の保管期間は、法律改正によって大きな影響を受ける可能性があります。近年、デジタル化の進展に伴い、電子契約や電子帳簿保存法に関する法改正が行われ、保管期間や方法に変化が生じています。

例えば2022年1月に施行された電子帳簿保存法では、電子取引の取引情報に係る電子データの保存が規定され、2024年1月に完全に義務化されました。これにより、多くの企業が電子契約書の保管方法や期間を見直す必要が生じました。

また民法改正により、一般的な債権の消滅時効期間が5年に短縮されたことも、契約書の保管期間に影響を与えています。これにより、多くの契約書の保管期間が見直されることとなりました。

法律改正は、業界や取引の性質によっても異なる影響を及ぼします。例えば、建設業法の改正により、建設工事の請負契約に関する書類の保存期間が変更されるなど、業種特有の改正も見られます。

このように、法律改正は契約書の保管期間に大きな影響を与えるため、最新の法改正情報を常に把握し、適切に対応することが重要です。

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