電子帳簿保存法とは?基本的な概要から改正要件、契約書の保存方法、注意点を徹底解説!
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2024.12.02 ー 2024.12.03 更新
2022年1月に改正された電子帳簿保存法により、企業の文書管理方法が大きく変わりつつあります。特に契約書の取り扱いについては、多くの企業が対応に苦慮しているのではないでしょうか。
紙の契約書をどのように電子化すべきか、また電子化した契約書をどのように管理すればよいのか、といった疑問や不安を抱えている方も少なくないと思います。
そこでこの記事では、電子帳簿保存法における契約書の管理方法や取り扱い方について詳しく解説します。
本記事を最後までお読みいただくことで、電子帳簿保存法に準拠した契約書の適切な管理方法を理解し、自社の文書管理体制を効率化することができるでしょう。さらに、法令遵守のリスクを軽減しつつ、業務プロセスの改善にもつながります。
電子帳簿保存法による契約書の保存方法に困っている方は、ぜひ最後までご覧ください。
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電子帳簿保存法とは、企業が税務関連の書類を電子データで保存する際の基準を定めた法律です。
1998年に施行され、以降紙ベースでの保存を基本とする企業の帳簿管理方法に変革をもたらしました。さらに2022年の法改正により、電子データで受領した書類は電子のまま保存することが義務化され、企業は電子データの真正性と可視性を確保することが求められています。
電子帳簿保存法の主な目的は、企業の事務負担を軽減し、デジタル化を推進することで業務の効率化を図る点にあります。また、適正なデータ管理によって不正の防止を目的としています。
そのため、保存する電子データにはタイムスタンプの付与や適切なシステムの利用が必要となり、これに対応するシステム導入や体制整備を求められています。
電子帳簿保存法の遵守は、企業のリスク管理の観点からも重要であり、適切に対応することで税務調査における対応が円滑になるメリットもあります。電子帳簿保存法に従った契約書管理は、法令順守だけでなく、業務の効率化や信頼性の向上にも寄与します。
電子取引のデータ保存の要件
電子取引のデータ保存には、電子帳簿保存法に基づく特定の要件を満たす必要があります。
まず、取引情報の授受から保存までの各段階で、真実性の確保が求められます。これには、改ざん防止措置や事後的な検証可能性の確保が含まれます。具体的には、タイムスタンプの付与やアクセス履歴の記録などが有効です。
また、可視性の確保も重要な要件です。保存されたデータは、税務調査の際に速やかに閲覧・提示できる状態で管理しなければなりません。そのため、検索機能の実装や帳簿との相互関連性の確保が必要となります。
さらに、保存期間中のデータの完全性を担保するため、定期的なバックアップやデータの冗長化も求められます。電子データの見読性を確保するために、適切なソフトウェアやハードウェアの維持管理も必要です。
これらの要件を満たすことで、契約書を含む電子取引データを適法に保存し、円滑な税務対応が可能となります。要件を満たさない場合、重加算税のリスクも生じるため、慎重な対応が求められます。
スキャナ保存(任意)の要件
スキャナ保存は、電子帳簿保存法における任意の保存方法です。スキャナ保存を選択する場合、いくつかの要件を満たす必要があります。
まず、スキャンする書類の受領者や作成者、日付、金額などの重要な情報が明確に読み取れるよう、解像度や階調などの画質を確保しなければなりません。また、スキャンした画像データには、タイムスタンプを付与することが求められます。これにより、データの改ざんを防止し、真正性を担保します。
さらに適正事務処理規程を定め、それに基づいて作業を行う必要があります。この規程には、以下のような内容を記載します。
- スキャン作業の責任者
- 実施者
- 作業手順
- チェック体制
スキャン後の原本は、一定期間保管した後に廃棄することが可能ですが、その際も規程に沿って適切に処理する必要があります。
電子帳簿保存法に基づくスキャナ保存を実施する場合、これらの要件を満たすことで、紙の契約書と同等の法的効力を持つ電子データとして保存することができます。ただし、要件を満たさない場合は税務調査の際に否認されるリスクがあるため、注意が必要です。
電子帳簿保存法における契約書の保存義務と保管期間
電子帳簿保存法における契約書の保存義務や保管期間については、法人や個人事業主によって異なります。また、個人事業主の中でも、青色申告か白色申告かで違う点もあるため、保存前に知っておく必要があります。
ここでは、契約書の保存義務と保管期間について、それぞれ解説していきます。
法人の場合
法人における電子帳簿保存法に基づく契約書の保存義務は、税務関連書類として取り扱われるため、特定の保存要件と保管期間が設定されています。
法人が保管する契約書には、原則として真実性と可視性の確保が求められます。真実性の確保は、データの改ざんを防ぐため、タイムスタンプの付与や電子署名の利用、または適切なシステムでの管理を通じて行います。一方、可視性の確保については、検索機能や整理された保存形式を維持することが必要です。
保存期間に関しては、法人の場合、契約書を含む帳簿や書類の保管期間は原則として7年間とされています。これは税務調査などに備えるためのもので、法人の経理処理の透明性を高めるためにも重要です。ただし、青色申告法人で欠損金の繰越控除を行っている場合は、最長で10年間の保存が必要になるケースもあります。
企業にとって電子帳簿保存法に則した契約書の保存は、法令遵守の観点から不可欠であり、適切な体制を整えることで業務の信頼性向上にも貢献します。
青色申告の個人事業主の場合
青色申告を行う個人事業主が契約書を電子データとして保存する場合、一定の要件を満たす必要があります。2022年の法改正以降、電子データで受領した契約書は電子のままで保存することが義務付けられ、データの真実性や可視性を確保することが求められています。
契約書の保存には、タイムスタンプの付与や訂正削除が記録されるシステムの使用などの条件を満たす必要があります。これによりデータの改ざんを防止し、保存する情報の信頼性が保たれます。
また、保存期間については、契約書を含む帳簿や書類は原則として7年間の保管が義務付けられています。電子データとして保存することで、紙の書類に比べて保管スペースの削減や、データ検索の効率化が可能です。
白色申告の個人事業主の場合
白色申告を行う個人事業主においても、電子帳簿保存法の適用を受ける場合には、契約書などの重要な帳簿書類を適切に保存する義務があります。
通常、白色申告の事業者は紙の書類で帳簿を管理していますが、電子データでの記録や受領が発生する場合は、そのデータの保存義務が生じます。特に、電子データの真正性を保つためには、タイムスタンプの付与や正当性を確認するための対応が求められ、適切な保存体制が必要です。
保管期間については、通常の税務関連書類と同様に、白色申告の個人事業主も7年間の保管が義務付けられています。これは、税務調査が行われる可能性がある期間を考慮したものであり、適切に保存することで法令順守と税務リスクの軽減が期待できます。
また、電子帳簿保存法に準拠して電子化を行うことで、データの劣化防止や業務の効率化につながり、将来的な事務作業の負担軽減にも役立ちます。
電子帳簿保存法における契約書の管理方法やポイント
電子帳簿保存法における契約書の管理については、以下のようなポイントを押さえることで、効果的な保存が可能です。
- 電子取引のデータ保存要件に沿って保存する
- スキャナ保存のポイントを把握する
- 経理業務の規程を整備する
- 会計ソフトやクラウドサービスを利用する
それぞれの管理方法やポイントについて解説していきます。
電子取引のデータ保存要件に沿って保存する
電子帳簿保存法における契約書の管理には、電子取引のデータ保存要件に沿った対応が求められます。
具体的には、取引情報の授受から保存までの各段階で真実性や可視性を確保することが重要になります。データの作成者や送受信者、日時が明確に記録され、改ざんを防止する仕組みが必要です。また、検索機能を備え、税務調査の際に速やかに出力できるシステムを整備することも要件の一つです。
保存形式については、PDFやXMLなどの一般的な電子文書フォーマットを使用し、長期的な可読性を確保することが求められます。さらに、データの保存期間中はバックアップを含めた適切なセキュリティ対策を講じるようにしましょう。
スキャナ保存のポイントを把握する
スキャナ保存を適切に実施するためには、いくつかの重要なポイントを押さえる必要があります。
まず、スキャナで読み取る際は、原本の色調や罫線が鮮明に再現されるよう、解像度や階調に注意を払わなければいけません。具体的には、カラーで300dpi以上、グレースケールで200dpi以上の解像度が求められます。
また、スキャンした画像データには、タイムスタンプを付与することが不可欠です。これによりデータの改ざんを防止し、原本との同一性を担保します。さらに、スキャン作業の責任者を明確にし、適正な事務処理規程を整備することも重要です。
電子化された契約書は、検索機能を備えたシステムで管理します。これにより、必要な時に迅速に閲覧・確認できる環境を整えます。
保存期間中は、データの真実性・可視性・完全性を確保し続けることが必要です。これらのポイントを押さえることで、電子帳簿保存法に準拠したスキャナ保存を実現できます。
経理業務の規程を整備する
電子帳簿保存法に準拠した契約書の管理を実現するためには、経理業務の規程を整備することが不可欠です。
この規程には、電子データの取り扱いや保存方法、アクセス権限の設定、バックアップの手順などを明確に定める必要があります。特に、契約書のスキャナ保存や電子取引データの保存に関する具体的な手順を詳細に記載することが重要です。
また、規程には電子帳簿保存法の要件を満たすためのルールを明確にしておくことが求められます。具体的には、以下のようなルールについて社内で決定しておきましょう。
- タイムスタンプの付与方法
- 検索機能の確保
- 改ざん防止措置の実施
さらに、規程の中で責任者や担当者の役割を明確にし、定期的な内部監査の実施についても言及することで、より確実な法令遵守体制を構築できます。
会計ソフトやクラウドサービスを利用する
電子帳簿保存法に対応した契約書の管理を効率的に行うためには、信頼性の高い会計ソフトやクラウドサービスの活用が不可欠です。これらのツールを利用することで、データの保存や管理が容易になり、法令遵守と業務効率化の両立が可能となります。
多くの会計ソフトやクラウドサービスは、電子帳簿保存法の要件に対応した機能を備えています。例えばタイムスタンプの自動付与、データの改ざん防止、検索機能の提供などが挙げられます。これらの機能により、契約書の真実性の確保や、税務調査時の迅速な対応が可能になります。
また、クラウドベースのサービスを利用することで、場所や時間を問わずアクセスが可能となり、テレワークにも対応できます。また、自動バックアップ機能があるサービスであれば、データ消失のリスクも軽減されます。
ただし、ソフトやサービスの選択時にはセキュリティ対策や運用サポートの充実度、他のシステムとの連携性なども考慮しなければいけません。信頼できるベンダーの製品を選び、導入後も適切に運用することで、電子帳簿保存法に準拠した契約書の管理を実現できます。
電子帳簿保存法に則って契約書を保存しない場合のペナルティ
電子帳簿保存法に基づく契約書の適切な保存は、法律的にも重要です。電子帳簿保存法に則って契約書を保存しない場合、重大な罰則を受ける可能性があります。
具体的には、重加算税が課されるペナルティが与えられます。重加算税が課されると、通常の追徴税に加えて課される追加で税金がかかり、企業の財務に大きな影響を与える可能性があります。
重加算税は、故意に税金を免れようとした場合や、法令に違反して帳簿書類を隠蔽または仮装した場合に課されます。契約書の不適切な保存は、このような行為と見なされる可能性があるのです。そのため、企業は電子帳簿保存法の要件を十分に理解し、適切な保存方法を実践することが求められます。
法令遵守は単なる義務ではなく、企業の信頼性や透明性を高めるためにも重要です。適切な契約書の管理は、取引の透明性を確保し、トラブルを未然に防ぐ効果もあるため、適切な方法で保存するようにしましょう。
契約書を電子帳簿保存法に則って管理する際の注意点
電子帳簿保存法に基づいて契約書を管理する際は、以下の点に注意する必要があります。
- 真実性を確保する
- スキャナ保存の場合は画質要件を満たす
- データ管理のセキュリティを強化する
それぞれの注意点について見ていきましょう。
真実性を確保する
契約書を電子帳簿保存法に則って管理する際には、真実性を確保することが重要です。
真実性とは、保存される電子データが改ざんされておらず、記録された内容が正確であることを示す要件です。これを確保するためには、電子帳簿保存法の指針に沿った厳格な管理方法が求められます。
具体的な手段としては、タイムスタンプの付与が挙げられます。タイムスタンプを利用することで、契約書データが指定日時に存在していたことを証明し、その後の改ざんがなかったことを保証できます。
さらに、第三者機関によるタイムスタンプサービスの活用や、適切なアクセス制御の導入も効果的です。これにより契約書の改ざんリスクを低減し、真実性を担保するための証拠として役立てることができます。
また、定期的な監査やデータのバックアップも重要です。監査を通じて管理体制の見直しを行い、バックアップによりデータの消失を防止することで、万一のリスクに備えることが可能です。
スキャナ保存の場合は画質要件を満たすことが重要
契約書を電子帳簿保存法に則りスキャナで保存する際には、画質要件を満たすことが非常に重要です。
画質要件とは、スキャナ保存したデータが元の書類と同等の情報を保持し、後から内容の確認が確実にできることを目的とした基準です。解像度やカラーモードに関する具体的な規定が設けられており、解像度は200dpi以上、カラーモードはフルカラーやグレースケールでの保存が推奨されています。
さらに、スキャン後のデータが鮮明で読み取りやすい状態であることが求められ、文字や印影が不鮮明な場合には再スキャンが必要になることもあります。特に契約書のような重要書類は、印影や署名が明瞭であることが信頼性の確保につながります。
画質要件を満たすことで、税務調査などで証拠書類として使用される際の信頼性が確保されるため、スキャナ保存の際は適切な管理・運用を行うことが求められます。
データ管理のセキュリティを強化する
電子帳簿保存法に則り契約書を電子化する際、データ管理のセキュリティには注意しなければいけません。電子データはアクセスが容易である反面、不正アクセスやデータ改ざんのリスクが伴います。そのため、システム上でのセキュリティ対策を徹底することが求められます。
まず、アクセス権限の設定が重要です。閲覧や編集の権限を必要最低限の担当者に限定し、社内での情報漏洩リスクを低減します。また、多要素認証やパスワードポリシーを導入することで、不正アクセス防止を図り、より安全なデータ管理が実現します。
他にも、タイムスタンプや電子署名の導入も有効です。データの改ざんがないことを証明するために必要な技術であり、後からデータが変更されていないことを確実にする役割を果たします。定期的なバックアップを行い、システム障害やデータ喪失に備えることで、重要データの安全性を高めることが可能です。
これらの対策を行うことで、電子帳簿保存法に基づいた安全なデータ管理を確保し、企業の信頼性向上にもつながります。セキュリティ強化を図ることで、法令遵守だけでなく、リスク軽減と業務の安定化が期待されます。
まとめ
電子帳簿保存法の改正やデジタルツールの普及、テレワークの普及といった要因が重なり、クラウド上での契約書管理が必要になっています。そのため、電子帳簿保存法に基づいた契約書の保管方法を知っておくことは、法律的にも不可欠です。
電子帳簿保存法に対応した契約書の管理については、会計ソフトやクラウドサービスを利用するのがおすすめです。電子での契約書管理に特化したサービスは多数存在するため、サービスの内容や料金、フォロー制度などを比較し、利用頻度や使いやすさを踏まえて利用するサービスを選びましょう。
また、弁護士や司法書士などの法律に関する専門家に依頼するのもよいでしょう。専門家は最新の法令にも対応したアドバイスをしてくれるため、電子帳簿保存法に適した保存方法や契約書の作成方法を提供してくれるはずです。電子帳簿保存法に行き詰ったら、法律事務所に相談しましょう。
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問い合わせは無料となっており、当サイトから費用は発生しません。電子帳簿保存法について不安を抱えている方は、法務救済で見つけた弁護士に相談してみてください。
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株式会社WEBYの法務急済運営事務局。全国400以上の弁護士・司法書士のWEBマーケティング支援に従事。これまでに法律ジャンルの記事執筆・編集を1000記事以上担当。WEBコンサルやHP制作、SEO対策、LMC(ローカルマップコントロール)など様々な支援を通じて法律業界に精通。これらの経験を基に企業法務の際に必要な情報や適切な弁護士・司法書士を紹介している。
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