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法人破産で連帯保証人に…代表者が抱える責任と対処法

民事再生・法人破産

2025.12.182025.12.15 更新

法人破産で連帯保証人に…代表者が抱える責任と対処法

会社が倒産したとき、「これで終わりじゃない」という重い現実に直面する方は多いでしょう。法人の借金に対し、代表者個人が連帯保証人になっていた場合、会社がなくなってもその責任は消えないからです。企業倒産に伴い代表者がどのような債務を負い、その後の生活にどう影響するかを正しく理解する必要があります。ここでは、連帯保証人として背負う責任の重さ、そして法人破産後に個人にのしかかる現実と対処法を、わかりやすく解説します。

法人破産で連帯保証人になった代表者が直面する借金責任の現実

法人破産で会社としての借金はいったん整理されても、経営者や代表取締役が連帯保証人になっている場合、その借金は個人に引き継がれます。「会社と個人は別の存在」という法律の原則がある一方で、連帯保証の仕組みにより、個人が会社の借金に全責任を負うからです。

多くの中小企業では、銀行から融資を受ける際、代表者が連帯保証人になるよう求められるのが実情です。会社がうまくいっている間は問題ありませんが、経営が傾き法人破産となると、代表者個人が数千万円、場合によっては億単位の借金を背負うことになります。

これは、多くの経営者にとって想像以上の重圧でしょう。「会社が潰れたら終わり」ではなく、「会社が潰れてからが本当の苦しみの始まり」となるケースも少なくありません。自宅や家族名義の資産、退職金、生活費まで、あらゆるものが請求対象になり得るため、精神的にも経済的にも追い詰められることがあります。金融機関からの借入による負債が個人の債務者としての責任に直結するため、まずは現状の借金の種類を整理しましょう。

連帯保証人と普通の保証人の違い|逃れられない重い責任

「保証人」と聞くと、何かあったときに代わりに払う人というイメージがあるかもしれません。しかし、普通の保証人と連帯保証人では、責任の重さがまったく違います。この違いを知らずに連帯保証人になると、後で「こんなはずじゃなかった」と後悔するかもしれません。

普通の保証人には、法律で守られた2つの権利があります。しかし、連帯保証人にはこの権利が一切ありません。

連帯保証人は、借りた本人と全く同じ立場になります。つまり、債権者は「本人に請求するか」「連帯保証人に請求するか」を自由に選べるのです。多くの場合、回収しやすい財産を持つ方を優先します。たとえば、法人が破産し代表者が連帯保証人になっていた場合、債権者は法人破産の手続きが終わるのを待たずに、すぐに代表者個人へ「あなたが全額払ってください」と請求できます。代表者が「会社に資産が残っているはずです」と主張しても、連帯保証人である以上、その主張は通りません。法人に資産があろうがなかろうが、債権者の請求に応じる義務があります。

このように、連帯保証人は法律上、非常に重い責任を負う立場。想像以上に、逃れることのできない厳しい現実が待っています。中小企業の代表者が銀行融資を受ける際、ほぼ確実に連帯保証人になるよう求められるため、経営が悪化すると会社と一蓮托生で個人も破産の危機に直面するのです。第三者に対して抗弁する権利を持たないため、第三者保証人と比較しても連帯して責任を負う厳しい立場にあります。

法人破産後に代表者個人へ降りかかる債権者からの請求

法人破産の手続きが終わり、会社としての借金がいったん清算されても、連帯保証人である代表者個人にとって、ここからが本当の始まりです。会社が消滅しても、残った借金は個人に全額請求されます。

債権者からの請求は、法人破産が終わった直後から始まるケースが多いです。銀行、信用金庫、取引先、リース会社など、複数の債権者が督促状や電話、訪問などで支払いを求めてくるでしょう。会社が破産したばかりで、精神的にも経済的にも余裕がない中、複数の債権者から一斉に請求が来る状況は、想像以上に過酷です。

また、債権者の中には、裁判を起こして給与や預金を差し押さえようとする場合もあります。再就職して給与を得るようになれば、その給与の一部(原則として手取りの4分の1)が差し押さえられる可能性も。預金口座も対象となり、生活費として残しておいたお金が突然引き出せなくなることもあり得るでしょう。

さらに、債権者は「連帯保証人の財産状況を調査する権利」を持っています。裁判所を通じ、代表者個人の銀行口座、不動産、車、保険、株式など、あなたの財産を調べられるのです。隠そうと思っても隠せない仕組みになっています。

こうした状況に直面すると、「どうすればいいのか分からない」「誰に相談すればいいのか分からない」と途方に暮れる方も多いでしょう。しかし、こんな時だからこそ、早めに専門家(弁護士や司法書士)に相談することが大切です。専門家に相談すれば、債権者との交渉や、個人再生・自己破産といった法的な手続きを通じて、返済負担を軽減できる可能性があります。

状況によっては、債権者と分割返済の交渉をしたり、返済額を減額してもらえたりすることも。同時に、今後の支払や弁済に向けた具体的な流れを確認し、冷静に対処することが求められます。どうしても返済が不可能な場合は、個人破産という選択肢もあります。個人破産は「人生の終わり」ではありません。再スタートを切るための法的な仕組みです。専門家に相談することで、あなたに合った解決方法が見つかりやすくなり、精神的な負担も減るでしょう。

法人破産後に個人へ降りかかる請求は、避けられないものではありません。適切な知識と専門家のサポートがあれば、状況に応じた対応策を見つけられます。一人で抱え込まず、まずは専門家へ相談してみましょう。

代表者の個人財産はどこまで奪われる?差し押さえの範囲と限界

会社が倒産したとき、「自分の家も預金も全部取られてしまうのでは……」と不安になりますよね。社長として頑張ってきた分、背負うものも大きく感じるかもしれません。でも、実はすべてが奪われるわけではありません。差し押さえには法律で決められたルールと限界があります。今回は、どんな財産が対象になるのか、逆にどこまで守れるのかを、わかりやすく整理していきます。資産の換価に関する概要や、ご自身のケースが差し押さえ禁止財産に該当するかを正しく把握しましょう。

自宅・預金・給与が狙われるタイミングと差し押さえ条件

会社が倒産しても、すぐに自宅や預金が差し押さえられるわけではありません。実際に差し押さえが行われるのは、あなたが会社の借金の保証人や連帯保証人になっている場合です。法人の借金と個人が完全に切り離されていれば、社長だからといって自動的に財産を失うことはありません。

しかし、現実には中小企業の代表者が銀行融資を受ける際、「連帯保証人」となるケースがほとんど。そのため、会社が返済できなくなると、債権者は代表者個人に支払いを求め、応じなければ財産の差し押さえに動くことになります。

では、どんな財産が狙われやすいのでしょうか。

  • 自宅(持ち家)
    登記情報で確認しやすく、差し押さえの対象になりやすいです。すぐに追い出されるわけではなく、競売や任意売却の手続きには数カ月から1年以上かかることもあります。その間に専門家と相談し、住み続ける方法や引っ越しのタイミングを整えることも可能です。
  • 預金口座
    債権者が裁判所を通じて差し押さえ命令を取ると、銀行に通知され口座が凍結されます。凍結されるのは「その時点の残高まで」。その後の入金は別扱いになる場合もありますが、生活口座が使えなくなるのは大きな混乱を招きます。複数の口座を使い分けるなど、早めにリスク分散を意識しておくとよいでしょう。
  • 給与
    給与は全額が差し押さえられるわけではありません。法律上、手取り額の4分の1までが差し押さえ可能で、残りの4分の3は生活費として守られます。また、手取りが44万円を超える場合、33万円を超えた分が差し押さえの対象です。どれだけ厳しい状況でも「最低限の生活は維持できる仕組み」が法律で保障されています。

こうした差し押さえが動き出すのは、債権者が裁判を起こし勝訴して、強制執行の手続きに入ったとき。逆に言えば、訴訟前や和解交渉中であれば、まだ差し押さえは起きません。この段階で弁護士や司法書士に相談し、任意整理や個人再生といった手続きを取ることで、差し押さえを回避したり、条件を調整したりできる可能性が十分にあります。事業停止後も、元従業員への対応や関連する企業法務の問題が残る場合は、併せて専門家へ相談すべきです。

家族名義の財産や最低限の生活費は本当に守れるのか

ここまで読んで、「じゃあ、家族の名義にしておけば大丈夫かな?」と考える方もいるかもしれません。原則として、家族名義の財産は差し押さえの対象外です。妻名義の口座や親名義の土地、子ども名義の預金などは、あなた個人の借金とは無関係とされます。

ただし、ここには大きな注意点があります。それは、実質的にあなたの財産とみなされる場合があるということ。たとえば、倒産が近づいたタイミングで慌てて配偶者名義の口座に大金を移したり、不動産の名義を変えたりすると、「財産隠し」と判断される可能性があります。これを法律では「否認権の行使」と呼び、過去にさかのぼって名義変更が取り消され、結局差し押さえられてしまうケースもあるのです。

特に破産手続きを取る場合は、過去1〜2年分の財産移動がすべて調査されます。不自然な動きがあれば、裁判所や破産管財人から厳しく追及され、最悪の場合、借金の帳消し(免責)が認められないリスクも。ですから、「家族名義にすれば安心」という考え方は非常に危険です。むしろ、正直に状況を整理し、透明性を保つことが、長い目で見て自分と家族を守る道になります。

一方で、本当に家族が自分で稼いだお金や、相続で得た財産であれば、それはきちんと守られます。奥さんがパートで貯めた預金や、親から相続した土地などは、あなたの借金とは一切関係ありません。ただし、これも「ちゃんと証明できるか」が重要です。通帳の入出金履歴、相続の書類、贈与契約書といった記録があれば、万が一疑われたときにも説明がしやすくなるでしょう。

そしてもう一つ、生活に必要な最低限のものは法律で保護されています。衣類や寝具、台所用品、仕事道具(パソコンや工具など)、そして66万円までの現金は、差し押さえ禁止財産とされているのです。これは「借金がある人でも人間らしい生活を送る権利がある」という考え方に基づいています。そのため、「すべて取られて路頭に迷うのでは」という極端な心配は、現実にはほとんど起こりません。最低限の生活基盤は守られる仕組みが整っているのです。

とはいえ、こうしたルールや例外をすべて自分で判断するのは非常に難しいもの。間違った行動を取ってしまうと、かえって不利になることもあります。だからこそ、早い段階で専門家に相談することが何より大切です。弁護士や司法書士は、あなたの財産状況を正確に把握した上で、「何が守れるのか」「どう動けば最善か」を一緒に考えてくれます。状況に応じては、破産手続だけでなく、民事再生などの選択肢も幅広く検討してくれます。不安なまま一人で抱え込むより、プロの力を借りることで、家族との生活を守りながら再スタートを切る道が見えてくるはずですし、精神的な負担も軽くなるでしょう。

返済不能な借金を解決する3つの法的手段

借金の返済が難しくなったとき、「自分が悪いんだ」「もう打つ手がない」と追い詰められる方は多いでしょう。しかし、法律はそんなあなたの状況に応じた解決策を用意しています。

ここでご紹介する3つの方法は、いずれも借金の負担を軽くするための正式な手続きです。それぞれにメリット・デメリットがあり、あなたの収入や財産、家族の状況によって「どれが向いているか」は大きく変わってきます。

大切なのは、「自分の状況に合った方法を選ぶこと」。そして、一人で抱え込まずに、専門家と一緒に最適な道を探すことです。それでは、ひとつずつ詳しく見ていきましょう。

任意整理|債権者と交渉して月々の返済額を減らす方法

任意整理は、裁判所を通さず、弁護士や司法書士が直接、債権者(お金を貸している会社)と交渉し、返済条件を見直す手続きです。主に、利息をカットしてもらったり、返済期間を延ばしてもらったりして、毎月の返済額を減らすことを目指します。

たとえば、クレジットカードや消費者金融からの借金が合計300万円あり、毎月10万円の返済が厳しいとしましょう。任意整理を行えば、利息をゼロにしてもらい、元本だけを3〜5年で分割返済する計画に変えられる可能性があります。300万円を5年(60回)で返すなら、月々5万円の返済で済むようになるでしょう。

この方法のメリットは、手続きが比較的シンプルで、周囲に知られにくい点です。裁判所に行く必要もなく、官報(国が発行する公的な新聞)に名前が載ることもありません。また、すべての借金を対象にする必要がなく、特定の債権者だけを選んで交渉できるのも大きな特徴です。たとえば、自動車ローンはそのまま払い続けて車を残し、クレジットカードの借金だけを整理する、といった柔軟な対応もできます。

ただし、任意整理にもデメリットはあります。まず、信用情報機関(いわゆるブラックリスト)に登録されるため、約5年間は新しくクレジットカードを作ったり、ローンを組んだりすることが難しくなります。また、債権者側は交渉に応じるかどうか任意なので、必ずしも希望通りの条件で合意できるとは限りません。交渉がうまくいかなければ、他の方法を検討する必要があります。

それでも、「元本だけなら返せる」「家族に知られたくない」「車や家は守りたい」といった希望がある方には、まず検討する価値のある手段です。特に、まだ収入があり、ある程度の返済能力が残っている方に向いています。過去の解決事例やコラムなどを参考に、無理のない契約内容で合意を目指すのが一般的です。

個人再生|マイホームを手放さずに借金を5分の1に圧縮

個人再生は、裁判所を通じて借金の総額を大幅に減らしてもらい、残った金額を原則3年(最長5年)で返済していく手続きです。最大の特徴は、「住宅ローン特則」という仕組みを使えば、自宅を手放さずに済む点にあります。

たとえば、総額500万円の借金で生活が成り立たなくなった。でも、持ち家があり家族と暮らしている。こんな状況で自己破産を選べば家を失う可能性が高いですが、個人再生を選べば借金を5分の1(最低100万円)まで減額してもらえます。これを3年で返済する計画が認められれば、住宅ローンはそのまま払い続けながら、他の借金を大幅に減らすことが可能です。

この方法が向いているのは、「家は絶対に守りたい」「安定した収入がある」という方です。正社員として月収が20万円以上ある、または自営業でも継続的な収入が見込めるといったケースですね。個人再生は、裁判所に「この人は計画通りに返済できる」と認めてもらう必要があるため、ある程度の収入が前提となります。

一方で、個人再生にも注意点があります。まず、手続きが複雑で、必要な書類も多いこと。給与明細や源泉徴収票、家計簿、財産目録など、かなり細かく提出する必要があり、準備に時間がかかります。また、官報に名前と住所が掲載されるため、完全に秘密にすることは難しいでしょう。ただし、日常的に官報をチェックしている人はほとんどいないので、よほどの事情がない限り周囲に知られることは少ないはずです。

「家族との生活を守りたい」「自己破産だけは避けたい」という強い希望がある方にとっては、非常に有力な選択肢となります。裁判所の認可が必要な分、手続きは重くなりますが、その分だけ「借金を大幅に減らしながら、大切なものを守る」道が開けるでしょう。裁判所への申立てを行い、再生計画の許可を得ることで、自宅を残せる様な柔軟な解決が期待できます。

自己破産|全ての借金をゼロにする代償と再スタートの道筋

自己破産は、裁判所に申し立てを行い、すべての借金をゼロにしてもらう手続きです。返済能力がまったくなく、返済を続けることが現実的に不可能な場合に選ばれる、最も強力な手段です。

たとえば、病気やケガで働けなくなり収入が途絶えてしまった。借金が1000万円を超え、どう考えても返せる見込みがない。そんなとき、自己破産の手続きを踏めば、裁判所が「この人には支払い能力がない」と認めてくれた時点で、すべての借金が法的に免除されます。これを「免責」と呼びます。

自己破産の最大のメリットは、借金がゼロになり、取り立てや督促から完全に解放されることです。精神的な重圧から解き放たれ、生活を一から立て直すチャンスが得られます。また、生活に必要な最低限の財産(99万円以下の現金、日用品、家電など)は手元に残せるため、「すべてを失う」わけではありません。

ただし、デメリットや制約もしっかり理解しておく必要があります。まず、一定以上の価値がある財産(たとえば20万円を超える預金、自動車、不動産など)は原則として手放さなければなりません。持ち家がある場合、多くのケースで売却されることになります。また、手続き中は一部の職業(警備員、保険募集人、士業など)に就けない期間がありますが、免責が確定すればこの制限は解除されます。

そして、任意整理や個人再生と同じく、信用情報に事故情報が登録されるため、約5〜10年間は新たな借り入れやクレジットカードの利用が難しくなります。さらに、官報に名前が載るため、完全に秘密にすることはできません。

それでも、「もう返済する力がまったくない」「これ以上追い詰められたくない」という状況であれば、自己破産は人生をリセットし、ゼロから再スタートを切るための大切な選択肢です。破産は「人生の終わり」ではありません。むしろ、法律が認めた「やり直すための制度」なのです。自己破産によって借金をゼロ化し、生活再建に向けた先を見通すことができるようになります。

ここまで、任意整理・個人再生・自己破産という3つの方法を見てきました。それぞれに向き・不向きがあり、どれが正解かは「あなたの状況」によって変わります。

  • 任意整理:まだ収入があり、「利息さえなければ返せる」という方向けです。
  • 個人再生:家を守りたい、安定収入があるという方向けです。
  • 自己破産:もう返済の見込みがまったくないという方向けです。

大切なのは、一人で悩み続けないことです。借金問題の専門家である弁護士や司法書士に相談すれば、あなたの収入・借金額・財産・家族構成などを総合的に見て、最も適した方法を一緒に考えてくれます。初回相談を無料で受け付けている事務所も多いので、まずは気軽に話を聞いてみるだけでも、大きな安心につながるでしょう。

借金に追われる日々から抜け出し、新しい生活を取り戻すことは、決して不可能ではありません。状況に応じた適切な選択肢を見つけることで、必ず道は開けます。法律事務所が提供するサービスの一覧や、解決にかかる費用等を比較検討することをお勧めします。

財産を守り家族を救うための緊急避難策

会社が倒産すると、「財産を全部持っていかれるのでは」「家族の生活はどうなるのか」という不安が押し寄せてきますよね。でも、正しい知識と冷静な対応があれば、守れる部分は意外とあるんです。この記事では、今すぐ使える現実的な方法をお伝えします。

倒産という事態に直面すると、まず頭をよぎるのは「財産はどうなる?」「家族の生活費は?」といった切実な不安が頭をよぎるでしょう。債権者からの督促が始まり、差し押さえの通知が届く可能性もあります。しかし、適切な手続きを踏めば財産を守る余地はあります。完全に諦める必要はありません。

まず知っておいてほしいのは、すべての財産が差し押さえの対象になるわけではないということです。生活に必要な家財道具や年金の一部、給与の一定額などは「差押禁止財産」として法律で保護されています。また、債権者もむやみに差し押さえを実行するわけではなく、話し合いの余地がある場合もあります。

ここでは、まず債権者との交渉で時間を稼ぐ方法、そして家族の生活基盤をどう守るかという2つの視点から、現実的な対応策を見ていきましょう。

債権者との交渉で差し押さえを遅らせる現実的な方法

差し押さえが現実味を帯びてくると、「もう終わりだ」と感じるかもしれません。しかし実際には、債権者との交渉次第で、差し押さえを遅らせたり、条件を調整したりできるケースも少なくありません。

債権者側も、いきなり強硬手段に出ることは避けたいと考えることがあります。差し押さえには手間やコストがかかりますし、回収できる金額が限られる可能性もあるからです。特に中小の取引先や個人事業主が相手であれば、「少しでも回収できれば」「長期分割でもいいから確実に払ってほしい」と考えるケースもあるでしょう。

そこで有効なのが、誠実に現状を説明し、分割払いや支払い期限の延長を提案することです。たとえば、

  • 「現在、財産整理を進めており、〇月までに一定額を支払えます。」
  • 「今は手元に現金がありませんが、給与から毎月△万円ずつ返済させてください。」

といった具体的な提案をすることで、債権者の対応が軟化する可能性は十分あります。

また、専門家(弁護士や司法書士)を介して交渉を行うことで、法的な正当性を持たせることができます。専門家が間に入ることで、債権者も「逃げるつもりはないんだな」と理解し、話し合いに応じやすくなる傾向があるでしょう。特に、破産手続きや個人再生といった法的手続きを検討している場合には、その旨を伝えることで、債権者側も「今無理に動くより、手続きの中で配当を待つ方が得策だ」と判断することがあります。

ただし、ここで注意したいのは、複数の債権者がいる場合の優先順位を明確にすること。すべての債権者に平等に対応しようとすると、かえって誰も納得しない結果になることもあります。担保付きの債権者、税金や社会保険料といった公的債務など、法的に優先される債権がある場合は、それを最優先に考えて交渉を進める必要があります。専門家に相談すれば、どの債権者にどのように対応すべきか、優先順位を整理してもらうことができます。

交渉が成立した場合は、必ず書面で合意内容を残すことが重要です。口約束だけでは後々トラブルになる可能性があるため、分割払いの金額や期限、支払い方法などを明記した合意書を作成し、双方で署名・押印を行うことで、後の争いを防ぐことができるでしょう。また、無理に支払う約束をする前に、質問があれば専門家に相談し、予約を取ってからあるべき対応を見極めましょう。

家族の生活基盤を死守するための財産移転と注意点

次に考えるべきは、家族の生活をどう守るかという視点です。配偶者や子どもがいる場合、最低限の生活費や住まいを確保することは切実な課題でしょう。しかし、ここで焦って財産を家族名義に移したり、現金を隠したりすると、法的に大きな問題になる可能性があります。

まず理解しておきたいのは、倒産直前や直後の財産移転は「詐害行為」とみなされる恐れがあるということです。詐害行為とは、債権者を害する目的で財産を処分・隠す行為のことで、これが認定されると財産移転が無効とされたり、刑事責任を問われたりする可能性もあります。たとえば、差し押さえを逃れるために自宅を配偶者名義に変更したり、預金を家族に移したりする行為は、タイミングや目的によっては詐害行為と判断される危険があります。

では、どうすればよいのでしょうか。ポイントは、正当な理由と適切な対価に基づいた財産移転であれば、問題になりにくいという点です。たとえば、

  • 配偶者が実際に家事労働や家業を手伝っていた場合、その対価として財産の一部を渡すことは、正当な取引として認められることがあります。
  • 生活に必要な家財道具や衣類などは、もともと差し押さえ禁止財産であり、こうしたものを家族に譲ることは問題になりにくいでしょう。

さらに、生命保険や個人年金といった金融商品は、場合によっては差し押さえを免れる可能性があります。特に、受取人が配偶者や子どもに指定されている生命保険金は、その性質上、本人の財産ではなく受取人固有の財産と扱われることがあります。ただし、掛け捨て型ではなく解約返戻金がある保険の場合、その解約返戻金は本人の財産とみなされ、差し押さえの対象になることがあるため、注意が必要です。

また、家族が独自に収入を得ている場合(たとえば配偶者がパートや正社員として働いている場合)、その収入や貯蓄は家族固有の財産として保護されます。ただし、家族名義の口座にあなたの収入を移して隠すといった行為は、明らかに詐害行為とみなされますので、絶対に避けてください。

もう一つ重要なのが、住まいの確保です。賃貸住宅に住んでいる場合、家賃を滞納すると強制退去のリスクがありますが、生活保護や住居確保給付金といった公的支援を利用することで、一定期間の家賃をカバーできる場合があります。持ち家の場合は、差し押さえを避けるためにリースバック(売却後に賃貸として住み続ける方法)を検討する選択肢もありますが、この場合も専門家の助言を得て慎重に進めることが大切です。

財産移転を考える際には、必ず専門家(弁護士や司法書士)に相談し、法的なリスクを確認してから実行することが不可欠です。独断で動いて後から「これは詐害行為だ」と指摘されると、取り返しのつかない事態になることも。一方で、適切な手続きと正当な理由があれば、家族の生活基盤を守る余地は残されています。

倒産という事態は確かに厳しいものですが、冷静に対処し、専門家の力を借りることで、最悪の事態を避けることは可能です。一人で抱え込まず、早めに相談することで、あなたとご家族にとって最善の道が見つかるでしょう。焦らず、でも迅速に、適切なサポートを受けながら前に進んでください。

まとめ|一人で抱え込まず、まずは専門家に相談を

借金や債務整理の問題は、一人で抱え続けるほど不安が大きくなっていくものです。夜も眠れないほど悩んだり、「もうどうしようもない」と諦めかけたりする方も少なくありません。でも、多くの場合、適切な方法を選べば状況を改善できる可能性はあります。

専門家である弁護士や司法書士は、何百件、何千件もの借金問題を解決してきた経験を持っています。あなたが「こんなこと相談していいのかな」と思うような些細な悩みでも、彼らにとっては日常的に扱っているケースかもしれません。

多くの法律事務所では、初回相談を無料で受け付けています。電話やメールで気軽に問い合わせできる窓口も多く、最近ではオンライン相談に対応している事務所も多いです。一人で抱え込まず、まずは一歩を踏み出してみてください。専門家はあなたの味方です。安心して相談できるはずです。

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法務急済運営事務局|株式会社WEBY 株式会社WEBYの法務急済運営事務局として、全国400以上の弁護士・司法書士事務所のWEBマーケティングを支援。法律分野に特化したWEB集客の知見を活かし、これまでに1,000本以上の法律系記事の企画・執筆・編集に携わる。HP制作、SEO対策、WEBコンサルティング、LMC(ローカルマップコントロール)など多角的なサポートを通じて、法律業界の最新動向に精通。 企業法務に求められる実務視点と、法律事務所支援で培った専門知識を基に、企業が抱える法務課題に対して実行可能な情報提供を行うとともに、適切な弁護士・司法書士の紹介も行っている。

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