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英文契約 条項の基本と解説|実務に役立つポイント総まとめ

英文契約

2025.12.152025.12.15 更新

英文契約 条項の基本と解説|実務に役立つポイント総まとめ

海外企業との取引が決まって「よし、これから英文契約書にサインだ!」と思ったら、見慣れない英語がずらり。Whereas、Party、Definition――、どこまで読めばいいのか不安になる方もいらっしゃるでしょう。実は英文契約書には「絶対に押さえるべき条項」があり、そこさえ理解できれば、後からのトラブルを大きく減らせます。

この記事では、ビジネス現場ですぐ使える「主要条項の読み方・解釈のコツ」や「リスク管理条項」「知的財産・機密情報保護」「契約終了と紛争解決」のポイント、さらに「実務で役立つチェックリストとFAQ」を、具体例を交えながらやさしく解説していきます。

英文契約書で必ず押さえるべき主要条項とその解釈

契約前文と当事者情報のチェックポイント

英文契約書の冒頭には、まずPreamble(前文)と呼ばれるパートがあります。「This Agreement is entered into on [日付] between [当事者A] and [当事者B]」のように、契約日と当事者の名前が記載されています。これは単なる挨拶文に見えて、実は誰が契約の主体なのかを明確にする、非常に重要な部分なのです。正式な法人名・住所・代表者が正確に記載されているか、契約書の最初にしっかり確認しましょう。

もう一つのポイントは、Whereas(鑑みて)条項です。これは「契約の背景や目的」を示す文章で、法的拘束力は弱いとされます。しかし、後で契約解釈が分かれたときの”補助資料”として使われることがあります。「Whereas, the parties intend to establish a long-term partnership…(両当事者は長期的なパートナーシップを構築する意図がある)」とあれば、契約の目的が「単発取引」ではなく「継続的な協力関係」であることが明示されますね。これが後々、解釈の判断材料になるケースもありますので、単なる飾り文句と思わず、実際の取引意図と合っているかを確認すると安心です。

定義条項で誤解しやすい用語と実例

英文契約書の序盤には、多くの場合”Definitions(定義条項)”というセクションがあります。ここでは「この契約書の中では、この言葉をこういう意味で使います」と宣言することで、後の解釈のブレを防ぐ役割があるのです。たとえば、よく出てくる「Services」という単語。辞書では「サービス、業務、提供物」などと訳されますが、定義条項では次のように、具体的な業務範囲が限定列挙されている場合があります。

“Services shall mean the technical support, maintenance, and consulting provided by Party A.”
(サービスとは、当事者Aが提供する技術サポート、保守、コンサルティングを指します。)

もう一つ注意が必要なのは、「Material」や「Significant」といった形容詞です。「Material Breach(重大な違反)」という言葉が出てきたとき、日本語では「重大」と訳せますが、具体的にどの程度の違反が「重大」なのかは、定義条項で明示されていなければ分かりません。

“Material Breach means any breach that causes financial loss exceeding USD 10,000.”
(重大な違反とは、1万ドルを超える金銭的損失を引き起こす違反を指します。)

このように金額基準が書かれていることもあれば、「契約の目的達成を著しく妨げる違反」のように抽象的な定義になっていることもあります。どちらにしても、定義がなければ解釈が曖昧になり、紛争リスクが高まることを覚えておきましょう。

契約期間・更新条件の注意点

英文契約書の中で見落とされがちなのが、Term(契約期間)とRenewal(更新条件)の条項です。日本では「期間の定めなし」や「自動更新」が使われることもありますが、英文契約では期間を明示し、更新の条件を明確にするのが一般的。ここを曖昧にしておくと、「契約がいつ終わるのか分からない」「解約したいのにできない」といったトラブルが起きやすくなります。

まず、契約期間の書き方についてです。

“This Agreement shall commence on the Effective Date and continue for a period of two (2) years.”
(本契約は発効日から開始し、2年間継続するものとします。)

このように、開始日と期間の長さをはっきり書くのが基本です。注意したいのは、「Effective Date(発効日)」の定義。契約書に署名した日なのか、商品が納品された日なのか、あるいは両当事者が署名した日のうち遅い方の日なのか。契約書の別の条項で定義されていることが多いので、併せて確認しておきましょう。

次に、更新条件についてです。契約書によっては「Automatic Renewal(自動更新)」という仕組みが入っていることがあります。

“This Agreement shall automatically renew for successive one-year terms unless either party provides written notice of non-renewal at least 60 days prior to the end of the then-current term.”
(本契約は、いずれの当事者も契約満了の60日前までに書面で更新拒否の通知を行わない限り、1年間ずつ自動更新されます。)

これ、一見すると便利そうに見えますが、もし解約したいタイミングで「60日前」を過ぎていたら、さらに1年間、契約が延長されてしまうことになります。解約を忘れていて、気づいたときには「また来年まで待たないと…」という事態は、意外と多いものです。

逆に、自動更新がない契約の場合は、契約満了時に改めて合意しなければ契約が終了します。契約期間と更新条件については、自分たちのビジネスモデルに合った条件が書かれているかを事前にしっかり確認し、必要であれば「自動更新あり/なし」「通知期間の長さ」などを交渉して調整しておくべきでしょう。

契約期間だけを見て安心するのではなく、解約・更新・通知期間の3つをセットで確認しておくことで、「いつ、どうやって契約を終わらせるか/続けるか」の全体像が見えてくるはずです。

実務担当者が見落としがちなリスク管理条項と対応方法

ここでは、実務で頻出する4つの条項について、「どこを読めばいいのか」「どう書けば自社に有利か」を、具体的な例文やパターンと共に整理していきます。

表明保証条項の定義・リスクと例文

表明保証条項とは、契約を結ぶ時点で「うちは○○の状態です」と相手に約束する条項のことです。たとえば「当社は契約締結の権限を有しています」「製品に第三者の知的財産権を侵害する要素はありません」といった内容がこれに該当します。日本の商習慣では「当然のこと」として明文化しないケースもありますが、英文契約では明確に書かないと、後々トラブルに発展しかねません。

まず、契約書に出てくる「represent and warrant」という表現を見つけたら、そこが表明保証条項だと認識しましょう。次に、自社が本当にその内容を保証できるかを確認してください。もし不安がある場合は、「to the best of its knowledge(知る限りにおいて)」「except as disclosed in Schedule A(別紙Aに開示した事項を除く)」といった限定文言を追加することで、リスクを抑えることが可能です。たとえば、知財侵害の有無を完全に調査できていない場合は、「to the Supplier’s knowledge」と書き加えることで、「調査していない部分まで保証したわけではない」と主張する余地を残せるでしょう。

また、相手から提示された表明保証条項が広範すぎる場合は、自社の業務範囲や確認可能な範囲に限定する交渉が重要です。財務状況や訴訟リスクなど、担当部署では把握しきれない事項については、経理部門や法務部門に確認を取るか、条項から除外してもらうよう相手に依頼することも検討すべきです。

責任制限・補償条項の違いと頻出パターン

責任制限(Limitation of Liability)と補償(Indemnification)の違いは何でしょうか?
この2つは「誰がどこまで責任を負うか」を決める条項ですが、役割は全く異なります。

  • 責任制限(Limitation of Liability)
    契約全体で発生する損害賠償の上限額や範囲を定める条項です。「損害賠償の上限は契約金額の100%まで」「間接損害・逸失利益は対象外」といった形で、自社の負担を一定範囲に抑える目的で設定されます。
  • 補償(Indemnification)
    特定の原因で第三者から訴えられた場合に、一方の当事者がもう一方の損害や費用を肩代わりする義務を定める条項です。「供給者の製品が第三者の特許を侵害して訴訟になった場合、供給者が購入者の弁護士費用・損害賠償金を補償する」といった内容になります。

責任制限条項では、上限額の設定と対象外とする損害の種類を必ず確認してください。「indirect, incidental, or consequential damages(間接的、付随的、または結果的損害)」が免責対象になっていれば、予期せぬ逸失利益の請求を避けられます。ただし、自社が購入者側の場合は、相手の責任範囲があまりに狭いと、製品トラブル時に十分な補償を受けられない恐れがあるため、バランスを見極めることが大切です。

補償条項では、どの事由が補償対象になるかを細かく確認しましょう。「breach of representations(表明保証違反)」だけでなく、「defective products(欠陥製品)」「negligence(過失)」など、補償の範囲が広がるほど自社の負担も増えます。もし自社が供給者側なら、「to the extent caused by Supplier’s gross negligence or willful misconduct(供給者の重過失または故意に起因する範囲に限る)」といった限定文言を入れることで、軽微な過失まで補償する義務を回避できるでしょう。

不可抗力条項の解釈・実務的な書き方

不可抗力条項とは、地震・洪水・戦争など、当事者の合理的な支配を超える事由によって契約を履行できなくなった場合に、契約違反の責任を免除する条項です。英米法では、「Force Majeure」は法律上の明確な定義がないため、契約書に書かれた範囲でしか認められません。つまり、条項に「pandemic(パンデミック)」と明記されていなければ、新型コロナウイルスのような事態でも不可抗力として認められない可能性も出てきます。また、「努力義務(reasonable efforts to mitigate)」が併記されている場合、「代替手段を尽くしたか」が争点となるため、単に「不可抗力だから免責」とは言い切れません。

【一般的な不可抗力条項の例文】
“Neither party shall be liable for any failure or delay in performance due to events beyond its reasonable control, including but not limited to acts of God, war, terrorism, pandemic, government action, or natural disasters.”
(いずれの当事者も、天災、戦争、テロ、パンデミック、政府措置、自然災害など、その合理的支配を超える事由による履行の不履行または遅延について責任を負わないものとします。)


不可抗力条項を作成・確認する際は、以下の3点を必ずチェックしましょう。

  1. 具体的な事由の列挙
    「acts of God(天災)」だけでは曖昧ですから、「earthquake(地震)」「flood(洪水)」「pandemic(パンデミック)」など、想定されるリスクを明記します。
  2. 通知義務と代替手段
    「The affected party shall promptly notify the other party(影響を受けた当事者は速やかに通知する)」「use reasonable efforts to mitigate(影響を軽減する合理的努力をする)」といった文言が入っている場合、放置すると免責を主張できません。
  3. 契約終了の条件
    「If the Force Majeure event continues for more than [X] days, either party may terminate this Agreement(不可抗力事由がX日以上継続した場合、いずれの当事者も契約を解除できる)」など、長期化した場合の出口戦略を明記しておくと安心です。

たとえば、コロナ禍で納期遅延が頻発した際、「pandemic」が条項に含まれていなかった企業は、実際に違約金を請求されるケースがありました。今後、同様の事態に備えるなら、具体的なリスクを列挙し、通知手順と代替措置を明文化することが最も現実的な対策でしょう。

よくあるトラブル事例とその回避策

ここまでご紹介した3つの条項が絡んだ、実際のトラブル事例と回避策をセットでお伝えします。

  • 事例1:表明保証違反で多額の賠償請求
    ある日本企業が海外企業に製品を供給する契約を結んだ際、「製品は第三者の知的財産権を侵害しない」と表明保証しました。しかし後日、第三者の特許を侵害していることが判明。購入者が訴訟に巻き込まれた結果、日本企業が全額補償を求められる事態になりました。
    回避策
    表明保証条項に「to the Supplier’s knowledge(供給者の知る限り)」「based on a reasonable investigation(合理的な調査に基づき)」といった限定文言を入れることで、完全な無過失責任を避けることが可能です。また、別紙(Schedule)で既知のリスクを開示しておくのも有効な方法です。
  • 事例2:責任制限と補償の範囲で認識ズレ
    ある企業が「責任上限額は契約金額の100%」と責任制限条項で合意していました。ところが、補償条項には「知財侵害による一切の損害を補償する」と書かれていたため、結果的に上限を超える賠償金を請求されてしまいました。
    回避策
    責任制限条項と補償条項は必ずセットで確認しましょう。補償義務が責任上限を超えないか、または補償条項に別途上限を設けるかを明記しておくべきです。
  • 事例3:不可抗力の要件不備で納期遅延の違約金発生
    ある企業がパンデミックで工場停止し、納期に遅れてしまいました。しかし、不可抗力条項に「pandemic」が明記されておらず、「acts of God」だけでは対象外と判断され、違約金を支払うことになりました。
    回避策
    不可抗力条項には、想定されるリスクを具体的に列挙することが最も重要です。「including but not limited to(これに限らない)」といった包括文言を入れても、具体例がなければ裁判所は狭く解釈する傾向がありますので、明示が基本です。

知的財産と機密情報を守るための条項解説

知的財産権の取り決めと英文例

海外企業との契約で「知的財産権」(Intellectual Property Rights, IPR) の扱いを曖昧にしたまま話を進めると、製品開発に投じた時間とコストが水の泡になるリスクがあります。「誰が・どの範囲の知的財産を・どのように使えるのか」を明確に定めておく必要があります。

知的財産権の条項を作るときは、以下の3点を契約書に盛り込んでください。

  1. 既存知的財産の帰属を明記する
    契約締結前から各当事者が保有していた特許、商標、著作権、ノウハウ(Background IP)は、それぞれの所有者に帰属し続けることを明示します。
    英文サンプルは以下の通りです。
    “Each party retains all rights, title, and interest in and to its Background Intellectual Property. Nothing in this Agreement shall be construed as granting any license or right to use such Background IP without prior written consent.”
    (各当事者は、既存知的財産に関するすべての権利、権原、利益を保持します。本契約のいかなる条項も、事前の書面による同意なしに当該既存知的財産の使用許諾または権利付与と解釈されないものとします。)
  2. 契約期間中に生まれる知的財産(Foreground IP)の権利を取り決める
    共同開発や受託開発の場合、新しく生まれた発明や設計図、プログラムコードの権利を誰が持つかを最初に決めておかないと、後で泥沼の争いになりかねません。たとえば共同開発なら「共有」、受託開発なら「発注側が全権利を取得」といったパターンが一般的です。
    “All Foreground Intellectual Property created solely by Party A during the term of this Agreement shall be owned exclusively by Party A. Foreground IP created jointly by both parties shall be jointly owned, and each party may use such IP without accounting to the other.”
    (本契約期間中にA社が単独で創出したすべての新規知的財産はA社が独占的に所有します。両当事者が共同で創出した新規知的財産は共同所有とし、各当事者は相手方への対価支払いなく当該知的財産を使用できます。)
  3.  第三者の知的財産権を侵害しないことの保証(Warranty of Non-Infringement)を入れる
    相手が提供する技術や素材が、実は他社の特許を侵害していて、あなたの会社が訴えられるリスクもありますよね。こうした事態を防ぐために、「提供する技術は第三者の権利を侵害していない」と相手に保証させる条項を入れましょう。
    “Each party warrants that the materials and information provided under this Agreement do not infringe any third-party intellectual property rights. In the event of a claim, the warranting party shall indemnify and hold harmless the other party from any losses arising therefrom.”
    (各当事者は、本契約に基づき提供する素材および情報が第三者の知的財産権を侵害しないことを保証します。第三者からクレームがあった場合、保証当事者は相手方をあらゆる損失から補償し免責するものとします。)

機密保持義務の範囲・期間

海外企業と取引を始める際、契約書に「Confidentiality(機密保持)」の条項が入っていても、「具体的に何が機密なのか」「いつまで守ればいいのか」が曖昧だと、情報漏洩やトラブルの火種になります。機密情報の範囲と保持期間を契約書で明確に定め、双方が同じ認識を持つことが不可欠です。

  • 機密情報の範囲を具体的に定義する
    機密情報(Confidential Information)とは、一般に公開されておらず、開示することで開示者に不利益が生じる情報を指します。契約書では、「どんな情報が機密に当たるか」を列挙し、同時に「何が機密に当たらないか」(除外事項)も明記するのが基本です。ここで重要なのは、口頭で伝えた技術情報や、会議で共有したExcelファイルなど、正式な「Confidential」ラベルが付いていない情報も、内容によっては機密扱いになることがある、という条項です。この除外条項を入れることで、「相手から聞く前に自社で知っていた技術を使ったのに、機密漏洩だと言われた」といった不合理な主張を防ぐことができるでしょう。
  • 機密保持期間を明確にする
    機密情報をいつまで守る義務があるのかを定めておかないと、契約終了後に「もう過去の話だから」と相手が情報を使い始めるリスクがあります。一般的には、契約終了後も一定期間(2〜5年)は機密保持義務が継続すると定めるのが実務の標準です。ここで注目すべきは、「trade secret(営業秘密)に該当する情報は無期限保護」という部分です。たとえば製造レシピや独自アルゴリズムなど、法律上の営業秘密要件(秘密管理性・有用性・非公知性)を満たす情報は、契約書で期限を切っても法的保護が続くため、実質的に永久に守る義務が生じます。逆に、一般的な顧客リストや価格表などは「3年」といった期限を設けるのが現実的でしょう。

情報漏洩時の対応手順チェックリスト

契約書に完璧な機密保持条項を入れても、実際に情報漏洩が起きたときに「何をどの順番で対応すればいいかわからない」という状況では、被害を最小限に抑えることができません。海外企業との取引では、時差や言語の壁もあり、初動対応が遅れると証拠が消えたり、相手が「知らなかった」と主張して責任を回避したりするリスクが高まります。ここでは、情報漏洩が発覚した瞬間から取るべき行動を、実務で使えるチェックリスト形式でまとめました。

STEP 1: 漏洩事実の確認と証拠の確保(発覚後24時間以内)

情報漏洩の疑いが浮上したら、まず「本当に漏洩が起きたのか」「どの情報がどこまで流出したのか」を客観的に確認してください。

漏洩の痕跡を記録する

  • 相手企業の社員が自社の機密情報を含むプレゼン資料を第三者に送信したメール
  • SNSや業界フォーラムに投稿された技術仕様のスクリーンショット
  • 競合他社が突然発表した製品が、自社の設計図と酷似している事実

これらの証拠は、時間が経つと削除されたり上書きされたりする可能性があるため、発覚後すぐにスクリーンショット、メールのコピー、ウェブページの魚拓を取ってください。電子データの場合は、ファイルのタイムスタンプやメタデータも保存しておくと、後で「いつ誰が作成・送信したか」を立証しやすくなります。

社内で事実関係を整理する

  • どの情報が漏洩したか(顧客リスト、設計図、価格表など)
  • いつ頃から漏洩していたか(契約期間中か、契約終了後か)
  • 漏洩源は誰か(相手企業のどの部署・担当者か)

これらを箇条書きでまとめたメモを作成し、社内で共有しましょう。このメモは後で弁護士や司法書士に相談する際の基礎資料になります。

STEP 2: 契約書の機密保持条項を再確認する(24時間以内)

証拠を押さえたら、次に契約書の機密保持条項(Confidentiality Clause)を読み直し、相手の行動が契約違反に該当するかを確認してください。

  • 漏洩した情報が「Confidential Information」の定義に含まれているか
  • 漏洩のタイミングが機密保持義務の期間内か
  • 契約書に違反時の救済手段(Remedies)が書かれているか

STEP 3: 相手企業への通知(書面・メール)を送る(48時間以内)

契約違反が明らかになったら、相手企業に対して「機密情報が漏洩した事実を認識している」「契約違反である」と書面で通知してください。この通知は、後で訴訟になったときに「相手は漏洩を知っていたのに対応しなかった」という証拠になります。

通知に含めるべき内容

  • 相手企業名
  • 契約日
  • 漏洩した情報の種類
  • 第三者名
  • あなたの会社名・担当者名

この通知は、メールと郵便(書留・追跡可能な方法)の両方で送るのが理想です。メールは迅速に届きますが、相手が「受け取っていない」と主張する可能性もありますから、郵便の配達記録も残しておくと安心できるでしょう。

STEP 4: 社内で被害範囲と影響を評価する(1週間以内)

相手への通知と並行して、漏洩による実際の被害(損害額・顧客離脱・競争力低下など)を社内で評価してください。

評価すべき項目

  • 漏洩した顧客リストに含まれる顧客数と、そこから得られる年間売上見込み
  • 競合他社が類似製品を発表したことで失った市場シェアの推定額
  • 情報を取り戻すために投じる弁護士費用・調査費用

可能であれば、財務部門や営業部門と連携して数字を出しましょう。「なんとなく困っている」ではなく、「年間売上500万円相当の顧客情報が流出した」と具体的に言えるほうが、後の交渉や訴訟で有利になります。

STEP 5: 弁護士・専門家に相談する(1週間以内)

情報漏洩への対応は、契約書の解釈、準拠法の適用、証拠の法的有効性など、専門知識が必要な場面が多く出てきます。特に海外企業相手の場合、現地法に詳しい弁護士や国際取引専門の司法書士に早めに相談することで、差し止め請求(injunction)や仮処分の申立てを迅速に進められます。弁護士に相談する際は、STEP 1で作成した証拠資料、STEP 2で確認した契約書、STEP 3で送った通知文、STEP 4で評価した被害額を一式持参してください。

STEP 6: 再発防止策を講じる

情報漏洩への対応と並行して、同じトラブルが再発しないよう社内体制を見直すことも重要です。以下のチェックポイントを参考にしてください。

機密情報の管理体制強化

  • 機密情報にアクセスできる社員を限定し、アクセスログを記録する
  • 外部へ情報を提供する際は、必ず「Confidential」ラベルを付ける
  • 口頭で伝えた重要情報は、後から書面(メール)で確認メモを送る

契約書のひな型改善

  • 今回のトラブルで「契約書に書いていなかった」と指摘された項目を追加する
  • 機密情報の範囲を具体例で3つ以上列挙する
  • 漏洩時の救済手段(差し止め・損害賠償・違約金)を明記する

社員教育

  • 海外取引に関わる営業・技術部門の社員に、機密保持の重要性を研修で伝える
  • 「口頭で話した内容も機密になり得る」「契約終了後も義務は続く」といった基礎知識を共有する

契約終了と紛争解決―条項サンプルと実務ポイント

契約書に「どんなときに契約を終わらせていいか」が書かれていないと、相手が全然納品してこなくても、こちらから一方的に解除できず泣き寝入り…といったリスクが生まれます。逆に、相手から理不尽な理由で急に契約を切られてしまうケースもありますから、解除・終了の条件は双方が納得できる形で明文化しておくことが重要です。

契約解除・終了の条件と英文例

英文契約書でよく使われる表現に “Termination” があります。これは「契約終了」全般を指す言葉で、合意による終了(termination by mutual agreement) と一方的解除(termination for cause / without cause) の2パターンに大きく分かれます。特に重要なのが “for cause” の方で、「相手が重大な義務違反をしたときは、通知を送って◯日以内に改善されなければ解除できる」といったルールを設けるのが一般的です。

たとえば以下のような英文が定番です。

“Either party may terminate this Agreement for cause upon written notice if the other party materially breaches any provision of this Agreement and fails to cure such breach within thirty (30) days after receiving written notice thereof.”
(いずれの当事者も、相手方が本契約のいずれかの条項に重大な違反をし、書面による通知を受領後30日以内にその違反を是正しなかった場合、書面通知により本契約を理由をもって終了することができます。)

準拠法・管轄裁判所の選び方と注意点

契約書を読んでいると、最後のほうに “Governing Law” や “Jurisdiction” といった項目が出てきます。これは「この契約はどこの国の法律で解釈するか」「揉めたらどこの裁判所で争うか」を決める条項で、実は紛争が起きたときに最も影響力を持つ部分なのです。

ここで注意したいのが、準拠法と管轄裁判所は必ずしも一致しないという点です。準拠法は「どの国・州の法律を適用するか」を決めるもので、管轄裁判所は「どこで裁判をするか」を決めるもの。たとえば「準拠法は日本法、管轄裁判所はシンガポール」という組み合わせも理論上は可能です。

英文でよく見る管轄条項の例はこんな感じです。

“Any disputes arising out of or relating to this Agreement shall be subject to the exclusive jurisdiction of the courts located in Tokyo, Japan.”
(本契約に起因または関連する紛争は、日本国東京に所在する裁判所の専属的管轄に服するものとします。)

また、一部の国では「外国判決の承認・執行」が難しい場合もあるため、判決を取っても相手国で財産差し押さえができないというリスクも考慮に入れる必要があります。こうした複雑さを避けるために、次に紹介する仲裁条項を選ぶケースが増えているのです。

紛争解決(調停・仲裁)条項の実務解説

「裁判はお金も時間もかかるし、ビジネス関係も完全に壊れてしまう」という懸念から、最近の国際契約では仲裁(Arbitration)や調停(Mediation)といった裁判外紛争解決手段(ADR: Alternative Dispute Resolution)を選ぶケースが増えています。

まず調停(Mediation)は、第三者の調停人が間に入って話し合いを仲介する方法です。調停人に強制力はなく、あくまで当事者同士の合意形成を支援する役割を果たします。そのため、関係を壊さずに解決したいケースや、契約継続の可能性を残したいケースに向いています。

英文では以下のように書かれます。

“In the event of any dispute arising out of this Agreement, the parties agree to first attempt to resolve the dispute through good faith mediation before resorting to arbitration or litigation.”
(本契約に起因する紛争が生じた場合、当事者は仲裁または訴訟に訴える前に、誠実な調停による解決を最初に試みることに合意します。)

一方仲裁(Arbitration)は、仲裁人(または仲裁人パネル)が双方の主張を聞いて拘束力のある判断(仲裁判断)を下す制度です。裁判と似ていますが、手続きが非公開で迅速、かつ仲裁判断は原則として上訴できない(一発勝負)という特徴があります。

典型的な仲裁条項の例はこちらです。

“Any dispute, controversy, or claim arising out of or relating to this Agreement shall be settled by arbitration in accordance with the Rules of the International Chamber of Commerce (ICC). The arbitration shall be conducted in English in Singapore, and the arbitral award shall be final and binding upon the parties.”
(本契約に起因または関連する紛争・論争・請求は、国際商業会議所(ICC)の規則に従い仲裁により解決されます。仲裁はシンガポールで英語により行われ、仲裁判断は当事者に対し最終的かつ拘束力を有するものとします。)

契約書レビュー時の簡単チェックポイント

1. 当事者名・契約日・有効期間

  • オフ契約開始日・有効期間が明確か
  • オフ日付の齟齬がないか

2. 契約の目的・範囲(Scope of Work / Services)

  • オフ何をする契約か、目的が明確に書かれているか
  • オフ業務範囲が具体的に定義されているか
  • オフ義務の範囲が曖昧になっていないか

3. 支払条件(Payment Terms)

  • オフ金額・通貨・支払方法(電信送金など)が記載されているか
  • オフ支払期日が妥当か
  • オフ遅延利息(late payment fee)の設定が過度でないか

4. 責任制限・免責(Limitation of Liability / Indemnification)

  • オフ間接損害・逸失利益の扱いがどうなっているか
  • オフ損害賠償額の上限設定が合理的か
  • オフ一方に不利すぎる内容になっていないか

5. 解約・終了(Termination)

  • オフ解約通知期限(何日前通知か)が明確か
  • オフ中途解約時の違約金の有無
  • オフ相手の契約違反時に即時解除できるか

6. 準拠法・紛争解決(Governing Law / Dispute Resolution)

  • オフ適用する法律が自社に不利でないか
  • オフ裁判または仲裁の場所に無理がないか
  • オフ自国法・自国地での解決や、中立地での仲裁が交渉可能か

よくある質問とその回答(FAQ)

Q1: 契約書に印鑑は必要ですか?サインだけで大丈夫ですか?
A: 英文契約では、基本的に「手書きサイン(signature)」が主流です。日本のような印鑑文化は海外にはあまりなく、サインこそが本人確認の手段とされています。電子署名(DocuSignなど)が使われるケースも増えており、その場合も法的に有効です。

Q2:相手から送られてきた契約書をそのまま署名しても大丈夫ですか?
A: 原則として、そのまま署名するのは避けたほうが無難です。契約書は相手側の弁護士が作成していることが多く、当然ながら相手に有利な内容になっています。まずは自分でチェックリストに沿って確認し、不明点や不利な箇所があれば、専門家に相談してください。

Q3: 契約書の文面が難しすぎて理解できません。どうすればいいですか?
A: まず、全文を完璧に理解しようとしないことです。契約書は法律文書なので、どうしても硬い表現や専門用語が並びます。それよりも、「自社にとってリスクが高い部分」「金額や期限に関わる部分」「解約や責任に関する部分」など、重要な箇所に絞って読むほうが効率的ですよ。それでも不安な場合は、専門家にピンポイントで質問すれば、費用も時間も抑えられるはずです。

Q4: 英文契約書を日本語に翻訳して確認したいのですが、どの程度正確ですか?
A: 機械翻訳(Google翻訳、DeepLなど)の精度は年々向上していますが、契約書のような専門文書ではまだ完璧ではありません。特に法律用語や微妙なニュアンスは誤訳されることがあります。翻訳を参考にするのは良いですが、それを鵜呑みにせず、重要な条項は原文と照らし合わせて確認してください。

英文契約書の無料サンプル・テンプレート

英文契約書のテンプレートは、インターネット上で無料公開されているものがたくさんあります。ただし、そのまま使うのは危険です。テンプレートはあくまで「ひな形」であり、自社の取引内容や相手国の法律に合わせてカスタマイズする必要があることを覚えておいてください。ここでは、信頼できる無料サンプルの入手先と、使う際の注意点をご紹介します。

まず代表的なのが、JICA(国際協力機構)や日本貿易振興機構(JETRO)が提供する契約書サンプル集です。これらは日本企業の海外進出を支援する公的機関が作成したもので、日本企業の視点に立った内容になっています。英語と日本語の対訳がついているものもあるため、初心者でも理解しやすく、「こういう条項を入れておけば安心」という目安がつかめるでしょう。

また、海外のリーガルサイトにも豊富なテンプレートがあります。例えば “LawDepot” や “Rocket Lawyer” といったサイトでは、NDA(秘密保持契約)、Sales Agreement(売買契約)、Service Agreement(サービス契約)など、さまざまな契約書のひな形を無料または安価でダウンロードできます。ただし、これらは主に米国法を前提としているため、日本企業が使う場合は準拠法を日本法に変更したり、日本の商習慣に合わない部分を修正したりする必要があります。英語の言い回しや条項構成を学ぶ参考資料としては非常に有用です。

無料サンプルやテンプレートは、契約書の「構成」「表現」「定型文」を学ぶには最適なツールですが、それをそのまま使うのではなく、自社の取引に合わせてカスタマイズし、最終的には専門家のチェックを受けることで、安心して契約を進められる状態に仕上げてください。「まずはサンプルで全体像を掴み、その後で専門家に相談する」という流れが、時間もコストも無駄にしない賢い使い方です。

まとめ|一人で悩まず、まずは専門家に相談

英文契約書の実務は、最初こそ戸惑うことが多いかもしれません。しかし、チェックポイントを押さえ、よくある疑問を解消し、適切なツールを活用することで、驚くほどスムーズに進められるようになります。

一方、契約内容が複雑だったり、大きな金額が動いたりする場合は、専門家に相談することで、より安心して取引を進められます。国際取引に詳しい弁護士や法務コンサルタントは、契約書の全体像を俯瞰しながら、あなたのビジネスの状況に合わせて整理してくれます。

加えて、海外との取引では文化や商習慣の違いから誤解が生まれやすいものです。第三者の目線を入れることで、後々のリスクを減らすことにもつながります。

法務急済運営事務局

法務急済運営事務局|株式会社WEBY 株式会社WEBYの法務急済運営事務局として、全国400以上の弁護士・司法書士事務所のWEBマーケティングを支援。法律分野に特化したWEB集客の知見を活かし、これまでに1,000本以上の法律系記事の企画・執筆・編集に携わる。HP制作、SEO対策、WEBコンサルティング、LMC(ローカルマップコントロール)など多角的なサポートを通じて、法律業界の最新動向に精通。 企業法務に求められる実務視点と、法律事務所支援で培った専門知識を基に、企業が抱える法務課題に対して実行可能な情報提供を行うとともに、適切な弁護士・司法書士の紹介も行っている。

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