コンプライアンス違反とは?簡単にわかりやすく解説|リスク・原因・防止策を総まとめ
労働問題・労働法務
2025.11.18 ー 2025.11.13 更新
急に「コンプライアンス違反を防げ」と言われても、具体的に何をどう気をつければいいのか迷ってしまうのではないでしょうか。実は多くの企業で、コンプライアンスの範囲を「法律を守ること」だけと誤解している場合が多いようです。本記事では、コンプライアンス違反の定義や事例、そして違反を防止する方法について、網羅的な一覧として解説します。

コンプライアンス違反とは?基本的な意味をわかりやすく解説
コンプライアンス違反の定義
コンプライアンス違反とは、企業が守るべき規範やルールに反する行為を指します。重要なのは、法律だけではないという点です。
コンプライアンス(compliance)は「従うこと、応じること」を意味する英語です。企業活動において守るべき基準すべてを対象とします。具体的には、法令、社内規程、業界の自主規制ルール、社会的な倫理観や常識など、企業を取り巻くあらゆる規範が含まれるでしょう。
例えば、労働基準法違反のように明確な法令違反だけでなく、法的には問題がなくても、顧客との約束を軽視したり、同業他社で当たり前の配慮を怠ったりすることも、広い意味でのコンプライアンス違反となる可能性があります。
中小企業では「法律さえ守っていれば大丈夫」と考えがちですが、取引先からの信頼失墜や従業員のモチベーション低下など、法的責任以外のリスクも大きいものです。新任担当者としては、「コンプライアンス=法令+α」という幅広い概念として理解を深めてください。
また、違反が起きた場合の影響は多岐にわたります。法的な処罰や損害賠償はもちろん、報道による企業イメージの悪化、取引停止、優秀な人材の流出など、企業経営の根幹を揺るがす事態につながることも少なくありません。そのため、経営層を含むすべての人が、企業が守るべき様々な規範を理解し、注意して行動することが求められます。
法令遵守だけではない適用範囲
コンプライアンスの適用範囲は、想像よりもはるかに広範囲です。法令遵守(リーガルコンプライアンス)は基盤となりますが、それだけでは現代の企業活動において十分とは言えないでしょう。
まず、社内規程や就業規則の遵守です。これらは法律ではありませんが、企業と従業員の約束事として重要です。社内の情報管理規程に違反して機密情報を外部に漏らしたり、就業規則で禁止されているSNSでの不適切な発言をしたりすることも、コンプライアンス違反に該当します。
次に、業界の自主規制やガイドラインへの対応も含まれるでしょう。建設業界の安全基準やIT業界の個人情報保護ガイドラインなど、法的拘束力がなくても業界標準として定着しているルールは守るべきものです。これらを無視すると、同業他社や取引先からの信頼を失うリスクが出てきます。
さらに、社会的な期待や倫理観への対応も重要な要素です。セクハラやパワハラは法的にも問題ですが、それ以前に人としてのマナーの問題でもありますね。環境への配慮や地域社会との共生なども、法的義務でなくても社会から期待される企業の責任として捉えるべきです。
中小企業では「大企業ほど厳しく考える必要はない」と思われがちですが、インターネットやSNSの普及により、小さな企業の問題も瞬時に広まる時代です。規模に関わらず、幅広い視点でのコンプライアンス対応が求められるのが現実でしょう。
CSRやコーポレートガバナンスとの違い
コンプライアンスとよく混同される概念に、CSR(企業の社会的責任)やコーポレートガバナンス(企業統治)があります。これらはそれぞれ異なる側面から企業の健全な運営を支えています。違いを表で見てみましょう。
| 項目 | コンプライアンス | CSR | コーポレートガバナンス |
| 目的 | ルールを守る(守り) | 社会に貢献する(攻め) | 適切に経営する(仕組み) |
| イメージ | やってはいけないことをしない | やるべきことを積極的に行う | 会社を正しく動かすための仕組み |
| 具体例 | 法令遵守、社内ルール徹底 | 環境保護活動、地域貢献 | 取締役会の機能、情報開示 |
新任担当者としては、まずコンプライアンスの基盤をしっかり固めることが大切です。その上で、CSRやガバナンスの観点も徐々に取り入れていくと良いでしょう。これらの概念を理解することは、より効果的なリスク管理につながります。取引先や金融機関との関係でも評価される場面が増えていますので、基本的な知識を身につけておくことは非常に重要です。本コンテンツの目次を参照し、社会規範の考え方を定めることが、ビジネスを行う際に役立ちます。
「コンプライアンスって大企業の話でしょ?」そんな風に思っていませんか?中小企業こそ、一度の違反が会社の存続を左右する深刻な問題です。
コンプライアンス違反の具体的事例と企業への影響
実際に起きた身近なコンプライアンス違反事例
コンプライアンス違反は、大企業の巨額詐欺のような大がかりなものばかりではありません。中小企業でも、「知らなかった」「悪気はなかった」という身近な理由で発生するケースが多いです。
具体的な事例を見てみましょう。
株式会社や私的な利益を提供する際に、以下のような種類の事項に注意が必要です。
- 労務管理の例:サービス残業の常態化
「みんなやっているから」とタイムカード打刻後に仕事を続けさせたり、休日出勤の代休を取らせなかったりする行為は、労働基準法違反です。ある製造業の企業では、繁忙期の残業代未払いが発覚し、約500万円の支払いを命じられた事例があります。 - 個人情報管理の例:応募書類の放置
採用面接で集めた応募者の履歴書を机に放置したまま退社し、翌朝清掃員に見られてしまったケースです。些細な管理ミスでも個人情報保護法違反となり、会社の信用を低下させます。退職した従業員のアクセス権限削除忘れによる顧客データ持ち出しも、実際に起きています。 - 取引関係の例:下請法違反
発注書面の交付を怠ったり、支払い期日を一方的に延長したりする行為です。建設業界では、元請けが下請けに対し「今回は支払いを来月に」と口約束で遅らせることがありますが、これは下請代金支払遅延等防止法違反となる可能性があります。 - 環境法令違反の例:産業廃棄物の不法投棄
処理委託先を十分に確認せず、安価な業者に依頼した結果、その業者が不法投棄を行い、委託元も責任を問われるケースがあります。コスト削減が目的でも、重大な連帯責任を負うことになりかねません。
これらの事例に共通するのは、「これくらいは大丈夫」「他社もやっている」という甘い認識です。法令は規模の大小を問わず適用されるため、中小企業も例外ではないことを知っておきましょう。
違反が企業にもたらすリスクと損失
コンプライアンス違反が発覚した場合、企業が直面するリスクと損失は想像以上に深刻です。
- 法的リスク:行政処分や刑事罰
労働基準法違反なら最大で懲役6ヶ月または罰金30万円、個人情報保護法違反なら懲役1年または罰金50万円の可能性があります。 - 経済的損失:損害賠償や対応コスト
個人情報漏洩では、被害者一人あたり数万円〜数十万円の慰謝料が発生し、数千万円に達するケースも少なくありません。未払い残業代は、付加金を含めると実質2倍の金額を支払うことになります。弁護士費用や調査費用など、対応コストも数百万円規模に上るでしょう。 - 取引関係への影響:信頼失墜と契約停止
取引先からの信頼を失い、契約解除や新規取引の停止につながる恐れがあります。大企業との取引は、コンプライアンス体制の不備を理由に打ち切られることもあります。 - 従業員への影響:人材流出と採用難
コンプライアンス違反が広まると、将来に不安を感じた優秀な人材が流出したり、新たな人材採用が難しくなったりします。労働組合の結成や集団訴訟のリスクも高まるでしょう。 - 金融機関との関係悪化:融資困難
銀行は企業のコンプライアンス体制を重視しています。違反が発覚すると、融資の継続や新規借入が困難になる可能性があります。
社会的信用失墜による長期的影響
社会的信用の失墜は、企業にとって最も回復が難しい損害です。SNSで不祥事が瞬時に拡散される現代では、一度失った信用を取り戻すのは至難の業でしょう。
- 顧客離れと売上減少
「安心して購入できない」と消費者が感じ、売上が大幅に減少します。食品業界の産地偽装では、売上が3分の1まで落ち込み、回復に3年以上かかった事例もあります。 - 採用難と人材流出
企業の評判が悪化すると、優秀な人材の採用が困難になり、既存の従業員も転職を検討し始めるでしょう。 - 業界内での孤立
同業他社との協力関係が希薄になり、業界団体から除名されたり、事業機会が失われたりする可能性もあります。 - 地域コミュニティとの関係悪化
地域密着型の中小企業にとって、地域住民からの信頼失墜は致命的です。祭りの参加を遠慮されるなど、日々の活動にも影響が出ます。
信用回復には、通常3年から5年、場合によってはそれ以上の期間を要します。違反が起きてから対応するのではなく、日頃からの予防が何よりも大切ですし、もしコンプライアンス体制に不安がある場合は、弁護士や社会保険労務士といった専門家に相談しましょう。早期の相談が、深刻な事態を未然に防ぐことにつながります。
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企業の信頼を一瞬で失わせてしまうコンプライアンス違反。「うちは大丈夫」と思っていても、実は身近なところに危険が潜んでいるかもしれません。
なぜコンプライアンス違反が起きるのか?主な3つの原因
違反が起きる背景には、多くの中小企業に共通する3つの落とし穴があります。これらを理解し、自社のリスクを事前に察知して適切な対策を講じましょう。
- 過度なノルマとプレッシャー
- 管理体制の不備
- 見て見ぬふりをする組織風土
それぞれ詳しく見ていきます。
過度なノルマ設定と目標達成プレッシャー
売上向上や業績改善のため、現実的ではない高い目標を設定する企業は少なくありません。例えば、達成困難な売上目標を課された営業担当者が、顧客への虚偽説明や契約条件の改ざんに手を染めてしまったケースがあります。
「数字さえ達成すれば手段は問わない」という暗黙のメッセージが蔓延すると、社員は「違法だとわかっていても、やるしかない」という心理状態に陥りがちです。
中小企業では、少数精鋭で業務を回しているため、一人ひとりに大きな責任とプレッシャーがかかります。この環境が、社員が「会社のため」という名目で、法令や社内規程に反する行動を正当化する危険性を高めてしまうのです。
つまり、無理な目標設定が、コンプライアンス違反の温床となるということです。
管理体制の不備と現場の実態把握不足
経営陣が業績数字や報告書だけで現場を把握し、実際の業務プロセスや社員の行動を十分に理解できていないケースは少なくありません。ある製造業では、現場作業員が効率化のため安全手順を一部省略していることに、管理職が長期間気づかなかった事例があります。
「社員を信頼している」という性善説に基づく管理は、中小企業に特に多く見られます。具体的なチェック体制や報告システムがないと、問題が発生しても発覚が遅れ、被害が拡大しがちです。管理職が多忙で現場を見る余裕がないことも、この問題に拍車をかけます。
つまり、実態と乖離した管理体制が、意図しない違反を生み出す可能性があるということです。
違反を報告・是正する仕組みの欠如
コンプライアンス問題を深刻化させる要因の一つは、「問題を報告しにくい企業風土」です。社員が法令違反や不正行為を目撃しても、報告する明確なルートや仕組みがなければ、問題は放置されてしまいます。
中小企業では、内部通報制度があっても機能していないのが実情でしょう。通報窓口が上司に限られていたり、匿名性が保証されていなかったりすると、社員は報復を恐れて声を上げられません。
過去に問題を提起した社員が不当な扱いを受けた経験があると、「余計なことは言わない方がいい」という消極的な姿勢が広まります。
このような環境では、小さな違反が徐々にエスカレートし、最終的には重大な法的問題に発展するリスクが高いでしょう。外部機関の調査で初めて問題が明るみに出る、という後手後手の対応になりがちです。
つまり、問題を報告・是正する仕組みがないことが、問題を大きくしてしまう原因なのです。
これらの3つの原因を理解し、自社の状況に合わせた対策を検討しましょう。専門的な知識が必要な場合は、弁護士や社会保険労務士などの専門家への相談が効果的です。
近年、大手企業から中小企業まで、コンプライアンス違反のニュースを目にする機会が増えていませんか?これは単なる偶然ではなく、現代社会の構造的な変化が背景にあります。
コンプライアンス違反が増加している4つの社会背景
企業の社会的責任に対する意識の高まり
以前は利益追求が主でしたが、今は企業に社会貢献も当然に求められています。消費者や投資家の価値観も変化し、企業への期待が高まることで、見過ごされてきた行為も違反と認識されやすくなりました。
SNS普及による不正の発覚・拡散リスク増大
従業員による不適切投稿や告発など、昔なら内々で済んだ問題がSNSで瞬時に拡散されるようになりました。小さな違反でも企業の存続を脅かすほどの炎上につながる時代です。
労働環境への監視強化
働き方改革により、長時間労働やハラスメントなど、労働環境への監視が厳しくなりました。労働基準監督署の監査強化や通報制度の整備により、これまで見過ごされてきた違反も表面化しやすくなっています。
ESG経営とコンプライアンス開示の義務化
ESG(環境・社会・ガバナンス)経営が重視され、企業にはコンプライアンス体制の構築と情報開示が強く求められるようになりました。投資家や金融機関からの評価も厳しくなり、サプライチェーン全体での管理も必要となるため、違反として認識される範囲が拡大しています。
このような複雑化するコンプライアンス要求に対応するためには、専門知識と継続的な改善が不可欠です。法務や総務の専門家と連携し、適切な体制構築を進めていくことが重要となります。
「うちの会社、コンプライアンス対策は大丈夫だろうか?」そんな不安を抱えている新任担当者の方も多いのではないでしょうか。企業の信頼や法的リスクを守るためにも、予防対策の構築は欠かせません。
職場でできるコンプライアンス違反の予防対策
コンプライアンス違反を防ぐには、組織全体で継続的に実践できる仕組み作りが重要です。ここでは、効果的な予防対策を3つのステップでご紹介します。
完璧を目指すのではなく、まずは自社の状況に合わせて一つずつ手をつけていきましょう。
- ステップ1:意識を合わせる(研修の実施)
- ステップ2:相談できる窓口を作る(内部通報制度)
- ステップ3:定期的に見直す(リスクチェック)
それぞれのステップを詳しく見ていきます。
全社員向け研修プログラムの構築
コンプライアンス違反は、「知らなかった」「そこまで重大だと思わなかった」という認識不足から生まれるケースが多いです。全社員が共通の理解を持てるよう、研修プログラムを構築しましょう。
やることリスト
⬜︎ 全員共通の基礎知識を学ぶ機会を作る
法令遵守の重要性、企業倫理、個人情報保護、ハラスメント防止など、どの部署にも共通して必要な内容です。一度に詰め込まず、年間でテーマを分けて実施すると効果的でしょう。
⬜︎ 実践的なケーススタディを活用する
抽象的なルール説明だけでなく、実際の業務場面でどう行動すべきかを考えさせる事例を用意します。例えば、営業部門なら「取引先との接待」、経理部門なら「帳簿管理の注意点」などです。
⬜︎ 部門別研修を併用する(可能であれば)
全社共通の基礎研修に加え、各部門の業務に直結する専門的な内容を扱うことで、より実践的な知識が身につきます。
⬜︎ 理解度チェックやアンケートで効果を測る
研修に参加しただけでなく、社員が実際に理解できているかを確認し、必要に応じてフォローアップ研修を実施しましょう。
内部通報制度と管理体制の整備
どんなに予防策を講じても、問題の芽が完全になくなることはありません。問題を早期に発見し、適切に対処するために内部通報制度が重要です。しかし、制度を作っただけでは機能しません。社員が安心して利用できる環境と、適切な管理体制の整備が不可欠となります。
やることリスト
⬜︎ 「通報者の保護」を最優先にする
社員は「通報したことがバレて不利益を受けるのでは」と不安を感じます。匿名での通報を可能にし、身元を厳格に保護する仕組みを明文化して周知しましょう。
⬜︎ 独立性の高い通報窓口を設置する
社内に設置するなら人事部や総務部ではなく、独立性の高い部署や外部の専門機関(顧問弁護士事務所、コンプライアンス相談サービスなど)への委託も検討してください。社員の心理的ハードルを下げられます。
⬜︎ 通報後の対応フローを明確にする
「誰が」「いつまでに」「どのような手順で」調査を行い、結果をどう活用し、再発防止策を検討するのか。一連の流れを文書化し、担当者が変わっても一貫した対応ができるようにします。
⬜︎ 制度の利用状況を分析し、予防に活かす
問題が発生しやすい分野を把握することで、研修内容の見直しや業務フローの改善につなげることができます。制度があること自体が、違反の抑制効果も生み出すでしょう。
定期的なリスクチェックと業務監査
コンプライアンス対策は、「継続性」が非常に重要です。一度対策を講じて終わりではなく、定期的にリスクを見直し、業務監査を行うことで、常に最新の状況に対応した予防体制を維持していきましょう。
やることリスト
⬜︎ リスクマップ」を作成する
自社の事業活動を整理し、どの業務プロセスにどのようなコンプライアンス違反リスクがあるかを可視化します。例えば、契約業務の独占禁止法違反リスク、情報管理の個人情報漏洩リスクなどです。リスクの重要度と発生可能性を評価し、優先的に対策すべき領域を特定してください。
⬜︎ 定期的な業務監査を実施する
内部監査部門があれば既存の仕組みを活用し、なければ外部の専門家に依頼することも検討しましょう。監査のポイントは「ルールが適切に運用されているか」「記録や文書が適切に保管されているか」「社員の意識レベルは適切か」の3点です。
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⬜︎ 監査結果を改善提案とセットで報告する
単に問題点を指摘するだけでなく、「どう改善すべきか」「いつまでに対応すべきか」を明確にすることで、実効性のある改善につなげます。良い事例は他部門へ横展開し、組織全体のレベルアップを図りましょう。
これらの予防対策を効果的に実施するには、専門知識や経験が必要な場面も多いです。制度設計や問題発生時の対応は、顧問弁護士や専門のコンサルタントに相談することで、より確実で実効性の高い体制を構築できます。一人で抱え込まず、専門家のサポートを受けながら、自社に最適なコンプライアンス体制を築いていくことが、企業の成長と信頼確保につながるはずです。
コンプライアンス違反が発覚した瞬間、「どこから手をつければいいのか」と混乱してしまうかもしれません。しかし、適切な対応手順を知っていれば、被害を最小限に抑え、信頼回復への道筋を立てられます。
コンプライアンス違反が発覚した時の正しい対応手順
コンプライアンス違反への対応は、まさに火事場の消火活動です。初動対応の質が、その後の企業の運命を左右します。発覚した時点から、組織的かつ冷静な対応が求められるでしょう。
違反発覚時に「隠蔽したい」「影響を小さく見せたい」という心理が働くことはありますが、これは最も危険な判断です。後から明るみに出た場合の企業の打撃は計り知れません。透明性と誠実性を保ちながら、段階的に対応を進めることが、長期的な信頼性維持につながります。
ここでは、違反発覚時の対応を5つのステップでご紹介します。担当者が慌てることなく、適切な判断を下せるように、必要な作業と注意点を明確にしていきます。違反対応の具体的な方法と対策の定めを理解しておくと、大きなメリットを得るでしょう。
- 【初動対応】被害拡大の防止と証拠保全
- 【事実確認】客観的な情報を集める
- 【報告・相談】上司・経営陣への報告と専門家への相談
- 【外部対応】関係各所への説明と届出
- 【再発防止】原因を分析し、仕組みを改善
それぞれのステップを詳しく見ていきましょう。
初期対応と事実確認の進め方
違反が発覚した瞬間から、時間との勝負が始まります。初動対応では「証拠保全」「被害拡大防止」「事実関係の整理」の3つを同時に進める必要があります。
具体的なやること
- 関連資料やデータの保全
パソコンのハードディスク、メール、紙の書類、関係者の証言など、後の調査で必要になる可能性のあるものはすべて保護下に置きましょう。改ざんや消失を防ぐことが最優先です。 - 違反行為の即時停止と被害拡大防止
違反行為が継続中であれば、直ちに停止させます。不適切な取引は契約の一時停止、労働基準法違反であれば該当業務の見直しなど、被害の拡大を防ぐ緊急措置を講じてください。 - 客観的な事実確認(5W1H)
「誰が」「いつ」「何を」「どのように」「なぜ」という5W1Hに沿って、客観的な情報を収集します。関係者からの聞き取りでは、責任追及ではなく事実解明が目的であることを明確にし、正確な情報を得られるよう配慮しましょう。推測や憶測を排除し、確認できる事実のみを整理することが重要です。 - 調査の範囲と深度の決定
違反の性質や影響度に応じて調査範囲を決めます。法的責任が問われる可能性や社会的影響が大きい場合は、外部の専門家による調査を検討すべきです。透明性と客観性を確保することが、後の対外的な説明においても信頼性を保つことにつながります。
関係者への報告と外部機関への届出
事実関係の概要が把握できたら、適切な関係者への報告と、必要に応じた外部機関への届出を行いましょう。
具体的なやること
- 社内報告の実施
まず直属の上司に、次に経営陣へと段階的に報告を上げます。中小企業では、社長や役員への報告を早い段階で行うことが多いでしょう。報告内容は、「違反の概要」「判明している事実」「想定される影響範囲」「今後の対応方針案」を簡潔にまとめ、客観的な事実のみを伝えます。 - 取締役会・監査役への報告(重要度に応じて)
法的責任が問われる可能性や、企業の信用に重大な影響を与える場合は、速やかに報告が必要です。 - 外部機関への届出
労働基準法違反なら労働基準監督署、個人情報保護法違反なら個人情報保護委員会など、関連する法令に基づき適切な機関へ報告します。法的に義務付けられている場合は、期限内に必ず提出してください。自主的な報告が行政処分の軽減につながる場合もあります。 - 顧客・取引先への説明
違反の影響が及ぶ範囲を特定し、適切なタイミングで説明します。「事実関係の概要」「顧客・取引先への具体的な影響」「今後の対応策」「再発防止への取り組み」を中心に、誠実かつ具体的に伝えることが、長期的な信頼関係の維持に大きく影響します。
再発防止策の策定と信頼回復への取り組み
初期対応が完了した後は、同様の問題を二度と起こさないための仕組み作りと、失った信頼を回復するための長期的な取り組みが必要です。
具体的なやること
- 違反の根本原因分析と再発防止策の策定
手続きミス、制度不備、従業員の意識、組織体制のどこに問題があったのかを慎重に見極めましょう。表面的な対策だけでなく、根本原因に対処する抜本的な改善策を検討することが重要です。
具体的な防止策の例:「制度・ルールの見直し」「教育・研修の強化」「チェック体制の整備」「内部通報制度の充実」など。現場の実態を理解し、実際に運用可能な仕組みを設計することが大切です。
- 信頼回復への取り組み
短期的には、違反事実の公表、関係者への謝罪、被害者への適切な対応などを通じて、誠実な姿勢を示します。長期的には、改善された体制での継続的な取り組みを通じて、実際の行動で信頼を回復していく姿勢が重要です。
定期的な進捗報告や第三者による監査の実施なども、信頼回復に有効な手段です。透明性を保ちながら改善の状況を対外的に示しましょう。
コンプライアンス違反への対応は、企業にとって大きな試練ですが、適切に対処することで組織をより強固にする機会でもあります。判断に迷うことがあった場合は、法務や労務の専門家に相談することで、より適切で効果的な対応策を見つけることができるでしょう。専門家の知見を活用し、法的リスクを最小化しながら実効性の高い改善策を実現してください。個人の判断に頼るのではなく、様々な専門家からの支援や無料の資料ダウンロード、相談窓口の活用等の言葉を借りて、組織的な改善策を行うのが最善です。

法務急済運営事務局
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