訴訟費用の請求と支払いのルール|企業間訴訟で知るべきポイント
訴訟・紛争解決
2025.02.18 ー 2025.02.21 更新

企業間でトラブルが発生した場合、民事訴訟を検討するケースもあります。その際に、訴状に貼る収入印紙代、証人の日当といった訴訟費用が必要です。
しかし、訴訟費用には負担割合があり、裁判の結果によって負担が異なります。そのため、考え得る結果に備えて訴訟費用を請求できるように備えておく必要があります。
本記事では、訴訟費用の内訳や項目ごとの金額、請求までの手順について解説します。敗訴者負担の原則や和解時の費用分担など、初めての方が理解しにくい仕組みについても分かりやすく説明していきます。
訴訟費用の不安を解消し、適切な準備を進めるために、ぜひ最後までご覧ください。
無料で相談できる専門家検索はこちらから>>訴訟費用の相場と内訳

民事訴訟に必要となる費用のうち、訴訟費用の内訳は以下の通りです。
- 印紙代
- 証人や当事者の旅費・日当
- 手続きに関連する書類の作成・提出にかかる費用
それぞれの費用の相場について解説していきます。
印紙代
訴訟費用の一部である印紙代は、訴訟の対象となる請求金額に応じて変動します。民事訴訟では訴状の提出時に収入印紙を貼る必要があり、その金額は訴額に応じて決定されます。
具体例として、印紙代の金額は以下の通りです。
訴状の金額 | 印紙代 |
100万円 | 10,000円 |
500万円 | 30,000円 |
1,000万円 | 50,000円 |
少額訴訟の場合でも印紙代は発生し、30万円の請求で3,000円程度が目安です。地方裁判所や簡易裁判所への提出時に適用されるため、事前に正確な計算をしておくようにしましょう。
証人や当事者の旅費・日当
訴訟において証人や当事者が出廷する場合、旅費や日当が発生します。これらの費用は民事訴訟費用等に関する民訴費用法に基づき、一定の基準で定められています。
証人の旅費は、裁判所の所在地までの交通費が実費で支給されます。航空機を利用する場合は必要性が認められれば支給対象となります。タクシー代は原則含まれませんが、特別な事情があれば考慮されます。
日当については、証人に対し1日あたり最大8,000円が支払われます。ただし、裁判所の判断により減額される場合もあります。
手続きに関連する書類の作成・提出にかかる費用
訴訟の手続きに関連する書類を作成・提出する際にも、費用がかかります。訴状や準備書面、証拠書類の整理など、訴訟を進めるうえで不可欠な手続きに要する費用を指します。
弁護士に書類作成を依頼する場合、訴状の作成費用は5万円から15万円程度が相場です。証拠の精査が必要な場合は、20万円以上になることもあります。
裁判所に提出する書類には、収入印紙代や郵便切手代も必要です。郵券代は裁判所の所在地によりますが、数千円から1万円程度が相場です。
訴訟費用の負担割合はどうやって決まる?

訴訟費用については、判決によって当事者間での負担割合が異なります。これを「敗訴者負担の原則」と言いますが、この原則を理解していないと具体的な訴訟費用を算出するのは難しいでしょう。
以下では、敗訴者負担の原則や一部勝訴、和解の場合の費用負担割合について解説していきます。
裁「敗訴者負担の原則」とは
敗訴者負担の原則とは、裁判において敗訴した側が訴訟費用を負担する仕組みを指します。民事訴訟法第61条に規定されており、勝訴した側が支出した分を敗訴者が負担するようになっています。
この原則により、勝訴した側は訴訟に要した費用の請求が可能です。具体的には、以下の費用を請求できます。
- 収入印紙代
- 証人の日当や交通費
- 訴訟に必要な書類の送達費用
ただし、弁護士費用のすべてが敗訴者の負担となるわけではなく、原則として弁護士報酬は各当事者が自己負担することになります。一方、損害賠償請求訴訟などでは例外的に弁護士費用の一部を損害の請求できる場合もあります。
敗訴者負担の原則は、安易な訴訟の提起を防ぎ、正当な権利を持つ当事者が裁判で適正に救済されることを目的としています。そのため、この制度を十分に理解し、費用負担のリスクを考慮することが必要です。
一部勝訴の場合の費用分担
民事訴訟では原告の請求がすべて認められるとは限らず、一部のみ認容される場合があります。これを一部勝訴と言いますが、この場合訴訟費用は裁判所の判断により分担されます。
民事訴訟法第61条に基づき、一部勝訴での負担割合は「敗訴の割合」に応じて決定されます。例えば原告が1000万円の損害賠償を請求し、裁判所が500万円の支払いを命じた場合、原告も請求額の半分について敗訴しているため、訴訟費用の50%は原告、残りの50%は被告が負担することになります。
ただし、裁判所の裁量により、敗訴割合とは異なる割合で訴訟費用の分担が決められることもあります。訴訟の経緯や双方の主張の合理性を考慮し、裁判所が公平性の観点から特別の配分をすることもあり得ます。
和解の場合の費用分担
裁判の途中で和解が成立した場合、訴訟費用の負担は当事者の合意によって決まります。和解は双方の歩み寄りによって成立するものであり、敗訴者負担の原則がそのまま適用されるわけではありません。
和解の費用負担については、一般的に「訴訟費用は各自の負担とする」という合意が多く見られます。これは、互いに譲歩して解決するため、公平な負担としてそれぞれが自分の支出を負担するという考え方に基づいています。
ただし、事案によっては一方が相手方の訴訟費用を一部または全部負担する内容で合意するケースもあります。例えば、被告が原告の請求を全面的に認める形で和解する場合、被告が一定の訴訟費用を負担することもあります。
和解が成立しても、裁判所に納めた収入印紙代や郵券代は基本的に返還されません。そのため、和解での解決を目指す場合は、民事訴訟手続きを始める前に検討するべきでしょう。
訴訟費用を請求する手続き

民事訴訟で判決が下された後は、結果に応じて訴訟費用を請求します。以下は、民事訴訟で勝訴となった場合に訴訟費用を請求するまでの手続きの流れです。
- 訴訟費用額確定処分の申し立て
- 裁判所による審査・負担費用額の決定
- 確定処分の通知
それぞれの手続きについて解説していきます。
訴訟費用額確定処分の申し立て
民事訴訟で勝訴した場合、訴訟費用額確定処分の申し立てを行う必要があります。これは裁判所が訴訟費用の金額を確定する手続きであり、民事訴訟法第71条に基づいています。
訴訟費用額確定処分の申し立ては、判決が確定した後に行うことができます。訴訟費用に関する明細をまとめた申立書を作成し、管轄の裁判所に提出します。申立書には以下の内容を記載した上で、領収書や裁判所の納付証明書などの書類を添付します。
- 収入印紙代
- 証人の日当
- 交通費
- 送達費用
裁判所による審査・負担費用額の決定
訴訟費用額確定処分の申し立てが行われると、裁判所はその内容を審査し、最終的に敗訴者が負担すべき費用額を決定します。
裁判所は勝訴者が提出した申立書と添付資料を確認し、訴訟遂行に必要だった費用が適切に計上されているかを審査します。また、敗訴者が異議を申し立てる機会も与えられるため、相手方の意見も考慮されたうえで金額を決定します。
裁判所による審査は、請求金額の妥当性を確認し、公平な費用負担を実現するために行われます。
確定処分の通知
裁判所の審査が終わって負担すべき金額を決定すると、その内容は「確定処分」という形で通知されます。これにより勝訴者は正式に訴訟費用の請求が可能となり、敗訴者は決定された金額を支払う義務を負います。
確定処分の通知は、裁判所から勝訴者および敗訴者に対して書面で送付されます。通知書には確定した訴訟費用の内訳や金額が明記されており、どの費用が認められたのかが確認できます。また、敗訴者が負担を拒否した場合には、確定処分通知をもとに強制執行の手続きを進めることも可能です。
訴訟費用を確実に回収するためのポイント

民事訴訟における訴訟費用は安くありません。そのため、勝訴を目指しながら訴訟費用を確実に回収するための努力も必要になります。
訴訟費用を確実に回収するためのポイントとして、以下のようなものが挙げられます。
- 確定処分を適切なタイミングで申し立てる
- 回収が見込める金額を調査しておく
- 被告と交渉する
それぞれのポイントについて解説していきます。
確定処分を適切なタイミングで申し立てる
訴訟費用を確実に回収するには、訴訟費用額の確定処分を適切なタイミングで申し立てることが重要です。確定処分の申し立てが遅れると、敗訴者の資力状況が変化し、支払いが困難になる可能性があります。
確定処分の申し立ては、原則として判決が確定した後に行います。判決確定とは、控訴期間(第一審判決後2週間)が経過しても上訴されなかった場合、または上級審で最終判断が下された場合を指します。判決確定後は速やかに訴訟費用額確定処分を申し立てることで、回収手続きを迅速に進めることが可能です。
特に、敗訴者が資力に不安がある場合や、判決後に支払いを逃れようとする可能性がある場合は、早めの対応が重要です。確定処分を遅らせると、敗訴者が財産を処分したり、支払い能力を失ったりするリスクが高まり、訴訟費用の回収が難しくなるでしょう。
回収が見込める金額を調査しておく
訴訟に勝訴しても、相手方に支払い能力がなければ費用は回収できません。そのため、事前に相手方の資力を調査し、回収可能な金額を把握しておくことが重要です。
相手が法人であれば、決算書や信用調査機関のデータを活用し、資産や負債の状況を把握できます。個人の場合は、不動産登記や給与所得の有無を調べることで、回収の可能性を判断できます。
また、裁判の過程で財産開示手続きを利用することも一つの方法です。裁判所の命令により財産の状況を明らかにできるため、回収の可否を判断する重要な材料となります。
被告と交渉する
強制執行の手続きを取る前に、被告(敗訴者)との交渉を行うことも必要です。訴訟費用額確定処分が下されたとしても、敗訴者が自主的に支払わないケースは少なくないため、交渉を通じて円滑な支払いを促すことが重要になります。
交渉の際は確定処分の通知書を送付し、支払い義務が確定していることを相手に認識させます。被告が支払いに応じない場合や連絡が取れない場合には、弁護士を通じて正式な督促を行います。弁護士名義の内容証明郵便を送ることで、相手に法的義務を強く意識させ、支払いの実行を促す効果が期待できるでしょう。
交渉を通じて自主的な支払いが得られれば、強制執行の手続きを回避できるため、時間や費用の負担を抑えることができます。
まとめ

民事訴訟における訴訟費用を請求する場合は、まず裁判に勝訴する必要があります。その上で、確定処分を裁判所に申し立て、正式な請求額を算出してもらうことで法的な効果を持つようになります。
この記事では確定処分の通知までの手続きを解説しましたが、それまでの申し立てに必要な書類の用意や相手方が拒否した場合の対抗措置、さらには民事訴訟の手続きといった一連の流れを進めるには、法律の専門知識が必要です。これらの知識や経験は、弁護士に依頼することでカバーできます。
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