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特定商取引法による表記の書き方は?ECサイトにおける基本的な記載例と特定商取引法の基本を解説

商取引・契約法務

2025.02.102025.02.21 更新

特定商取引法は、消費者と事業者の間の取引を規制する重要な法律です。この法律の目的は、消費者保護と健全な市場環境の維持にあります。

インターネットの普及により、通信販売やオンラインショッピングが一般的になった現代社会において、その重要性はますます高まっています。

特定商取引法を知らずに事業を行うと、思わぬトラブルや法的問題に巻き込まれる可能性があります。消費者の立場からも、この法律の基本を理解することで、安心して商品やサービスを購入できるようになります。特定商取引法に基づく表記は、取引の透明性を確保し、消費者の信頼を得るための重要な要素となっています。

本記事では、特定商取引法の概要、ECサイトにおける特定商取引法の記載事項と記載例、記載する際のポイントなどを順番に解説していきます。

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特定商取引法の概要

特定商取引法は、消費者と事業者の間の取引を規制する重要な法律です。

この法律は、通信販売やインターネット取引など、対面販売以外の取引形態が増加する中で消費者保護を目的として制定されました。

主に訪問販売、通信販売、電話勧誘販売などの特定の取引形態を対象としており、事業者に対して取引条件の明示や誇大広告の禁止などの義務を課しています。

特定商取引法の目的は消費者保護と公正な取引の実現

特定商取引法は消費者の権利を守り、公正な取引環境を整備するために制定された重要な法律です。この法律の主な役割は、通信販売やインターネット取引など、対面販売以外の取引形態において消費者が不利益を被らないよう保護することにあります。

具体的には、事業者に対して取引条件の明示や誇大広告の禁止などを義務付けることで、消費者が安心して商品やサービスを購入できる環境を整えています。また、クーリングオフ制度を設けることで、消費者が冷静に判断する機会を確保し、不要な契約から解放される権利を保障しています。(ただしECサイトは通信販売にあたり、クーリングオフ制度はありません。)

さらに、特定商取引法は悪質な事業者に対する規制も行っており、違法な勧誘行為や不当な契約条項の使用を防止する役割も果たしています。これにより、健全な市場競争を促進し、消費者と事業者の双方にとって公平な取引環境を実現することを目指しています。

ただし、この法律の適用範囲や解釈には、時として曖昧な部分も存在します。そのため、事業者は常に最新の法改正や解釈指針に注意を払い、適切な対応を心がける必要があります。

特定商取引法の対象取引と適用除外ケース

特定商取引法の適用範囲は、消費者トラブルが生じやすい特定の取引形態に限定されています。

主な対象は、訪問販売、通信販売、電話勧誘販売、連鎖販売取引、特定継続的役務提供、業務提供誘引販売取引、そして訪問購入です。これらの取引形態は、消費者が商品やサービスの実物を確認しにくい、または販売方法に特殊性がある点が共通しています。

このうち、ECサイトは通信販売に該当し、特定商取引法の規制対象となります。

ECサイトにおける特定商取引法が適用されないケースは

SNSでの取引やフリマアプリは個人間取引にあたり特定商取引法の対象外ですが、一定の条件下で適用される可能性があるため、慎重な判断が求められます。

また継続的な役務提供を伴わない取引や、一定金額以下の少額取引も対象外となることがあります。特定の業界や取引形態によっては、他の法律が優先して適用される場合もあります。

ECサイトは特定商取引法上の通信販売に該当し、クーリングオフの制度の適用はありません。(返品・交換方法など、表示義務違反によって解約できるケースや民法一般規定における取消し等が適用できる可能性はあります。)

事業者は自社の取引が特定商取引法の適用対象か否かを慎重に判断する必要があります。不明な点がある場合は、専門家に相談することが賢明でしょう。

なぜ「特定商取引法に基づく表記」が必要なのか?基本ルールを解説

特定商取引法に基づく表記は、消費者と事業者の双方を守るために欠かせない重要な要素です。この表記により、取引の透明性が確保され、消費者は安心して商品やサービスを購入できるようになります。

事業者にとっても法令遵守の姿勢を示すことで信頼性が向上し、トラブルを未然に防ぐ効果があります。

基本ルールとしては、事業者の名称や所在地、連絡先などの情報を明確に記載することが求められます。また商品の価格や支払い方法、返品・交換の条件なども明示する必要があります。

これらの情報を適切に提供することで、消費者は十分な情報を得た上で購入の判断ができるようになります。

表記の方法や内容については、業種や商品の内容、取引形態によって違いがあります。消費者を保護し、かつ事業者にとってはトラブルを避けるため、自社の状況に応じて適切な表記方法を選択することが重要です。

特定商取引法に基づく表記が求められる理由とは

特定商取引法に基づく表記が求められる理由は、消費者保護と健全な取引環境の維持にあります。インターネットの普及により、対面で実物を確認することなく、商品やサービスを購入する機会が増加しました。これに伴い、取引の透明性確保がより重要になっています。

事業者の情報や取引条件を明確に示すことで、消費者は安心して購入を検討できます。また、トラブル発生時の連絡先や返品条件などを事前に知ることができるため、購入後のリスクも軽減されます。

一方で事業者にとっても、法令遵守を示すことで信頼性向上につながります。適切な表記は、顧客との良好な関係構築に寄与し、長期的な事業成功の基盤となります。

ただし、表記内容の詳細については、取引形態や商品特性によって多少の違いがある可能性があります。そのため、自社の事業に適した表記方法を慎重に検討する必要があるでしょう。

ECサイトにおける特定商取引法に基づく表記に必要な項目

ECサイトは特定商取引法上の『通信販売』に該当します。

通信販売における広告の表示事項は法第11条に定められており、表示すべき主な項目は下記のとおりです。

  1. 販売価格(役務の対価)(送料についても表示が必要)
  2. 代金(対価)の支払時期、方法
  3. 商品の引渡時期(権利の移転時期、役務の提供時期)
  4. 申込みの期間に関する定めがあるときは、その旨及びその内容
  5. 契約の申込みの撤回又は解除に関する事項(売買契約に係る返品特約がある場合はその内容を含む。)
  6. 事業者の氏名(名称)、住所、電話番号
  7. 事業者が法人であって、電子情報処理組織を利用する方法により広告をする場合には、当該事業者の代表者又は通信販売に関する業務の責任者の氏名
  8. 事業者が外国法人又は外国に住所を有する個人であって、国内に事務所等を有する場合には、その所在場所及び電話番号
  9. 販売価格、送料等以外に購入者等が負担すべき金銭があるときには、その内容及びその額
  10. 引き渡された商品が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない場合の販売業者の責任についての定めがあるときは、その内容
  11. いわゆるソフトウェアに関する取引である場合には、そのソフトウェアの動作環境
  12. 契約を2回以上継続して締結する必要があるときは、その旨及び販売条件又は提供条件
  13. 商品の販売数量の制限等、特別な販売条件(役務提供条件)があるときは、その内容
  14. 請求によりカタログ等を別途送付する場合、それが有料であるときには、その金額
  15. 電子メールによる商業広告を送る場合には、事業者の電子メールアドレス

引用:特定商取引法の規制対象となる「通信販売」
https://www.no-trouble.caa.go.jp/what/mailorder/

以下、特に重要な項目について詳しく解説します。

事業者の氏名(名称)

まず、事業者の氏名または名称が必須となります。事業者の場合、ブランド名や店舗名だけでなく登記上の正式名称を記載する必要があります。

責任者の氏名

事業者が法人である場合、ECサイトにより公告を行う際は代表者の氏名または通信販売に関する業務の責任者名を記載する必要があります。

事業者の住所、電話番号、メール営業の場合はメールアドレス

住所、電話番号、メール営業の際にはメールアドレスも特定商取引法における表記事項に含まれます。法人や個人商号を登記した商人の場合、やはり登記簿上の住所を正確に記載する必要があります。

当然ながら、架空の住所や電話番号の表記は不可です。

ただしこれらの情報については、むやみに開示することが望ましくないケースがあるため「消費者から連絡があった場合に遅滞なく開示する」という対応が可能です。この場合の対応方法は後述します。

商品・サービスの価格

商品・サービスの価格も必須事項です。送料や手数料、オプション、装飾費などがかかる場合には、消費者の負担価格が正確にわかるよう全て記載する必要があります。

各商品ごとのページに明確に記載していれば『特定商取引法に基づく表記』のページに記載する必要はありません。

支払い方法と支払い時期

支払い方法と支払い時期も必要な記載事項です。支払い方法は、利用できる全ての方法を記載する必要があります。

  • 記載例 『銀行振込、クレジットカード』

クレジットカード決済の場合『カードにより引き落とし時期は異なる』等と記載しておくと良いでしょう。

クレジットカードの利用規約やコンビニ払いの利用規約については、各カード会社や決済代行会社の規約に従うことになるため、それら全てを記載する必要はありません。

商品の引渡し時期

商品の引き渡し時期については、できるだけ具体的に記載しましょう。

  • 記載例
    『ご注文後7日以内に発送いたします』
    『お住まいの地域により、到着時期は異なります。』 

返品や交換について

返品交換が可能な期間や、未開封等の条件があれば記載します。

返品交換についての記載がなく書面等によっても消費者に通知しなかった場合、商品の移転から8日以内であれば、消費者は解除する権利を有します。(特定商取引法15条の3、第1項)

なお、ECサイト(通信販売)においてはクーリングオフの規定はありません。

商品・サービスについての重要事項

商品について個数やサイズ等の他、他の商品と比較できるような商品特有の重要事項を記載します。

例えば、お肉であれば等級や重量、消費期限などの情報が必要であり、パソコン販売においては付属品の有無や性能の詳細な情報が必要事項になります。

また、品質が契約の内容に適合しない場合に販売業者の責任の定めがある場合は、その責任の内容を明示します。申し込みの段階で、対象商品が消費者の求める価値を提供できない商品であると知った場合には、その旨を告げる必要があるでしょう。

一部情報については、請求があった場合に開示する対応が可能

一人会社や小規模な会社がECショップを行う場合、住所等について常時開示するのを望まないケースは多いです。このような場合に、一部の事項については消費者からの請求があった場合にのみ開示する対応が認められます。(特定商取引法第11条ただし書き)

この対応を行うには、特定商取引における表示ページに『請求によって書面または電磁的記録(メール等)により遅滞なく情報提供する旨』を表示しなければなりません。

  • 記載例
    『住所:住所は、特定商取引法第11条ただし書きにより省略しております。消費者様からの請求があれば、遅滞なく開示いたします。』

これにより、取引していない相手などに対しては住所等を開示せずに済みます。

特定商取引法に違反した場合の罰則

特定商取引法に違反した場合、まず民法や特定商取引法の規定により消費者が解約を行う可能性があります。

また、違反の内容によって事業者には民事罰、刑事罰、行政罰のいずれか、または全ての責任が課される可能性があります。

それぞれの罰則について、詳細を解説していきます。

民事罰

民事罰とは、消費者に対する損害賠償責任のことです。

誇大広告や嘘の表示等によって消費者が誤って商品を購入した場合、事業者は消費者に対して発生した損害賠償金を支払わなければなりません。

また消費者との信頼関係が損なわれ、ブランドイメージの低下や顧客離れにつながることも少なくありません。是正のための時間と費用がかかり、事業運営に支障をきたす恐れがあります。

行政罰

行政罰とは、業務停止や修正指示などの行政処分のことです。

特定商取引法違反すると、法人に対しての営業禁止処分、一定期間を定めた業務停止処分のほか、役員個人に対しても同様の処分が課される場合があります。

さらに主務大臣はその旨を公表しなければならないと定められており、事業者名のほか処分内容、違反行為の内容などが以下の消費者庁のサイト等に掲載されます。

消費者庁:特定商取引法ガイド

刑事罰

刑事罰は、懲役、罰金等のことです。特定商取引法に違反すると、刑事罰の可能性があります。

具体的には特定商取引法70条以降に罰則規定があり、最大は3年以下の懲役または300万円以下の罰金、または併科です。

ECサイト運営においては、次のような違反に気を付ける必要があるでしょう。

  • 誇大広告の禁止違反(100万円以下の罰金)
  • 表記事項についての書面または電磁的記録の交付義務違反(6が月以下の懲役または100万円以下の罰金)
  • 申し込みを受ける際の表記事項における表示義務違反(三年以下の懲役または300万円以下の罰金)
  • 業務停止命令や禁止命令に違反した営業(三年以下の懲役または300万円以下の罰金)

特定商取引法に基づく表記を書く際の重要な注意点とは?

特定商取引法に基づく表記を作成する際には、いくつかの重要な注意点があります。

  • 消費者が容易に見つけられる場所に記載する
  • 表示の省略できる項目については慎重に判断する
  • 最新の法改正に対応する

以下、一つずつ詳しく解説していきます。

消費者が容易に見つけられる場所に記載する

ECサイトを作成する場合、特定商取引法における表示はトップメニューや下部フッターメニュー等にリンクを作成しアクセスしやすさを確保しましょう。

表示の省略できる項目については慎重に判断する

特定商取引法に基づく表記については、住所や電話番号等の必要な情報を省略できるケースがあります。ただし求められた際には遅滞なく開示する必要があり、表示しなかった場合には違法な行為となってしまいます。

省略可能な情報であっても、消費者の利益を損なわない範囲で判断する必要があり、省略する場合は理由を明確に説明できるようにしておくことが望ましいです。

情報の省略は慎重に行う必要がありますが、適切に判断することで、より簡潔で分かりやすい表記を実現できる可能性があります。

ただし、表記の作成には専門的な知識が必要なため、不安がある場合は専門家に相談することをおすすめします。適切な表記は消費者との信頼関係構築に寄与し、トラブル防止にも効果的です。

最新の法改正に対応する

特定商取引法は、毎年のように常に変化し続ける法律です。最新の改正内容を反映させることで、事業者の信頼性を高めることができるでしょう。

法改正に合わせて表記を更新することは、コンプライアンス遵守の観点からも重要です。最新の法律に準拠していることを示すことで、行政機関や取引先からの信頼も得やすくなります。

ただし、法改正の内容を正確に理解し、適切に反映させることは容易ではありません。専門家のアドバイスを受けながら、慎重に対応することが望ましいでしょう。

定期的な見直しと更新を行い、更新日等も表記しておくことで、特定商取引法に基づく表記の信頼性を維持し、消費者との良好な関係を築くことができます。

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司法書士 白河(筆名)

2019年司法書士登録 補助者時代から複数の事務所勤務を経て2021年独立。同時にWebライター・記事監修業務を開始。 できるだけ一般的な表現での記事作成を心がけているます。法律関係の諸問題は、自己判断せずに専門家に相談することが解決への近道です。

司法書士 白河(筆名)のアバター

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