- 法務救済
- コラム
- 予防法務
- 契約書・リーガルチェック
- 株主間契約書とは?定義や作成する目的、適用される範囲や必要なケース、メリット、注意点について徹底解説!
株主間契約書とは?定義や作成する目的、適用される範囲や必要なケース、メリット、注意点について徹底解説!
契約書・リーガルチェック
2024.10.30 ー 2024.10.30 更新
株主間契約書は、複数の株主が存在する企業において、円滑な経営や株主間のトラブルを未然に防ぐために重要な役割を果たします。特に中小企業やスタートアップでは、株主間の意見の相違や株式譲渡の問題が事業運営に大きな影響を与える可能性があるため、株主間契約書の締結が推奨されています。
この契約書は、株主の権利義務や株式の売却・譲渡に関する規定を明確にし、事前に合意を得ることでリスクを軽減します。
この記事では、株主間契約書の基本的な定義やメリット、作成時に注意すべき具体的な条項について詳しく解説し、株主間での問題を回避するための実践的な知識を提供します。株主間での契約書作成を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。
株主間契約とは
株主間契約とは、株主同士が締結する契約であり、会社の運営や経営方針についてのルールや規範を明確に定めるものです。この契約は、定款とは異なり特定の株主間でのみ適用されるもので、一般に公開されることはありません。
株主間契約を締結することで、経営方針に関する対立を未然に防ぐことができ、会社経営を安定させるための有力な手段となります。さらに、出資比率や株式譲渡に関する規定なども含まれるため、会社のガバナンスを強化し、信頼性を高める効果も期待されます。
このように、株主間契約は企業の健全な成長を促進するために欠かせないツールとなっています。以下では、株主間契約の目的や意義、定款との違い、効力発生範囲、適用事例について解説していきます。
株主間契約の目的・意義
株主間契約の目的は、企業の経営における株主間の合意を明確にし、将来的なトラブルや意見の対立を未然に防ぐことにあります。
スタートアップや中小企業では、株式譲渡や経営方針に関する意見の食い違いが、事業の成長を妨げる要因となりかねません。株主間契約により、株主が保有する株式の譲渡制限や意思決定におけるルールを事前に定めることで、株主間での透明性と信頼関係を強化できます。
また、株主間契約は、株式の譲渡や売却における手続きや経営に関する重要な決定事項に対する権利分配、利益配当の方針など、企業運営に影響を与える重要事項を明確化します。その結果、企業の安定した運営を図るとともに、株主が将来的に安心して投資を継続できる環境を整えるという意義があります。
株主間契約と定款の違い
株主間契約と定款の違いは、まずその目的と法的性質に明確な差があります。
定款は、会社法に基づいて会社の基本的なルールを定めたものであり、全ての株主に対して一律に適用されます。
一方で、株主間契約書とは特定の株主間でのみ有効な契約であり、主に株主間の個別の利益調整や関係性の管理を目的としています。例えば、定款には会社の名称や目的、本店所在地など基本的な事項が記載される一方で、株主間契約には株式の譲渡制限や拒否権条項、取締役の選任・解任に関する具体的なルールが記載されることが一般的です。
また、法的拘束力についても異なり、定款は法律上強制力を持ちますが、株主間契約はあくまで契約当事者間での合意に基づくもので、第三者には直接的な拘束力を持ちません。したがって、株主間契約と定款は互いに補完し合い、会社運営と株主間の関係をより安定させる役割を果たします。
株主間契約の効力発生範囲
株主間契約の効力発生範囲は、契約に署名した株主間に限定される点が大きな特徴です。これは、会社法で定められる定款や株主総会決議のように、すべての株主に一律で適用されるものではなく、あくまで契約の当事者である株主間で効力を持ちます。
そのため、新たに株主が加わる際や株式が譲渡された場合には、既存の株主間契約にその新株主が参加するか、別途契約を締結する必要があります。また、契約内容によっては、特定の事項に関してのみ効力を持たせることも可能であり、株式の譲渡制限や経営に関する特定の決定事項についての合意事項を取り決めることになります。
これにより、株主同士の意見の不一致やトラブルを防ぐことができ、企業の安定運営に貢献します。しかし、契約書の範囲外の株主や第三者には効力が及ばない点に注意が必要です。
株主間契約の適用事例
株主間契約が適用されるケースとして、以下のような事例が挙げられます。
- 合弁会社の設立時
- 資本参加時
- 株式売却時
- 新規株主の参加時
それぞれの適用事例について解説していきます。
合弁会社の設立時
合弁会社の設立時には、出資者間で株主間契約書を締結することになります。これにより、出資比率や利益配分、取締役の選任・解任など重要な事項が明確にされ、後々のトラブルを未然に防ぐことができます。
また、デッドロック条項や拒否権条項の設定も有効です。デッドロック条項とは、合弁会社やパートナーシップなどの経営意思決定において対立が生じ、解決の見通しが立たない状況(デッドロック)に対処するための取り決めです。
この条項は、重要な決議での意見不一致が解消されず事業運営に支障が出る場合に適用されます。一般的な方法には、第三者調停や買収・売却オプションの提供、強制売却などがあり、デッドロックの長期化を避ける仕組みとして機能します。
拒否権条項とは、特定の事項に関して少数株主や特定の出資者が否決権を持ち、一定の条件が満たされるまで決議を進められないようにする条項です。会社の重要な意思決定や合弁契約において、特定の出資者が不利な決定を避けられるよう配慮されており、資本構成に応じた公正な意思決定プロセスを実現します。
これらの条項を設定することで、経営意思決定の際の行き詰まりを防ぎ、柔軟な経営が可能となります。株主間契約書を作成することで、合弁会社の運営が安定し、信頼関係が構築されやすくなるため、事業の成功に寄与することが期待されます。
資本参加時
資本参加時において、株主間契約は重要な役割を果たします。新たな資本が企業に投入される際、新規株主と既存株主の間で権利や義務を明確にし、将来のトラブルを未然に防ぐための枠組みを提供します。その際、株主間契約書には以下のような条項を記載します。
- 出資比率
- 議決権の配分
- 株式の譲渡制限
- 取締役の選任・解任に関する条項
資本参加時においては、新規株主が企業の経営にどの程度関与するのか、またどのような権限を持つのかを明確にすることが重要です。これにより、新たな資本が企業成長を推進する一方で、既存株主の権益を保護し、企業の運営がスムーズに進行します。
さらに、デッドロック回避策やドラッグアロング・ライトのような特別条項を盛り込むことで、株主間の意見対立による企業運営の停滞を防止します。これらの取り決めは、長期的な視点で企業の健全な発展に貢献するはずです。
株式売却時
株式売却時においても、株主間契約書は重要な役割を果たします。
まず、株主間契約書は株式譲渡に関する具体的な条件や手続きを明文化し、関係者間での合意を形成することが可能です。これにより、株式売却時の不確実性やトラブルを予防するための法的な枠組みを提供します。
例えば、株式売却時における優先買い取り権やドラッグアロング・ライトといった特定条項を盛り込むことができます。これらの条項は、既存株主が他の株主に対して株式を売却する際の条件を明確に設定し、第三者への株式譲渡を円滑に進めるためのルールを提供します。
さらに、株主間契約書は株式売却時の価格設定や支払い条件など、経済的な側面においても重要なガイドラインとなります。適切に設計された株主間契約書は、株主間での透明性を高め、信頼関係を強化する役割を果たします。
新規株主の参加時
新規株主の参加時には、既存の株主間契約書について理解しておく必要があります。特に株式譲渡や出資比率に関する内容は重要で、新規株主がどの程度の影響力を持つかを決定します。
さらに、取締役の選任・解任条項や拒否権条項の設定なども検討され、新たな株主の参入によって既存の株主間のバランスが崩れないようにすることが重要です。新規株主は、これらの条項が自分にとってどのような影響を持つかを理解し、必要に応じて専門家に相談することが推奨されます。
株主間契約を締結するメリット
株主間契約を締結することで、以下のようなメリットが期待できます。
- 株主同士の対立リスクを低減
- 柔軟な経営ルール設定が可能
- 手続きが簡単
- 株主間の関係強化に貢献する
- 第三者への情報開示が不要
- 会社の運営を安定させる
それぞれのメリットについて解説していきます。
株主同士の対立リスクを低減
株主間契約を締結することの大きなメリットの一つは、株主同士の対立リスクを低減できる点です。
複数の株主が経営に関与する中小企業やスタートアップでは、経営方針や利益配分、株式譲渡に関して意見の相違が生じやすく、それが企業運営に悪影響を及ぼすことがあります。しかし、株主間契約では事前に株主の権利や義務、意思決定のルール、株式の取扱いなどを明文化し、合意を得ておくことで、意見の対立を未然に防ぐことが可能です。
例えば、株式の譲渡制限や配当方針に関する取り決めを契約に盛り込むことで、将来のトラブルを避け、株主間での協力体制を強化できます。また、意思決定における優先権や拒否権のルールを明確にすることで、デッドロックを防ぎ、円滑な経営が維持されるのも株主間契約の利点です。
結果として、企業の成長や事業の安定に寄与します。
柔軟な経営ルール設定が可能
株主間契約を締結することで、柔軟な経営ルール設定が可能になるというメリットが期待できます。株主間契約は、会社法や定款では対応しきれない細かい経営ルールを、株主の合意に基づいて設定できるため、企業の実情に合った規定を設けることが可能です。
例えば、株式譲渡に関する制限や、重要な経営判断における株主の関与の範囲、配当方針の調整など、株主間での具体的な取り決めに効果的です。また、特定の株主に特別な権利を与えたり、経営方針に対する発言権を明確にすることで、経営の透明性を高めつつ、柔軟な対応ができる環境を整えることができます。
スタートアップ企業や中小企業では、成長に伴い経営方針が変化することが多く、その際に株主間契約が柔軟な経営ルールを設定する手段として有効に機能します。このように、株主間契約は、標準的な法規範だけでは不十分な経営上の課題に対応できる点が大きな利点です。
手続きが簡単
手続きが比較的簡単である点も、株主間契約を締結するメリットです。
会社の定款変更や株主総会での決議を行う場合、複雑な法的手続きが必要となり、全株主の同意を得ることが難しい場合もあります。一方で、株主間契約は当事者である特定の株主間のみで合意すれば締結できるため、手続きが迅速かつ柔軟に進められます。中小企業やスタートアップでは、迅速な意思決定が求められることが多く、こうした手軽な契約手段は大きな利点となります。
また、株主間契約は当事者同士で自由に内容を調整できるため、会社の状況や株主の関係に応じたカスタマイズが可能です。株式譲渡の制限や配当方針の設定、デッドロック条項の導入など、会社特有の事情に応じた取り決めを短期間で行えます。
これにより、迅速な対応が求められる局面でも、スムーズな運営を維持できるようになるでしょう。
株主間の関係強化に貢献する
株主間契約を締結することは、株主同士の関係強化に大きく貢献します。この契約により、株主の権利や義務、企業運営における意思決定のルールが明確化されるため、株主間の不透明な部分が解消され、信頼関係が深まります。
また、予め合意したルールに基づいて意思決定を行うことで、株主間の対立を未然に防ぎ、スムーズなコミュニケーションと協力体制を築くことが可能です。結果として、株主間契約は株主同士の結束を強め、企業の成長や安定的な経営に寄与する重要なツールとなります。
株主間での関係を強化するためには、定期的なコミュニケーションも欠かせません。定期的に株主総会を開催し、経営状況や今後の方針について共有することが大切です。
第三者への情報開示が不要
株主間契約を締結するメリットの一つとして、第三者への情報開示が不要である点が挙げられます。
株主間契約はあくまで契約に署名した株主間での取り決めであり、会社法上の定款や株主総会の決議のように、全株主や外部に対して公にする必要がありません。そのため、株主間で取り決めた内容が第三者に知られることなく、企業の内部で機密情報を守りながら柔軟な合意を形成することが可能です。
特に、経営戦略や株式譲渡に関する情報は企業の機密性が高いため、外部に公開されることで競合他社や投資家に影響を与えるリスクがありますが、株主間契約を締結することでそのリスクを回避できます。また、契約内容を非公開にできるため、企業の成長段階に応じて株主間で必要な取り決めを行い、外部に情報が漏れない形で事業の安定性や将来の成長を支える役割も果たします。
これにより、経営の透明性が確保されるとともに、企業の安定的な成長を支える重要な要素となるのです。
会社の運営を安定させる
株主間契約を締結することで、会社の運営を安定させることができます。
複数の株主が関与する企業では、意見の対立や株式譲渡に関する問題が、経営の不安定要因となることが少なくありません。株主間契約は、これらのリスクを事前に回避するための有効な手段として効果を発揮します。
株主間契約を締結することで、株式譲渡の制限や経営方針に関する合意を明確にし、株主間の不透明な取引や紛争を防ぐことができます。また、経営に関する重要な決定について株主間であらかじめルールを定めておくことで、迅速かつ円滑な意思決定が可能となります。
例えば、株主が自由に株式を譲渡できないようにすることで、経営方針が急に変わることを防ぎ、企業の中長期的な運営ビジョンを維持しやすくなります。このように、株主間契約は会社の経営の安定性を確保し、経営陣と株主の間でスムーズなコミュニケーションを促進するための有力な手段となります。
株主間契約のデメリット
株主間契約は円滑な経営実現できるメリットがある一方で、以下のようなデメリットもあります。
- 法的拘束力が曖昧
- 契約が複雑化しやすい
- 解釈の違いによる紛争リスクが潜んでいる
- 株主間での合意形成が難しい
それぞれのデメリットについて見ていきましょう。
法的拘束力が曖昧
株主間契約のデメリットの一つとして挙げられるのが、法的拘束力が曖昧である点です。
株主間契約は、あくまで当事者間の合意に基づくものであり、会社全体や第三者に対して直接的な効力を持たない場合があります。そのため、会社法や定款に反する内容を含む株主間契約は、法的に無効とされる可能性があり、その拘束力が限られてしまいます。
また、あらかじめ契約書に具体的なペナルティや救済措置を明確に規定していないと、後に法的な手続きにおいて争いが生じるリスクがあります。
さらに、裁判などで株主間契約の効力を主張する際、契約の解釈において不明瞭な部分があれば、法的判断が複雑化する恐れもあります。そのため、内容が会社法や定款と矛盾しないように十分に確認し、法的専門家の助言を受けながら明確かつ具体的な条項を盛り込むことが重要です。
このように、法的拘束力の曖昧さがデメリットとなることを理解し、慎重に対応する必要があります。
契約が複雑化しやすい
株主間契約では、契約内容が複雑化しやすい点もデメリットとして挙げられます。複数の株主が関与する場合、それぞれの株主の立場や利益を保護するため、詳細な取り決めが必要となり、契約内容が膨大で複雑になることがあります。
例えば、株式譲渡制限や議決権行使に関するルールや配当金の分配方法、経営方針に関する合意事項までを盛り込むと、契約が多岐にわたる条項を含むこととなり、内容の理解や管理が困難になることがあります。
これによって株主間での合意を得るプロセスが煩雑になり、迅速な意思決定が難しくなるリスクがあります。また、契約が複雑化することで、解釈の違いや曖昧な部分が生じやすく、紛争の原因となる可能性も高まります。
解釈の違いによる紛争リスクが潜んでいる
株主間契約には、契約条項の解釈の違いによる紛争リスクが潜んでいます。
契約書の条項が十分に具体的でない場合や、各株主が異なる解釈をする可能性がある場合、意図せず紛争が発生するリスクがあります。
特に、条項の文言が曖昧である場合や、将来の状況変化に対応できない内容の場合、株主間での解釈が分かれ、結果として意見対立や法的な争いにつながる可能性が高まります。
例えば、株式譲渡に関する制限や経営方針に関する決定権に関して、株主間で異なる期待や理解がある場合、その解釈の違いが深刻な対立を引き起こすことがあります。これにより、円滑な会社運営が妨げられ、結果として企業の成長や発展に悪影響を及ぼす可能性もあります。
そのため、株主間契約を締結する際は、専門家の助言を受けて曖昧さを排除し、すべての株主が共通の理解を持てるような条項を作成するようにしましょう。
法務救済では、契約書のリーガルチェックから労務、法務観点のサポート、損害賠償などの企業間紛争に対応できる専門家を検索・依頼することが可能です。全国の弁護士事務所から簡単に検索・相談できます。弁護士や司法書士を探している方は、ぜひ利用してみてください。
問い合わせURL:https://houmu931.jp/expert/
株主間での合意形成が難しい
株主間契約は、株主間での合意形成が難しいとされています。株主間契約では株主同士の権利や義務を細かく定めるため、各株主の意見や利益が対立する場合、合意に至るまでに時間や労力がかかることがあります。
経営に関与する株主が多い場合や、それぞれの株主が異なる視点や立場から意見を持つ場合、合意形成が一層困難になる傾向があります。
株式の譲渡制限や経営方針に関する決定権の分配について意見が一致しない場合、対立が解消されないままでは契約締結までに時間がかかり、企業運営に影響を及ぼすリスクがあります。
また、特定の株主が強い発言力を持つ場合、他の株主が不公平感を抱く可能性があり、長期的に見ると企業内の信頼関係を損なう原因となることもあります。
したがって、株主間契約を締結する際には、各株主の意見を十分に調整し、公平な合意を形成するためのプロセスが重要となります。
株主間契約書に記載すべき事項
株主間契約書の作成においては、以下の事項について記載する必要があります。
- 出資比率に関する内容
- 株式譲渡に関する内容
- デッドロックに関する内容
- 取締役の選任・解任条項
- 拒否権条項の設定
- ドラッグアロング・ライトに関する条項
- ガバナンスに関する規定
- 契約終了に関する規定
それぞれの事項について解説していきます。
出資比率に関する内容
出資比率とは、各株主がどの程度の株式を保有しているかを示す割合です。出資比率は、株主が会社に対してどの程度の影響力を持つかを決定する重要な要素であり、経営方針や意思決定において大きな役割を果たします。
特に、出資比率に応じた議決権や配当金の分配方法を事前に取り決めることで、株主間のトラブルを防ぐことが可能です。また、出資比率に基づく重要事項の決定権や、経営に関する責任範囲についても、明確に定めておくことが推奨されます。
さらに、出資比率の変更に伴う株式の売却や譲渡の際のルールも、契約書内に記載しておくことで、出資比率が変動した場合でも公正かつ透明な取引が維持されます。
このように、出資比率に関する事項を明記することで、株主間での不透明な取引を避け、会社運営の安定性を確保することができるのです。
株式譲渡に関する内容
株式譲渡は会社の経営権や方針に直接影響を与える可能性があるため、株主間で事前にルールを設定しておくことで、突発的な経営の混乱を防ぐことができます。一般的には、株式の譲渡制限や譲渡の際の優先権に関する規定が盛り込まれます。
例えば、株主が株式を第三者に譲渡する際には、他の株主に優先的な買取権を与える「株式譲渡制限条項」を設けます。これにより株式が外部の第三者に渡るのを防ぎ、会社の経営に対する外部の影響を最小限に抑えることができます。
また、株式の譲渡が発生した際の手続きや評価方法も、事前に契約書で詳細に定めておくことで、将来的なトラブルを避けることができます。
株式譲渡に関する内容を株主間契約書に記載することで、会社の経営安定性を確保しやすくなります。
デッドロックに関する内容
デッドロックとは、企業における意思決定が株主間の意見対立によって行き詰まる状態を指します。株主同士の意見が二分され、重要な経営方針や資金調達、事業の転換などに関する決定ができない場合に問題となります。
これを防ぐため、株主間契約書にはデッドロック解消条項を明示的に含めることが推奨されます。デッドロック解消条項には、第三者の仲裁による解決方法や、一方の株主が相手方の株式を買い取るオプションなどが含まれます。また、一時的に取締役会のメンバーを増やし、決定に必要な票を確保する手法もあります。
これにより、企業はデッドロックに直面しても迅速かつ円滑に解決策を見つけることができ、経営の停滞を最小限に抑えられます。
取締役の選任・解任条項
株主間契約書において、取締役の選任および解任条項はスムーズな経営や意思決定を実現する上で必要です。選任・解任条項では、取締役の候補者の推薦方法や選任手続き、解任条件などを明記することで、会社のガバナンス体制を強化します。
例えば、株主総会での過半数の賛成による選任や、特定の株主グループの同意が必要とされる場合があります。また、解任条件としては、著しい法令違反や職務怠慢などが挙げられます。これにより、取締役が責任を全うし、経営の透明性と信頼性が確保されるのです。
このような条項を設けることで、株主間の意見が適切に反映され、経営上の重要な判断がスムーズに行われることが保証されます。
拒否権条項の設定
拒否権条項とは、特定の株主が取締役会や株主総会における特定の決議を拒否する権利を持つことを規定する条項です。拒否権条項は少数株主の権利を保護し、重要な経営判断において少数意見を反映させる手段として機能します。
具体的には、会社の資産の売却や資本構成の変更、大規模な借入など重大な経営判断に対して、特定の株主が拒否権を行使できるようにすることで、少数株主が不利な状況に立たされることを防ぎます。
この条項は、特に合弁事業やスタートアップにおいて有用です。例えば、スタートアップでは創業者の意向を尊重するための手段として拒否権条項が使用されることがあります。逆に、大株主が拒否権を持つことにより、重要な決定に対するコンセンサスを求める圧力がかかり、意思決定が一方的に進むリスクを減少させます。
また、拒否権条項を設定する際には、その行使条件や範囲を明確に定めることが不可欠です。拒否権に関する条件が曖昧であると、紛争の原因となる可能性があり、会社運営に支障を来すことがあります。従って、具体的な条項設計には法律の専門家の助言を仰ぐことが望まれます。
法務救済では、契約書のリーガルチェックから労務、法務観点のサポート、損害賠償などの企業間紛争に対応できる専門家を検索・依頼することが可能です。弁護士や司法書士を探している方は、ぜひ利用してみてください。
問い合わせURL:https://houmu931.jp/expert/
ドラッグアロング・ライトに関する条項
ドラッグアロング・ライトに関する条項は、特に大株主の立場を強化するために用いられます。
この条項が適用される場合、大株主が株式を第三者に売却したいと考えた際に、他の少数株主に対してもその売却に参加するよう強制できる権利を有することになります。具体的には、大株主が一定の条件を満たす買い手と契約を結んだ場合、少数株主も自分の保有する株式をその買い手に売却する義務を負います。
ドラッグアロング・ライトは、市場における買収活動を円滑に進める上で有効とされています。なぜなら、株式の分散所有が大株主にとって交渉の障害となる可能性があるためです。この権利を事前に設定しておくことで、大株主が戦略的なパートナーシップや企業売却を進めやすくなります。また、少数株主にとっても、大株主が高い評価を受けた買収提案を引き受けることで、自身の株式価値が向上するメリットがあります。
一方で、少数株主の視点から見ると、この条項は自らの意思に反して株式を強制的に売却させられるリスクも伴います。したがって、株主間契約を締結する際には、このような条項の内容や発動条件について十分に合意し、明確に規定することが求められます。
ガバナンスに関する規定
ガバナンスに関する規定は、会社の経営方針や意思決定プロセスを明確にするために役立ちます。これにより、株主間の関係が安定し、会社の運営が円滑に進むことが期待されます。
例えば、取締役の選任や解任の手続き、株主総会での議決権行使の具体的な方法などがガバナンスとして定められます。さらに、株主の意思が一致しない場合のデッドロック解決方法についても明記されることが多いです。拒否権の設定や、重要な決定事項に関しては高いハードルを設けることで、慎重な意思決定が促されます。
このように、ガバナンスに関する規定は、株主間契約書の中でも特に重要な部分であり、企業の成功に不可欠な要素と言えるでしょう。
契約終了に関する規定
契約終了に関する規定は、株主間契約書において重要な条項です。
契約終了については、契約の期間や更新条件を明確に規定することが求められます。具体的には、契約の満了日や自動更新の有無、更新するための手続きを詳細に記載します。
また、契約終了の理由や条件についても触れる必要があります。例えば、当事者の重大な違約行為や倒産、さらに双方の合意による契約終了について、ルールを設定しておく必要があります。
さらに、契約終了後の取り扱いに関する規定も重要で、株式の譲渡条件や残余財産の分配方法、機密情報の取り扱いについても明確に示すことが必要です。
これにより、契約終了後の混乱や紛争を未然に防ぐことが可能となります。さらに、契約終了に伴う清算手続きについても詳細に定めておくことで、関係各所の理解と協力を得やすくなります。
これらの規定を具体的かつ明確に記載することで、企業の株主間における信頼関係を維持し、円滑な事業運営を支える基盤を築くことができます。
株主間契約締結時の注意点
株主間契約を締結する際には、以下の点に注意する必要があります。
- 当事者間で公平が保たれている
- 株主同士による対立時の解決手続きが記載されている
- 経営ルールが明確化されている
- 事前承認事項の設定が適切かどうか確認する
- 会社には法的拘束力がないことを理解しておく
- 契約違反時の違約金や損害賠償について明記されている
- 複数の株主と株主間契約を締結しない
それぞれの注意点について解説していきます。
当事者間で公平が保たれている
株主間契約を締結する際の注意点の一つが、当事者間で公平が保たれているかどうかです。株主間契約は株主それぞれの権利や義務を定めるため、特定の株主に偏った内容になると、後にトラブルの原因となる可能性があります。
特に、大株主と少数株主の間では力関係があるため、一方的な契約内容が押し付けられるリスクが存在します。このような不公平な契約は、少数株主の権利を不当に制限することになり、会社全体の経営に悪影響を及ぼす場合があります。
そのため、株主間契約を締結する際には、各株主の立場や経済的利益がバランス良く反映されているかを慎重に確認することが必要です。契約内容が全ての株主に対して公正であり、互いの利益を尊重した合意であることが求められます。透明性と公平な関係を維持することで、株主間の信頼を強化し、会社の安定的な運営を実現することが可能です。
株主同士による対立時の解決手続きが記載されている
株主間契約を締結する際には、株主同士が対立した場合の解決手続きを明確に記載しておくことが必要です。
株主間で意見の相違が生じた際に、適切な解決策が事前に定められていないと、経営が停滞したり、事業運営に深刻な影響を及ぼす可能性があります。そのため、紛争が発生した際にどのような手順で解決を図るかを具体的に規定しておくことが推奨されます。
例えば、第三者の仲裁を求める仲裁条項や、特定の事項に関して株主の投票による決議を求める手続きなどが含まれます。
また、最悪の事態を避けるためにデッドロック条項を設け、株主の意見が対立して行き詰まった場合の対策をあらかじめ決めておくことも有効です。
このような手続きを事前に設定しておくことで、株主間の紛争を迅速に解決し、会社運営が円滑に進むことを保証します。株主間の対立が大きな問題に発展する前に解決策を用意しておくことは、会社の安定性を確保するために欠かせません。
経営ルールが明確化されている
株主間契約は、株主間でのトラブルや経営上の混乱を防ぐために、経営に関する重要事項を事前に取り決めるものです。株主間で経営方針や意思決定に関して意見が対立した場合、曖昧なルールや不明確な権限分担は、経営の停滞や紛争の原因となる可能性があります。
そこで、経営に関する具体的なルールや手続き、決定権の範囲を明確に定めておくことが重要です。例えば、取締役会の決議事項や株主総会での意思決定プロセス、利益配分の基準などを契約に盛り込むことで、株主全体の合意を得た上で円滑に経営が進む環境を整えることができます。
特にスタートアップ企業や新規ビジネスにおいては、スピーディーな意思決定が求められる場面が多いため、経営ルールの明確化は経営の安定性を高めるために欠かせない要素です。
事前承認事項の設定が適切かどうか確認する
株主間契約を締結する際、事前承認事項の設定が適切かどうかを確認しなければいけません。
事前承認事項とは、特定の重要な決定を行う際に、事前に株主や取締役会の承認を得るべき事項を定めるものであり、会社運営の透明性と公平性を保つための手段となります。事前承認事項では、以下の事項について事前に承認を求める条項を設定するのが一般的です。
- 株式の譲渡第三者への売却
- 新規株式の発行
- 大規模な借入
- M&A
事前承認事項が適切でない場合、株主の権利が過度に制限されたり、逆に自由な経営判断が妨げられるリスクがあります。適切なバランスを取ることが重要で、承認事項の範囲が広すぎると、経営のスピードが遅くなり、事業拡大や緊急対応に支障が出る可能性があります。
そのため、事前承認事項を設定する際には、株主間で十分な協議を行い、会社の現状や将来の成長を見据えた適切な条項を設けることが求められます。
会社には法的拘束力がないことを理解しておく
株主間契約を締結する際は、会社にはこの契約に対する法的拘束力がないことを理解しておくことが重要です。
株主間契約はあくまで契約に署名した株主同士の間で効力を持つものであり、会社そのものや第三者に対して直接的な法的拘束力を持つわけではありません。例えば、株主間で株式譲渡の制限を合意していたとしても、会社がその制限を強制する権限を持たないため、会社の定款や会社法の規定に違反しない範囲でしか実行されません。
このため、株主間契約の内容が会社の経営や運営に関わる重要な事項を含む場合には、別途、定款変更や株主総会決議などの手続きが必要となるケースがあります。また、契約違反が発生した場合、違反した株主に対しては民事的な責任を追及できるものの、会社自体がその違反に対して直接的に制裁を科すことはできません。
したがって、株主間契約を締結する際には、その効力範囲と会社に対する影響を明確に理解しておくことが重要です。
契約違反時の違約金や損害賠償について明記されている
株主間契約を締結する際には、契約違反時の違約金や損害賠償について明記することが重要です。これは、契約が遵守されない場合における責任を明確にし、株主間でのトラブルを未然に防ぐための効果的な手段です。
例えば、株式譲渡の禁止や株主の権利行使に関するルールが守られなかった場合に、違反した株主に対してどのようなペナルティが科されるのかを事前に取り決めることで、紛争発生時の対処がスムーズになります。違約金や損害賠償額を具体的に定めておくことで、違反行為の抑止力にもなり、株主間の信頼関係を維持する助けとなります。
また、明確な基準がないと、実際に紛争が発生した際に損害の大きさや賠償の範囲を巡ってさらなる対立が生じる可能性があります。これを防ぐためにも、契約違反時の対処方法を事前に明文化しておくことが、株主間契約の健全な履行を促進し、会社の運営を安定させる鍵となります。
複数の株主と株主間契約を締結しない
株主間契約は、特定の株主間でのみ効力を発揮するため、複数の株主と契約を結ばない場合、その契約の効力は当事者以外には及びません。この状況が生じると、特定の株主が独自の合意に基づいて動く一方で、他の株主はその枠外で異なる行動を取る可能性があり、結果として株主間での摩擦や不整合が生じやすくなります。
特に、スタートアップや中小企業では株主の人数が限られており、一部の株主だけが契約に基づいて特定の権利や義務を持つ状態は、企業運営に不安定要素を加える可能性があります。
そのため、株主間契約を締結する際には、可能な限りすべての株主間で同一の契約を結び、共通の理解を持たせることが重要です。これにより、会社運営に関する重要な決定事項が統一され、意思決定プロセスにおける混乱や対立を回避し、企業全体の安定を確保することができます。
まとめ
株主間で契約を締結する場合、株主間契約書は必須です。株主間契約書を作成することで、トラブルが発生した場合に素早く対処できるようになり、安全な経営を実現しやすくなります。
そのため、株主に限らず、会社の経営に携わる方や法務担当者も株主間契約書の作成方法や記載事項、注意点について理解する必要があります。企業に法的拘束力はないものの、株主の信頼を高めるには株主間契約書について知っておくことが重要です。
法務救済では、契約書のリーガルチェックから労務、法務観点のサポート、損害賠償などの企業間紛争に対応できる専門家を検索・依頼することが可能です。全国の弁護士事務所から簡単に検索・相談できます。
問い合わせは無料で、費用は発生しません。株主間契約書について分からないことがある場合は、法務救済から株主間の契約に強い専門家を探してみてください。
問い合わせURL:https://houmu931.jp/expert/
法務急済運営事務局
株式会社WEBYの法務急済運営事務局。全国400以上の弁護士・司法書士のWEBマーケティング支援に従事。これまでに法律ジャンルの記事執筆・編集を1000記事以上担当。WEBコンサルやHP制作、SEO対策、LMC(ローカルマップコントロール)など様々な支援を通じて法律業界に精通。これらの経験を基に企業法務の際に必要な情報や適切な弁護士・司法書士を紹介している。
※当社(株式会社WEBY)は直接債務整理のサービスを提供しておらず、債務整理の相談や依頼については紹介事務所へのリンク先で対応となるため、当サイトでは債務整理に関する個人の相談や質問にはお答えできません。
当サイトのコンテンツは事実に反しないよう尽力していますが、内容の正確性や信頼性、安全性を担保するものではありません。
債務整理の無料相談や依頼にお申し込みされる際は各弁護士事務所・司法書士事務所等の公式ホームページに記載されている内容をご確認いただき、自己判断していただけますようお願いいたします。
当サイトは株式会社WEBYと提携する企業のPR情報が含まれます。
当サイトで掲載しているコンテンツは個人および法人へ向けた情報提供が目的であり、債務整理を提供する事業者との契約代理や媒介、斡旋を助長するものではありません。