- 法務救済
- コラム
- 予防法務
- 契約書・リーガルチェック
- 基本契約書とは?個別契約書との違いや注意点、使い分ける方法を解説
基本契約書とは?個別契約書との違いや注意点、使い分ける方法を解説
契約書・リーガルチェック
2024.10.21 ー 2024.11.04 更新
基本契約書とは?
基本契約書とは、取引先との長期的な取引を行う際に基盤となる合意事項を定めた契約書のことを言います。
例えば業務委託契約取引を繰り返し行う場合、業務ごとに毎回契約書を作成しその都度報酬の支払い等を行っていては、双方とも手間になってしまいます。
こうした負担を省くために、各業務に共通する合意事項をまとめたものが基本契約書です。基本契約書は、その後に個別契約を繰り返し行うことを想定して作成することになります。
記載内容は一般的に、業務の範囲、報酬や売買代金の計算方法、商品の納品方法、代金の締め日と支払日、秘密保持、契約の終了条件などです。
契約書のタイトルは『基本契約書』である必要はありません。『取引基本合意書』や『〇〇の部品製造に関する取引基本契約書』のように目的物を特定して作成されるのも一般的です。
また書面で契約書を作成する必要はなく、電子署名を用いた電子契約も可能です。
以下では、取引基本契約書の役割や記載事項、契約の流れについてさらに詳しく解説していきます。
基本契約書の目的と役割
基本契約書は、長期的な取引関係を継続する際に事務負担を軽くできるメリットがあり、当事者双方にとって円滑な事業運営を実現することが目的です。
また、基本契約書において取引の基本的なルールを明確に定めることで、トラブルの発生を未然に防ぎ、万が一問題が生じた場合でも迅速かつ適切な対応が可能となります。
両者の権利と義務を明確にすることで、公平な取引関係を維持し双方の利益を守ることに繋がります。
基本契約書が利用される場面と具体的事例
基本契約書が利用される場面は主に長期的な取引関係を築く場合です。
『長期的』が示す期間には、特に制限はありません。たとえ取引の期間が1週間ほどであっても、基本契約書を作成した方が当事者として事務負担が小さくなるのなら作成する意義はあるでしょう。
具体的には、次のようなケースで基本契約書作成の効果が大きく発揮されます。
- 飲食店が青果店に野菜を発注する際に、毎週の曜日で発注締日・配送日を定める場合や、月ごとの支払い日を定めておく場合など
- 製造業と部品の卸売業との間で原材料や部品の安定供給を確保したい場合
- 出版社がライターに記事の作成業務を定期的に外注する場合
- 企業のM&Aを行う場合
基本契約書と個別契約書の違い
個別契約書とは、発注書や注文書など個別業務の詳細についての契約書を指します。基本契約書と個別契約書の違いは、その適用範囲と目的にあります。
基本契約書は継続取引の全体における基本事項を定めるのに対し、個別契約はその名のとおり個別の取引案件についての詳細が記されます。
例えば、カーディーラーが取引相手と継続的に車の売買を行う場合に、基本の運送方法や納車の場所、支払い日などを定めておくのが基本契約書です。一方、個別契約書では車種や年式、走行距離、車内設備などを記載するなどして納品物を特定等を行います。
注文書などの個別契約書は、特定の取引や案件に焦点を当てたものであり短期的な性質を持ちます。
両者を適切に組み合わせることで、安定的かつ柔軟な取引関係を構築することができます。
基本契約書の作成方法
基本契約書を作成する際は、取引相手との合意事項を確認し、今後の個別契約を前提にして取引の基本的な枠組みを定めます。
基本契約書には契約の目的、期間、支払条件、責任の所在など、個別契約で共通となる重要な事項を漏れなく記載しましょう。特に、秘密保持条項や知的財産権の取り扱いについては慎重に検討する必要があります。
契約書を作成する際にはテンプレートの利用も有効です。テンプレートには一般的な共通項目が整理されている場合が多いためです。
ただし、充分な法律知識がない場合にテンプレートを利用すると、必要事項の見落としによって後からトラブルになりがちなデメリットもあります。法的リスクを最小限に抑えるためには、専門家によるリーガルチェックの導入も検討しましょう。
以下、基本契約書の構成や書き方の例、記載事項を詳細に解説していきます。
基本契約書の構成
基本契約書の基本的な構成は、以下のとおりです。
- タイトル
- 前文
- 契約条項
- 後文
- 契約締結日
- 当事者名の記名・押印
タイトルは、『〇〇取引基本契約書』などと記載します。
前文では当事者を特定して契約の合意を示す文章を記載します。例えば『買主(甲)と売主(乙)は甲乙間の製品および部品の取引に関し、基本的な事項について次の通り契約する。』などです。
次に、契約条項を合意内容に応じて記載していきます。(詳しい契約条項はこのあと紹介していきます。)
契約条項を記載したあとは、後文として次のように添えて記載します。
(文例)『本契約の締結を証するため本書を2通作成し、甲乙が記名押印のうえ、それぞれが1通を所有する。』
ここまで契約書の調製ができたら、あとは当事者が各条項を確認し、問題がなければ契約日の記入や記名押印等を行うことになります。
基本契約書に記載する契約条項
次に、基本契約書に記載される一般条項を紹介します。一般的な記載事項の一覧は次のとおりです。
- 基本契約と個別契約の関係、優先の定め
- 契約の適用範囲と有効期間
- 納入、検査、受領、不合格品の対応とその補償
- 天災や有事等の不可抗力の際の対応
- 依頼物の所有権の移転時期
- 商品の品質についての事項(危険負担、保証、仕様など)
- 支給品や貸与品、設計図等に関する事項
- 見積もり、支払い方法や支払い時期、締日、相殺など報酬に関する事項
- 契約不適合責任、建造物責任、遅延損害の請求などに関する事項
- 知的財産権
- 契約者の地位および権利の譲渡に関する事項
- 秘密保持
- 再委任、再委託の可否等
- 輸出入の管理
- 環境保護
- 契約解除の条件、解約の予告など
- 期限の利益喪失、担保提供、保証人などの保守事項
- 契約終了時の措置(貸与物の変換など)
- 残存条項(競業避止などの取引終了後も有効にすべき合意事項)
- 契約に定めのない事項への対応(協議解決など)
- 合意管轄裁判所
- 軽過措置(個別契約を先行して開始していた場合の扱いなど)
契約書はあくまで当事者が合意した内容に基づいて作成するものです。よって上記項目の全てを記載する必要はありませんし、追加の合意事項があれば特約を記載することも問題ありません。
定めのない部分については、民法や商法その他の法令規定によって規律されることになります。
特に重要な項目については別紙を作成するか契約ごと別で行うケースもあります。例えば売買契約における対象物の種類が多ければ、契約書にて『別紙「売買対象物目録」のとおり』のように目録を作成するなどの対応を行います。
また企業のM&A契約等においては、基本契約書とは別に秘密保持契約書を作成するケースも多いです。
その理由は、M&Aでは秘密保持の範囲や期間について個別設定の必要性が大きくなるためです。例えば合併の際は、合併そのものの発表や新社名・ロゴの一般公表など、秘密情報の範囲や公開時期等について個別の設定が多くなります。
このように、基本契約書は契約の実態および当事者の事務負担軽減を考慮しつつ、可能な限り見やすいように作成していきます。
基本契約書と個別契約はどちらが優先されるか?
基本契約書と個別契約には、法定された優先順位はありません。矛盾が生じるような場合に備えて基本契約で優先を定めておく方法が一般的です。
学説としては『個別契約の方が後に結ばれるため、当事者の意思が更新されており、個別契約が優先』と考える説もあります。反対に『基本契約は、個別契約において業務範囲を逸脱しないために定めたものだ』と考えることもできます。
こうした争いにならないためにも、優先に関する定めは明確にして契約に含めると良いでしょう。
例えば「本契約と個別契約の内容が矛盾する場合は、個別契約の規定が優先する」などと定める方法があります。
また『基本契約書の重要な条項(例:秘密保持義務や知的財産権の取り扱い)については、個別契約で変更できない』と明記することもあります。このような場合にはその特定の条項に関して基本契約書が優先されます。
トラブルを避けるためには、基本契約書と個別契約の優先順位を明確に定め、両者の整合性を確保することが重要です。定期的に契約内容を見直し、必要に応じて更新することで、長期的な取引関係を円滑に維持できます。
基本契約書作成時のポイントと注意点
基本契約書の作成時には、次のようなポイントに注意を払う必要があります。
- 業務範囲、報酬に関する部分、納期は特に明確にする
- 相手側が注視する部分は詳細に記載する
- 弁護士によるリーガルチェックを実施する
業務範囲、報酬に関する部分、納期は特に明確にする
取引で争いが発生しやすいのは、まず金銭や依頼の完成品、作業に費やした時間などの経済的価値の部分です。
そのため、作業範囲の明確化や報酬、納期については特に注意して作成する必要があります。
相手方が注視する部分は詳細に記載する
経済的価値のほかに争いのタネになりやすいのが、人間関係や信頼関係の喪失です。
取引の際は信頼関係を保てるよう、互いが注視する部分についても詳細に記載し、双方納得の上での契約を目指しましょう。
また、注視すべき項目は契約によっても変わります。例えば独創的なアイデアを基にしたビジネスであれば、競業避止義務や秘密保持義務等をより明確かつ詳細に記載することになるでしょう。
契約は対等な立場で行うものですが、現実には当事者の一方が契約書を作成して相手方が同意するという流れも一般的です。このような場合、作成者側は相手方に内容を充分に説明し、悩みを解決した上で契約を行う必要があります。
弁護士によるリーガルチェックを実施する
基本契約書作成の際には、早めに弁護士によるリーガルチェックを受けるのがおすすめです。
基本契約書を作成するのは、基本的には長期的な取引が必要となる場面です。そのため早い段階から弁護士によるリーガルチェックを受けることで、法的なリスク回避効果が大きくなり、弁護士費用のコストパフォーマンスもよくなります。
雛形・テンプレートを用いて基本契約書を作成するような場合、最新の法律の改正や、実態に即した個別事項を見落としがちになるため、基本契約書については早めに弁護士へ相談するとよいでしょう。
基本契約書の保管期間は
基本契約書の保管期間は、基本契約における取引が終了した日から10年間と考えておくと良いでしょう。
ただし競業避止等の残存条項を定めた場合には、基本取引の終了後も残存条項についての合意は有効です。競業避止期間を10年以上と定める場合も多いため、この条項が有効なうちは契約書を破棄せずに保管しておきましょう。
保管期間を10年とする根拠は民法における債権の消滅時効が10年であるためです。契約書を保管しておくと、取引終了後10年の間に何らかの争いになった場合に、証拠として役立ちます。
なお、商事債権に関する消滅時効は5年、会社法関連の契約に関する書類の保管期間は会社法により10年と定められており、全ての基本契約書に10年の保管義務が課されるわけではありません。
以上を考慮し、基本的には取引後10年間保管するものと考えておきましょう。
基本契約書の印紙税は必要?電子契約書の場合は?
基本契約書は『継続的取引の基本となる契約書』に該当し、1通につき4,000円の印紙税がかかります。
印紙税の対象となるかどうかは、契約書のタイトルではなく契約内容の実態で判断されるため注意が必要です。
例えば『基本契約書』を作成するつもりで取引事項を詰めていくうちに、その内容が請負に関する契約書や、運送に関する契約書などに該当するケースがあります。
こうした場合には基本契約とは認められず、それぞれに該当する印紙税が課されます。
電子契約で行った場合は、紙面がないため課税文書の作成にあたらず印紙税を支払う必要はありません。
基本契約書を作成する際は弁護士による早期のリーガルチェックが有効
基本契約書を作成する際、リーガルチェックのサービスを受けることは非常に重要です。
専門的な知識を持つ弁護士のサポートを受け、アドバイスを参考にすることで、契約書の内容をより確実なものにし、将来的なトラブルを回避できる可能性が高まります。
特に取引金額が大きい場合や、知的財産権が重要になる契約では、法的アドバイスを受けることが強く推奨されます。
弁護士によるリーガルチェックには一定の料金を支払う必要がありますが、その後のリスクを回避するには充分な投資であり、スムーズな取引が行えるようになるでしょう。
企業法務に強い弁護士による無料相談を活用しよう
法務救済は、会員登録不要、手数料不要で全国から企業法務に強い弁護士を検索できるポータルサイトです。
本サイトで紹介する弁護士へは無料相談が利用できます。『エリア』『相談内容』を指定し、企業法務に強い弁護士探しのためお役立てください。
弁護士の検索はコチラからhttps://houmu931.jp/expert/
法務急済運営事務局
株式会社WEBYの法務急済運営事務局。全国400以上の弁護士・司法書士のWEBマーケティング支援に従事。これまでに法律ジャンルの記事執筆・編集を1000記事以上担当。WEBコンサルやHP制作、SEO対策、LMC(ローカルマップコントロール)など様々な支援を通じて法律業界に精通。これらの経験を基に企業法務の際に必要な情報や適切な弁護士・司法書士を紹介している。
※当社(株式会社WEBY)は直接債務整理のサービスを提供しておらず、債務整理の相談や依頼については紹介事務所へのリンク先で対応となるため、当サイトでは債務整理に関する個人の相談や質問にはお答えできません。
当サイトのコンテンツは事実に反しないよう尽力していますが、内容の正確性や信頼性、安全性を担保するものではありません。
債務整理の無料相談や依頼にお申し込みされる際は各弁護士事務所・司法書士事務所等の公式ホームページに記載されている内容をご確認いただき、自己判断していただけますようお願いいたします。
当サイトは株式会社WEBYと提携する企業のPR情報が含まれます。
当サイトで掲載しているコンテンツは個人および法人へ向けた情報提供が目的であり、債務整理を提供する事業者との契約代理や媒介、斡旋を助長するものではありません。